神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8129字。

長野での戦闘です。
省略した県のハウリングが大量に出てきます。


自然操作の空中弾幕

「よ、ようやく切り抜けられた...」

 

俺は走る車の上に座り込み、ゼェハァと息を切らす。

 

現在位置は長野県の長野市川中島の近く。攻略出来たわけではないが壱式が消えてアンチがいなくなった富山県の県境から南下し、山道を通ってここまで来たのだが、ここまでの道のりはとても困難なものだった。

 

まず、長野県の壱式が持つハウリングは自然操作...植物を操るというものだった。そして、山間部を進むとなれば木々の操作による妨害をそれはもう山のように受ける他なかった。

 

樹の根っこが鞭のようにしなって襲いかかってくるし、太い枝がラリアットをするかのようになぎ払おうとしてくるし、落ちてくる木の葉は形を強く鋭く保って切り裂いてこようとするなど、木々の全てが殺意を持っていた。

 

それらの攻撃を、俺は車の上でハウリングを駆使して全て対処しきった。当然だが幻痛の熱は木々に対しては一切効果がないため、さまざまなハウリングを借り受けて事に臨んだ。

 

群馬で手に入れた、周囲のものを切断する斬撃のハウリングを高崎から借りて鞭のように襲い掛かる樹の根っこを切り落とす。

 

地中から飛び出して車を跳ね飛ばそうとしてくるような根っこは、鳥取の三朝から地面操作のハウリングを借りることで地面を固めてそもそも飛び出せないように対処する。

 

和歌山の物質創造のハウリングを白浜から借りることで創り出した物を、津和野から借りた島根の物体射出のハウリングで飛ばすことで枝を弾き飛ばす。

 

落ちてくる木の葉は、愛知で手に入れた物体の時間を鈍化させるハウリングを蒲郡から借りることで落下速度を遅らせ、延岡の炎のハウリングで残らず焼き尽くすことで処理...

 

などと、多種多様なハウリングを駆使して、なんとか車で山間部を走り抜けることに成功した。何度か防ぎきれずに車に攻撃を浴びせられてしまうこともあったが、それは新見から岡山で手に入れた身代わりのハウリングを使うことで対処した。

 

このハウリングは、本来なら自らに受けるダメージを他者に代わりに受けてもらうものなのだが、今回は車へのダメージを俺に肩代わりさせることで走行不能になることを防いだのだ。受けたダメージは治癒で治し、肩代わりが機能しない小さな車の損傷は物質修復で直し続けるというゴリ押しで、本当になんとか突破した。

 

「おい仮谷!休んでいる暇はないぞ!」

 

窓から顔を出した八代が俺に向かって叫んでくる。

 

「奴らが来るぞ!」

 

「チッ、少しは休ませろよな...!」

 

俺がそう吐き捨てるように言ったその時だった。空を見上げると、そこには空を飛んでいるアンチの姿があった。空を飛べるような動物の姿をした下位個体...ではない。人の形をした上位個体たちが空を飛んでいるのだ。

 

俺らがなぜ、自然操作で襲われることが確定している山間部を車で走り抜けるという方法を取ったのか...ヘリで空から長野に入る手段を取らなかったのか、その答えがこれだ。

 

長野の壱式は二つのハウリングを別の県の壱式を殺して会得していた。一つは、今奴らが飛んでいるのを見れば分かる通り、飛行のハウリングだ。こちらは元々山梨の壱式が持っていたらしい。

 

そして、もう一つ奪ったハウリングってのが...

 

「来やがったな...!」

 

空を飛んでいるアンチどもがこちらに向かって何かを放ってきた。間借りしている障壁のハウリングを発動させて頭上を覆う壁を作り出すと、放たれたそれは障壁に命中して弾けて消えた。

 

アレが、もう一つのハウリング。本来は岐阜の壱式が持っていた、対象を追尾する性能を持つエネルギー弾を放つ力だ。こちらの攻撃が届きにくい空から追尾するエネルギー弾を放ってくるのは非常に厄介だな。

 

この開けた市街地に出るまでは山間部なのもあり木々が鬱蒼としていたため、今やられているような空からの攻撃は一切無かった。こうして街に出たことで自然操作による攻撃はほぼ注意する必要がなくなったが、その代わりにこの攻撃に付き合わなければならなくなった。

 

自然操作がほぼ使えない市街地に入られても戦えるようにするために、長野の壱式はこの二つのハウリングを奪い取ったのだろう。

 

