神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8512字。

前回の後書きの通り、全編説明回です。


放浪世界の振り返り

「カリヤ⁉︎」

 

「おっ、ようやく役者が揃ったようだな」

 

玄関からライトの声と、ドタバタと慌てたような足音が聞こえてくる。

 

「っ...!本物だ...!」

 

「よっ、ライト。久しぶり」

 

「よっ、じゃない!軽すぎだ!」

 

そう言いながらライトが近づいてくる。早速涙ぐんでいるコイツが、この世界の勇者にして、魔王に乗っ取られた俺を救いこの聖杖世界を救った、聖杖世界の主人公だ。

 

「ああもう、落ち着けって...」

 

「落ち着いてられるか!目の前に、もう会えないと思っていた奴がいるんだぞ...!」

 

ライトは涙で顔を濡らしながら抱きついてきた。

 

「また会える可能性はゼロじゃない...そういっただろ?別れの握手はできなかったが、だからって再会の願いが絶対叶わないなんてことはない。勝手にもう会えないなんて決めつけてんじゃねぇぞ、まったく...」

 

「……そう、だったな。すっかり忘れていたよ」

 

「まぁ、あの時は握手できなくて結果的に正解だったんだけどな。ははっ」

 

「ははっ、じゃないわよ。今の流れでそんなこと言うかしら普通」

 

「そもそも正解不正解があることなの?」

 

「っと、そうだな。そこも含めて、そろそろ話し始めるとしますか...ほらライト、そろそろ離れな。これから話を始める。俺がこの世界に戻ってくるまでの話と、これからのことについてな。だからまぁ、聞きやすいように座ってくれや」

 

ライトを引き剥がすと、俺はソファに腰掛ける。

 

「じゃあまず、一番重要なところから言っておこう。この世界の魔王は、俺の中で依然生き続けている」

 

「なっ...⁉︎」

 

ニア以外の口から驚きの声が漏れ出る。

 

「ニアはやっぱ気付いてたか」

 

「魔力の流れが異質だったから、もしかしたらとは思っていたわ。けれど、まさか本当にそうだとは...」

 

「ちょっと待って二人で話進めないで⁉︎ねぇカリヤどういうことなの⁉︎魔王がまだ生きてる⁉︎」

 

「そんな...確かに魔王はあの時必殺技に飲み込まれたはず...」

 

「ライト、覚えているか?アレを放った瞬間に、俺の魔力が切れて全世界停止が解かれたことを」

 

勇者の持つ聖剣の真の姿であり、必殺技の名でもある聖杖の名は、それを知っている者以外には明かすことが封じられているため、多少違和感のある文になってしまっているが話を続ける。

 

「ああ、覚えている」

 

「その時に、魔王の一部は俺の中にまた入っていったのさ。アレによってほとんどは消えたが、ほんの一部でも残っていれば魔王は蘇れる。そういうわけで、魔王はまだ俺の中で生きている」

 

「まだ、カリヤの中に...」

 

「握手できなくてよかったって言ったのは、このせいだな。あの時はお前も魔力切れを起こしていた。つまり、勇者の加護が切れている状態だった。その状態でお前に触れていたら、魔王は死にゆく俺の身体から飛び出してお前の中に入り込んでいただろう。そうしたら世界は終わっていた。勇者の身体を手にした魔王が暴れて終わりだ。それを紙一重で回避してたんだよ、俺たち」

 

「……不幸中の幸い、というわけか...」

 

「そんじゃ話、続けるぞ」

 

「そんじゃ、で区切っていいようなことではないと思うんだけど...」

 

「これくらいサクサクやらないと一生終わんないからさ。そんなこんなで魔王を宿しながら死んだわけだが、魔王が寄生するのは肉体ではなく魂だったため、俺の神様がいる空間に戻ってきても、魔王に寄生されたままだった。当然、この状態のまま俺が元いた世界に帰ろうものなら大変なことになる」

 

「そりゃそうね。カリヤの世界には魔法がない。魔物もいない世界に魔王を宿した状態で生まれ直せば、どんなことが起こるか見当もつかないわ」

 

「魔力がないから大丈夫...という希望的観測をするわけにもいかないから、どうにかして魔王を分離、もしくは消し去る必要があった。しかし、神様の力では直接干渉することができなかった」

 

神様が魂に干渉できればよかったが、出来るのは能力を与えることと与えた能力を引き剥がすこと...あくまで与えたものにしか干渉できないため、魔王に直接手出しすることはできなかった。

