神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8037字。

魔族擬きとの戦闘続きです。


魔族擬きと魔道具戦

「俺が前衛を張る。ニアは逃げに徹してヤバい時は鞭で迎撃。ステラは上から射撃支援を頼む」

 

「わかった!」

 

「了解...頼んだわよ」

 

「おうともよ。任せろ」

 

ニアが下がり、俺が前に出る。魔族擬きは正体不明の魔道具を生み出して、切り落とされた左手の断面の傷口を埋めているところだった。四肢再生はされなかったが、これで失血死の道は絶たれたわけだ。

 

「結界の魔道具は...もうどこにあるかわからないな。魔法拡散を仕留める方が良いか...」

 

土に埋まった魔道具を掘り返して見つけ出すのは今からやるには遅い。そんな隙を晒すくらいならば、先に魔族擬きを仕留めるか魔法拡散を展開している魔道具を見つけて破壊した方が良いだろう。

 

「ふぅ...やるか」

 

一歩踏み込み、刀の射程圏内に魔族擬きを入れる。刀を鞘に押し込み、魔道具による魔法を起動...音速の抜刀を放つ用意をする。

 

その瞬間、回避の目が発動する。俺が攻撃される未来...が見えたわけではない。見えたのは、魔族擬きが音速の抜刀を喰らう未来だ。回避の目による攻撃命中確定を取り、俺は音速の抜刀を放つ。

 

ズバンッ!!

 

刀が魔族擬きの腹を切り裂く。元はスライム状であるためか内蔵までは再現されておらず、中身がまろび出ることはない。

 

呆気ないな...

 

と思ったのも束の間。

 

「……っ⁉︎」

 

一瞬視界が揺らいだかと思えば、魔族擬きの腹は綺麗に復元されていた...いや、コレは復元というよりも、元から斬られていなかったかのような...

 

「これって...くそっ!」

 

回避の目によって見えた攻撃を刀で受け止め、後ろに跳んで追撃を回避する。魔族擬きが追いかけてくるものの、上からステラが矢を放ち防御させることで更なる攻撃を防ぐ。

 

「ねぇカリヤ!今のって⁉︎」

 

「ああ...あの指輪だ」

 

魔族の右手に指輪が嵌められていた。あの指輪はおそらく、今ステラが持っているのと同じもの...攻撃を受けた際に過去を改変して防御したことにする魔道具だ。あの魔道具によって、俺の攻撃は元々防御がなされたものとして現在に至ってしまった。だから、過去改変による揺らぎののちに傷が消えたのだ。

 

「ヤベェな...このままだと無限に防御されちまう...!」

 

あの魔道具は夜に魔力を溜め込み、その魔力を全て消費することで過去改変を起こす。そのため、昼は一度しか行使出来ないが、夜には使うたびに魔力を込めれば何度でも使うことができるという特性を持つ。

 

そして、この魔界は永遠に夜。つまり、あの魔族擬きは魔力が尽きるまで永遠と魔道具に魔力を込めて防御したことにできるのだ。複数個の魔道具使用によって魔力はそこそこ消費しているだろうが、魔界の魔素によって回復速度も早いはず。魔力切れは見込めそうにない。このままだと無限防御が成立してしまう。

 

「左手を切られて慌てて使ったんだろうな...クソ、面倒なの作りやがって」

 

魔族擬きを倒すためにはまずあの指輪を破壊する必要がある。やることがどんどん増えてきて嫌になるぜ...つーか、回避の目で命中確定しても無かったことにされることあるんだな...あの魔道具イレギュラーすぎないか?

 

「指輪だけ攻撃するなら...!」

 

納刀し、ダガーを両手に持つ。まずは牽制程度に右のダガーで攻撃を...

 

「っ!」

 

変形した魔道具が俺のダガーを絡め取り、俺ごと投げ飛ばされる未来が回避の目で見える。マズい...そう思って手を離そうとするが、今度はそれによって別の未来が見える。手放したダガーが、空を飛んでいるステラに向けて投擲されて命中してしまう未来だ。

 

だが、この未来はステラにも見えている。手を離したとしてもこの未来は回避できるはず...そう思った途端にまた別の未来が見える。

 

周囲に貼られている結界を、俺らは闘技場のものと近いと言った。闘技場の試合で使われる結界は、飛翔物を反射する性質を持つ。同じ性質をこの結界は持っており、ステラはダガーを回避するものの、結界に当たって反射したダガーが背中に背負っている飛行の魔道具に刺さり機能停止、落下してしまう未来が見えた。

 

複数個の攻撃予知が見えたことによって時間感覚が歪む中、俺はダガーでの攻撃を続け、そして手放す選択を取る。

 

俺が見た未来の通りにダガーはからめ取られ、そしてステラのいる方向に向けて投擲される...が、その隙にもう一方のダガーで攻撃し、変形する魔道具を断ち切る。

 

「チッ!」

 

魔道具がステラに向けてダガーを投擲する前に切断したかったのだが、僅かに間に合わなかった。ダガーは空を飛ぶステラに向かって飛んでいき...

