なんか戦闘描写が下手になってる...?
「……魔族どこだ...?」
草木の中から村の様子を伺う。村の中ではやることはほとんどないため、大人たちは少しの家事を済ませたら談笑して暇を潰し、子供はもう遊び尽くしたのか新たな遊びを創造して遊んでいるようだ。この人たちがここに来てどれくらい経つのかは知らないが、やることがないってのはそれなりに辛そうだな。
そんなことを考えながら村の人のことを見ていたのだが、ここから見える範囲内には魔族はいないな。はたしてどこにいるのやら...
「魔族を見つけたら、お前の弓矢で真っ先に撃ち抜いてくれ。できるな?」
「……ああ。任せてくれ」
「本当に頼むぞ。今更怖気付くとか無しだからな」
物陰を移動して、さっきまでの位置からでは見えなかった場所を見に行く。
そこには、少し大人びた雰囲気を纏う少女がいた。俺の目には、魔族だと見えた。
「あいつだ。あの家に寄りかかってあくびをかいてるあの女を撃ち抜け」
「……違う」
「違わない」
「……だって、ハル姉が魔族なわけ...!」
「……あいつと仲が良かったようだが、関係ない。奴は魔族で、お前と仲良くしてたのは本当の魔族だと気付かれないようにするためだろうよ」
「だっておかしい!ハル姉は僕と同じスイレイから来たんだ!あんたに言った、どこから来たのかわからない時々いなくなる人とは違う!」
「ふぅん...なら、そいつはただ怪しかっただけで魔族じゃなかったんじゃね?とりあえず、ここにいる魔族はただ一人で、あいつが魔族だということに間違いはない」
「……僕に、ハル姉を撃てって言うのか...!」
「ああそうだ。俺さっき言ったよな?怖気付くな。それにお前も言っただろ?こんなところに追いやられる羽目になった原因がいるんだっていうなら、そいつは僕の手でぶちのめす...だったか。有言実行してみせろよ」
「でも...あんなのどこから見たって人と変わらないじゃないか...!」
「ああそうだが?魔族と人間に見た目の違いはほぼない。だが、本質は大きく違う。あれは間違いなく人類の敵で、この世界にあってはならない存在だ。姿形が人に似ているからって見逃してたら、あっという間に滅ぼされるぞ」
「……そもそも、お前が嘘をついている可能性だって...」
「俺は、お前をこの銃で撃ち抜いて無理矢理言うことを聞かせることもできるんだ。それをしないのはお前の自由意志を尊重しているのと、別にお前がいなくても俺一人で殺すだけだからだ。お前がそんなにやりたくないっていうならそこで見ているといい。だが、背後から俺を撃ち抜くことだけはやめてくれよ」
「……っ、わかったよ。撃てばいいんだろ...!」
少年は弓矢を虚空から生み出した。そして魔族に向けて弓を構える。
「僕の弓矢は痛みを与えるだけ...殺すわけじゃない怪我させるわけじゃない僕が傷つけるわけじゃ...」
目を瞑りぶつぶつと呟いて自己暗示による現実逃避をする少年は、その実しっかりと魔族へと狙いを定めており...
矢が放たれた。
「あぐっ...⁉︎」
魔族の肩に矢が刺さり、魔族は声を漏らして顔を苦痛に歪ませていた。
それを見た俺は一瞬で物陰から飛び出して魔族に近づく。さっきまでいた位置からでは誤射の危険があったから、確実に銃弾を叩き込める距離まで走りながら拳銃をその手に生み出す。
……射程距離内に入った。魔族の頭に銃口を向け、動揺している間に一瞬でその命を絶つ...!