人工物だらけの場所、特に県庁付近では何も出来ない自然操作。空を飛べるだけで攻撃性能がてんでない飛行能力。それらの欠点を穴埋めし、どこでも使える便利な攻撃手段である追尾弾。個別ならそれほど脅威ではないだろう。しかし、三つが合わさることでかなり厄介なアンチが誕生してしまった。

 

「だが、遠いのはこちらにとっても好都合...!」

 

空から降り注ぐ追尾弾に対して、俺は冷静に障壁を貼って対処する。それも、少しずつ障壁の面積を抑えて厚みを重視させてだ。

 

奴らが放っているのは追尾弾。空からそれを放っているわけだが、俺らを追尾して飛んでくる弾はいずれ俺らの真上一点に収束していく。追尾弾であるがために軌道が読みやすく、一点集中の防御で事足りてしまうのだ。

 

もし奴らの飛んでいる高度が低かったなら、この防御方法では防ぎきれなかっただろう。周囲にばら撒いた追尾弾が一点に収束する前に俺らの元に辿り着くため、四方八方からエネルギー弾が飛んでくるような構図になっていたはずだ。しかし、低いなら低いでこちらの攻撃も通りやすくなる。それらを天秤にかけた結果、奴らは攻撃を受けない安全な場所からチクチク攻撃することを選んだのだろう。

 

「でも...そこが安全だって、誰が言った?」

 

これまで自衛隊が奪い取ってきたハウリングの中には、遠距離攻撃を可能とするものがほとんどない。重力のハウリングが遠ければ遠いほど重力の出力が弱まるように、遠くなる程威力が弱まるようなものもあれば、そもそも近距離でしか発動できない斬撃のようなものがほとんどだ。物体射出の力でも、あの高さまで物を飛ばすのは困難だろう。

 

しかし、やりようはいくらでもある。例えば、それが実行可能ならばどんな過程でも消し飛ばせるこの力を使う...とかね。

 

「落ちな」

 

武器生成操作のハウリングで生み出した刀を手にした俺は、鞘からほんの一瞬だけ抜刀し、すぐさま納刀する。その一連の動作によって過程省略のハウリングが発動し、空高く飛んでいたアンチの胴体が一刀両断された。

 

「ッッ...やっぱ消耗激しいな...これ」

 

いくら過程省略のハウリングとはいえ、空を飛べない俺が空を飛んでいるアンチを切れることなんて普通ならあり得ない。省略する過程は実現可能な範囲内である必要がある。

 

そのため、俺はそれを実現可能にした...それはほぼ不可能だと言ってもいい代物だが、理論上可能であれば問題は無し。成功したのだから、可能だと判断されたのだろう。

 

俺は、障壁のハウリングを活用して階段を作り出した。障壁を持っていた福岡の壱式が障壁で道を作り出していたように、飛んでいるアンチの近くまで通じる障壁の階段を車の上から一瞬だけ作り出したのだ。

 

その一瞬だけは、階段を駆け上がることで近づき、刀でアンチを斬るという行為が可能となる。普通ならば途中で迎撃されるなり、空まで駆け上がるまでの間に風に煽られて足を滑らすなどしてしまうだろう。しかし、その過程を省略すれば、俺はこの車の上にいながらアンチの切断という結果を生み出すことができるのだ。

 

だが、もちろん代償はある。過程省略のハウリングは、省略した行為による体力の消耗を無視しない。省略完了後に、本来起こるはずだった体力の消耗が一気に来ることになる。作り出した障壁の階段を全速力で登り、アンチを斬り裂くという消耗を俺は一瞬で受けたわけだ。この消耗度合い...そう何度もできる手法ではないな。

 

「攻撃すんのもいいがちゃんと守れよ!車やられたら全員死ぬんだからな!」

 

「んなことわかってるよつーかやっぱこの作戦頭狂ってるって!」

 

そりゃこの方法だとせいぜい守り切れるのは車一台くらいが限度だけども、だからといってハウリング能力者を十何人も詰め込んで運ばせるか⁉︎八代が言うとおり、もし車に攻撃喰らって爆発でもしたら十数ものハウリングが一瞬で長野の壱式に奪われるんだぞ⁉︎思い切りが良すぎるとかそういうレベルじゃねぇよ!

 

転移は大人数で長距離の移動をすることができないからこの方法を取るしかないってのは分かってるけども、そもそも守るのが俺一人ってのもおかしいんだって...!

