引き続き訓練回です。
「そこからさっき伝えた通りに頼むわ」
「了解よ。本気でやるからちゃんと避けなさいよね」
そう言ってニアは、俺に向かって閃光を撃ち込む。
飛んでくる閃光は俺の目で十分追えるほどの速度であり、放たれてからでも十分回避が間に合うものだった。
だが、俺は避けない。回避の目が発動していないからだ。飛んでくる閃光は俺の眼前まで接近し、命中する寸前に掻き消える。
「……もう一発行くわよ」
ニアはもう一度閃光を放つが、回避の目は発動しない。回避せずに何もしないでいると、またしても閃光は俺の目の前で消滅する。
今やっているのは、回避の目の仕様の確認だ。フェイントで回避の目が発動しないことの確認と、そうして放たれたフェイントの攻撃を直前に思い直して命中するように仕組んだ場合に回避の目がどのタイミングで発動するのかの確認である。
その検証のために、ニアには閃光の魔法を何度も放ち、そして俺の目の前で消すように頼んでいる。そして自分の好きなタイミングで、閃光を消さないという選択を命中する直前に決めさせて実行させる。これにより、急に思い立って実行された突発的な攻撃に回避の目が発動するのかの検証が可能だ。はたして、回避の目は発動するのか、それともその時点で回避不可能だと判断されて発動しないのか...
「次」
またしても閃光が放たれ、回避の目は発動しない。俺の目の前まで飛んできて、そして消え去る。
内心ヒヤヒヤだ。もしも回避の目が発動しなかった場合、俺は予期できないままに閃光に撃ち抜かれるわけだからな。闘技場の結界によって死ぬことはないし治るのだが、それでも痛いものは痛い。出来れば当たりたくはない。
「次」
その後も閃光は放たれ、そして消えていくのを何度も繰り返す。そろそろ来るんじゃないか...という予測は無意味だ。そういう素振りを見せたらニアはフェイントのままにするだけだからな。なにより実験にならないし、身構える意味はない。俺はただ、回避の目に全てを委ねる。
「次」
またしても閃光が放たれる。
その瞬間だった。回避の目が発動し、閃光に撃ち抜かれる未来が見えた。
閃光を放った瞬間に発動した...?ってことは、この攻撃はフェイントじゃない。避けるか...ん?いや待て、避けちゃったら...
「……っ!」
俺はあえて何もしなかった。先ほどと全く同じ軌道で閃光は飛んでくる。そして俺の目の前までやってきて...そのまま消えることなく俺の身体を薙ぎ払った。
「あぶっ!」
威力を加減してくれていたようで、さらにノックバック付与のカスタムによって、俺は閃光に撃ち抜かれたものの後方に吹き飛ばされるだけで済んだ。まぁ、無傷ってわけじゃないが...身体が消し飛ぶよりかは遥かにマシだな。
「避けられなかった...ということは、未来は見えなかったようね」
「んいや、回避の目は発動してくれたぜ。それも、ニアが閃光を放った瞬間にな」
俺に近づいてくるニアに対してそう告げる。
「放った瞬間?私が当てると決めたのは命中の直前だったのだけれど」
「そういうふうに心変わりするっていう未来も見えるんだろうな。フェイントのつもりだったけどやっぱ攻撃するかっていうのにも対応出来るらしい」
となるとそこそこ便利だな。心変わりの瞬間に発動ではなくちゃんと回避可能な瞬間に発動してくれるわけだから、そういった攻撃もちゃんと回避できるな。
「だったらなんで避けなかったのよ」
「いやー、よくよく考えたら、見えたタイミングで避けちゃったら本当にニアが撃ち込もうとしてたのかわからなくなるなーと思ってね。見えた瞬間に飛び退いてたら、ニアが心変わりする前に回避したことになる。実際の戦闘中なら別に構わないけど、検証としてはちょっと...ね」
「たしかに、私が本当に当てようとしていたかわからなくなるものね。けど、だからってよく普通に受けれたわね...当たることがわかってると咄嗟に避けたくなりそうなものだけど」
「まぁ練習だから程度は知れてるし...ひとまず、攻撃者の意思したタイミングは関係なく、このまま何もしなかった場合の未来で攻撃を受けるなら勝手に発動してくれるってのが分かったな。意思の先読みとかじゃなく、もっと高次的に未来を見通してるわけだ」