「あんたが...」
キャハハッ!と笑いながら魔族がこっちを向いた。肩には少年の矢が深々と刺さっていて、激痛が走っているはずなのにそれを意にも介さずこちらを向いて笑っていた。それを見て一瞬ギョッとしてしまうが、構わず俺は引き金を引いた。
「あんたがあいつらを殺った襲撃者なんだね!」
放たれた銃弾が、まるで何百回にもわたって斬られたかのように一瞬でバラバラになった。バラバラになっても慣性は残っているが、形が崩れたのと斬られた時に加えられた力のせいでバラバラに飛び散ってしまう。結果として、いくつかの破片が魔族の皮膚を数カ所掠めただけだった。
「こいつマジかよ...!」
「話には聞いてたけどまさかここまで来てくれるだなんて!やーっと退屈しないオモチャが来てくれた!アハハッ!!」
魔族はもう最高に嬉しいといった様子で笑いながら、肩に刺さった矢を引き抜いた。その光景と、先程の拳銃の発砲音で異変と身の危険を感じたのであろう、近くにいた人たちが逃げ出して俺らから距離を取った。
「私で5人目だよねぇ?キリがいいねぇ私を殺せたらの話だけど!!」
狂気に満ちた顔でこちらに向かって魔族が走ってきた。俺は急いで後ろに向かって跳び、銃口を魔族に向けながら引き金を引いて牽制する。
だが、放たれた弾丸はどれも空中で切り刻まれて消え去ってしまう。それどころか俺の持っていた拳銃までもが切り裂かれてしまった。俺が握っていたグリップ部分まで綺麗に粉々だ。能力によるものだと見て間違い無いだろう。
「あれれもうお終い?ツマンナイよ!」
「そうかなら面白くしてやんよ!」
後ろに跳んでいるだけの俺より、ちゃんと走っている魔族の方が移動速度は速い。だからこそ、奴は小回りが利かない。俺の顔に向けて伸ばされた手を、後ろにわざと倒れ込むような形で回避し、そのまま前傾姿勢になっている魔族の腹に足をつける。そして地面に背中をつけ、一気に足に力を入れて上へと魔族を押し上げ、そのまま魔族の進行方向へと蹴り飛ばす。手を使わないでやった巴投げみたいな感じで攻撃を回避しながら投げ飛ばしたのだ。
「テメェの遠隔斬撃は無機物にしか使えない!」
奴は銃弾や拳銃を切り裂いて粉々にしたけれど、俺の身体を直接傷つけるようなことはしなかった。射程外の可能性はない。となれば、生物相手には使えないと見るのが自然だろう。けどその制限も、直接触れることで解除されるとみた。だからさっきは手で触れずに足で蹴って投げ飛ばしたのだ。
「触れさえしなきゃ怖くねぇなァ!」
「妄想するのはいいけどぉ...」
ザンッと何かが切られたような音がした。そして、ミシミシと何かが軋むような音も聞こえた。
「そこ突っ立ってていいのかなー?」
「こいつ家を...!」
魔族は近くにあった家の壁を切り裂き、倒壊に俺を巻き込もうとしていた。左右から同時に来ているため、前後に避けるしかないが前は魔族が塞いでいて、後ろだと遠くて間に合わない。
「それなら!」
魔力銃を生み出してワイヤーガンモードに切り替え、近くにあった木に向かってワイヤーを...
「さーせない♡」
魔族がそう言うと、魔力銃が粉々に切り裂かれてしまった。それなりに距離はあったはずなのに粉々にできるだなんて...って言ってる場合じゃない建物が...!
一縷の望みにかけて俺は前へと...魔族が待ち構えている方へと走り出す。建物の倒壊を回避するには最短距離だし、うまく魔族に触れずに横をすり抜けられる可能性があるからこれでいいはず...!
「おーいで!粉々にしてあげる...!」
魔族が両手を広げて俺を待っている。左右どっちに避けるか...いや、答えは下だ。スライディングで足元をすり抜ける!
「いややーめた。やっぱ潰れちゃえ」
視界の端で、建物がまた切断された。それによって倒壊の向きが変わり、このまま走っても巻き込まれてしまうと直感でわかってしまった。魔族も巻き添えを喰らうだろ...と思ったが、魔族は自分に降りかかる瓦礫だけ能力で切断して消し飛ばしてしまえばいいのだから、被害を被るのは俺だけだ。
こうなったらもう逃げずに耐えるしかない。幸い倒壊の向きが変わったことで、今減速すれば薄い屋根板が俺に降り掛かるだけですむ。このまま走るよりも何倍もマシだ。急いで急停止を...
