神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8188字。

今回は千葉県です。


天候操作の銃弾豪雨

現状、未攻略の都道府県は、埼玉県、千葉県、神奈川県、そして東京都の一都三県。そして、埼玉県の壱式は千葉県の壱式によって既に殺害されており、同様に神奈川県の壱式は東京都の壱式によって殺されていた。

 

よって、実質的に残るのは千葉と東京の二つだけである。

 

そんな中、俺たちはまず千葉県の攻略に向かった。東京都を最後の大トリに回したかったからとかでは断じてない。単純に東京都が壱式のハウリングによって攻略困難な魔境になっていたことと、千葉が持っているハウリングがヤバすぎて先に攻略すべきだと判断されたからだった。

 

そのハウリングというのが...

 

「ほんと、完全に忘れてたぜ...こんなところにいたんだな、天候操作」

 

アンチの天敵である水。それをもたらす雨を、各都道府県に必ず一人はいた天候操作の弐式が天候を快晴に固定することで封じていた。そんな弐式の生みの親がどこにいるのかずっとわかっていなかったが、この千葉にいることがようやく分かったのだ。

 

「奴を倒すことができれば、俺たちは天候操作のハウリングを...雨をもたらす力を手に入れられる。そうなれば、地上をアンチから取り返せる...!」

 

雨を降らせることができれば、アンチは屋外での行動が完全に封じられる。屋外は俺ら人間の領域となり、次なる東京都攻略がとても容易となるわけだ。このハウリングがあれば、他の県の攻略がめちゃくちゃ簡単だったのになぁ...まぁ、そうなることがわかっていたから、一番攻略が遅れるであろう東京都周辺に天候操作の壱式を配置したんだろうな。

 

「奪っていった埼玉のハウリングもテレパス。直接攻撃できるようなハウリングじゃない。順当にいけば俺らの勝利は確実だろう」

 

「万が一は俺が潰してやる。だから安心して突入しな」

 

そう言って隣を歩いていた八代が俺の背中を叩いた。

 

八代は以前よりもさらに強くなっている。というのも、新潟の壱式にトドメを刺したのが八代だからだ。思考共有、空間拡張、物体反射、幻影...どれも能動的な攻撃性能はほとんど持たないものの、防御や撹乱に長けたハウリングたちだ。予知と物質透過を持っている八代がそれらを手に入れることで、八代は無敵のサポーターとなった。

 

特に、予知のハウリングの結果を思考共有によって直で伝えることができるのが何よりの強化だった。前線に出て様々なハウリングで場をかき乱し、それによって変化した未来を即座に伝えることが出来るようになり、万が一の事故が起こりにくくなったわけだ。

 

「頼んだぞ、八代...っと、よっす延岡に古宇利」

 

目についたので前にいた延岡と古宇利に声をかける。

 

「おお、仮谷か」

 

「ついにここまで来たな、参謀」

 

「そのセリフ、最後の東京に残しておけよ...」

 

「いいだろ別に今言っても。俺らの戦いは沖縄から始まった。そんな俺らが、今や首都圏にまでたどり着いたんだぜ?まだ終わりじゃねぇけど、長い道のりなことには変わりないんだからさ」

 

「それはそうだが...」

 

「確かに、俺たち三人、沖縄から始まったんだよな。まさかここまで来るなんて、あの時は思ってもみなかったよ」

 

「そりゃ二人は本来、九州奪還の時点で抜けようとしてたからな。ハウリングを手に入れて当初の歯車は狂っちまったが...」

 

「ここまで色々あったよなぁ...ハウリングを手に入れて、日本を北へ南へと何度も行き来して、いろんな県を巡って...」

 

「……って、やめだやめ!なんか湿っぽい!過去なんて振り返ってたら死亡フラグ過ぎんだろ不吉!」

 

古宇利はそう言うと、無理矢理この空気を断ち切って話題を変えようとした。

 

「つーかさ、ここまでアンチが一匹もいないの不気味すぎるだろ!罠なんじゃねぇの⁉︎」

 

そう、こうやって俺らは呑気に話をしているが、今は千葉県庁へ進行している真っ只中である。そして、千葉県に入ってからここまで、一切アンチと遭遇していなかった。

 

「さぁな。だが、少なくとも罠ではないはずだ。もし罠だとしたら、八代の予知に引っ掛かっているはずだからな」

 

