神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8116字。

魔界侵入回です。


シレンの穴と魔界の座標

「もうタイムリミットか...一ヶ月って長いようで、準備期間としては短いんだよなぁ」

 

俺がこの聖杖世界に戻ってきてからはや一ヶ月。諸々の準備を終え、ついに魔界に突入する時が来たのだ。

 

「まぁカリヤは実質ゼロからの鍛え直しだったもんね。時間も早く感じるし、足りないって思うのも仕方ないよ」

 

「マジで修行時間足りないよ...全部が全部付け焼き刃もいいとこだ。魔力量もそこそこ止まりだし...回避の目と自身の技量で何とかするしかないな」

 

「それで何とかなりそうなのは流石カリヤって感じだよね」

 

「まっ、それでも無理なものは無理。出来ないことはみんなに任せるから、よろしくな」

 

「カリヤもきちんとサポートするのよ。あと、魔力リソースに関しては多分私よりも多いんだから積極的に魔法は使いなさいよね」

 

俺も勇者の加護によって体内に聖素を蓄えることとなったが、それでも魔素による魔力回復の方が効率がいいのが現状である。魔界の中なら誰よりも早く魔力が回復するから、実質的な魔力量で言うと俺の方が多いと言えなくもないが...魔法適性とかも考えるとニアとそんなに変わらないんじゃないかとは思う。

 

「了解、わかってるよ。にしても...久しぶりに来たなぁ、ここ」

 

シレンの穴を俺たちは今降っている。螺旋状の坂に等間隔に設置されている百の横穴は全て無視して、最下層を目指している。

 

「なんか、見るからに瘴気みたいなのが漏れ出てるな...あれ、魔素だよな?」

 

シレンの穴の最下層には聖剣が突き刺さっている、魔界の封印がそれ以上緩まないようにするために刺されているが、完全な封印はできず魔素が漏れ出しているようだ。

 

「これくらいの量ならシレンの穴の自浄作用で外に影響が出ることはないわ」

 

そういや、魔界の封印からわずかに漏れ出している魔素を、百の横穴に注ぎ込むことで試練を生み出している...みたいな話だったっけ。アクセルがそんな話をしていたはずだ。

 

「けれど、前よりも量は増えているわ。このままのペースなら、前に言った計算通り、あと二ヶ月後に封印は破られる。そこが最後のタイムリミットよ」

 

「二ヶ月か...長いようで短いな。この一ヶ月のことを思うと短く感じるな」

 

「魔界の中は次元転移のマーキングが済んでいないわ。初めていく場所には徒歩で行く必要がある。おそらく、大半の時間を移動に使うことになるでしょうね」

 

「そうか、そうなっちゃうのか...魔物と戦闘する必要もあるし、大変な道のりになりそうだな。覚悟決めねぇと」

 

そうこうしていると、ついに最下層まで辿り着いていた。

 

「魔界にはどうやって入るんだ?」

 

「聖剣が鍵の役割を果たしている。魔界に向かうと望みながら触れたら魔界に飛ばされるはずだよ」

 

「そりゃ便利なこった。それじゃあ、行くか。魔力は満タンだな?」

 

全員が頷くのを確認する。

 

「……うん。魔界に入った途端に襲われる、みたいなことはないようだな。行こう」

 

回避の目で突入しても問題ないことを確認してから、俺たちは聖剣に触れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ、と...ここは...」

 

聖剣に触れると眩い光に包まれた。そして光が晴れて、目が慣れてくるにつれて周りの景色が鮮明になっていく。

 

「シレンの穴...?ここ本当に魔界?」

 

景色は何一つ変わっていない。最下層の中心に聖剣が刺さっているところもまんま同じだ。

 

「……一つ違うのは、聖剣のささっている穴から噴き出ているのが、聖素だってことかな」

 

ライトの発言を聞いて、みんなが聖剣を見る。するとたしかに、そこから噴き出ている粒子は先ほどまでの禍々しい瘴気のようなものとは打って変わって、清廉なもののように思えた。

 

「反転してる...魔界から魔素が流れていたように、元の世界から聖素が流れ込んでいるのか」

 

「そうみたいね。そして、どうやら魔界は元の世界とまるで同じ作りになっているようね」

 

「そういや聖界も元の世界まんまだったし、そういうものなのか。ひとまず、シレンの穴から出ようぜ」

 

