神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8113字。

ついに東京編です。


生命創造の集団戦

「東京は魔境...たしかにその通りだな」

 

銃を乱射して敵を撃ち倒しながら俺は呟く。

 

東京都攻略作戦が始まってから、二日が経とうとしていた。船で竹芝の港に停泊し、陸路を歩いて新宿の東京都庁に向かっていたのだが、とてつもない敵の猛攻によりなかなか前進することができていなかった。普通に歩けば二、三時間もあれば着くところを、休憩も挟みながら進んでようやく明治神宮の辺りまで辿り着いたところだ。まだもう少しかかる。

 

「流石にここまで手こずるとは思ってなかったがな...」

 

そう言いながら延岡はハウリングで炎を撒き散らし、敵を燃やし尽くす。敵は火を消そうと地面を転がるも、ハウリングで生み出された炎はなかなか消えることはない。環境のせいで弱まってはいるものの、十分殺傷能力はあるためそのまま死に絶えていく。

 

「予報だとあと数時間...それまでに都庁にたどり着くぞ!!」

 

俺はこの場にいるみんなに聞こえるように叫んだ。

 

あと数時間...というのは、今降り続いている雨が止むまでの時間だ。

 

天候操作の壱式が死んだことにより、快晴に保たれていた天気は全て元に戻った。自殺されたため天候操作のハウリングを奪うことは叶わなかったが、長い間ずっと天候を快晴に固定されていた反動なのか、数日前から長雨が降り続いていた。雨が降っていれば、アンチは外で行動できない。そのため俺らは、雨が止んでアンチがまた外で活動できるようになる前に、都庁に乗り込む必要があるのだ。

 

ところで、だ。雨が降っているのならば、アンチは外に出ることができない。それが真だとすれば、今戦っている敵とは何なのだろうか?

 

答えは、動物。近所の動物園から脱走してきた...というわけではなく、東京都の壱式がハウリングで生み出した動物だ。

 

壱式の持つハウリングは、生命創造。ありとあらゆる動物を生み出し使役する力だ。自然操作とのバッティングの影響なのか、木々などの植物を生み出したり操作することはできないようだが、陸上動物、水生動物、鳥類に昆虫などと、動物ならば何でも生み出してくる。

 

日本に野生で存在しない動物も作り放題だ。これまでにも何度か、象だったりライオンだったりと、サバンナかよと言いたくなるような動物たちに襲われたし、水牛に突進されたり鷹に襲われたりもした。

 

猛毒を持つサソリや蜂に襲われたこともあったか...小樽の猛毒と治癒のハウリングによってことなきを得たが、そういったサイズの小さい危険動物も生み出せるため常に危険と隣り合わせだった。

 

そして、一番ヤバかったのは...

 

「っ...!また来るぞ!!」

 

予知で奴の接近に気付いた八代から思考共有を受けたので、皆に警戒を促す。

 

ビルの影から姿を現したのは...T-レックス。ティラノサウルスだった。生命創造のハウリングは、こうして絶滅したはずの生き物すら生み出せるのだ...!

 

「門川!!」

 

「わかっている...!」

 

門川は武器生成操作のハウリングを起動し、ライフル銃を生み出してそれらを近づいてくるティラノサウルスに向ける。そして、一斉にトリガーを引いて銃弾を放つ。

 

放たれた弾丸は、.577Tyrannosaurと呼ばれる、ティラノサウルスと戦うことをコンセプトとして作られた規格外のライフル弾だ。現実で起こり得るはずのなかった実戦...その結果は、貫通。胴体で止まることなく弾丸は貫通して、その巨体に幾つもの穴を開ける。

 

ティラノサウルスは身体の制御を手放し、そのまま前に倒れ込んだ。勢いが残っているため、転がりながら俺らの元に雪崩れ込もうとしてくる。

 

そこに貼られる、西条の罠。転がってくるティラノサウルスは罠に触れ、全身を細切れに切断される。死亡、そして身体の大幅な破損により、ティラノサウルスは粒子状に散って姿を消す。生命創造のハウリングで生み出された動物は、ああやって大きく破損すると消え去るのだ。

 

「はぁ...もう恐竜は勘弁だぞ...!」

 

「残念、プテラが来たぞ!」

 

「確かに恐竜じゃねぇけどお呼びじゃねぇ!!」

 