と思って行動しようとしたその時だった。グサグサグサッ...と魔族の身体に矢が何本か刺さった。そして、何が起こったのかわからず思考を回そうとしていたら上から声が聞こえた。
「掴んで!!」
俺は咄嗟に上に手を伸ばした。その手ががっしりと握り込まれ、俺は上へと連れ去られる。
「ナイスゥ!少年!!」
空を飛べる少年が俺を引っ張り、建物の倒壊から助けてくれた。そのまましばらく飛行し、建物から離れたところに降りる。
「ハントって呼べ!分かりづらい!」
「おうハント!ようやく決心がついたみたいだな!」
少年...もといハントは、さっきまであの魔族と戦うことを拒んでいた。なんとか一回は矢を撃たせたけど、そこからはずっと傍観していた。
けれど、ハントは自ら動いて俺を助けてくれた。それも、魔族に何本も矢を撃ち込んでからだ。俺を助けるだけなら攻撃は必要なかっただろう。あの魔族と戦う決心がついた証だ。
「あの狂気に満ちた笑いを聞いて百年の恋でも冷めたか?」
「そもそも恋してないし...!けど、あんな人だとは思ってなかった。本当に魔族なんだな...」
「あれー?ハントくんそっちについちゃうんだーそいつ四人殺した人殺しだぞー?」
「俺は魔族しか殺してねぇぜ。殺すのはこれからも魔族だけだ」
拳銃を生み出し、魔族に向けて撃つ。
「無駄むーだぁ♡いくらやっても私は殺せないよぉ」
放たれた弾丸は全て切り裂かれ弾け飛ぶ。やっぱ普通の銃弾じゃ無理か...ってかホントなんで銃弾を見切って切り刻めるんだよ亜音速だぞ?
「手伝えハント。お前の矢は切り落とせないようだからな」
「わかった...空から援護する」
ハントは空を飛び、弓を構えて魔族に矢を放つ。
「あらら、もう信用もしてくれないのかぁ...」
魔族は自分に刺さった矢を抜きながら、飛んでくる矢をひょいと避けた。やっぱりハントの矢は切り落とさないんだな。おそらくは能力の対象外なんだろう。生物を切り刻めないのと同じだ。
「じゃあハントも殺しちゃおっかぁ♡」
「どうやってだ?お前の力じゃ無理だ...ろ!」
魔力銃を生み出して魔族に向けて引き金を引く。
「およ?」
ザンッと魔力銃は切断されてしまったが、ただ一発だけ放たれた火球はそのまま魔族に向けて飛んでいった。
「やっぱマルチだったんだぁ」
ひらりと火球を避けながら魔族は言う。
「じゃあ第三の目付けてこの村に隔離しないとダメだねぇ...止まってた方がいいよぉ暴れちゃったら勢い余って殺しちゃうから♡まぁそれでも楽しけりゃ良いけどねぇ」
ニッコリと笑いながら魔族は言う...笑顔ってほんと怖いよな。笑うという行為は本来攻撃的で...っていうのを思い出す。よくこんな嗜虐的な笑いができるな怖えよ。
「殺せるもんなら殺してみろよ」
「いいよぉ♡」
「……え?」
首筋に痛みが走った。触ると指にヌメっとした何かがつく...血じゃん。あの距離から攻撃された...?
「遠距離攻撃も出来んのかよ...」
魔力銃を作って首に回復の魔法弾を撃ち、傷を治す。傷自体は浅かったけど出血はしているからすぐに治す必要があった。首からの出血はまずいしな...急いでやれば銃を作ってから切断されるまでに二、三発撃てたため、それで傷を完全に治すことに成功する。
「実は私もマルチなんだぁ♡」
「……嘘だな。今の攻撃、さっきまでの斬撃とまるっきり同じ能力によるものだ」
「へぇ...わかるんだ」
「似たようなこと前に俺もしてたしな...ようは鎌鼬だろ」
空気を切り裂き真空を生み出し、鎌鼬の魔法の要領で俺の皮膚を切り裂いたのだ。これなら生命に対して斬撃を浴びせられないという条件を無視した攻撃が可能だ。まぁ、今までのは全部舐めプで、普通に生物に対しても能力を使えますよとかだとどうしようもないんだがな。
「ありゃりゃーバレちったかぁ...けど、マルチなのは本当だよっ!」
「っ⁉︎」
魔族の姿が消えた。まさかハントと同じ透明化の力...?いや、後ろか!