 

「一番手っ取り早いのはもう一度この世界に来て、ライトに必殺技を俺に浴びせて魔王を浄化する方法だったが、この世界専用の肉体が破損した状態だったためすぐに向かうことができず...でもそれ以外に方法もなかった。幸い、時間をかければ肉体は直せるらしく、それが終わるまで俺は時間潰しをしていた」

 

「時間潰し?」

 

「とある仕事をしていたんだ。俺がこの世界に来たのは、魂の初期化によって生まれた歪み...魔王軍との戦争で人類が敗退するというシナリオを回避させることだってことは覚えてるな?同じような歪みは他の世界でも起こっていて、それを修復する旅をしていたんだ。この世界では速度操作をもらったように、それぞれ特殊な力を一つもらっていろんな世界を巡ったよ」

 

「他の世界も、ここと同じようにカリヤが救ってきたってこと...?」

 

「そうだ。まぁここと比べれば時間も労力もそこまでだったがな。詳しいことは後々話そうと思うが、ある程度どんな世界をどんな力を持って巡ったかは言っておく。後の話に繋がるからね。まず最初に行ったのは、魔力の無い世界だった。俺の中の魔王の覚醒を防ぐなら、奴の力の素である魔素や魔力が無いことが一番だからな。まぁ、貰った能力のせいで無意味になったんだが...」

 

「その世界では何をしてたの?」

 

「その世界では、どの人間にも一つ、場合によっては二つ以上の特殊な力を持っていた。みんながイメージしやすいように言うなら、誰もがその人にしか使えない魔法を持っている...って感じかな。もちろん似たような力もあるわけだけど、それぞれが固有な力を持っている世界だった」

 

俺は源流世界のことを思い出しながら話す。今となってはだいぶ過去のことで、随分と懐かしく感じる。

 

「そんな中、魂の初期化によって魂が変質し、既存の人類とは違う特徴を持った存在が生まれた。俺の翻訳能力の影響もあるだろうが、そいつらは魔族と呼ばれていた。その魔族は人類と敵対していて、放置していると全面戦争が起こって人類に大損害が起こることになっていた。そうなる前に魔族を全員排除する...それがその世界で与えられた任務だった」

 

「別の世界でも魔族と戦っていたのね」

 

「みんなの思うような魔族とは違うけどな。そんで、持ち込んだ能力は、現実非現実問わず、存在する銃を作り出せる、創造の銃という力。フィクションの中の銃でも作り出せるっていう、戦闘に特化した能力だ。この世界で銃を作ったはいいけどそんなに使う機会が少なかったから、実銃使いて〜と思って貰った」

 

「そ、そんな適当でいいの...?」

 

「まぁな。けど、一応ちゃんと考えてたんだぜ?この能力ならば、魔力銃も生み出せる。そうすれば弾丸として魔力を生み出したり、それで魔法弾を放ったりすることも出来る。偶然ではあるが、源流世界...俺が行った世界の住人や魔族は、本来この世界には存在しない魔力という存在に拒絶反応を示して激痛と能力使用不可という絶大な効果を生んだからな。まぁ、魔力を生み出す関係上、魔王の復活を許してしまったわけだが...」

 

「ちょっ、それ大丈夫だったの...?」

 

「なんとかな。その時にはもう全ての魔族を倒していて、あとは死んで世界から離脱するだけだったから、危うく乗っ取られかけたけど無事に脱出できた」

 

「……死んで世界から離脱ってところに突っ込みたいけれど、あまりにもあっさり言うわね貴方...その様子だともう慣れきっているみたいだし、やめておくわ」

 

「助かる。そうして源流世界を抜け出した俺は、次なる世界...法術世界へと向かった。そこはここと同じように人と魔物、魔王が存在して、互いに争っていた。けれど、それはその世界の神様が意図的に仕組んでいるもので、互いに争わせて成長を促す、だったかな。それ自体が神様目論見通りの営みだった」

 

法術世界のロリ神を思い出す。あの後も互いに競わせる世界運営を続けているのだろうか...