空から飛来してきた翼竜たちを銃の乱射で撃ち落とす。

 

「クソッ、空もこんな調子かよ...」

 

空は鳥類と翼竜のテリトリーと化している。時折降りてきて攻撃を仕掛けてくるため、たまに気にしてやらないといけないのが面倒だった。

 

「アイツらは平気なのか...?」

 

『現状は問題ない』

 

通信機から八代の声が聞こえてくる。

 

『空間拡張で接近を拒むことが出来ているからな。俺らのことは気にせずに進め。こっからもナビはしてやる』

 

八代は今、葉山と三次と共に空で行動をしている。空から戦況を俯瞰することで手に入る情報と、予知による情報をそれぞれ適切な相手に思考共有で送りつけるなり通信機で呼びかけることで、全体のサポートをしているのだ。

 

俺らは一つにまとまって動いているのではない。それぞれ戦力が同程度になるように分割され、多方向から都庁へ向かっている。こうして奴らの迎撃を分散させることで、一つ一つの突破確率を上げているのだ。そうやって別れて行動しているからこそ、八代たちのサポートが必須であった。

 

三次のハウリングによって空を飛び、追尾弾によってある程度の襲撃を防ぐ。危なくなれば空間拡張や幻影のハウリングを八代が使うことで攻撃を凌ぎ、それでもなおヤバければ葉山の転移で緊急離脱が可能...と、かなり盤石な体制で八代たちは動いている。それでも、ここまで翼竜が飛び回っていると厳しそうに思えるが...今のところは大丈夫らしいな。

 

『俺らのことよりも、自分のことを気にしな。そろそろ、奴のもう一つのハウリングの適用圏内だ』

 

「っ、そろそろか...」

 

東京都の壱式が持つハウリングは一つだけではない。神奈川の壱式から奪ったハウリングがある。

 

そのハウリングは、物体操作。物を遠隔で操るテレキネシスの力だ。機械操作と地面操作のハウリングが他にあるため、それらを操ることは出来ないようだがそれでも操れるものは多岐にわたるだろう。

 

ここまでは距離が離れていたため使ってくることはなかったが、これからは物体操作による攻撃も警戒する必要がある。生物非生物問わず、全てに警戒する必要がある...暴風と空間圧縮を兼ね備えた岩手と同じレベルで厄介だな。

 

「あとは北に向かうだけだ。行くぞ!」

 

俺らの部隊は明治神宮の北側を横切って代々木の方まで来ていた。ここから大通りに沿って北に進めば、東京都庁が見えてくるはずだ。

 

移動を始めれば、物体操作による攻撃も始まるだろう。しかし、ここで怖気付いていても何も起こらない。なんなら永遠と動物を送り込まれてジリ貧になるだけ。まだ体力が残っているうちに、全力で攻めるのみ...!

 

「ぜ、前方からマンモスが!!」

 

「えぇい古代生物ばっか出しやがって...!」

 

北上を始めると、マンモスが交差点を曲がって現れてきた。そして俺らの方をまっすぐ向くと、とてつもない速度でこちらに向かって走ってくる。その傍らには小型の狼のような動物が何体もおり、同じようにこちらに向かってくる。

 

「現代のマンモス狩りと行こうじゃねぇの!皆は犬っころを狙え!」

 

雷身体強化のハウリングを発動させ、門川の武器生成操作で生み出した槍を構えながら地を蹴り高速移動、マンモスの真横のビルに飛び移り、壁を蹴って道路を挟んだ反対側のビルに向かって跳びながら槍を投擲する。

 

槍はザシュッ!!とマンモスの胴体に突き刺さり、悲痛な叫び声を上げる。それを見た俺はビルの壁を走りながら再度槍を生み出し、今度は脚に何本も投擲して身動きを封じる。

 

そうしている最中、隊員たちの持つ小銃が狼たちを撃ち殺し、一匹残らず殲滅していく。銃が撃ち終わるまで上を飛び回っていたが、もう降りても問題なさそうだな。

 

「さーてトドメだ!」

 

槍ではなく今度は剣を生み出す。俺はマンモスの真上へと飛び出し、脚を上に向ける。そして空中に障壁を貼り、それを強化された脚力で蹴り飛ばすことで急降下し力任せに剣を振り回す。

 

分厚い皮で覆われたマンモスも、この攻撃にはなすすべもなく切断され、その命を落とす。

 

「いっちょ上がりっと。さっ、進むぞ!」

 

足を止めている暇はない。マンモスの討伐に成功した俺たちは急いで北上し都庁に駆け足で向かう...