八代の予知のハウリングは、意思の変化によって見える未来が変わっていた。そのおかげで複数の未来を見通して作戦立案をすることができていたわけだが、突発的な思いつきによる行動をされた場合、それを思いつかれた瞬間にようやく予知が発動するので対処が困難であるという弱点があった。しかし、その弱点は回避の目では解消されているらしい。こんな設定にするとは言ってなかったはずだけど、神様は気がきくなぁ。
「回避の目の検証は一旦十分かな。こっからは基礎修行をしよう。ありがとなニア」
「構わないわ。寸止めなんて普段やらないことも出来たし。魔法反射を回避する練習になったわ」
「そんな便利な魔法あったっけ?軌道変更なら知ってるけど」
「レストの盾に備わっている魔法があったでしょう?古代兵装であるあの盾に備わっている魔法は大体が現代では失われている魔法。そして、今回私たちが挑むのは魔神のいる魔界よ。現代には受け継がれていない古代魔法を使われてもおかしくはないわ」
「なるほど、俺らの知らない魔法が使われる可能性があるのか...そりゃだいぶ面倒だな」
「だからこそ、初見の攻撃でも回避できるカリヤの回避の目は重要よ。見えても技量が足りなくて避けられませんでしたじゃ困るから、ちゃんと鍛えておきなさい」
「あいよっ。でも、避けてばっかじゃつまらんからたまにはちょいと攻撃させてくれ。ってわけでレスト、相手頼むわ」
「わかった。全部止めれば良いよね?」
「止めれるもんならな」
「いや、今のカリヤじゃ無理だよ。カリヤは大幅な弱体化を喰らって、僕は一年分の研鑽で強化されている。それを忘れられちゃ困るよ」
「あんた、いつ研鑽を積んでたのよ。ゲームしかしてなかったじゃない」
「だけってことはないじゃん。僕だってみんなの見てない間にアレコレやってたよ。というわけで、かかってきな」
「煽ってくれんじゃねぇか...随分と変わったな、レスト」
「前までの僕とは違うところ、見せてあげるよ。試合開始だ」
闘技場の結界が作動する。
「レストお前、俺が弱体化したとか何とか言って、しまいには一年分研鑽を積んだとか言ってたが...こっちだって一年分の経験がある。舐めるなよ!」
ダガー二本を引き抜き、握りしめる。一年ぶりの慣れ親しんだ感覚に心を動かされながら、俺はレストに走って近づく。
「せいっ!」
攻撃の寸前まで構えた状態から腕を動かさずに近づく。そして最小限の動きで右手のダガーを逆手に持ち替えると、そのまま突くようにして顔目掛けてダガーを走らせる。
レストの盾は、両腕にそれぞれ取り付けられているため、左右からの攻撃には対応しやすい。一番防御に時間がかかるのが正面と背後。そこを、直前まで前動作を見せずに攻撃することで無理な対処を強要させる。
「っ!」
完璧な攻撃だったが、対処できるのは流石レストといったところだ。顔狙いの突きに左腕の盾を滑り込ませて受け止め、盾の形状に合わせて沿わせることで俺の体勢まで若干崩してきた。
そして、二の太刀も防がれる。密着に近い状態であるため、左手で持っているダガーをさりげなく突き刺してやろうと思っていたのだが、残っている右腕の盾でしっかり受け止めてきた。
「ちょっ⁉︎」
俺はすぐさまその場を飛び退くと、レストの膝が空を切る。回避の目が発動したおかげで気づけたが、アイツ今、盾でダガーを持つ俺の腕を動かして視界を遮ってから蹴りを叩き込もうとしていたな。咄嗟の反撃にしてはかなり殺意が高い。
「やるじゃねぇか」
「もしかして、やらない方が良かった?」
「随分と煽ってくれちゃってねぇ...後悔すんなよ!」
細かいステップで左右に身体を揺らしながらレストに近づく。どの行動も取れるように準備しながら動きを大きくしていく。予備動作を直前まで見せないのではなく、逆に見せつけることによって先読みを防ぐ作戦だ。
レストには慣れの極致というある種の特殊な力を持っている。この世界の人間が持つ慣れという事象の究極系とも言えるそれは、一度体験した事象に対する完璧な適応を可能としている。つまり、一度見せた攻撃は防御されやすいわけだ。