 

「魔物は魔法という固有の力を使い、人間は倒した魔物を解剖して研究し、魔術という誰でも使用可能な技術として習得した。そういうふうに争いの中で、ある種健全に世界は動いていたのだが...そこで一つのバグが生じる。魂の初期化のせいで、その代の魔王が生まれなかったんだ。それによって、このままでは人類が圧勝し、魔物という存在全てが殺し尽くされる未来に行き着くことになってしまった。神様はそれを許さず、俺の神様に協力を仰いで俺が向かうことになった」

 

「……カリヤはそこで何をしたの?魔王がいなくなった穴埋め...だと思うけど、それってなに?」

 

「俺の役目は、全ての修正。変わりそうになる未来を全て抑えつけ、元通りの未来に向かわせること。人類も魔物も、本来通る歴史の通りに生死を分つこと...つまりは、魔王が正常に生まれていた場合に死ぬはずだった奴全員を殺すことだった。俺が魔王代理の立場に立ち、魔王軍をコントロール...狙った奴だけ殺し、魔物の方も上手く人類にぶつけて殺させたり、自決させたりした。そして最後は、全てをやり遂げた後にその世界の勇者に殺されて終わりだ」

 

……みんな、ポカンとした顔をして、その後絶句した。そりゃまぁ、当然だろう。あっさりと言ってのけたが、人殺しをしたと宣言したわけだからな。

 

「そういう任務だったとはいえ、俺の手は何千もの人殺しの罪で汚れていることに変わりはない。魔物に命じて殺させたのがほとんどだったが、中には俺自身の手で殺したものもある。軽蔑してもらって構わない」

 

「け、軽蔑だなんてそんな...ちょっとビックリしただけだよ」

 

「貴方、ちょっと仲間を傷つけてしまっただけでひどく動揺するような性格してたのに、よく殺せたわね」

 

「ちょっとニア⁉︎直球すぎない⁉︎」

 

「俺もそう思ってたよ。実際には精神が擦り切れていっていて、その次の世界で完全に心を壊したりしたなぁ...今じゃ立ち直っている。罪を背負う覚悟もある」

 

「別に背負う必要ないじゃない。罪ならその仕事を振った神たちにあるわ」

 

「それはそうなんだが、そう簡単に割り切ることもできなくてね...」

 

「それと、別に私たちは気にしないわ。どれだけ人を殺していたとしても、それはやらされたもので仕方のないもの。理由なく、もしくは自分のためだけに人を殺すような人ではないのだから...もしそうだったとしたら絶縁ものだけれど、違うでしょう?」

 

「そりゃ当然だ」

 

「なら構わないわ。みんなもそうでしょう?」

 

「うん!ちゃんと反省もしてるみたいだしね」

 

「まぁクミさんも、治るからって試合で明らかに死ぬような一撃何度も打ち込んできたからね。あんまり口出しできないというか...」

 

「それもそうね。実際に死んでないだけで、人が死ぬようなことはいくらでもやってきたわけだし...そういう面ではみんな人殺しよ」

 

「お前ら...流石に飲み込むのが早すぎるというか、そこに行き着くとは思ってなかったわ...ちょっと引く」

 

「理不尽すぎない?」

 

ちょっとモヤってるけど...まぁみんな納得してくれてるし、ひとまずいいか...あっさりと許されちゃったなぁ...

 

「……あっ、言い忘れてたな。法術世界に持っていった力は、衝撃の剣。衝撃を吸収、蓄積して自由に放出できる力だ。どんな攻撃も受け止めて蓄積し、攻撃に使える強力な力だな」

 

「……言葉だけじゃよくわからないわね」

 

「つっても言葉じゃこれ以上説明のしようがないんだよなぁ...気になるなら後で記憶を読み取ってくれ。次に移るぞ」

 

俺の考える能力って難しいの多いからなぁ...と思いながら話を変える。

 

「次の世界は再誕世界。魔法がある世界で、魔物と魔王もいる...が、協定によって争いはなく平和な世界だった。しかし、魂の初期化によって、魔力を生み出す肉体と魔力を溜め込む器である魂、この二つの均衡が崩れて多くの人間が魔力過剰症になり死亡、結果的に人間から魔法が失われてしまった。それを見た魔王が協定を破る...俺の役目は、魔王を殺さずに倒して協定を再び結ばせることだった」

 

「魂の初期化はそんなことも引き起こすのね...この世界だとそんなことはほぼ起こらないでしょうね」

 

「使えば使うだけ魔力が増えるシステムだからな。初期化で変わるとなれば、魔法適性が完全にリセットされて、俺みたく全ての魔法の適性が平均になる感じだろうな...っと話が脱線したな、戻ろう」

 

このまま話を続けるとニアが話を大いに逸らしにかかりそうだったので急いで話題を戻す。

 

