神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8214字。

茨城編の続きです。


機械操作の修復攻撃

「罠は...無さそうだな」

 

知事室の近くにやってきた俺は、パッと見渡して知事室の扉周辺に何も機械が設置されていないことを確認してから扉の前に移動する。

 

「……ッ⁉︎」

 

扉を開け放って知事室の中に突入した俺は、それを見て驚愕した。

 

知事室の中に、人型のパワードスーツのようなものが設置されていたのだ。全身が機械の塊で覆われており、中に人一人くらいは入れそうな大きさで...ソイツは顔を俺の方に向けてきた。

 

「まさか、壱式は中に...⁉︎」

 

『おやおや、誰かと思えば異分子じゃないか』

 

スピーカー越しの壱式の声が聞こえて来る。

 

『ここまで良くぞ俺の仕掛けた罠を掻い潜って来たものだ。だが、貴様の命運もここまで...死んでもらおう』

 

「死ぬのはテメェだ...よ!」

 

壱式が殴りかかってきたのを横に飛んで避ける。壱式の放った拳はそのまま後方の壁をぶち抜き、知事室の外へと出ていったので拳銃を抜きながら俺は追いかけようとする。

 

「あだっ⁉︎」

 

知事室を出た壱式を追いかけようとしたのだが、破壊された壁が修復されて俺の行く手を塞いだ。

 

「面倒な...!俺を殺すんじゃなかったのかァ?」

 

なぜ逃げ出したのかを疑問に思いながら、俺は物質修復と共に閉じられた扉を開けて外に出る。

 

次の瞬間だった。知事室の扉のすぐ目の前に設置されていた電子レンジのようなものが破裂してこちらに向かって破片を撒き散らした。

 

「うあっぶね!!」

 

飛んでくる破片を幻痛の熱の軌道操作でなんとか回避する。クソっ、道を塞いだのはこの罠の設置をする時間を稼ぐためか...

 

「逃げられたのかなり厄介だな...罠を設置されながら逃げる壱式を追いかけなきゃならんのか...!」

 

たしかに、こんな戦い方をするのなら知事室を出て県庁内を駆け巡った方が壱式にとって有利だろう。自分の戦い方を熟知してやがる...これは相当骨が折れそうだ。

 

「……どうやら、付かず離れずの距離を保ちたいようだな。その誘い、乗ってやるよ!」

 

少し離れたところで止まっている壱式を見つけた俺は、そちらに向かって最高速度で走り出す。そして拳銃を向け、数度引き金を引く。

 

「チッ、硬ぇな...!」

 

放たれた銃弾は壱式の纏うパワードスーツに当たるものの、一切の傷をつけることができなかった。まぁ、もし傷をつけられたとしても物質修復で治されてしまうだろうから無意味なんだけどな...攻撃するならば、中身の壱式を直接攻撃できる方法か、圧倒的破壊力で破損させて直るまでの隙を狙う方法しかない。

 

「まずは引き摺り出す...!」

 

再度銃弾を放つ。傷をつけられないことは分かっているため、今度は幻痛の熱に全てを集中させる。全ての摩擦熱を増幅させ、パワードスーツとの接触の際に増幅熱を移し、中にいる壱式に伝達させて...

 

「……出来てんのかわからねぇ...!」

 

パワードスーツのどの位置に壱式がいるのかわからないため、正確に増幅熱を叩き込めているかわからない。上手くやったつもりなのに、一切熱がる反応を示さないから心配になる...失敗した?

 

パワードスーツを経由させる方法はダメか...そもそもそれが成功していたとしても、悶え苦しむ壱式の動きを俺は認識することができないため、直接摩擦熱を増幅させて追撃を仕掛ける方法を取ることは難しい。どうしたものか...

 

「……ッ⁉︎」

 

予知が発動した。壱式の攻撃に被弾する未来が見える。こんなこともできんのかよ...!