俺の背後に誰かがいるような気配がした。そして、ハントが空から俺の方に向けて矢を向けていたのが見えた。いや、正確には俺の背後にいる魔族に向けているのだろう。そうやって俺は後ろに魔族がいるのだろうと当たりをつけ、前へと跳びながら体を捻り、魔力銃を魔族に向けた。
「よく反応できるねぇ。けど...」
急いで照準を合わせようとする俺の手を、軽く魔族が叩く。
「これでもう治らない」
魔族が触れたのは、俺の手首の辺りだった。そこがザックリと切り裂かれ、大量の血が溢れ出す。
「チッ...!」
もう片方の手で魔力銃を作り回復弾を手首の傷に撃ち込む...が、一瞬治りはするものの火花のようなものが走ってすぐにまた傷が開いてしまう。ハントに刻まれた第三の目と同じ...治らない傷か!
「あっ、やっばーい♡間違って第三の目じゃなくてザックリいっちゃったー♡」
「わざとらしい...テメェを殺してさっさと治させてもらうぞ」
「できたら良いねぇ?」
「できるさ。お前の能力、流石にこれ以上はないだろ?」
生物以外を切り刻む斬撃に、触れただけで癒えない傷をつける能力、そして短距離の転移...俺に致命傷を与えうる攻撃は触れないと発動できない癒えない斬撃だけだ。奴に触れられさえしなければ問題はない。
「なら、本気を出せばそれで済む」
魔力銃を生み出し、魔族ではなく自身に向けて放つ。これで自らを強化すれば魔族の攻撃を避けることは容易い...あっ、やべ。
「クッソ壊されるの面倒いな...!」
魔力銃は消したら発動中の魔法も消え去る。当然それは魔力銃が壊れた場合も同じわけで...バフをかけるのはムリだなこりゃ。
「あれれ?もしかしてもうずっと本気出してた?何も変わらないじゃーん」
魔族はさっきからハントが放つ矢の回避に専念していた。けど、俺に向けてこうやって話しかけていられるくらいには余裕たっぷりだ。このまま回避し続けて俺が手首の出血で失血死するのを待つつもりだろう。もちろん、俺も甘い動きを見せたら即座に触れてきてもっと大きな傷をつけに来るだろうけどな。
「こうなったら裏技を...舐めてもらっちゃ困るぜ!」
とにかく魔力銃を生み出して魔法弾を魔族に向けて撃っていく。気づかれることはないだろうが、万が一にも準備していることを気づかれないように魔法弾の回避に集中させるためだ。
「どうやら魔法弾は切れねぇみたいだな!」
おそらく、生物とこの世に存在していないものは切れない...ってところなのだろう。ハントの矢は幻覚の痛みを与えるもの。物質としては存在していないものだ。そして、魔法弾もこの世には存在しない魔力で作られたものだ。この世に存在していないという点で一致している。だから切れない...そういう認識のもと、作戦を立てていく。
「別にぃ切れなくてもいいんだよねーそっち切ればいいだけだし」
そう言いながら魔族は魔法弾を避けながら斬撃を放ち、魔力銃を切断していく。
「……あと、ハントぉそろそろウザいよ♪落ちろ」
「んぐっ...!」
空気の切断による擬似的な鎌鼬がハントを襲い、痛みに悶えながら墜落していく...が、落ちながらも最後の一発が魔族に向けて放たれた。ハントの執念の一発が魔族を襲い...