 

「ほら次来るぞ!」

 

「チッ、次から次へと...!」

 

国道19号線を走って長野県庁に向かっていると、四方からアンチが空を飛んで少し離れた距離を並走してきた。先ほどの過程省略の斬撃によって、どれだけ離れていても攻撃を喰らうとアンチも学習したのだろう。どうせ喰らうのであれば、近いも遠いも関係なし。となれば、全方位から追尾弾を撃ち込んで攻撃に専念した方が良いと判断したのかもしれない。

 

「この距離なら...!」

 

武器生成操作のハウリングで爆弾を生み出す。それを物体射出のハウリングでアンチに向かって打ち出し、起爆して飛んでいるアンチを追尾弾を放つ前に撃ち落とす。この距離じゃまだ静岡の爆発のハウリングは使えないが、二つの組み合わせで爆撃は可能だ。

 

「遅い!」

 

流石に全部のアンチを追尾弾を放つ前に撃ち落とすことは出来なかったが、追尾弾の速度は俺が乗っている車の速度よりも少し速い程度。少しすれば追いつかれるが、逆に言えばその程度であり、防御は容易い。

 

左からくる追尾弾は障壁の広範囲展開で防ぎ、進行方向を塞いでしまうため同じ方法が取れない前方からくる弾は、時間鈍化でその動きを遅らせながら幻痛の熱による軌道変更で車の進路から逸らして追い越し、後ろから追尾してきたところを障壁の展開で受け止める。

 

そして、アンチの攻撃の合間を縫うようにして爆弾の生成と射出を行い、既に倒した右側のように左や前方のアンチを仕留めていく。

 

「曲がるぞ!振り落とされんなよ!!」

 

「ちょっ、もうそこ⁉︎ぶっ飛ばしすぎだろ!!」

 

ここまでずっと道なりに進んできたが、この先の交差点で左に九十度カーブする必要がある。そこを曲がれば、あとは19号線を真っ直ぐ進んですぐ長野県庁に辿り着けるのだが...もう数分はかかると思ってたぞどんだけ速度出してんだこの車!

 

「よっとくっ付け!」

 

俺は車の屋根の上で屈み、膝と手を屋根につける。そして相馬が持っている、福島で手に入れた物をくっつける接着のハウリングを発動させることで屋根に膝と手をくっ付けて急カーブに備える。

 

「ぉっ、Gが...」

 

車はほとんど速度を落とさずにドリフトをして交差点を曲がり切ってしまった。俺が屋根に乗っていることなんてお構いなしに全速力で走らせてやがる...怖すぎ。

 

「……くっ付けてても吹っ飛ぶかと思ったぜ...」

 

そう呟きながら俺は膝と手の接着を解き、すっくと立ち上がる。こうやって立ち上がっても車から落ちないのは、この接着のハウリングをずっと前から使って靴を屋根に引っ付けていたからだ。山間部を走り抜ける時からずっと引っ付けていた。過程省略の攻撃をするときには一瞬解除する必要があったが、その時は振り落とされないか内心めちゃくちゃ怯えていた。この車速度ヤベェし、一瞬で落ちててもおかしくなかったよな...何気にここまで無事なのは奇跡な気がする。

 

「けど、ここまで来ればあとはもう突っ込むだけ!こんまま突っ込めー!」

 

どんどん加速していく車に恐怖を抱きながらも俺は突撃を命じる。アンチの持っているハウリングは、自然操作と飛行と追尾弾。自然操作は建物内ではほぼ意味をなさず、飛行も屋内では無意味もいいところ。攻撃に使えるのは追尾弾くらいだが、屋内戦ではただの直進するエネルギー弾と何ら変わりない。

 

つまり、このまま近づいて県庁内に入ってしまえば、ほとんどのハウリングが無意味なものになる。奴らのハウリングが活きるのは、俺らが県庁に近づくまでの間のみだ。このまま最高速度で県庁に突撃すれば、そのまま流れに乗って討伐することも容易いわけだ。

 

「入るぞ!衝撃に備えろ!!」

 

車は急ブレーキで減速しながら交差点を左折し、すぐさま右折して長野県庁の敷地内に入る。そのまま議会棟の横を通り抜け、入口の目の前に車は停まる。

 

「アンチは俺が仕留める!!」

 

接着のハウリングでなんとか車にしがみついていた俺は、くっついていた手足を車から離して、炎や爆発のハウリングを使うことで周囲のアンチを一掃していく。

 

「雑魚一掃!降りていいぞ!」

 