 

「っ、んなっ⁉︎」

 

ビルの屋上に設置されていたであろう巨大看板が俺たちめがけて落下してきた。

 

「あっ、ぶねぇ...!」

 

なんとか障壁の発動が間に合い、事なきを得る。今のが物体操作による攻撃か...!

 

俺らの部隊は俺がいるため人数をかなり絞られている。ハウリング能力者は延岡、門川、西条のみだ。防御系のハウリングは西条だけだし、西条のも敵の迎撃用であるため物体操作による質量攻撃の防御には向かない。

 

他の一般隊員はそれぞれ誰かしらからハウリングを借りてはいるものの、咄嗟に防御として発動させられるほど使いこなせている者は少ないだろう。実質的に、防御は俺に全て比重がかかっているわけだ。いくら俺がいるからって、もう少し人数回してくれても良かったんじゃねぇかなと思ってしまうな...

 

『上だ来てるぞ!首都高!!』

 

そんなことを考えていたら、通信機から八代の声が聞こえてきた。咄嗟に上を見ると、虎のような動物がこちらに向かって飛びかかる寸前だった。

 

「クソッ、お前らも上から来んのか...!」

 

紙一重のところで銃での防御が間に合い、虎は銃にガブリと噛み付いた。俺は即座に銃ごと虎を放り投げ、すぐさま次なる銃を生み出して撃ち殺す。

 

「お前ら平気か⁉︎」

 

「なん...とか!」

 

「処理完了だ」

 

アンチの下位個体は皆何かしらの動物の形を成していたため、それらとの戦闘によって動物との戦闘経験を知らず知らずのうちに会得していたのだろう。全員、動物たちの処理が恐ろしく早い。

 

「にしても、まさか首都高から飛び降りてくるとはな...」

 

この通りを通ると、すぐ上に常に首都高速4号新宿線が走っている状態が続く。このまま上からの奇襲に遭い続けるのは御免だな...

 

「っと、いいこと思いついた。みんな、上に移動するぞ」

 

爆弾を生み出した俺はそれを首都高の柱に向かって投擲し、爆発させて柱を破壊した。土台を失ったため道路の一部が崩れ落ち、坂のようになる。

 

「登るぞ。上なら俺らを襲う障害も少なくなる」

 

「なるほど、了解」

 

坂道となった道路を登り、首都高にの上にたどり着く。

 

「みんな登ったな?そんじゃ直すぞ」

 

そうして物質修復のハウリングを発動させ、破壊した首都高を元の形に修復する。これによって、下の道路にいる動物は俺らみたいに坂道を登って首都高に登ることはできなくなった。首都高の入り口まで移動し、ここまで走ってくる必要があるが、それをするにはそこそこ時間がかかるためかなりの攻撃を防げるはずだ。

 

ついでに、先ほどのように建物の上から何かを落とすといった攻撃もしづらくなるだろう。横に物を飛ばしてくることはしてくるかもしれないが、そうなれば物体操作のハウリングによる移動のみしかエネルギーを加えられないため、落下とは違い威力も速度も格段に落ちるはず。対処するのも簡単というわけだ。

 

よって、あと気をつければいいのは元から首都高に配置されていた動物だけ...!

 

「来たぞ!迎撃しろ!」

 

こちらに向かって動物らが走ってくる。それらに向かって隊員たちは銃弾を叩き込み、またある者はハウリングを使って動物を首都高から叩き落とすことで処理していく。そっか、そういう処理法もアリなのか...賢いな。

 

「死体残らないの楽だな...通りやすくて助かる」

 

迫ってきた動物の全処理が完了したので、俺らの攻撃による首都高の破壊を物質修復で直して通りやすくしてから移動を再開する。

 

「ここ登られることを想定されてないからか動物少ないな...もうここまで来れた」

 

新宿料金所を超えて、一般道へとつながる道へと進む。このまままっすぐ進めば都庁の真下に着くはずだ。

 

「っと、見えてきたな...!」

 

聳え立つ東京都庁が視界に入る。あそこに最後の壱式が...