 

壱式はこちらに向けて何かを投擲してきた。それは何かの機械...というわけではなく、何かの部品といった方が良さそうな代物だった。

 

少しすると、その部品に向かってどこからともなく何かのパーツが集まってきて、機械の姿を形作っていく。最終的に大きめの洗濯機が形成されて、そのままの速度で俺に向かって飛んできた。

 

「物質修復でそんな攻撃できんのかよ...!」

 

洗濯機による質量攻撃を何とか回避した俺は、すぐさま雷身体強化のハウリングを発動させて前に一気に飛ぶ。

 

そうした瞬間、背後の洗濯機が破裂してこちらに向かって破片を撒き散らしてきた。しかし、事前に行動していた俺の方が速度は上であり、破片は俺の元まで届かない。またしても物質修復によって直っていくものの、少し後方に洗濯機がポツンと置かれて終わりだった。

 

ハウリングを発動させて前に飛んでいなければ、飛んできた破片は俺を傷つけながら追い越して前方で洗濯機として再構築、またしても破裂して後方に...といったように何度も破裂と修復を繰り返しながら攻撃を仕掛けてきていたことだろう。機械操作と物質修復の二つでここまで攻撃できるとは驚きだな。その発想力が羨ましい。

 

「クソッ、物質透過を間借りしておけばよかった...!」

 

あれがあったらこんな攻撃も何もせずとも無視できるし、パワードスーツもすり抜けて中の壱式に攻撃できるじゃんか...!鎧の貫通なら幻痛の熱で出来るから対処可能だと思ってた出撃前の俺を恨みてぇ...!物質修復だけしかいないと思ってたのもあるけど、そもそもの物質修復の時点で特効性能あるんだから、素直に貰っておくべきだった...!

 

「しゃーねぇ無い物ねだりは止めだ。物質透過無しで止める...!」

 

パワードスーツの身体能力はなかなかのものだが、ハウリングで強化された俺の方が足は速い。ある程度の距離にまで近づくことができたので、俺は再度拳銃を向ける。このまま何度も熱を蓄積させていけば、いずれ効き目が出てくるはず...!

 

「ッ、マジか...!」

 

引き金を引こうとしていた指を止めて、拳銃を真後ろに投げ捨てる。

 

次の瞬間、拳銃は内側から破裂して破片を撒き散らした。

 

「こっちの持ち物も破壊してくるかよ...!」

 

流石に無法すぎる...!待てよ?もしや通信機も危ない...?いや、流石に見られていないものは破裂させられないはずだ。ここで通信機を捨てる方がデメリットが多すぎる。どうせ予知があるのだから、捨てるのは破裂する未来が見えてからでいいはずだ。

 

「機械はダメってなると、純粋な武器しか使えないか...」

 

門川から借りている武器生成操作のハウリングを発動し、刀を生み出す。

 

「これじゃ摩擦熱は生み出せないが...ひとまず足止め!」

 

過程省略のハウリングを発動し、斬撃の過程を省略して壱式のパワードスーツに無数の斬撃を浴びせていく。斬撃はパワードスーツの外装をザリザリと削り取っていく...が、即座に物質修復が働いて均衡していく。

 

「よし、足止めはできてる...!」

 

ダメージは期待できないが、ひとまず壱式の足止めをすることはできた。摩擦熱の増幅まで出来れば最高だったのだが、斬撃を省略してしまっているため肝心の摩擦の瞬間が存在しないので増幅ができない...難儀だ。

 

「お前のその服、剥ぎ取ってやらぁ!」

 

『出来るものならやってみな』

 

「うおっ、バーニア...⁉︎」

 

パワードスーツの足裏からバーニアが放出され、上方向へと飛び立つ。そのまま天井を破壊して上層階へと飛んでいった。

 

「何が目的だよ...クソっ、罠だろうが行くしかねぇ...!」

 

破壊された天井が物質修復で直されてしまう前に、ハウリングで強化された跳躍力で上の階へと昇っていく。案の定一つ上の階に着地するたびに機械の破裂攻撃が放たれるものの、それを置き去りにする速度で上へと跳躍する。

 

そうしてたどり着いた先は...

 

「ここは...十一階の...!」

 

茨城県庁の十一階にはアトリウムが存在しており、ここから最上階である二十五階までを貫く大きな吹き抜けがある。もしや、ここに誘い込むために移動を...!

 

「なっ...ヤバすぎんだろ...!!」

 

予知が発動した。

 

壱式によって無数の何かの部品のようなものが上に向かってばら撒かれ、それらに向かって上層階から大量の部品が集まっていきいくつもの機械が修復され、吹き抜け部分を落下してくる...そんな未来が見えた。

 

これから、大小を問わず無数に機械が降ってくる。それらは俺を圧死させるには十分な重さと大きさを持っているし、落下途中で再度破壊してクラスター爆弾のように破片を撒き散らす攻撃でも充分に俺を殺せる。

 

そして、何よりも不味いのがそのまま落下してきたら下の階にも被害が及ぶ恐れがあることだ。上層階からの落下によるエネルギーを蓄えた機械が降り注げば、床を貫通して下層にもダメージを与えていくはずだ。破裂と修復を使えば、そのまま一階まで突き進むことも可能かもしれない。

 

下にはまだ他の隊員たちがいる。下の階にまで被害が及ぶことだけは避けなくては...!

