お久しぶりです。
期末試験が終わり夏休み突入...よって投稿再開です。
今回から、ついに第五章 回避の目がスタートします。
おおよそ一年ぶりの聖杖世界での戦いの開幕です。
帰ってきた聖杖世界
「能力も与えた。準備完了じゃな」
「おっす、サンキューな神様」
神様に欲しい能力を伝え、いつも通り魂に能力を刻んでもらい、これにて聖杖世界に旅立つ用意ができた。
「向こうの世界での出来事は、かつての仲間たちに聞くと良い。時間もあまりないのでな、飛ばすぞ」
「またミスったりするなよ〜?」
「そんなまさか、二度目は流石にない...はずじゃ」
「今度は防げないんだから、マジで気をつけてくれよな」
「わかっておる...」
足元の地面に穴が開き、俺は神様の世界から聖杖世界へと穴を通じて移動する。
その瞬間だった。
俺は、遥か上空から地面に落下して死ぬ未来を見た。
「っ!!ちょっ、またやらかしてんじゃねぇ!!!」
聖杖世界へと渡った俺が目にしたのは、空一面の青空。足は地に着くことはなく、重力に引かれて落下...フリーフォールの開始だ。
「そういうフリでもねぇしフラグでもねぇっての...!わざとじゃねぇだろうな!!」
『ち、違うぞ。ワシは真面目に...世界の座標が狂っておるのか...?』
神様の言い訳が脳内に聞こえて来る。
「言い訳してんじゃねぇ!前回よりもっつーかこのミスはもうおかしいだろ!!」
最初に聖杖世界に来た時も高所に放り出されたが、せいぜい地上から十数メートルほどの高さからだった。森へと落ちたのと、速度操作によって僅かながら減速できたおかげであの時は何とかなったが、今回はそれとは訳が違う。
速度操作がない...とかいうレベルじゃない。十数メートルとかでもない。数百...下手すりゃ一キロいってんじゃねぇか⁉︎死ぬぞオイ!
「どんなミスしたらこうなるってんだ...クソッ、何とかするしかねぇ...!」
もうこうなってしまったからには仕方がない。何とかしてここから生還する方法を考えなくては。
「生還する方法は必ずある...回避の目が発動したからには確実なはず...!」
今回俺が手にした能力を、俺は回避の目と名付けた。能力の内容は、まぁ言ってしまえば鳴音世界の八代の予知のハウリングだ。それを少しばかり改造して、一点特化させている。
対象に設定した者が傷つく未来を見ることができ、見た光景を任意で他者に共有する。出来ることはただそれだけ。どうすれば回避できるのかといった方法は提示されず、自ら考える必要がある。しかし、その未来が見えたのなら、それは回避可能な未来だと確定する。なぜなら、最初からどうあがいても回避不能な場合、未来を見ることができないからだ。
もっとも、どう足掻いても回避不能、といったことはほとんど起こり得ない。回避に必要な要因が現在にあるのなら、たとえ傷つく未来がどれだけ先の、それこそ何年後といったレベルのものだとしても回避の目が発動するからだ。そのため、回避の目が発動したのなら、その時に行動をすれば回避可能だというわけだ。
一人で遥か上空からフリーフォールしているこんな状況だとしても、回避の目が発動した以上、落下死から逃れる方法は必ず存在する...!
「ああもう寒すぎ...!回避ったって俺だけじゃ到底無理だろ...!」
ここは聖杖世界だ。この世界の魔法は熟知しているため、当然飛行の魔法の呪文は記憶している。だが、今の俺の魔力量では少しの間浮くのが精一杯で、すぐにまた落下するのが関の山だ。到底減速なんて出来ようもない。
というか、寒くて頭が回らない。ただでさえ標高高いから冷えるってのに、落下のせいでさらに体感温度が冷え込んでいる。鳴音世界で擬似的なものとはいえ熱をずっと操っていたのもあって、冷えの方面への耐性が無くなってる...!
「こうなったら...!」
俺は寒さに凍えながらも、息をとにかく吸い込む。そして...
「ライトォー!!ニアー!!ステラァー!!クミリアー!!レストォー!!誰か助けてーー!!!」
かつての仲間たちの名を叫んだ。
「ゲホッ、ゴホッ!誰かーー!!」
誰か聞こえてくれと願いながらひたすら叫ぶ。クミリアは五感に優れているから、ワンチャン耳に届くかもしれない。その可能性に賭けて、俺はひたすら名を叫ぶ。
頼む...頼む頼む頼む!!