 

と、その時だった。俺の並外れた動体視力によって、空を覆う雨雲を貫いて都庁に向かって落ちるソレが目に入った。

 

都庁を狙って放たれたミサイルだ。雨が降っているこの状況ならば、壱式をどうにかして都庁の外に引き摺り出すことができればそれで全てを終わらせることができる。どうせ最後の壱式であり、ハウリングを奪うことにこだわる必要がないからこそ取れる選択肢。それが、ミサイルによる都庁破壊作戦だ。

 

俺らがある程度の距離にまで近づいたのを視認した八代たちが、本部に実行に移すように連絡したのだろう。この攻撃によって終わればそれで良し。もし仕留められずとも、それに対処するに当たって俺らへの注意は少なからず逸れることだろう。どちらに転んでも得だ。

 

そもそも、俺らがこうして都庁に近づいていて、壱式はそれの迎撃に集中している最中のミサイル奇襲だ。何もしていない時に突然奇襲するよりも成功確率は高いだろう。これで大きく戦況が動く。

 

……そのはずだった。

 

「ハッ、マジか」

 

降ってきたミサイルは都庁に着弾する直前に爆散した。

 

武器生成操作として別にハウリングが存在しているため、物体操作では武器であるミサイルを操ることはできない。よって、何か別のものを操ってミサイルにぶつけたか、生み出した動物を衝突させて迎撃したかのどちらかだろう。

 

「つーか、どうやってミサイルの接近に気付いたんだよ...まさか、上位個体みたく動物の五感も共有できるのか?」

 

壱式は上位個体である弐式と参式の見聞きした内容を知ることができる。もしそれと同じようなことが生み出した動物からもできるのであれば、上空に飛ばした鳥類が飛んできたミサイルを視認して接近に気付くことも出来るだろう。

 

……うん、そうだろうな。でなけりゃ、ここまで的確に俺らに向けて動物を差し向けることもできないからな。偵察用の小さな動物で俺らを常に監視し、攻撃力の高い動物を迎撃に向かわせる...そうやって俺らを攻撃しているのだろう。

 

「……なんにせよ、ミサイル奇襲は失敗か。動物五感共有があるのなら俺らの行動は壱式に筒抜けだし、今後もミサイルが飛んでくるかもしれないという懸念を抱かせることには期待できない...」

 

一度起こったことなら二度目もあるかもしれない。そう思わせることでいつどこから飛んでくるかもわからないミサイル攻撃に警戒させて注意を逸らしたかったのだが、ミサイルの接近の有無は動物の目で知ることができる。そうなると見えたら対応すればいいだけになり、無用な警戒はしなくなる。こちらのやりたかったことがどんどん潰されていくな...

 

「仕方ない。このまま進むぞ」

 

前方からやってくる動物を撃ち殺しながら一般道に続く坂を下っていく。作戦が一つ潰されたが、別にゴリ押しで突入することだって出来る。さっさと都庁真下まで進み、陣形を組んで突入の準備を進めなければ。

 

「……っ、揺れてる...⁉︎」

 

銃の反動による揺れとは別の、今俺らが立っている道路全体の揺れを感じ取った。地震っぽくはない。断続的に、ドスン、ドスン!と揺れている。

 

「まさか、柱を...!」

 

俺は道路の端まで移動し、身を乗り出して下を見る。するとそこには、巨大な猪のような動物が額から血を流しながら何度も首都高の柱に頭突きを繰り返していた。

 

「させるかよ!」

 

俺は物質修復のハウリングを発動させて破損した柱を修復し、すぐさま猪に銃を乱射してその命を奪う。

 

「クソッ、そりゃこういうこともあるわな...急いで降りるぞ!」

 

首都高に登れば下からは攻撃されないだろうとたかを括っていたが、俺がやったように柱を崩してくる可能性を考えていなかった。もう一度同じようなことをされる前に、急いで一般道まで全員で降りる。

 

『仮谷!橋の真上にマンモス出現!落下してくるぞ!』

 

「ッ、マジかよ...!みんな走れ!!」

 

一般道に入ってすぐの真上には角筈橋という橋があった。八代からの連絡によれば、その真上にマンモスが出現して落下してきているらしい。マンモスの重さがどんだけあるかは知らんが、おそらく数十トンはあるだろう。落下の勢いも合わせれば、橋が崩落する可能性は高い。

 