 

『潰れちまいな!!』

 

「や、やるしかねぇ...!」

 

予知通り、壱式は何かの部品を大量にばら撒いた。それを見た俺は覚悟を決め、床を蹴って飛び出す。

 

「全部...落とさせない!!」

 

俺はばら撒かれた部品を空中で全て掴み取った。そして、吹き抜け部分の壁を連続キックで上へ上へと登っていく。

 

『貴様、何を...⁉︎』

 

「これで...!」

 

県庁天井に貼られていた天窓を突き破り、屋上に出る。

 

「どうだ!!」

 

そして俺は持っていた部品を屋上にバラバラに放り投げた。

 

次の瞬間、同じように天窓を突き破って大量の部品たちが集まってくる。俺はそれらに押し上げられるも、一度上に跳んで回避し、全ての部品が集まるまで待つ。

 

「……ヨシ!成功!!」

 

物質修復で元に戻された機械は全て屋上に残された。それを確認した俺は、また破裂する前に天窓から県庁内に降り、壁を蹴って少しずつ下に降りていく。

 

『クソ...貴様、我が秘策を最も容易く...!』

 

「アレが秘策だァ?笑わせるねぇ!あんなんみすみす喰らう奴の方が少ねぇわ!」

 

壁を蹴ってパワードスーツに飛び蹴りを叩き込む。衝撃に耐え切れず脚がひしゃげるも、すぐさま治癒を回して少しずつ治していく。

 

「ぶっ壊す!!さっさと中身吐きやがれ!!」

 

飛び蹴りによってへこんだ箇所に的確に拳を叩き込み、パワードスーツを破損させる。ここまでやれば、中にいる壱式にも多少なりとも被害が及んでいるはず...!

 

『無駄だ!』

 

壱式が叫ぶと、パワードスーツの手が俺の服を掴み、壁に向かって投げつけられる。

 

「っと危ねぇ...!アレで声ひとつ上げねぇのかよ...」

 

壁に無事な左足を付けて勢いを受け止め、トンっと床に着地しながら呟く。かなり奥の方まで削ったし、なんなら増幅熱も一緒に叩き込んだはずなのに、壱式は苦痛の声を一言も発さずに俺を引き剥がしてきた。ただ我慢しただけなのか、それとも...

 

「……まさか、壱式はあの中に居ない...?」

 

可能性はある。人が一人中に入れそうなパワードスーツだから当然中に壱式が乗り込んでいるだろうと思っていたが、パワードスーツも機械なのだから機械操作のハウリングで遠隔操縦をすることが可能なため、必ずしも乗り込んでいるとは限らない。センサー類は絶対についているのだから、それを見ながら攻撃することも可能だ。わざわざ壱式が表立って攻撃に参加する必要はないのだから、裏でコソコソと遠隔操縦している方がよっぽど自然...!

 

「クソッ、先入観...!」

 

壱式は知事室にいるのが普通で、知事室内には巨大なパワードスーツ...誰だって、乗り込んでいるのは壱式だと勘違いするだろう。それを逆手に取られたわけだ。スピーカー越しの声であることに疑問を持てていれば...!

 

「誰か知事室に向かえ!!壱式を捜索しろ!!」

 

本物の壱式は、まだ知事室内に隠れているか、もしくはもう逃げているか...とにかく仲間たちに全力で捜索させる。

 

『ッ、気付いたか...!』

 

今思えば、すぐにコイツが知事室の外に出たのも、本物の壱式を発見されるのを防ぎ、真っ先に知事室に辿り着けるような強者を出来るだけ遠ざけるためだったのか...

 

……つーか、コイツバレたとしてもあんま声に出すなよ。正直すぎる...いや、それ含めてブラフか?クソッ、わかんねぇ...

 

「……ひとまず、お前を破壊して中身を暴く!」

 

別に、中が無人であると完全に決まったわけではない。弐式辺りが乗り込んでいる可能性もあるため、パワードスーツを破壊して中にアンチが乗り込んでいるかだけ確かめよう。まだ壱式がいる可能性も捨て切れないから、つい誤って殺しちまわないように注意して...