「あ゛っ...⁉︎」
いつのまにか俺の目の前に矢が転移していて、俺の眉間を矢が貫いた。鋭い痛みに脳が焼かれ、一瞬意識が飛びそうになる。だが、脳はこれを偽りの痛みだとハッキリ認識しており、逆に覚醒を促した。結果として、気絶したいぐらいの痛みに襲われながら気を失うことも許されない、かえって嫌な状況に陥ってしまう。
「物も...転移できんのか...!」
地面に倒れ込んだ俺は、眉間に刺さった矢を引き抜きながら体を起こし、魔族の方を見ながら吐き捨てるように言った。
「……あー、そういうこと♡」
一瞬キョトンとしていた魔族だったが、ニッコリと嗜虐心と狂気に満ちた笑顔をこちらに見せてくる。
「まぁ教えてあげる義理はないよねぇ...なーんか、もっと強いのかと思ってたけど、力で作った武器?が強かっただけかぁざんねーん♡...もっと楽しませろよザコがよ!」
魔族は俺の脇腹に蹴りを叩き込んだ。その瞬間、ズバッと皮膚が裂けて血が噴き出す。
「正体バレしちゃったのにこれじゃ割に合わないだろうが!もっと、もっともっともっと!私を楽しませろよ!!」
心なしか、蹴りと同時に刻まれる斬撃の威力が弱いように感じる。威力が落ちてる...とかじゃなく、長くいたぶるためにわざと威力を落としているのだろう。まぁ、もう一つ理由はあるのだが...この様子だと、思ったよりもダメージが出ていないことに気づいていないようだ。
「……はぁーつまんね。なーんか何もかもめんどくさくなっちった...ってわけで殺すね♪ばいび〜」
魔族が俺の喉を掴んできた。能力が発動すれば、俺の喉が一瞬で斬り飛ばされて死ぬだろうな。
「……あ、れ?」
まぁ、「発動すれば」なんて俺が考えてる時点で、発動しないって言ってるようなもんだけどな。
魔族は苦しみながら俺の首から手を離し、よろよろと後ろに後退りするとそのまま尻餅をついて座り込んだ。俺は触られた首に手をやって息を吐きながら立ち上がる。
「俺、弾だけ作るってことも出来るんだわ...たとえそれが魔力だとしてもな」
魔力弾がある以上、魔力も弾丸として扱われる。手元で作り出された魔力はそのまま俺の身体の中に入り、貯蔵される。魔族に触れられた瞬間流し込んでやったのだ。この世界の奴らには拒絶反応を起こし、能力を使えなくさせられる魔力をな。
「魔力を集めれば身を守る鎧にもなる。自身の身体能力もある程度強化できる。そして...魔力銃が無くてもこうやって撃つこともできる」
魔力を指先に集め、魔族に向けて射出する。どうやら魔力が存在していないこの世界では空気減衰も早いようだが、人力で放たれた魔力弾は形を保ったまま魔族に命中しその身体の中に入り込む。
「あ゛...っ!!」
「苦しいだろ?痛ぶってくれた礼だ」
体内に溜め込んだ魔力を固めて剣の形にする...俺、銃を作り出す能力を持ってるんだよな?今更だがなんでこうもバグ技みたいなことしかしてないんだ俺?もっとちゃんとした銃を作れよ鉛玉をぶちこめよなんで魔力銃ばっか作ってんだ?...まぁいいや。この世界の魔族相手ならこっちの方が効きそうだしな。でも今度は魔力銃を縛ってみてもいいかもしれない。
「まぁ俺は優しいからな。苦しいならサクッと殺してやるよ...じゃあな」
魔力を固めた剣を魔族に向けて振り下ろした。
次の瞬間、俺の背中に何かが突き刺さった。
「……あ?なんで魔力の剣が...?」
俺の背中に刺さっていたのは、魔族の首に突き刺したはずの魔力の剣だった。そのため、俺の身体に触れた瞬間染み込むように体内に入っていったので剣が刺さったように見えてその実ノーダメージだ。
よく見ると、魔族の首の辺りに空間の裂け目のようなものが生じており、そこを魔力の剣が入っているようだった。
「空間置換⁉︎でもこいつの能力じゃないはず...!」
さっきハントが放った矢が俺に刺さったのも、この空間置換の能力のせいか?最後の攻撃を拳銃にしてなくてよかった...じゃなくて、この空間置換使ってる奴は誰なんだ?魔力を撃ち込まれている目の前の魔族は能力を使えない。つまり、第三者が介入してきたわけで...っ⁉︎
「二人目の魔族⁉︎」
どこからかはわからない。だが、もう一人魔族がいるという情報が俺に流れ込んでくる。
「しょうがねぇなぁお前はよ。遊んでるからこうなるんだぜ?」
ヌゥッとどこからともなく男が現れた。あいつが空間置換の魔族?...っ!そうか!ハントが言っていた、どこから来たのがを誰にも伝えておらず時々いなくなる奴ってのはこいつのことか!空間置換の能力があればいつでもここから脱出できる。さっきはたまたま外出中だったせいで魔族は一人しかいないっていう反応が出ただけで、本当はこの村に二人魔族がいたんだ!