それを今回は逆手に取る。俺にはこの世界に戻ってくるまでに得た様々な経験からなる攻撃手段がいくつかある。しかし、それをただ使うだけでは、初見でもその脅威的な防御能力によって受け止められ、慣れられてしまう。それを避けるために、既に見せている攻撃の予備動作をあえて見せるのだ。
予備動作を見せれば、そこからどの攻撃が来るかを予測してレストは守りを固める。そうしたところから、今まで見せたことのない攻撃を仕掛けることで意表を突く。突然知らない動きに切り替われば、流石のレストも混乱してくれるはずだ。
「ふっ...!」
この作戦を通すためにも、まずはタネが割れている攻撃をしばらく続ける。しばらく続いて試合が停滞してきたところで作戦開始だ。
レストに近づいた俺は、ダガーを顔の高さで真横から振り抜く。それをレストが最小の動きで盾を構えて受け止める動作をした瞬間、腕を寸止めしながらスライディングの体勢に移行し、攻撃の高さを腹まで下げてから再び腕を振り抜く。
レストはなんとかもう片方の盾で攻撃を防ぐ。しかし、これ以上の追撃は盾では防げない。滑り込みながら放ったもう片方のダガーでの斬撃は足を上げることで回避できたが、そこが限度。振り抜いていた右手で地面に手をつき減速すると、左手のダガーを頭目掛けて投擲、わざと回避させてさらに体勢を崩させたところで足払いをかけてレストを転ばせる。
……しかし、レストはダガーを避けた際に仰け反ったのを逆手に取り、勢いよく後方に倒れ込むことでぐるっと回転し、足の裏が地面についたタイミングで跳び上がることで即座に体勢を立て直した。対して俺は未だ足払い直後の体勢のまま。転んで動きが鈍ったところで先に立て直して追撃するつもりだったが、間に合わなかった。
「復帰早いなぁ...」
「速いのはカリヤの方だよ。速度操作もないのによくあんな動きを...」
「そんなこと考えてたのか?確かに速度操作がない分遅くはなったが、これでもパンピーよりかは比べもんにならないくらい早いぜ」
「へぇ、だったらちゃんと攻撃当ててみなよ」
「足払い当たってるからもうヒット1だとは思うんだけど...それなら、お望み通りクリーンヒットさせてやろうか!」
話しながら俺は先ほど投擲したダガーが落ちている場所まで移動していた。それを蹴り上げてキャッチすると、また走ってレストに近づく。
今度は両腕を同じ方向から振り抜く。右腕の盾一つでダガー二本を受け止めさせ、そのまま流れるようにヤクザキックを放つ。
「とぅっ!!」
レストが蹴りを盾で受け止めた瞬間、その盾を蹴ることで斜め後ろに身体を回転させながら跳び、ダガーを足目掛けて投擲する。
「っ...」
レストは後ろに二歩下がり、飛んできたダガーを回避する。
それを見た俺は、体を半身にして右手を背後に隠しながらレストに走って近づく。その道中で、外れて地面に転がっていたダガーを蹴り抜きレストに向けて飛ばした。
当然、レストは意図も容易くその攻撃を盾で弾き飛ばす。遠くに弾き飛ばされたため、この一連の攻撃ではもうあのダガーは使えない。そのつもりで攻撃展開を脳内で構築していく。
「……その動き...そういうことか!」
レストは視線を上に上げた。そこには、クルクルと回転しながら落ちてくるダガーが一本。俺が回転しながらダガーをレストに向かって投擲した瞬間、見えない位置から上に向けて空高く投げ飛ばしていたのだ。ちょうどレストがいる位置に落ちるようにな。右手を背中に回して隠していたのは、ダガーをすでに投げていることがバレないようにするため...そして、今それを不自然な動きをわざと見せることによってバラした。
隠していた右手を晒し、顔の横で構える。見え見えのテレフォンパンチ。見えているからこそ、それ用の対応を余儀なくされる。
上から降ってくるダガーと、前方からのパンチ。レストはまずこの二面処理を要求される。それに加えて、その後放たれるであろう左手や蹴りでの攻撃を防ぐ手段の確保も必要だ。先読みは必須。しかし、その読みさえ当ててしまえば攻撃を全て防ぐことも可能...