「その世界には転生魔法によって魂の初期化が起こる前の時代の魂を持つ魔法使いがいて、そいつと一緒に行動して魔王を打ち倒した。魔王は人間の進化を促すためにわざと敵対を選んだ善の者だったのもあって、協定は無事に再締結...その後、魔力の蓄積によって復活した俺の中の魔王を、一緒に旅した魔法使い、フォルスが撃ち倒してこの再誕世界から離脱した。色々面白い話はあるが、それは今は割愛しておこう」

 

「転生魔法...?」

 

「ああもう割愛するっつったろ?後で聞け後で。ったく、魔法って聞くとすぐこれなんだから...この世界に持ち込んだ能力は、模倣の傷。傷をつけた相手から魔力を奪い取り、そいつが使える魔法を行使することができる力だ。これで魔王の魔法を使ったり、仲間のフォルスに傷をつけて二人で同じ魔法を使うみたいな運用をしたな」

 

「さっきの衝撃のなんちゃらよりかは分かりやすいね」

 

「まぁな。ただ、その次が一番難解で...次に向かった世界は、鳴音世界。舞台は俺がいた地球とよく似た世界。魂の初期化によって特殊な力を持った異なる人類が生まれ、そいつと国全体を巻き込んだ陣取り合戦をした。魔力がない世界だから魔王が復活することはなく、そのまま役目を果たして離脱した」

 

「そこではどんな力を持っていったの?」

 

「幻痛の熱という、摩擦熱の増幅能力だ。といっても、その増幅熱には実態はない。痛覚に直接熱さをもたらす偽りの熱で、物を焦がしたり燃やすことはできない。増幅熱を付与したものを、熱を消費することで動かしたりすることもできる」

 

「今の説明だとそこそこわかりやすい力のように思えるけど」

 

「細かい仕様が色々あってね...本来の摩擦熱も保存されるとか、そっちが蓄積したら物を燃やせるだとかがあって説明が難しくてね。ひとまずこんなところで終わらせるぞ」

 

「そ、そうなんだ...その次は?」

 

「んいや、これで最後だ。この四つの世界を回り終えたら、ちょうど神様がこの聖じょ...っと、これも言えないのか。この世界の肉体の復元ができたって神様から言われてね、それでこの世界に来れるようになったんだ」

 

いつも通り聖杖世界と言おうと思ったら世界に口止めされた...意外と厳しいな。

 

「ただ、復元したとはいえ肉体は以前とは別物。つまり、これまで俺が手に入れたスキルは使えないし、魔力量や魔法適性も初期値の状態だ。半ば代名詞でもある雷装すら使えない。俺に残っているのは、記憶と経験、そして今回もらった能力だけだ」

 

「その能力ってなに?」

 

「回避の目、と俺は呼んでいる。自分、そして対象に決めた相手が攻撃によって傷つく未来が見えるんだ。そしてその予知は他者に共有することもできる。その予知が見えたならば、その攻撃は回避可能であることを意味していて、どうすれば避けられるかはわからないためそこは自分で考えなきゃならんが、これで理論上全ての攻撃を回避できるはずだ」

 

「……これまでの傾向とは違う力をもらったのね。攻撃に使えるか、汎用性があるようなのを貰いそうなものだったのに」

 

「便利だけど速度操作とかに比べると微妙かも?」

 

「コレには理由がある。さっきスキル全部使えなくなったって言ったろ?つまり、今の俺は初期状態で全盛期よりも何倍も弱い。移動系の力を持たないから無駄に戦闘系の能力をもらっても攻撃を喰らって死ぬだけだ。だったら、攻撃はみんなに任せて回避に専念、予知の共有でサポートもできるこの力が最適だってわけ」

 

「なるほど、一理あるね」

 

「また僕の役目が減っていく...」

 

「またって何だよ。それに今回は逆だぜ?予知で見た攻撃をお前が確実に跳ね返せばいいんだから逆に仕事増えるだろ」

 

速度操作の時は全員走って回避ができたためレストの盾の出番が少なかったが、今回は逆だ。しっかりレストが魔法を受け止めたり、攻撃を反射できるかに掛かっている。

 

「あと、俺の護衛もよろしくな」

 

「……カリヤを守らなきゃいけないって、なんか不思議だなぁ」

 

「速度操作と魔法で自力防御ができてたからなぁ...頑張って慣れてくれ」

 

「そうして、そんな力を持って再度この世界にやってきたら、マヌケにも空から落ちてステラちゃんに助けてもらう羽目になったってことね」

 

「事実だがマヌケって言うなよ...それは俺のせいじゃないし」

 