「うん、周囲に魔物の気配もない。横穴から出てくる様子もないし、一度出てみよう」

 

ライトがそう言うと、それに従ってみんなで坂道を登り始める。

 

「……ねぇ、上見てカリヤ」

 

「ん?上?」

 

ステラに言われて上を見る。

 

「夜空か。まぁたしかに、魔王が復活したらその場所は夜になっていたし、魔神がいる魔界は全域が夜だってのは当然か」

 

「それはそうなんだけど、ちょっと変で...」

 

「変?なにが?」

 

「空が黒いから夜なんだろうけど、それにしては明るくない?」

 

「それは...シレンの穴ってそういうものじゃなかったっけ?まだ穴の中にいるからだと思うぞ」

 

「そうかな...なんか、夜空が光ってるように見えるんだけど」

 

「あー、たしかにそう見えるかも」

 

クミリアも同じようなことを言っている。夜空が光っている、ねぇ...

 

「今はまだシレンの穴の中だ。噴き出る魔素がシレンの穴の中までで堰き止められているように、あそこから出ている聖素も穴の中に堰き止められているだろう。だから、穴の中からでは外の様子を正常に見ることができない可能性が高い。何をするにも、まずは穴から出ることだ」

 

俺はそう言うと、スタスタと螺旋状の坂道を登っていき、穴の外に出る。

 

「……はっ、なるほど、そういうことか」

 

「何が見えたの〜?」

 

俺に続くようにしてみんなも穴の外に出る。そして、空を見上げて驚愕する。

 

「なに、これ...」

 

「夜空なのに明るい...魔界なのに、綺麗...」

 

「まさか、この世界で星空が見れるなんてな...」

 

空は満天の星で覆い尽くされていた。そして一つ、地球でいう月のような天体も存在していた。

 

「この世界に宇宙はないから、あの月に見えるものはあくまで地上を照らすための光源という存在でしかない...元の世界でいう太陽の代わりか」

 

何から何まで反対だな。元の世界では夜はあれど月はなく、ほんの少しばかりの星があるのみで明かりはほぼゼロに等しかった。しかし、魔界は星で埋め尽くされており、夜であるにもかかわらず視界は良好であった。

 

「なかなか面白いな。この様子だと、占星術みたいな魔法を使ってくる魔物がいたりしそうだなぁ。知らない魔法に警戒しておかないと」

 

「……空に気を取られているところ悪いけれど、周囲に気を配りなさい」

 

「えっ、囲まれてる?...って、そんなことなかったな。意外と拍子抜けだ」

 

ニアに言われて周囲を見渡してみたが、魔物は一体もいなかった。

 

「魔界だからってうじゃうじゃ魔物がいるわけじゃないんだね。シレンの穴に近いからかな?」

 

「どうだろうな...もしかしたら、今は元の世界でいう昼間なのかもしれない。あの星や月が全て沈んで完全な闇に閉ざされると、魔物が活性化して大量に湧き出してくる...なんてこともあるかもな」

 

「もしそうだとしたら、魔物が多く現れる時間帯はシレンの穴まで戻るか、もしくは元の世界に帰還するまでした方が良いかもしれないわね。すぐに戻れるようにマーキングしておくわ」

 

そう言いながらニアは次元転移の魔法を発動させる。

 

……なんか、ニアの動きが止まった。

 

「どうした?」

 

回り込んで表情を窺ってみると、何が何だかわからないといった疑問の表情を浮かべていた。何か予想だにしないことが起こっているらしい。

 

「……なぜかわからないのだけど、すでにいくつかマーキング済みなのよ。それも、カリヤの次元転移でね」

 

「俺?なんでそんなことが...マーキングされてるのはどの辺だ?」

 

「まずここ。次に南にある神の怒りの降り注ぐ荒野。南東方向にある森の辺りにも一つあって、最後にガルムの辺りにあるわ」

 

「その四箇所か...なんか、妙な既視感が...」

 

過去の記憶をひたすら呼び覚ます。ニアが挙げた四箇所には絶対に理由があるはず。魔界に来たことがないはずなのに、なぜか設置されている次元転移のゲート...その理由は...