「誰かーー!!...っ⁉︎あれは...!」
無我夢中で叫んでいたその時だった。真下にある王都から、何か豆粒のようなものが近づいてきているのが見えた。それはどんどん近づいてきて、だんだん姿がハッキリしてきて...
「か...カリヤ!!??って速っ!!」
下からやってきたのは、ステラ...俺が最初にこの世界で出会い、そして共に魔王を討伐した弓の村カリスの英雄だった。
また俺は最初にステラと出会うのか...とかそんなことを考えていたら、俺の落下速度が速すぎたのか、並走出来ずにステラは上へとすっ飛んでいく...あっ、戻ってきた。
「おっすステラ久しぶり!早速でごめんなんだけど助けてくんない?こんままだと落ちて死んじゃう」
「その口調、本当にカリヤだ...というか何で落ちてるの?自分で飛べないの?速度操作は?」
「その辺全部今使えなくてね...マジで自己解決手段ないんだ、助けてくれ」
「わ、わかった!頑張るね...!」
ステラは落下する俺の背中側につき、腹に手を回す。
「おぐっ!」
俺にしがみつきながら、自身の背負う魔道具による飛行で減速をかけることでこの状況を何とかしようとしたステラだったが、緩やかな減速とはいえそれなりに負担がかかるわけで、しがみついていた腹に一気に圧力がかかってしまい俺の口から嗚咽が漏れ出る。
「あっ、ごめん!!」
「だ、大丈夫...それよりも減速を...」
「う、うん...」
先ほどよりもさらに緩やかに減速をかけ、俺の落下速度は少しずつ収まっていく。この調子ならば、地上に着く頃には無事に降りられるようになっているだろう。
「えーっと、王都の中じゃ色々騒ぎになっちゃうだろうし...外に下ろすね」
ステラは減速しながら落下方向も操り、王都南側の平原へと降りていく。
「そろそろだから、向きを変えて...っと」
頭から落ちていたところから向きをぐるりと変え、足を下に向ける。
「はい!到着!」
地に足がついた。危機的状況から、ステラのおかげでなんとか生還することができた...良かった〜マジで。出オチで終わらなくて良かった...
「ありがとうステラ〜!最高だよお前〜!!」
「うわわっ!」
ちょっと変なテンションのままステラに抱きつき、わしゃわしゃと頭を撫でる。
「いきなりびっくりしたぁ...もう、恥ずかしいなぁやめてよ〜」
「ははは、ごめんごめん!ってかステラ、また背ぇ伸びたか?つーかあれからどれだけ経ったんだ...?」
「カリヤがいなくなってから、一年とちょっと経ったかな。背、伸びたでしょ」
「一年かぁ...そんな経ってたのか。そりゃここまで伸びるわけだ」
俺が大体170cmちょうどかギリ足りないくらいだから、この身長差だと...155〜6cmくらい?一年でそこそこ伸びたなぁ。
「にしてもステラ、よく来てくれたな。ステラが来なかったらヤバかったぜ。どうやって気付いたんだ?」
「なんか、急にクミさんが声が聞こえるって言い出したんだ。空から聞こえる〜っていうから、空を見てみたら何かが落ちてきてるのが見えて...王都の真上だったから、魔物の攻撃か何かかなって思って私が向かったら、カリヤでびっくりしたよ」
「あっ、そういう勘違いされてたんだ...もしかして、下手すりゃ矢で射抜かれてた?」
「私が先走っちゃってたらそうなってたかもね。私の目の良さに感謝しなよ〜途中でわかったから弓矢使わなかったんだよ?」
「そうだったんだ...ってうわっ、どうした?」
急にステラが軽く俺を突き飛ばして弓矢を手にした。
「囲まれてる」
「うわ、ほんとだ...王都の近くだってのにかなりの数いるな...」
気がつくと、そこそこの数の魔物に周囲を囲まれていた。ああ、魔物なんて見るの久しぶりだな...聖杖世界に戻ってきたって感じするぜ。
「色々あって最近魔物が活性化してるの。というかカリヤ、警戒心薄くなっちゃったんじゃない?私が言うまで気づいてなかったでしょ」
「うう、面目ない」
「戦える?」
「魔法はほぼ使えないし、手持ちの武器はない。格闘と、速度操作に代わる特殊能力だけが俺の戦力だ」
「そっか、じゃあ何もしなくていいよ。私一人でみんなやっつけちゃうから!」
そう言ってステラは魔道具を起動し、空中を舞う。流れるような動作で弓矢を構え、目にも止まらぬ速さで矢を放ち一体目の魔物を仕留める。
瞬きをしていたら、二、三体目も続け様に射られていた。あまりにもな早業により、前方から来ていた魔物は既に一掃されていた。
「私の強くなったとこ、見せてあげる!」
ステラは雷装を纏った矢で俺の左右から来ていた魔物を射抜いて仕留めると、弓を上にヒョイと放り投げる。
その状態で弓を構える動作をとった。あれは、無心の弓の構え...!