話が俺がこの世界に戻ってきた時の話に戻る。

 

「とまぁ今ニアが言ってくれたように、回避の目を持って俺はこの世界に戻ってきた。一つは、俺の中の魔王を消し去るため。そしてもう一つが、この世界に起こっている出来事の解決だ。後者についてはみんなに聞いてくれって神様に言われてるんだが、まずこっちから処理したい」

 

そう言って俺はライトの方を向く。

 

「なぁライト。必殺技を使って俺の中の魔王を消し去ってくれ。今なら魔王が復活する前にやれるはずだ。再誕世界で魔王はこの世界からの離脱直後の同じ状態まで疲弊して、そこから一切の魔力供給を絶っているから魔王復活まではだいぶ猶予がある。その前に終わらせてしまいたい」

 

この世界で何を解決すればいいのかまだ知らないが、それをしている最中に魔王に復活されて身体を乗っ取られても困る。魔王の消滅は何よりも優先すべき事項だった。

 

「……そうしたいのは山々なんだけど、今は聖剣を手放していてね。それに、手元にあったとしても聖剣は今必殺技を使えない状態になっている。あの戦いで、二度目の無理をしちゃったから...」

 

そういや、最後の戦いで聖杖を無理矢理押さえつけて発動を遅らせていたっけ...俺が速度操作によってやったそれを、無理矢理魔法と筋力でライトはやったから俺以上に負荷をかけちゃったんだろうな...

 

「無理なら仕方がない。神様から今すぐには魔王を滅ぼすことはできないって言われてたし、ライトが聖剣を手にしてないから無理なんだろうなぁとは思ってたよ。けど、今すぐには出来ないのか...何としてでも復活前に仕留めないとヤバいんだよなぁ...」

 

「まぁ、また魔王に乗っ取られたら全部の動きを止められちゃうもんね...って、もしかしてそうはならない?」

 

「そうか、今カリヤが持っている力は回避の目だけ。攻撃は避けられるけど、攻撃手段は魔王が持つ魔法だけだから対処も簡単か」

 

「あっ、スゥー...実は、そうじゃなくてですねぇ...」

 

「なによ、そんな言いづらそうにして」

 

「実は魔王、コレまで俺が手にした能力を全部奪ってるんですよねぇ...」

 

「……え?」

 

「速度操作も含めて、五つの力を今魔王は手にしている。色々制約はつけて対策はしてるから全てをフルパワーで使われることはないだろうけど、全部かなり厄介な力だからやばくてぇ...」

 

「っ...だから貴方、それぞれの世界に持ち込んだ力を説明していたのねどうせ今持ってない力だから説明の必要なんてないと思っていたけれど、まさかこんな話に繋がるなんて...」

 

「本当に申し訳ない...でも、復活される前に魔王を必殺技で仕留められればそれで一件落着だ。ところで、聖杖を手放したってどういうことだ?」

 

「無理矢理話題逸らそうとしてるわね貴方...」

 

神様は、この世界で起こっている問題を解決すれば、魔王もどうにかなると言っていた。魔王をどうにかするってのが聖杖での抹消を表していると仮定すると、聖剣を手放しているという事象は、この世界で起こっている問題に深く関わっているはずだ。その問題解決にどれだけ時間がかかるかで、魔王復活するかしないかが大きく変わってくる。

 

「……カリヤは、聖界という言葉に聞き覚えはある?」

 

「聖界?...あー、あるな。たしか、シレンの穴の最下層で、俺が魔族だと勘違いされて飛ばされた場所がそんな名前だったはずだ。それがどうした?」

 

「その空間は、女神が生み出した聖素で埋め尽くされた空間だ。女神の力は山に宿っているけれど、本体とも言える存在はあの空間にいるらしい」

 

「へー、そうだったんだ」

 

「そして、これは覚えていると思うけど、この世界にはもう一柱神がいる」

 

「魔神だな。アクセルが言っていたはずだ...って、待てよ?その話の繋げ方、もしや...」

 

「女神がいる空間を聖界と呼ぶならば、魔神がいる空間は魔界と呼ぶべきだろう」

 

そう言ってライトは息を吸い、一拍置いてこう言った。

 

「女神が魔神を封印した魔界...その封印が解かれたんだ。僕たちの役目は、魔神の討伐、そして魔界の再封印だ」




過去の振り返りでだいぶ文量を使ってしまったため、説明は次回も続きます...みんなに喋らせていたら意外と長くなってしまって自分でも驚いています。
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