 

「……もしかして、そういうことだったりする?」

 

「何かわかったの?」

 

「あ、ああ。とても信じられるような内容じゃないけどな...俺らはもしかしたら、既に一度魔界に来たことがあるのかもしれない。正確には、魔界と同じ座標にある空間に...か?」

 

「言っている意味がよくわからないわね。私たちがここに来たのはコレが初めてのはずでしょう?」

 

「元の世界と全く同じ作りの世界。空間全域が魔素で覆われた空間。これらの条件を満たす空間を、俺たちはシレンの穴で経験しているはずだ」

 

「……日没までに、シレンの穴があった場所に集合する奴のこと?」

 

「そう、それだ。たしか第七十四階層だったかな...あの時に俺が次元転移を使った位置と、さっきニアが言った場所が一致してるんだ。きっとあの試練は、いつか魔界に勇者パーティーが行かなくちゃならなくなることを見越して作られたものなんじゃないかな?」

 

「……シレンの穴の性質を考えると、あり得ない話ではないけれど...」

 

シレンの穴の百の試練は、全てが魔王軍と戦うために必要な経験を会得するためのものだ。その中に、魔界に関する試練があったとしてもなんら不思議ではない。

 

「でも、試練のためとはいえ封印されている魔界に私たちを送り込むなんてことする?危険すぎない?」

 

「俺たちがあそこに行った時はまだ魔界の封印が解ける前だ。女神が制御しているわけだし、魔界とはいえある程度自由にできたはずだ。けども、自由に出来る時間は限りがある...それが日没というタイムリミットとして現れていたんじゃないかな」

 

「陽が出ている間は女神の手中の領域...それならまぁ、納得できなくもないわね」

 

「まぁ流石に直接魔界に送り込んだとまでは俺も思ってないけどな。あの空間に移動したのって、擬似転移だっただろ?」

 

擬似転移とは、シレンの穴でたびたび出てきていた用語だ。その場の空間を極限まで拡張し地形と景色を作り上げることで、擬似的に別の場所に転移させたように見せることを意味している。

 

「転移じゃない以上、魔界に直接送り込まれたわけではない。となると考えられるのは一つ。魔界と同じ座標になるように、擬似転移の空間を作り上げたんだ。魔界の中の様子を出来るだけ再現できるようにね。次元転移は発動地点の座標を元にゲートが設置される。だから、擬似転移空間内で作ったゲートが同じ座標の魔界にも設置されていたわけだ」

 

「なるほど...次元転移のゲートがあるという事実を考慮すると、カリヤの考えそのままのことが起こっている可能性が高いね」

 

「……ああ、そっか。あの空間内だとシレンの穴の場所は黒い謎の物質に覆われていただろ?多分あれ、魔界側から封印に触れてしまって誤って解いてしまうみたいなことを防ぐためだったっぽいな」

 

あれこれ考えていたらまたさらに説を補強する証拠が出てきた。これもう確定だろ...

 

「もう理解したからそれは良いわ。ひとまずここを含めて四箇所にゲートがあると分かったのは行幸よ。世界の南北半分くらいまでの位置にはすぐに行けることに気づけたわけだし」

 

「次元転移の中は魔物もいないし、安全に移動できるから良いね」

 

「……あれ?たしかあの中って魔素も聖素も無かったよね、カリヤ?」

 

「そうだな」

 

「スタミナ回復は前から出来たわけだけど、今私たちの中には聖素があるんだから、魔力回復もできるんじゃない...?」

 

「……それ、考えたことなかったわね」

 

うわっ、確かにそうじゃん。これまで、魔界の中でも聖素のおかげで魔力回復できるよね〜遅いけど、とか言ってたわけだが、次元転移の中に逃げ込めば話は別だ。内に溜め込んでいる聖素の量は変わらないけれど、魔素が無い分魔力回復は早まる。次元転移の話になったおかげで気付くことができたが、コレに気づいているかどうかでだいぶ変わるぞ...