「なっ...連射⁉︎」
無心の弓を放って魔物を消し飛ばしたステラは、続け様に他の魔物も消し飛ばした。無心の弓の連射...以前は一発放つごとにそこそこの溜めと残心による硬直があったはずだが、それを克服してんのか...!
「ふぅ...掃討完了!カリヤー見ててくれた?」
辺り一帯の魔物を全て倒したステラは、ふっと俺のそばに降りてきてそのまま駆け寄ってきた。
「も、もちろんだ。凄いな、身体だけじゃなく技術まで成長してるなんて。これが一年の成果か」
「凄いでしょー!けど、まだまだ見せれてないこといーっぱいあるんだ♪」
「そりゃ凄い、是非見てみたいもんだな」
「多分これからいっぱい見せる機会あるから、お楽しみはその時にね!ところで、カリヤはどれだけ成長したの...って、違う!その前になんでカリヤがいるの⁉︎魔王のせいで消えちゃったってライトから聞いてたんだけど!」
「あはは、ようやくその疑問が出てきたか...その話はみんなの前で一気にやるわ。そんで、みんなはどこ?少なくともクミリアとは一緒に行動してたんだろ?」
「えっとね、さっきまでライト以外とは一緒にいたよ。ライトだけ王城に召集がかかってて、戻ってくるまでみんなで王都で待ってたの」
「そっか、じゃあそっちに向かうか。呼んできてもらえるならそっちの方が早いけど」
「連絡なら取れるよ」
「おっ、ついにステラも念話の魔法を習得したのか?」
「それは無理だよ〜、でも、これがあるっ!」
そう言ってステラが懐から取り出したのは...
「す、スマホ⁉︎」
「うん。といっても、まだ連絡を取ることくらいしか出来ないけどねー」
「俺が残した工房からニア辺りが作り出したのか...?」
この世界に建てた俺の家には工房が併設されている。過去の俺が習得していた、過去に触れたことのある物でなおかつ素材があればどんなものでも作り出せる製作のスキルによって物を生み出し、それらの分解や魔法による解析などを通じて人力での製作を実現させる作業場である。そこにある機材や材料、そして俺が残した資料などを使い、魔法の町カイスの英雄であり最強の魔法使いでもあるニアが生み出したのだろう。
「まっ、多分そんなことしなくても、私を追いかけてそろそろ来る頃なんじゃないかな?」
「たしかに、ステラが戻ってこないなら探しに来るか。ステラの居場所を魔力探知で探り当てることも出来るだろうし、勝手に来るか...と言ってたら本当に来たな」
王都の方から飛んでくる人の姿が見えた。あの飛行速度、どう見てもニアだな。
「……っ⁉︎なかなかステラちゃんが戻ってこないと思ったら、どうして貴方がいるのよ、カリヤ」
飛んできたニアは俺を見て驚くと、近くに降り立って俺のことをまじまじと見てくる。
「この世界に色々と用があってね。久しぶりだな、ニア」
「……本人に間違いないみたいね。けど、この魔力の流れは...っ!」
「待て待て、その話も後でみんながいる時に纏めてやる。一旦待ってくれ」
「……わかったわ」
ニアはおそらく、俺の中にいる魔王のことに気が付いたのだろう。今の俺は前と比べて魔力も少ないし、その分内に潜む存在に気が付きやすくなっているのかもしれない。
「クミリアとレストは?置いて飛んできたのか?」
「ついてくるなら自分で走ってきなさいとは言っておいたわ。待っていていいとも伝えたけれど」
「その言い方ならクミリアは来るだろ。ほら見ろ...って、それは予想してなかったなぁ...」
「とぅっ!」
凄い速度で走ってきたそいつは、人を抱えながらズザザーっと地面を滑って減速し、俺らの近くで足を止めた。
「えっ、カリヤ⁉︎ねぇ見てレスト、カリヤだよ!」
俺を指差しながら言うのは、冒険者の町ガネルの英雄クミリアだ。人を担いで王都からあの速度でここまで走ってきたのか...他を圧倒する身体能力は健在だな。
「クミリア...向き的に見えない...そして気持ち悪い...」
そんなクミリアの肩の上でグロッキーになっているのは、盾の町ガルムの英雄であるレストだ。王都からこの距離を短時間で移動する術をレストは持たないためこうしてクミリアに移動を任せたのだろうが、いわゆるお米様抱っこの形で抱えられているため、レストの視界には俺が入っていない。そして全力で移動されたせいで随分と酔ってしまっているようだな。かわいそうに。
「あっ、ごめん。降ろすね」