俺の声を皮切りとして、車に乗り込んでいたハウリング能力者たちがゾロゾロと降りてくる。

 

「中津、頼んだぞ」

 

「了解だ」

 

中津が障壁のハウリングを発動し、長野県庁を丸ごと覆い尽くす障壁を展開する。突入中に、飛行のハウリングで壱式に逃げられることを防ぐための処置だ。

 

「突入だ。予知通り、短期決戦で行くぞ」

 

すでに八代は壱式を仕留める未来を予知で見ている。その未来がきちんと成就するように、俺らは行動するのみだ。

 

「……っ、やっぱ塞がれてるわな」

 

長野県庁の知事室は三階に位置している。それも、入口近くの階段を登ってすぐのところだ。だから最短距離で突入しようと思っていたのだが...階段は巨大な木の根っこのようなもので塞がれていた。木の根っこには荊のようなものも巻き付いており、俺たちの侵入を阻もうとしていた。

 

「回り道をしている暇はない。彦根、高崎、延岡、頼んだ」

 

「了解!」

 

呼ばれた三人が前に出る。高崎は切断のハウリングで木の根っこと荊を切断し、延岡が炎で燃やし尽くしていく。

 

しかし、いくらハウリングといえども水分を含んでいる木の根を即座に燃やし尽くすのは困難だ。そこで、彦根の持つハウリングが役に立つ。

 

彼の持つハウリングは、乾燥の能力。滋賀県の壱式を倒したことで手に入れたハウリングであり、その力はなんと琵琶湖を枯らし尽くしてしまうほどの強さを持っている...はちゃめちゃだな。もちろん、一瞬で琵琶湖ほどの水量を枯らすことは出来ないが、時間をかければ可能であるこのハウリングならば、木の根から水分を奪うことくらい造作もなかった。

 

木の根から水分を奪ったことで、延岡の炎がより効力を増していき行手を阻む木の根を燃やして灰に変えていく。

 

「乾燥のハウリング...普通に考えてヤベェよなぁ...」

 

もしも、俺らがここまでの量のハウリングを手に入れる前に乾燥のハウリング持ちが全国で活動していたとしたら、俺らがここまで辿り着くまでもっと時間がかかっていたことだろう。乾燥によってアンチに効く一番の武器である水が封じられてしまうからな。

 

実際にそうならなかったのは、転移の壱式をいち早く潰すことができたからなのか、それとも乾燥の壱式が任された土地である滋賀県の巨大水源琵琶湖を枯らすことに集中していたからなのか...理由は何にせよ、俺らは幸運だったと言わざるを得ないだろうな。

 

「除去完了!上がるぞ!」

 

行手を阻む木の根の除去が完了したため、俺らは階段を登って知事室のある三階まで駆けあがろうとする。

 

「チッ、出やがったなアンチ...!」

 

二階に上がったところで上位個体が数体現れた。上位個体は外敵したその直後にこちらに向かって何かを投げてくる。

 

「飛翔物警戒!!」

 

門川は銃器を複数個作り出し、上位個体を撃ち抜きながら叫んだ。

 

その次の瞬間、飛んできたものから植物の蔓のようなものが伸び出して俺らの身体を絡め取ろうとしてくる。

 

「投げたのは種か...!」

 

中津の障壁が間に合い、蔓がこちらに届くことはなかった。蔓はしばらく障壁を覆い尽くすようにして伸びていったが、やがてその動きを止めて枯れ落ちていった。

 

「枯らしておいたぞ」

 

「ナイスだ彦根」

 

蔓が動きを止めたのは、おそらく門川に撃ち抜かれた上位個体が命を落としたから。そうして動かなくなった蔓を彦根が枯らして朽ちさせたわけだが、乾燥のハウリングはかなり自然操作のハウリングと相性がいいな...