その状況を作り出した瞬間、俺の目には未来が見えていた。
「オラァッ!」
振りかぶった拳を、ダガーの落下と共に繰り出す。上と前からの攻撃、それぞれにレストは盾を当てがった。
その瞬間、俺は拳を開く。そして軌道をわずかに上にずらし、盾の縁を上から掴んだ。
「なっ...⁉︎」
レストの盾は持ち主であるレストにしか触れることはできず、盾表面に薄く貼られている無限の空間に遮られてしまい、それに触れることになる。それに遮られるため、レストはどんな攻撃を受けたとしても自身に衝撃が伝播することはない。直接触れるには、空間を圧縮するといった方法が必要である。
しかし、俺の目的は盾に触れることではない。それが主目的ではなく、あくまで手段。盾に触れられようが、無限の空間に遮られようが、どちらでも良い。掴めることさえできればな。この後やることを考えると、逆に無限の空間に触れている方が良かった。
落ちてきたダガーがもう片方の盾に弾かれて横に飛んでいく。それを見ながら、俺は地面を蹴った。勢いよく飛び上がり、盾を掴んでいる腕を引き寄せる。すると、無限の空間はその場に固定されているため逆に俺の体が引き寄せられる。そして上に向けて構えられている盾にもう片方の手を伸ばして掴み取り、そのまま上をぐるっと回ってレストの背後に回り込む。
「ちょっ、ぐえ...!」
背後に飛び移った俺は、盾を掴んだまま足を繰り出してレストの首を絡め取り、ぐっと締め上げる。
「……っ!!」
レストは右腕を振って俺の手を盾から引き剥がすと、右手を左腕の盾の裏に添える。左腕についている盾は、裏についている超小型の魔法陣に触れて魔法陣を起動することにより、攻撃の誘引、受け流し、そして触れた相手のスタミナを奪う魔法がそれぞれ起動する。
それがわかっている俺は、それらの魔法が起動することを承知の上で盾に触れ続ける。魔法陣が起動し、まず受け流しが発動。レストが指定した任意の方向に、俺の身体に対して推進力が与えられて吹き飛ばされる...レストの首に俺の足が絡みついている状態で、だ。
「ゴフッ!!??」
吹き飛ばされる俺の身体に引っ張られて、レストも持っていかれる。その際に首に強い力がかかり、グキリと鈍い音が響いた気がした。
その感触をしっかり確認した俺は足を解き、受け身を取って地面への激突の衝撃を散らす。さーて、これで...!