「うぅ...完全に酔った...あれ本当にカリヤ?酔って幻覚見てる?」
「酔ってない私たちにも見えているのだから本物よ」
「そっか...ん?本物のカリヤなら、新しいゲームを生み出してもらうことも可能なのでは...?」
「あー、すまんなレスト。今の俺は、前まで使えてた魔法やスキルを全部失ってんだ。当然、製作も使えない」
「そんなぁ...」
「コイツ、すっかりゲーマーになりやがって...って、何するクミリア!」
クミリアが近づいてきたと思えば、頬のあたりを揉まれたりぐりぐりされる。俺はむぎゅっとなった顔のままクミリアに抗議する。
「いやぁ、夢じゃないよなーって思って」
「じゃあ何で俺の顔ぐりぐりすんだやめろ...!」
「それじゃあ力ずくで逃れてみるんだね」
「さっき言ったことも忘れたのかお前は...!魔法使えないんだって俺!素の筋力でお前に敵うかっての...!」
そう言いながら俺はクミリアの肘の辺りを軽く叩き、尺骨神経を刺激することによって起こるファニーボーン現象を引き起こすことでクミリアの指を痺れさせ、その隙に手を弾いて逃れる。
「ありゃりゃ逃げられちゃった。戦闘技術は衰えてないじゃん」
痺れる〜と指をわきわきさせながらクミリアはつぶやく。
「そりゃあれからも戦いづくめだったからな...ああ待て、今聞こうとするな。再三言ってるが、そういう話は全部みんながいる時に纏めてやる。質問があるならライトがいる時にな」
クミリアから疑問が飛んできそうだったのであらかじめ潰しておく。能力は使ってない。回避の目じゃ攻撃を受ける未来以外見えないからな。こういう予測くらいなら能力無しでいくらでもできる。
「そんで、ライトはあとどんくらいで戻ってくる?ステラの話じゃ、王城にお呼ばれしてるって話だが」
「もうそろそろ出てくると思うわ。出てきたら念話で連絡してくるから、その時にカリヤが来たことも伝えておく」
「了解。それじゃあライトが来る前に移動を済ませておくか。ここじゃまた魔物に襲われても不思議じゃないし、落ち着いて長話ができるところに行きたい」
「それなら、カリヤの家に向かいましょうか。あそこなら私たち以外に立ち入る人もいないから話を聞かれることもないでしょうし、それに...」
「それに?」
「貴方の残した装備が全て纏められているわ。回収も済ませてしまいましょ」
「おお、それは助かる」
「そうと決まれば早速向かうわよ。入りなさい」
ニアはそう言いながら魔法を起動し、空間の裂け目を作り出す。ニアが見つけた次元転移という魔法によって生み出された空間への入り口だ。この中を歩けば、本来よりも短い距離で目的地まで辿り着くことができるのである。
「これに入るのも懐かしいな...」
次元転移の穴に入り、俺の家があるカリスまで歩く。
「……前はこれに加えて俺の速度操作があったからめちゃくちゃ早く移動ができたけど、速度操作がないとそこそこ時間かかるな」
「それ、カリヤが居なくなってからずっと思っていたことよ」
「普通に歩かなきゃいけないのが面倒...」
「普通にカリスまで歩くのと比べたら楽なんだけどね」
「それはそうなんだがな。でも、この空間を自分の足で歩くのって何気に初めてなんだよ。大体速度操作込みで走ってたし、速度操作をあまり使わないようにしてた時期は両脚を失った後だったからさ」
「……反応に困ること言うのやめなさいよね」
「すまんすまん。みんなと会うのが久しぶりなもんで、何話せばいいかあんま分からなくてな。ほぼ何もない世界をただ歩くってのが退屈でつい変なこと言っちまう...そっか、なんでこんなに面倒なんだと思ったら、最近は転移で移動することが多かったからか...」
聖杖世界を発ってから、俺は四つの世界を渡り歩いた。最初の源流世界では馬車での移動や徒歩移動がほとんどだったが、その後の三つの世界では転移による移動が多かった。
法術世界では味方であった魔物の転移能力で移動したし、再誕世界では相棒である湊...フォルスの転移魔法で移動することが多かった。直前までいた鳴音世界では葉山の転移で各都道府県を行き来していた。直近三世界で転移による移動ばっかしていたから、目的地にすぐたどり着くための方法としての徒歩が退屈なのも仕方ないのかもしれない。
「転移で移動...ですって?カリヤ貴方、死んでからいったい何を...」