 

「吹っ飛べ!!」

 

武器生成操作のハウリングを発動し、大量の銃器を生成してパワードスーツに撃ち込む。放たれる銃弾はゴリゴリとパワードスーツの外装を傷付けていき、腕や脚を抉り取っていく。

 

もちろん、敵も黙って受けるはずがない。必死に物質修復でパワードスーツの傷を直しながら、こちらの生成した銃器を破裂させて破片で俺に攻撃を仕掛けようとしてくる。

 

「無駄無駄!!消せるんだよなァ!」

 

最初に破壊された拳銃は正規品だったが、今使っている銃器は全て武器生成操作のハウリングで生み出したものだ。よって、消そうと思えばいつでも消すことができる。破裂させられたのなら、破片が俺の元に届く前に消してしまえばいいだけのこと。ある程度離れた位置に銃器を展開しておけば、俺に攻撃が届くことはない。

 

「そんで...お前、無人機だな?こんだけ熱を溜め込んで、中の奴が無事なわけねぇもんなァ!」

 

当然のように俺は銃弾によって生じた摩擦熱を全てパワードスーツに埋め込んでいた。十二分に溜め込まれた増幅熱は体感温度数千℃という領域を軽々と通り越しており、保存されている実在の摩擦熱も相当な温度に到達しているため、中にいるアンチが耐えられるはずもない。だというのにあのパワードスーツは修復を続けており、尚且つまだ動こうとしているのだから、中は無人であると考えるのが妥当であろう。

 

「そういや試してなかったな。溶けたらちゃんと直せんのかァ?」

 

蓄積された摩擦熱が一定の温度を超え、パワードスーツの素材を溶かし始めた。パワードスーツはいくらでも修復できるだろうが、大元の素材が変形したり消えてしまったなら流石にもう直せないはず...!

 

「最後はこれで...終わり!」

 

大量の手榴弾を生成して投擲する。投げられた手榴弾はパワードスーツの破損部位付近で同時爆破し、爆炎でパワードスーツを包んだ。

 

「……よし、終わったか」

 

パワードスーツは粉々に吹き飛んでいた。大量の部品が散乱し、蓄積した摩擦熱によって半ば溶け出しているものがほとんど。ここまでこっぴどくやれば、物質修復でも直せないようだな...

 

「そんじゃ俺も知事室に...っと、階段使うしかないか」

 

この階まで登ってくるのに使った穴は既に物質修復で塞がれてしまっているため、階段を使って降りるしかなかった。まぁ、知事室のある五階より上に罠を設置しておく意味はあまりないから、そこまで警戒しなくていいはず...

 

「……やっぱ罠無し!このまま突撃...!」

 

折れていた手足ももう治した。最高速度で知事室の前まで走る。

 

「おっ、もういるじゃん...状況は⁉︎」

 

知事室の扉が開いていたので、もう誰か中にいると踏んで飛び込みながら問いかける。

 

「うおっ、ビックリした...壱式は発見しました。ですが、この状態で...」

 

中にいた隊員は俺に気付くと、部屋の隅っこを指差した。そこには、鎧のようなものを着込んでうずくまっている壱式の姿があった。

 

「なっ....情けな⁉︎」

 

「俺がたどり着いた時にそこの窓から逃げようとしていたのを見つけたんで、重力のハウリングを使ってそこに追い込みました。そうしたらああやって閉じこもりまして...」

 

「よく逃さなかったな、ナイス」

 

「今は物質透過を借りている隊員に呼びかけて、向かってもらってる最中です。いずれ来るかと...」

 

「了解だ。それじゃあ、一旦そいつの側から離れろ。どこに機械を隠し持っているかわかったもんじゃないからな。突然の攻撃に注意しろ」

 

「了解...といっても、俺はここまでしか離れられませんが」

 

「そっか、重力の維持のために...そこで構わん。これだけ離れてりゃ、何かあっても俺が守ってやれる」

 

重力操作のハウリングは、近ければ近いほど効力が強くなる性質を持っている。そのため、壱式を押さえつけ続けるにはあまり距離を離すわけにはいかないのだが、この程度の距離ならば俺が守れるから問題ないだろう。

 

「那珂川、現着しました!」

 

「おっ、物質透過持ち?それじゃああとは頼んだわ」

 

「了解、対象はアレですね...仕留めてきます」

 