県庁に近づいたら、周囲に控えていたアンチたちが後方や側方からも同時に現れて一気に攻撃を喰らう...といった可能性は八代の予知によって否定されている。罠の心配は必要ない...はずだ。

 

「単純に県庁に全戦力を集めているんだろ。奴らのハウリングじゃ攻撃なんてできないし、頭数集めて補おうとしてんだろうよ」

 

「天候操作で攻撃してくる可能性は?」

 

「天候操作でできる攻撃って、暴風か大雨か旱による乾燥か雷くらいだろ?風はまぁ、暴風のハウリングが無いから直接打ち消すことはできないが、物質固定で対処できるだろう。大雨はアンチは使わない。雷は厄介だが、上空に障壁を貼っておけば対処は可能だ。旱だけ面倒だが...せいぜい水が干からびる程度だろう。そこまで深刻なことは起こらないはずだ。流石に乾燥のハウリングよりかは出力も低いだろうしな」

 

「そう、か...まぁ仮谷が言うのならそうなんだろうな」

 

「ハウリングは脅威にはならない。それでもアンチらが抵抗する気ってことは、何か別の策があるんだろう。それにさえ注意すれば問題ないはずだ...っと、そういうことか...!」

 

県庁の近くにたどり着いたその瞬間だった。俺の脳内に情報が叩き込まれる。八代が予知で見た未来を俺に思考共有で伝えてきたのだ。

 

「中津!!」

 

中津の名前を叫んだ瞬間、俺らの周囲を覆うように障壁が貼られた。おそらく、八代は中津にも思考共有で危険を伝えていたのだろう。

 

そのおかげで、突如として放たれた大量の銃弾は障壁に阻まれた。

 

「ハッ、純粋な武装と来たか。まぁ、それが一番楽だし現実的だよな」

 

アンチらは皆銃で武装をしていた。防弾チョッキのようなものも付けており、完全に銃撃戦を想定した装備をして周囲の建物から銃撃を仕掛けてきたのだ。武器生成操作の壱式が残していた武器だろう。

 

「一旦体勢を整えろ!遮蔽物を作れ!」

 

物質創造のハウリングや地面操作のハウリングを使えば、遮蔽物を作ることは容易だ。建物や前方の道路からの射線を遮り、障壁に頼らない防御を確立していく、

 

「武器生成操作のハウリングがこっちにある以上、銃撃戦はこちらに分がある!奴らのリロードのタイミングまで耐え忍び、カウンターを決めろ!」

 

あちらには弾切れがあるが、こちらには門川がいるため永遠と銃火器を生成することができる。こと銃撃戦で負けることはおおよそないだろう。そもそも、飛んできた銃弾を逸らすことも可能だからな。最初の奇襲が失敗した今、奴らに勝ちの目はない。

 

「それが出来ずとも時間稼ぎだけでいい。対処は俺と仮谷でやる。すべきことは分かってんな?」

 

「もちろん。さっさと殲滅する...!」

 

俺と八代は二人で遮蔽物の影から飛び出した。貼られていた障壁はもう解除しているため、銃弾の雨が俺らを襲う...が、どれもすり抜けて地面に穴を開けるだけだ。

 

八代の持つ物質透過のハウリングによって、銃弾をすり抜けているのだ。仲間全員を物質透過状態にするのは不可能なため、俺と八代の最低限の人員でこの事態の解決をする必要があるわけだ。

 

「俺はこっちを...!」

 

八代は縦移動が難しいため前方のアンチの対処に向かった。よって、俺は建物の方に雷身体強化のハウリングで強化した跳躍力を使い飛び込むことになる。

 

「よっ...!さーて、お前ら。どうしてくれようか?」

 

物質透過でそのまま壁をすり抜けた俺は、銃を持っているアンチをそのまま蹴り飛ばして建物の中に入った。まぁ、蹴りはほぼ偶然みたいなものだがな...すり抜けた先にちょうどアンチが居ただけで、生命体の透過は出来ないからそのままぶつかった感じだ。そのおかげで速度を落とすことができたから結果オーライだがな。

 

そうしてまずアンチを一人仕留めた俺は、窓のすぐそばに立っているアンチに目をやる。俺の侵入に気がついたアンチらは、間髪入れずに銃弾を放ってきた。

 

しかし、無駄だ。物質透過の前ではただの銃弾は意味をなさない。透過できないのは生命体と水のみ...全てすり抜けていく。

 