 

「お手柄よステラ」

 

「えへへー」

 

俺は魔界の方が早い可能性があるが...総量が少ないからどっちでも変わんないか。俺だけ外にいてもすることないし、俺も次元転移の中で魔力回復をすることにするか。

 

「……次元転移で移動できるのは分かったけど、そもそも僕たち、魔界で何をすれば良いか分かってないんだよね...」

 

「確かに、魔神を倒すってのは決まってるが、どこに魔神がいるかとか何をしなくちゃならないかとか、そういったことは何一つ分かってないんだよな...」

 

「魔物をただ倒して終わりってことはないだろうし...」

 

「何か分かりやすい大ボスでもいれば良いんだけどな。魔神そのものが出てきてくれれば話が早いんだが」

 

「魔神は魔界に封印されてるという話だけれど、流石にそのままの状態で封印されているとは思えないわ。力を分散させて各地に封印していると見た方が良い。だから、それらを破壊する...というのが目的になるんじゃないかしら」

 

「その辺の調査も含めて時間は取ってあるんだろ?ここに止まっていても何も出来ないし、ひとまず動き始めようぜ」

 

「そうね。まずは、各地の町を調べるというのはどうかしら。シレンの穴が魔界を再現しているとすれば、町も魔界に存在しているはず。そこを調査すれば、何か情報を得れるかもしれないわ」

 

「そうするか...それじゃあ、まずはガルムに行くか。あそこにはゲートを作ってあるし、他の町二つも近いし」

 

「それじゃあ早速しゅっぱーつ!」

 

そう言ってステラが拳を突き上げた、その時だった。

 

ギャオオオ!!!

 

と咆哮が魔界中に響いた。

 

「な、なに⁉︎」

 

「北の方から聞こえたな...アイツか」

 

「魔王の山に...竜?」

 

魔王の山の上空で、蛇のような長い体を持つ方の竜がぐるぐると旋回していた。元の世界では一度も見たことがないタイプの魔物だ。何よりもサイズがやばい。

 

「何あれ...もしかして、あれが魔神だったりする?」

 

「どうだろうな...なんとなく、違う気がする。女神の対となる存在が、あんなただ巨大なだけの魔物とは思えない。けど、完全に無関係ってわけでもないような...」

 

少しだけ、胸の内がざわついているような気がする。これは、俺の中の魔王が反応しているのか...?

 

「……何一つわかっていないけど、倒しておいた方が良さそうではあるね。まず町に向かうという方針は変えないで、調査が終わったら行ってみようか」

 

「了解。そんじゃあガルムに向けて出発!」

 

ニアの次元転移によって、ガルムに移動する。次元転移の中に魔物は存在しないため、ゆっくり移動することができる。スタミナ温存のためにも走らず歩いてガルムに移動する。本来なら数十キロある道のりだけれど、歩いてでもそんなに時間はかからないはずだ。

 

「……何気にまだ魔界来てから魔物と戦ってないんだよな。なんなら出会ってすらない」

 

「あの試練だと町は魔物の住処みたいになっていたから、着いた途端に攻撃される可能性はあるね」

 

「なるほど、全然ありうるな」

 

「そういえば、あの試練には影に潜む魔物が出てきていた。今は月明かり...だっけ?それのおかげで消滅しているけれど、もしも完全に闇に閉ざされてしまったらあの時と同じように大量の魔物で埋め尽くされてしまうかもしれない。町の建物の影に潜んでいる可能性も高いから、警戒は必須だ」

 

「マジで休める場所は次元転移の中くらいかもな...っと、到着か。待ってろ、今調べる」

 

回避の目を発動させながらガルムに設置されているゲートに近づく。

 

「……出てすぐに襲われることはなさそうだな。少なくとも、今ここから出ることで回避不可能になる攻撃が飛んでくることは無さそうだ。行こう」

 

次元転移のゲートを出て、魔界に戻る。魔界の明るさに目が順応してくると、目の前には元の世界とほぼ変わりないガルムの町が見えた。唯一違うのは、人がいるかいないかといった違いのみだ。

 

「……見える範囲内には魔物はいないな。けど...」

 

「ええ。そこにいるわね」

 

ニアが魔法を発動させ、入り口の門によって生み出されている影を光で照らす。

 

すると、影が晴れると同時に、呻き声と煙を上げながら魔物が影の中から這い出てきた。シレンの穴で見たのと同じ魔物だ。完全に影のない次元転移の中では即座に溶けて消滅していたが、流石に光で照らしただけでは弱りはするが消滅まではしないようだな。

 

「ほら出てきた」

 

「たしか、この魔物は武器の影にも潜り込めるんだったよね?だったらクミさんが適任かな!」

 

そう言ってクミリアは飛び出すと、真横から雷装を込めた蹴りを魔物の頭に命中させて勢いよく吹き飛ばす。それによって魔物は強制的に門の影から弾き飛ばされて月明かりに晒される。