「あらよっと」
地面に倒れ伏していた魔族が空間の裂け目に落ち、男の魔族の上から落ちてきて抱き抱えられる。
「サギ、リ...ごめ...」
「これに懲りたら下手な真似するんじゃねぇぞ全く...ほらハルラ、もうここにはいられない。出るぞ」
サギリと呼ばれた魔族は、ハルラと呼んだ魔族を抱えながら空間の裂け目を作り出した。あれがあいつらの本名...
「って、逃すかよ!」
魔力銃を生み出して魔力弾をサギリに向けて放つ。あいつに魔力を撃ち込みさえすれば、空間置換も使えないはず...!
「妙な力を使うようだが、お返しするぜ」
「っ...!」
突如現れた空間の裂け目に魔力弾が吸い込まれ、俺の背中を撃ち抜く。俺の魔力なためノーダメージだが、これじゃ魔力弾を撃ち込めない...!
「その顔、しっかり覚えたぜ。しっかりお礼参りさせてもらうからな...待ってろ」
まずい。まずいまずいまずい二人に顔を見られたまま逃すのはまずい!この段階で俺が魔族を殺して回っている奴だってバレるのは流石に早すぎる!殺す...のは今からじゃ無理!でも記憶だけなら...!
「じゃあな」
空間の裂け目の中に魔族たちが入っていき、そのまま俺に背を向けて歩き去っていく。そして、空間の裂け目がだんだんと小さくなっていっていた。もう裂け目に俺自身が飛び込むのは無理だ。銃を突っ込む程度の隙間しかない。
「フンっ!」
魔力銃を突っ込み、引き金をやたらめったに引きまくった。
やがて、空間の裂け目が完全に閉じ切った。それに巻き込まれたためか、魔力銃がスパンと切られて壊れた。何発撃てたのかは俺もわからない。当たりさえすれば、不可逆の記憶消去が俺に関する記憶を消し去ってくれているはずだが、当たったのかもわからない。
「……」
無言のまま新たに魔力銃を作り、ハルラに付けられた傷を回復の魔法弾で撃ち抜いて治す。ハルラが魔力に侵されたことで能力が解除されたため、治らない傷も治せるようになったのだ。これで、当初の目的であったこの村に住む人の第三の目を治すことは達成できるようになっただろう。
「……クソッ!」
だが、魔族の討伐に失敗したのは事実。そして記憶消去が成功したのかはわからずじまい...
この世界に来て、初めての敗北ともいえる戦闘だった。
ハルラはねぇ...最初は空間置換の能力を持っていて生かす予定だったんですが、途中で別の魔族にその役割を移して死なせようと設定変更したんですよ。
でも謎に性格と口調を凝ってしまったがために、今回だけで死なすのはもったいないと思ってしまい、結局生かすことにしました。
アクセルみたいなライバルポジも必要だしね...その枠に収まるかはまだ未定ですが。
あと、ハルラの瞬間移動の能力はそんなに単純なものではありません。
また登場した時に、うまく情報開示できたらいいな...