「……そんじゃっ、楽しく同士討ちと行こうか」

 

俺は門川の武器生成操作のハウリングを起動した。アンチの持つ銃を強制的に操り銃口を窓の外に向けさせて、道路を挟んで反対側の建物から銃撃を浴びせているアンチ目掛けて引き金を引かせる。

 

放たれた銃弾は全てアンチの防具の隙間を縫うようにして顔面や喉などの急所を撃ち抜いていく。銃弾の操作もハウリングがあればお手の物だ。幻痛の熱の増幅熱消費も合わせれば、狙った箇所に狙った軌道で弾を当てることなど容易だった。

 

「次はお前らだ」

 

反対側の建物のアンチの殲滅を終えると、今度は自らを撃ち抜くように銃を操り、頭を撃ち抜かせてこちら側の建物のアンチも仕留めていく。物質透過を駆使して上下の階に移動して、全ての階にいるアンチを掃討する。

 

「カウンターの機会なんて無かったな...八代の方はどうだ?」

 

窓から顔を出して、前のアンチに向かっていった八代の方を見る。俺は武器生成操作のハウリングでアンチの銃を操るために近づいたが、アイツはどう対処する...?

 

「……なるほど、そう来たか」

 

八代がある程度の距離まで近づくと、アンチたちは急に同士討ちをし始めた。おそらく、幻影のハウリングによって互いの姿が人間であるように見せられているのだろう。奴らは人間を殺しているつもりだが、実際には味方を撃ち殺しているわけだ。

 

「……お?」

 

しかし、その流れは長くは続かなかった。数人が死んだ段階でアンチらは銃撃を止めたのだ。

 

「なるほど、テレパスか」

 

テレパスによる情報共有によって、幻影を見せられていることを看破したのだろう。言語化する必要はあるが、より正確に状況を伝えられるからテレパスはこういう時に役に立つな...なるほど、だからああして軍隊的な統率を取れているのか。一斉攻撃のタイミングがやけに合っていたが、テレパスで常に会話ができるならそれも可能だろう。集団戦だと重宝しそうなハウリングだ。

 

「加勢してやるか...って、その必要はなさそうだな」

 

情報共有によってアンチたちの銃口は等しく八代の方に向けられた。そして銃弾が放たれるが...その瞬間に、アンチたちの位置がずれた。デタラメに空間を拡張することで各々の位置関係をずらしたのだろう。それにより、放たれた銃弾は比較的前の方にいたアンチたちに全弾命中していく。

 

位置を次々にずらすことでアンチをどんどん仕留めていく八代だったが、この方法では最後尾のアンチは倒すことはできない。ならば、どうするか...八代の持つハウリングを考えれば答えは一目瞭然だ。

 

放たれた銃弾が八代に向かって飛んでいく。銃弾は一瞬で八代の元に届き、今度はすり抜けずに命中...そして、運動方向が反転してまっすぐアンチの元に跳ね返り、アンチの身体を貫いた。

 

「っと...お疲れー」

 

壁をすり抜けて地上に降り立った俺は、駆け足で戻ってくる八代に声をかける。

 

「いっ...」

 

「い?」

 

「イッテェ!!めっちゃ擦れた痛い!!」

 

「あー...まぁ、しゃーない」

 

八代は物体反射のハウリングを使ってアンチを返り討ちにしたわけだが、物体反射のハウリングは触れた物体の運動方向を反転する、というものだ。一度触れる必要があるし、触れた際に伝わるエネルギーを反射することはできないため、そこそこのダメージはそのまま喰らってしまうのだ。銃弾で貫かれることはないけど、回転する銃弾に触れるわけだからそりゃ痛いわな。

 

「しゃーないじゃない早く治せ!」

 

「へいへい、わかりましたよ」

 

小樽の治癒のハウリングを使って八代の受けた小さな擦過傷を治す。

 

「今の即撃退で何か未来が変わったりしてないか?」

 

「……いいや、変わりはない。依然として、壱式を倒す未来は見えていない」

 

「チッ...そうか」

 

今回の戦闘、実は八代の予知で壱式を倒す未来を見る前に実行に移されている。普段は倒す未来が見えてから...つまり、倒せる可能性があることがわかってから行動に移していた。それを今回しなかったのは...