 

奴らは種を強制成長させて市街地や建物の中でも植物を操ることができるという新たな手札を見せたわけだが、植物ならば水分を奪うことで枯らすことができる。流石に枯れた植物を操作し続けることは難しいだろう。自然操作で俺らを傷つけることは、おおよそ不可能なはずだ。

 

「彦根、乾燥のハウリングを出来るだけ常時発動しておいてくれ。そうすりゃ自然操作は防げる。こちらの水の蒸発は気にせずやっちまえ」

 

乾燥のハウリングは任意発動で物体から水分を奪うことのほかに、常時発動で周囲の水分を枯らすことも可能だ。こちらは無差別な乾燥であるため俺らの持つ水分を蒸発させてしまって手数が減るという欠点があるものの、いつどこから襲ってくるかわからない植物の対策が出来るならばやらない手はない。罠みたいに植物の種を仕込んでおいて、遠隔で強制成長させるってことも考えられるからな。負けの芽は全て摘んでおくに限る。

 

「了解」

 

彦根が無差別乾燥を発動させたことで、周囲の湿気が全て消えて空気がカラッとする。そして、心なしか肌の水分も奪われているような...乾燥して肌荒れを起こしてしまう前に、さっさとやることを済ませてしまおう。

 

「先へ進むぞ」

 

中津が障壁を解除したら、枯れた蔓を引きちぎって階段を登る。

 

「後方から追尾弾警戒!」

 

殿を務めていた八代が叫んだ。

 

「俺らは先に進むぞ対処は任せた!」

 

追尾弾程度ならば中津が処理してくれるはずだ。全体がその場に立ち止まる必要はないので、先頭の俺らはさっさと先に進む。

 

「ッ、即鎮圧するぞ!」

 

三階にもアンチが待ち構えていた。アンチらは全員植物の種を投げつけてくる。

 

しかし、植物の種は発芽して茎や蔓を伸ばすことなく枯れ落ちた。彦根の乾燥領域に入ったからだ。

 

それを見た俺は、彦根を引っ張りながら階段から即座に飛び出してアンチたちに近づく。アンチらが自分の足元にも植物の種を蒔いているのが見えていたからだ。成長してアンチを守る盾を作られる前に近づき、全て枯らし尽くしてしまう。

 

「ハッ、させるかよ!」

 

アンチは枯れていく植物を見て、攻撃手段を変えようとしてきた。こちらに手を向け、追尾弾を放とうとしてくる。

 

すぐさま俺は志摩の持つ重複動作のハウリングを発動させる。三重の壱式が持っていたハウリングであり、対象に直前に行なっていた動作を強制させる力だ。それによって、アンチたちは追尾弾を放つのではなく植物の種を蒔く動きを強制される。

 

「隙だらけだ!!」

 

行動抑制とは別ベクトルの行動阻害能力。それによって生じた隙を俺がみすみす見逃すわけもなく、武器生成操作で生み出した刀でアンチらを一刀両断にしていく。

 

「掃討完了!」

 

「知事室に乗り込むぞ!」

 

三階のアンチの殲滅が終わり、障害は全て排除完了した。寄り道せず知事室に乗り込むとしよう。

 

「オラァッ観念しな壱式ィ!」

 

静岡の爆発のハウリングを持つ掛川が知事室の扉を破壊し、中に一斉に乗り込む。

 

「っ、いない...?」

 

「窓が開いているな。外か」

 

門川が窓の外を覗き込む。俺も続いて覗き込むと、そこには外へと一目散に飛んで逃げようとしている壱式の姿があった。

 

「あだっ⁉︎」

 

しかし、逃げられない。県庁突入前に中津が貼っていた障壁に阻まれ、壱式は頭をぶつける。

 

「仕留めるのは任せるぞ」

 

そう門川は言うと、武器生成操作のハウリングで謎の武器を作り出してそれを壱式に撃ち込んだ。

 

放たれたのは電気...?のようで、撃ち抜かれた壱式はビクンと体を震わせて意識を失い、落下を始めた。

 

「っと、その前に回収が必要か」

 

「行ってくるっす!」

 

そう言って飛び出したのは萱島だった。全身に雷を纏った萱島は窓から飛び出すと、地面に向かって落ちていく壱式を空中でキャッチし、県庁を覆うように展開されている障壁を蹴って真っ直ぐこの場所まで戻ってきた。

 

「成長したな、萱島」

 

「そりゃあれだけしごかれたらこれくらい出来るようになるっすよ...」

 

「そんじゃっ、予定通り頼むぞ三次」

 

「了解です」

 

三次が持っていた剣で萱島が抱えている壱式にトドメを刺す。

 

三つのハウリングが三次に移り、意識を失う。

 

こうして長野での戦闘は終了し、岩手攻略のピースが揃った。

 

いよいよ、岩手を攻略する時が来た...!




実は、未攻略の都道府県ってもう残り10なんですよね...結構色々すっ飛ばしてきていました。
その結果が、今回の大量ハウリング公開です。
出来るだけ省略した県のハウリングがどんなものなのか描写するつもりですが、わざわざ覚える必要はないです...
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