受け止め切れるかわからないが念のため障壁を真上に展開し、全速力で駆け抜けて橋の下から抜ける。

 

「うおっ、エグっ!」

 

全員橋の下を抜けられたのでよし安心だと後ろを振り向くと、降ってきたマンモスが橋を破壊、そして周囲に瓦礫をものすごい速度でぶちまけてきた。慌てながらも障壁を展開し、なんとかすんでのところで瓦礫の防御に成功する。

 

「物体操作でも攻撃してきたか...つーか、この距離になると遠隔で動物の生成もしてくるのか...」

 

マンモスを運ぶのは重量的に困難だろうから、おそらく落下させるために橋の真上でマンモスを生み出したはずだ。直接目の前に動物を生み出して襲わせるといった行動はこれまで一度もしてこなかったが、おそらく距離的な問題でしてこなかっただけなのだろう。

 

だが、ただ距離が遠かっただけならば、今それをやってこないことに疑問が生じる。おそらく、遠隔での生命創造には時間がかかるだとか、どこかしらに欠陥が生じて戦力にはあまりならないといった欠点があるのだろう。多分前者だ。でなけりゃ今頃、無限湧きする動物に押し潰されているだろうからな。

 

「ひとまず階段登れ!足滑らすなよ!」

 

動物の遠隔創造はされたらもうどうしようもないため、ひとまずそれの対処よりも俺らの作戦を優先する。公園通りを走り、水の橋の手前にある階段を登ることで、東京都庁と東京都庁第二本庁舎のちょうど間の広場にたどり着く。ここに突入のための拠点を作るのだ。

 

「一掃するぞ!」

 

広場には獰猛な肉食獣たちが待ち構えていた。それらに向かって一斉に銃を乱射し、接近される前に排除していく。いくら肉食獣だろうと、銃で撃たれれば死ぬ。既に絶滅した動物も生み出せるとはいえ、創造対象は実在した動物のみ。キメラのような超生物や、現実離れしたような力を持つ生物を生み出すことは決してないのが幸いだな。

 

もし壱式の望んだ通りの性能を持つ動物を生み出せていたならば、ハウリングがあっても俺らなんかあっという間に蹴散らされていたことだろう。それこそ、ハウリング能力を持った動物を生み出されてたりしてたら面倒だったな...

 

「撃ち漏らしはないな⁉︎」

 

「ああ、下にもいない」

 

広場にはもう動物はいない。この広場の下を通っているふれあい通りも見下ろしてみるが、見当たる範囲にはいなさそうだな...それはそれで不気味ではあるが、見つけられないものは仕方がない。ひとまず居ないものとして、準備を進めていこう。

 

「こちら仮谷。所定の位置に到着。周囲の索敵と拠点建設を並行して進める」

 

『了解。ちょうどそこに古宇利の部隊が向かっている。北東方面だ、援護に向かってやれ』

 

「りょーかい、向かうわ」

 

北東から仄かに冷気を感じる。その方向に向かって走り出し、雷身体強化で助走をつけて一気に跳ぶ。

 

「みっけ!」

 

古宇利の部隊を見つけた俺は、そのまま近くのビルの屋上に着地してゆっくり速度を落とすと、そのまま飛び出してビルの壁を蹴り、ザザッと古宇利のすぐ近くに降り立つ。

 

「よっす古宇利!応援に来たぜ」

 

「参謀⁉︎びっくりした...来てくれて感謝だが、参謀の出番は無いぞ!」

 

古宇利は迫り来る動物たちに的確に冷気を当てていく。氷点下を余裕で下回る温度に動物たちは耐え切れるわけもなく、一匹、また一匹と倒れて動かなくなる。この極低温に耐え切れる動物は、元々の東京の環境では暑すぎて耐えられないため出てくることはない。古宇利の操る冷気のハウリングは、壱式の持つ生命創造のハウリングに対する完全なカウンターだ。

 

「マジで出番ないじゃん...動物は任せた。代わりに物質操作での攻撃は俺が弾いてやるこのまま都庁に向かうぞ」

 

「了解!防御は任せるぜ参謀!」

 

東京都庁にたどり着くのは通過点に過ぎない。

 

最後の壱式との戦い...都道府県を治める長との最後の戦いが、もうすぐ始まる、




ついに次回、最後の壱式との戦闘です。
どんな戦いが待ち受けているのか...次回をお楽しみに!
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