 

「まだ、自殺の未来は変えられていない...か」

 

壱式を倒す未来が見えないことの理由が、壱式が自殺することによって俺らの手で殺すことが出来なくなってしまうからだと予想されているからだ。流石に、これだけのハウリングを持ち合わせた戦力差があれば、壱式を取り逃したり敗北したりすることは考えにくいしな。

 

天候操作のハウリングが俺らの手に渡れば雨を降らされることなんて、アンチらも分かりきっていることだろう。そのため、壱式は必ず自殺によってハウリングの奪取を防ぐような立ち回りをするはずだ。それを防ぐ方法を、俺と八代は県庁への進軍や戦闘中に様々な行動を取ることによって見つけようとしているのだが、現状うまくいっていない。

 

「このまま俺らが上手く勝ち進みすぎると、奴はすぐにでも諦めるだろうな...」

 

別に、壱式はすぐにでも死ぬことは可能だろう。それをしないのは、少しでも俺らの人数を減らしてから死ぬためだ。もし運良くハウリング能力者を殺すことができれば、ハウリングを奪って戦況の打開をすることも一応可能ではあるため、出来る限り引き伸ばそうとするだろう。

 

だが、それが無理だと悟ればすぐ死ぬはずだ。いかにして奴にまだ勝てると思わせるか...それが問題だった。

 

「うまく幻影を使って、奴らに有利な状況であると誤解させられれば良いんだけど...」

 

「テレパスによる情報共有がある以上、僅かな違和感から矛盾に気付かれる可能性が高いな」

 

「だよなぁ...ひとまず、進むしかないか。歩きながら考えよう」

 

とは言ってももう県庁はすぐ近くだからあまり考える時間はないんだよなぁ...けど、ここでずっと立ち止まっているわけにもいかないので、皆に前進の指示を出して先に進む。

 

「……この先、県庁から銃による襲撃有り。壁を作って陣形を即座に整えるぞ」

 

このまま真っ直ぐ進めば羽衣橋があり、それを渡って都川の上を通ったすぐそこに千葉県庁はある。そして、県庁の窓から先ほど同様に銃撃が飛んでくることが八代の予知で分かった。

 

物質創造と地面操作を操る白浜と三朝が橋の上に銃撃を防ぐ壁を作り出していき、中津が障壁を貼っている間にそこに滑り込んでいく。

 

「今度は流石に俺らだけで潰すのは無理...ここで撃ち合うしか無さそうだな」

 

ハウリングによる遠距離攻撃も含めて、ここでしばらくドンパチやる必要がありそうだな...

 

「よし...来やがれ...!」

 

アンチが県庁の窓から身を乗り出し、銃口を向けてきた...

 

その次の瞬間だった。

 

「……なっ...⁉︎」

 

急に意識が消えたかのようにアンチはその手から銃をこぼれ落とし、数体はそのまま窓から倒れ込んで外に落ちていった。

 

「なん、で...まさか死んで...⁉︎八代!」

 

「まだそうだと決まったわけでは...くっ、予知じゃ正確なことがわからない...!」

 

「クソッ、もう自殺しちまったのか...⁉︎」

 

アンチたちの不審な行動...死んだとしか思えない。壱式が自殺したことによって、壱式から生まれたアンチが全て一斉に死を迎えたのだ。

 

「だが、なぜ今...?」

 

「どう考えても銃を乱射してからの方が良いはずだ...せめて弾を使い切ってからでも良いはずなのに、なぜ攻撃前に諦めた...?」

 

そこが違和感だった。八代も同じことを疑問に思っていたようで、二人して首を傾げる。

 

壱式が死んだように見せかけるために、アイツらに死んだような演技をさせたという可能性もある...が、それをするなら窓の外に落ちさせる必要はあるか?信憑性を増すためだとしても、銃を扱える上位個体を使い潰す理由としては薄いように思える。

 

「……罠の可能性も高いが、確かめてみる他ないな。突入するぞ」

 

「念のため確認を...よし、進もう」

 

八代が壁の裏から出てみるも、銃弾が飛んでくることはなかったため先に進む。

 

「……全員死んでるな」

 

県庁入り口に辿り着き、中に入ると動かないアンチが何体もバタリと倒れていた。古宇利が倒れているアンチを足で小突き、死んでいることを確認する。

 

「ひとまず、知事室に向かおう。死んでる壱式を確認しなけりゃまだ安心できん」

 

知事室があるのは確か六階だったはずだ。階段を登って六階まで、念の為のクリアリングもしていきながら登っていく。

 

「ここまで等しく死んでるな...」

 