 

「月明かりに晒しても消えたりはしないか...」

 

「消えないってことはまだ倒せてないよね、仕留めてくる」

 

「あっ、ちょっ」

 

俺が止める前にクミリアは吹っ飛んでいって倒れている魔物に追撃の拳を浴びせていた。

 

「消えるのはあくまで影を完全に消した時の話であって、普通に攻撃で倒した時は消えないぞ...」

 

「……あっ、そういえばそうだったっけ?前のことすぎて忘れちゃってた」

 

クミリアは魔物に叩きつけた拳を引き戻しながら言う。

 

「……今思えば、魔界の魔物だったから他の魔物みたいに消えることがなかったのね...ほら、シレンの穴の魔物は倒したら消滅していたじゃない?あの試練の時だけ消えなかったのは、シレンの穴で作られたのではなく魔界の魔物だったからというわけね」

 

「だろうな。そういうところも含めて、あの試練色々と不自然なこと多かったんだな...流石に魔界と結びつくとは思ってなかったけど」

 

「っていうか、こうして消えないとなると死んでるか一目で分からないから面倒だよね。魔素の影響か結構耐久力も高いし...」

 

「……なんなら、復活してきたりするかも?」

 

「うわ、ありえるなそれ...アンデッドみたいに死体に魔素が入り込んで動き出すとかもありそう」

 

「手間はかかるけれど、粉々に吹き飛ばしてしまった方が良いかしらね...」

 

「そこまではしなくて良いと思うよ。どうせ一体潰したところで魔物は五万といるんだし」

 

「ライトに賛成だ。魔物が動かなくなったら近づかないで放置するようにしよう。下手に近づいて奇襲をもらっても困るしな。スタミナも魔力も温存、効率よく行こう」

 

そう言って俺は、クミリアに吹っ飛ばされた魔物から視線を外し、ガルムに戻す。

 

「さて...多分この中にはいろんな魔物がいるだろうな。陰に潜むのはもちろんのこと、あの試練の中で見た魔物は大体いると見て良いはず。特に建物の中...月明かり星明かりから逃れるように逃げ込んだ魔物がわんさかいるんじゃないかな」

 

「全部を相手するのは大変だね...」

 

「だな。ってなわけで、全て壊してしまおう」

 

「……え?どういうこと?」

 

「建物も含めて全てを破壊する。そうすれば魔物は建物に押しつぶされて一網打尽だ。遮る影も少なくなるし一石二鳥だ」

 

「なかなか思い切った作戦ね。建物を壊すだなんて」

 

「魔界の物が壊れても元の世界にフィードバックされるわけじゃないだろ?だったらこういう戦法も取るべきさ。ちょいと勇者らしくない行動ではあるが...建物の倒壊はかなり効率が良い方法だと、魔王経験者としてお墨付きをつけておくよ」

 

「えぇ...あの中には僕の家もあるんだけど...」

 

「ここは魔界なんだから、形が似てるだけの全くの別物さ。つべこべ言わずにやるぞ」

 

「……仕方ないなぁ。思う存分やっちゃって良いよ。ガルムの英雄として許可を出す」

 

「そんじゃ、壊すぞ。まずは、入り口を塞ぐ門から...!」

 

邪魔な門の影を排除するために、刀で門を切り刻む。

 

その瞬間、回避の目が発動する。刀の影から魔物が飛び出してきて俺に攻撃する未来が見えた。

 

「……ハッ、そいつはもう慣れてんだよ!」

 

右手を刀から離し、影から攻撃してきた魔物に右拳を叩き込む。

 

コイツは陰に潜り込むタイプだけれど、こういった物に潜り込むような敵と戦うのは慣れている。法術世界で2Dと3Dの世界を行き来する魔法を持つ魔物と戦闘訓練をしたおかげだな。こうして武器の中に潜り込んできても、その経験のおかげで対処はしやすい。

 

「この調子で、ガルムの中の魔物を掃討するぞ!」

 

こうして、魔界侵入後初の戦闘が始まるのだった。




実は前作の時点で色々伏線を張っていたというね...気づいた方はいるんでしょうか?
そして、戦闘描写が日に日に下手になっている気がしていて、少ししか書けなくなっており非常に危機感を抱いています。
あの竜との戦闘はしっかり書くのでそれまではご容赦を...
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