「終わり、だな」
結界が霧散し、試合中に受けた傷が全て無かったことになる。コレが起こったということは、試合が終わる条件を満たしたわけで、つまりは対戦相手であったレストが気絶するか致命傷を負うかなりしたわけだ。
「ま、まさか僕の盾を足場として使ってくるなんて...」
「見たか?俺の足技。直近は人型相手の肉弾戦をそこそこやってきたから自信あんだよ」
「うん、それも良かったけど...上手く僕の予想の裏をかかれたなぁ...」
作戦が上手く刺さってくれたな。レストは初見での対応力もずば抜けてはいるが、既存の攻撃から不意にずらされると流石に対応できないみたいだ。まぁこの辺は、俺が回避の目でサポートしてやれば問題ないとは思うが。
「投げられたダガーに気付けたところまでは良かったんだけど...そこからこう来るなんてなぁ」
「こっちの手数の勝利だな。伊達に四つも世界を巡ってないぜ?色んな相手の色んな立ち回りを見てきたんだ。その全てが俺の手数だよ」
「僕だって色々やってきたんだけどなぁ...最後無理せず、直接振り解きに行ってれば...」
「まっ、あの一連の攻撃は俺がとちらなければ必ず決まってたからしゃーない」
「……どういうこと?」
「そのまんまの意味さ。あの一連の展開で俺がレストを仕留める未来が、俺には見えていたのさ」
「未来を見た...って、回避の目のこと?見えるのは攻撃を受ける未来だけでしょ?どうやって僕を倒す未来を見たのさ」
「……なるほど、そういう事ね」
ニアが分かったような表情を浮かべながら近づいてくる。
「回避の目の対象とできるのは、何もカリヤ本人だけじゃない。仲間を対象にして、仲間が攻撃を受ける未来を見ることもできる。それをうまく使えば、自分が攻撃しようとしている相手を対象に取ることで、そいつに攻撃が当たる未来を見ることも出来る...そういうことよね?」
「その通りだ。そうして見た未来を変えることができるのは、原理的に未来を見た俺だけ。その時しようとしていた行動をそのまま取っていれば、その未来は必ず訪れる。だから、一連の攻撃の未来を見た俺がとちってミスらなければ、確実に決められたってわけ」
「なる...ほど?」
「だから、レストの敗因はあの場面での対処ミスじゃない。俺の手数の中にレストが守りきれないものがあって、それを回避の目で先読みできたから俺は勝てた。ちょっとしたズルみたいなものさ」
「……けどそれって、僕がどの攻撃にも対応することができていれば、そもそも未来は見えてないってことでしょ?」
「まぁそうだな。現に、あの攻撃以外は全部当たる未来が見えなかったよ。ああ、全部受け止められるんだなぁと思いながら攻撃してた」
「じゃあ結局は僕の実力不足ってわけだ。攻撃が当たる可能性が一欠片でも無かったら、未来は見えないわけだからね」
「まぁでも、無数に攻撃パターンがあればどれか一つくらいは通るのが普通だし、何なら複数個通っててもなんらおかしくはないから、ここまでしないと一本取れないレストは十分凄いんだけどな...」
「けど、その一本が致命的だったらダメでしょ?魔界じゃ何が起こるかわからない。こういうところ、しっかり詰めておかないと...」
向上心が凄い...こりゃさらに強くなるかもな。意表を突くのは俺の役目みたいなもんだし、俺の練習に付き合ってもらうついでにアレコレ色んな攻撃を見せておくか。
「にしても...その攻撃に使うやりかた、かなり便利ね。それがあれば、放つ前から攻撃が当たるかわかるわけでしょう?当たらない魔法に無駄に魔力を消費する必要もなくなるわけだし、相当役立つわね」
「まぁそういう見方もできるな。けど、こっちは当たらないと分かっていても、相手にはそれは分かってない。その攻撃を避けるために労力を割いてくれるし、そうして避けさせたことで別の攻撃が当たる未来が見えるようになるかもしれない。無駄を嫌って攻撃しないのも考えものだと思う」
「なるほど、それもそうね。それなら、牽制として弱めの魔法をばら撒いて回避を封じ、回避不能なことを回避の目で見てから特大の一撃を与える、というのが良さそうかしら」
「攻撃に使うとしたらそんなところだろうな。まぁ、まだどれだけ上手く使えるか分かってないし、その辺の訓練はまた後でやらないとだな。みんなに予知を共有させるのはまだやってないし、予知が見えてもそれを完全再現できるかはまた別の話だからな」
俺は八代のハウリングを借りて長い間使ってきたから、未来を見る行為に対して慣れがある。見えた未来のままに行動することも、その真逆の行動を取ることも容易だ。けれど、経験のないみんながみんな対応できるとは限らない。動揺したり、かえって意識しすぎて失敗することもあるからな。そういう訓練も魔界突入までにやっておかないとならない。
「それはそうと、試合してくれてありがとなレスト。良い練習になったわ。やっぱお前強いよ」
「……次は止めるから、覚えておいてよ」
「おう、次も負けるつもりはない...よし、次は何をしようか」
こうして、俺らの訓練は続くのだった。
対象に降りかかる危害の未来を見るという単純な力ではありますが、使いようによっては攻撃に転ずることもできるんですよね。
実にカリヤくんらしい使い方ではないでしょうか?