「マジで死んだってことかよ...」

 

「そうなる可能性が高かったとはいえ、まさかここまで早くやるとは...」

 

死んでいるアンチは皆、一切の傷を負っていなかった。それは、持っていた銃で自らを撃ち抜いて死んだのではなく、壱式の死亡による死であることを証拠付けている。毒物による死という線も、同行している小樽の猛毒操作による調査によってその可能性は否定されている。もう、確定だな。

 

「ここだ...入るぞ」

 

知事室の扉を開ける。

 

「っ...やっぱりか」

 

部屋の中心で、頭から血を流したアンチが倒れていた。おそらく、あれが壱式なのだろう。僅かな身体変化もなく完全に人間の姿をとっているから、弐式ではないはずだ。

 

「……ちゃんと死んでるぞ。偽装しているわけではない」

 

小樽が死亡確認を取る。

 

「拳銃自殺のようだが...肝心の銃はどこだ?近くには見当たらないぞ」

 

「……なに?」

 

頭についた傷から銃によって死亡したことは確定。しかし、銃が落ちていない。なぜ...?

 

「探してみる」

 

小樽がその疑問を出したため、古宇利が張り切って銃を探し出そうとし始めた。

 

……その時だった。

 

「「ッ⁉︎」」

 

俺の頭に情報が叩き込まれる。八代の予知が思考共有によって俺にも流れ込んできたのだ。

 

見えたその光景は、古宇利が知事の机の裏側に回り込んだ瞬間に、頭を撃ち抜かれる未来...!

 

「古宇利!!」

 

俺は叫びながら雷身体強化のハウリングを発動させ、一瞬で古宇利を追い越した。古宇利を後ろに突き飛ばし、位置を入れ替える。

 

机の裏には、生きている人型のアンチ...!

 

「くオラァッ!」

 

放たれた銃弾を、俺は正確に見切って掴み取った。

 

「壱式...⁉︎」

 

俺は即座に机を蹴飛ばしてそのアンチの姿を晒した。その目に映るアンチから感じ取れる雰囲気は、まさしく壱式のそれだった。

 

そして、カラクリを理解した。壱式は一度殺されている。おそらく、弐式辺りに自らを殺させたのだろう。それによって、殺した弐式にハウリングと壱式の資格が移る。そして、元々の壱式から生まれていたアンチは、新たな壱式以外死亡する...!これにより、壱式は既に死んでこの世にいないというふうに誤認させたのだ。

 

新たな壱式は、そのままやり過ごすか、不意打ちで誰かを殺してハウリングを奪うかという二択を迫られ、そして後者を選んだのだろう。壱式の死体を見た俺らは警戒心を少し緩めてしまっていた。八代の予知が無ければ、古宇利は...!

 

「クソッ...!」

 

新たな壱式を殺そうと、知事室内の隊員全員が動き出す。それを見た壱式は、天候操作のハウリングを発動させて雹と暴風を知事室内に生み出し、俺らを近づかせまいと抵抗する。

 

そして、窓から身を投げ出して外に落ちていった。

 

「っ、誰か撃ち抜け!」

 

このままでは壱式は落下して地面と衝突し死亡する。そうなれば、ハウリングは手に入らない。だが、それよりも前に銃で撃ち抜くことができれば、ハウリングを手に入れられる可能性が出てくる...!

 

「俺が...!」

 

延岡が飛び出し、窓から真下へ銃を向けた。そして、落ちていく壱式に正確に照準を合わせ、撃ち抜いた。

 

「よし、これで!」

 

これでハウリングを手に入れられる。

 

誰しもがそう思った瞬間だった。

 

「な...雨⁉︎」

 

突如としてスコールかのような大雨が降り出した。とても自然現象とは思えないその大雨...どう考えても、壱式の天候操作によるものだった。

 

「あぁ...クソッ!やられた!」

 

降り出した大雨によって、壱式の身体は溶け出した。それによって、落下死よりも先に全身融解によって壱式は死亡する。

 

「……光は、見えるか?」

 

一縷の望みにかけて延岡に聞いてみる。

 

「……いいや、見えない」

 

天候操作によって降り出した大雨が壱式の死亡によって一瞬で降り止む。

 

空は快晴。しかし、俺らの気分は曇ったままだった。




天候操作のハウリングの存在を覚えていた人はどれだけいたんですかね...?

残るは東京都のみ...お楽しみに!
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