「ああもうだから話は後でするって!転移が魅力的なのはわかるがそう迫ってくるな!」
近づいてくるニアを押し返す。
「……いや待てよ?再誕世界で聖杖世界の魔法を使えたのだから、その逆ももしかしたら...いや、神様の話的には出来ないと考えるのが普通か...」
再誕世界で俺は、どんな魔法でも魔力に分解してしまう魔法拡散といった聖杖世界の魔法をいくつか行使した。となると、逆に再誕世界の魔法を聖杖世界でも使えるのでは...と思ったがすぐに自己解決する。
確か神様は、再誕世界を作った神様は聖杖世界の魔法システムを参考にしていたと言っていた。そこから手を加えたりしていたため、全ての聖杖世界の魔法を使えるわけではないし、色々と仕組みが違うところもある。転移の魔法がこの世界にない以上、再誕世界の転移魔法は手を加えた部分の一つだろう。それゆえに、逆輸入は出来ないと考えるのが自然だ。
「そういう独り言を呟いちゃうから、ニアさんの興味を惹いちゃうんじゃないかなぁ...」
「後で根掘り葉掘り聞かせてもらうから、覚悟しておきなさい」
「多分転移は無理だろうから期待しないでおけよな...っと、多分あの裂け目だよな?」
こうして歩いていると何となく記憶も蘇ってくるもので、転移先となる裂け目の位置関係から俺の家の目の前に出ることが出来る裂け目がどれか案外わかるものだな。
「その通りよ。出てみなさい...きっと驚くから」
「ほら、行くよ!」
「お、おう」
ステラに軽く引っ張られ、共に空間の裂け目を抜ける。
そうして目の前に広がるのは...
「これは...!」
多くの人が行き交い、賑わっている村の光景が目に入った。
「これ、カリスか...?本当に?」
「うん、そうだよ♪」
「こんなに、活気が戻ったんだな...!」
カリスは、魔王軍との戦争の最中、魔族の一人であったフロートによって壊滅させられていた。そこから復興活動が行われて、そこそこ再建してきたってところで俺の記憶は止まっているのだが...まさか一年でここまで復活しているとはな。
「この一年で他の町からの移住者も増えたんだ。それで前みたいな賑わいに!」
「良かったな、ステラ」
「うん!この光景、カリヤに見せられてよかったぁ...」
ステラの目にほんの少し涙が浮かんでいるのが見えた。その頭にポンと手を置いて撫でてやる。
「……そして、俺の家は相変わらずみたいだな」
後ろを振り向くと、そこには俺の家があった。記憶にあったものと相違ない。
「一年経ってんのに相変わらずに見えるってことは、誰かが整備してくれてるってことだよな?みんなか?」
「そうだよ。クミさんたちが持ち回りでこの家を管理してるのさ。だから中もピッカピカだよ〜」
「それは楽しみだ。そんじゃ、誰か鍵開けてくれ。鍵持ってないから家主にも関わらず中に入れん。誰か笑ってくれ」
「はは、これじゃ誰の家かわかんないねぇ〜、それじゃクミさんが開けるよ」
そう言ってクミリアが鍵を開け、ドアを開ける。
「あっそうだ、言っておこう。おかえり、カリヤ」
クミリアがそう言ったのを見て、みんなはハッとした表情を浮かべた。そして、ささっと入り口の方に立ち、みんなで俺のことを見てくる。
「おかえり!カリヤ!」
「……ああ、ただいま!」
こうして、俺はこの聖杖世界に帰ってきたのだった。
いや〜、帰ってきましたね聖杖世界に...
こうして過去の仲間たちと再会して、カリヤくんと仲良く話をしているのは、書いていて感慨深いものがあり...あまりにも久しぶりすぎて口調こうだったっけ...と不安になり前作を読み返しながら書いてました。
ちなみに、本文にてステラちゃんが、カリヤが死んでから一年ちょっと経っていると言っていましたが、それを見て現実世界とリンクしてる...?と思った人もいるのではないでしょうか?
実はリンクしていません。
前作を読んだ皆さんは覚えているでしょうか?
聖杖世界の一日は三十時間あることを。
つまり、聖杖世界での一年は現実世界の一年の1.25倍の長さがあるため、実際にはリンクしてないんですよね。
なので、あくまで作中時間での時間経過なんですよね...ややこしくてごめんね。
さて、次回はライトくんとも再会して、聖杖世界で解決すべき事柄やカリヤくんのこれまでの共有などの説明回になります。
次回もお楽しみに...!