那珂川と名乗った男は、水を纏える剣を持って知事室の隅の壱式に近づく。もはや、壱式にはなすすべもなかった。

 

重力によって縛られており、壱式は抵抗することもできない。そんな中、振り下ろされる那珂川の剣。物質透過のハウリングによって鎧はすり抜け、中の壱式だけを水を纏った剣は斬り裂いた。

 

「……終わったか。君、重力を解いていいぞ」

 

「了解」

 

「そんで、那珂川って言ったか...壱式の体内に光る何かが見えるはずだ。壱式の鎧を外して、そいつに触れろ。それでハウリングが手に入る」

 

「……やっておいてなんですが、俺で良かったんですかね...」

 

「別にいいさ誰でも。これから二つのハウリング能力者として頑張ってくれればそれでいい。いろんなハウリングを使える今の状況のままが良かったってんならちょっと気の毒だがな」

 

「気の毒だなんてそんな...名誉なことだと思って頑張る所存」

 

そう言いながら那珂川は壱式の鎧を外し、切り裂かれた胸の辺りに手を伸ばした。そして、俺には見えない何かに手を触れて、フッと意識を飛ばす。

 

「よっと...総員、撤退だ。動ける者は県庁入り口に移動して待機。負傷で動けない者はその場で医療班の到着を待て」

 

通信機に呼びかける。おそらく、八代の予知能力によって俺らが壱式を討伐したことはもう知られているだろう。少しすれば葉山と小樽率いる回収部隊がこっちに来て、治癒と自衛隊の拠点への転移をしてくれることだろう。

 

「移動するぞ。コイツは俺が責任持って連れて行く」

 

気絶した那珂川を抱えて階段を降り、一階まで向かう。

 

「……おっ、もう来たのか。葉山ー!」

 

入口付近の階段を降りると葉山の姿が目に入ったので声をかける。

 

「おう仮谷。無事で何よりだ」

 

「コイツが討伐者だ。本部まで先に運んどいてくれ」

 

「わかった。頼んだぞ」

 

葉山は部下に那珂川を託し、転移のハウリングによって拠点まで帰還させた。

 

「いや〜お前のおかげで助かったわ。葉山が栃木の状況を調べてくれたんだろ?」

 

「礼は八代に言え。アイツの予知が無ければ、俺が出向くこともなかったんだからな」

 

八代の予知と葉山の実地調査によって、栃木の壱式が茨城の壱式によって倒されていることがわかった。どちらが欠けていても県庁突入前に発覚することは叶わなかったわけで、事前に分かったことがかなり命運を分けたような気がする。

 

「……にしても、お前と八代、随分と仲が良くなったよな。とても殺しの約束をしているようには思えない協力ぶりだった」

 

「まぁ協力は惜しまないだろうよ。あっちがどう思ってるかは知らないが、俺を殺すのは全ての壱式を倒してからだ。最低でも壱式全滅までは全面的に協力関係は続くだろうさ」

 

「なんだかんだアイツも忘れていそうなものだがな。日田の仇はもうその手で取ってある。既に気が紛れていてもおかしくはない」

 

「はてさて、どうなのやら...墓穴は掘りたくないし俺からは聞かないでおくよ」

 

まぁたしかに、よく八代は俺に協力してくれるよなぁ...ハウリングの間借りとか断ってもおかしくなかったのに。

 

「……そうだ。お前に伝えておかないといけないことがあったんだった」

 

「……なんか、悪いニュースっぽい表情をしているな。なんだ?」

 

「八代の予知によって、ここと同じようなことが他県でも起こっていることがわかった。我々が攻略していない県のいくつかで壱式が死亡していたんだ」

 

「ハウリング能力の集中...か」

 

「今後はさらに激しい戦いになると予想されている。だから、お前の知恵と経験を借りたいとの上からの命令だ」

 

「なるほど、了解した。そんじゃ帰還頼む」

 

「お前は動けるんだから自分で帰れ。貸してやるから」

 

そう言って葉山は俺の背中を軽く叩くと、県庁の中に進んで要救護者を探しに行った。転移のハウリングを貸してくれたから、これで帰れというわけだろう。

 

「しゃーねぇなぁ...帰るとしますか」

 

借りた転移のハウリングを使い、俺は拠点に帰還するのだった。




自分としてはかなり上手いハウリングの合わせ技を見せられたと思っているのですが、如何だったでしょうか...?

次回からは、今回のように複数個のハウリングを持った壱式との戦闘を書いていくつもりです。
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