 

パシンッ!とニアの放った鞭によって空中で弾かれる。

 

「ナイス!!」

 

ニアの持つ鞭は、元々は前の俺が使っていたもの。魔力を流し込むことで思うがままに操ることができ、それによって正確にダガーをはたき落としたのだ。

 

そしてちょうど今、魔族擬きの持つ切断された魔道具が消滅する。本来なら壊れても消滅はしないが、魔族としての固有能力で作り上げたものだから損壊によって消滅したのだろう。攻防どちらにも使える手数を一つ減らすことができた。次は、最強の防御を崩す!

 

魔族擬きの右手目掛けてダガーを振る。今の魔族擬きにとってあの指輪は生命線。全力で回避してくるが、すぐに詰め寄って攻撃を続ける。縦振り、横振り、突き、それぞれの組み合わせで少しずつ魔族擬きの回避ルートを限定させ、逃げる方向を誘導していく。

 

「っ、よし!」

 

攻撃しながら落ちていたダガーを回収して二刀流に復帰する。このために魔族擬きの動きを誘導させてもらった。そして、二刀流による手数の多さでさらに魔族擬きを追い詰めていく。新たな魔道具を作る隙すら与えさせずにひたすら攻撃を仕掛ける。

 

「オラァッ!」

 

結界の近くまで追い込んだ俺は、このタイミングでキメの一撃を放つ。

指輪を狙った斬撃。魔道具を破壊するために、速さを重視しながらも重い斬撃を放つ。

 

……しかし、指輪には当たらない。魔族擬きは手を動かして自らの指を切断させたのだ。

 

そして、指輪による過去改変によって指の切断はなかったことになる。

 

「面倒な...!」

 

防がれたことにはなったが、その先にあるのは攻撃が終了したという結果。よって、俺はダガーによる攻撃終了後の体勢になっていてすぐに攻撃に転ずることができなかった。

 

よって、魔道具を作り出す時間を許してしまう。

 

魔族擬きの目の前の空間が一瞬爆ぜるようにして光り、そこに魔道具が生み出される。その魔道具は杖のような形をしており、先ほど破壊された魔道具に代わる武器として生み出されたのだろう。

 

攻撃は間に合わない。そう判断した俺は、すぐさまダガーを振って魔族擬きが魔道具を掴み取った瞬間の隙を狙う。

 

だがしかし、それよりも早くステラの矢が空を引き裂いて放たれた。性格無比な矢は俺と魔族擬きの目の前を通り抜けて生み出されたばかりの魔道具に命中、そのまま貫いて弾き飛ばした。

 

随分とまぁ、神業をポンポンと当たり前のようにやってくれるなと感心しながら俺はそのままダガーを振り抜く。生み出した魔道具を掴み取れなかったために魔族擬きの右手の位置が想定よりずれてしまったから命中はしなかったものの、無理矢理避けさせたことで魔族擬きの体勢が崩れている。

 

「このまま詰めれば...いける!」

 

グッと地面を蹴り、さらに魔族擬きに接近する。ダガーで突きを放ち、右手の指輪の防御に魔族擬きの意識を向けさせる。そして、意識の外から足払いをかけて転ばせる。

 

「取った!」

 

魔族擬きは地面に手をついて受け身を取ろうとしたが、咄嗟につこうとした手は左手...すでに切断されており受け身に失敗する。

 

その瞬間に魔族擬きの右手を掴み、指輪を抜き取る。そしてふっと上に放り投げ、ダガーで切断して破壊する。これで、魔族擬きを守る過去改変防御は消えた。他の魔道具を使われなければ攻撃は通るだろう。

 

「その腕も貰うぞ!」

 

魔族擬きの右腕を引っ張り、胴体を足で踏みつけて身動きを封じながらダガーの一閃を放ち、肘関節を切断する。

 

「っ...チッ!」

 

引っ張った状態で腕を切断したため俺の身体が少し後ろにつんのめったところを狙って、魔族擬きは蹴りを放ってきた。そうくることを回避の目で見ていた俺は、魔族の胴体を蹴り飛ばしながら飛び退くことでその蹴りを回避する。

 

「魔族の形してんのに喋んないの気味悪りぃな...」

 

話の内容から分かる情報は多い。動揺しているかといった精神状態、どれだけダメージが入っているかという疲労度合い、そして次にやろうとしている攻撃方法...などなど、僅かな発話だったとしても読み取れることは多い。

 

それがあるのと一切ないのとだと戦いやすさは大きく変わってくる。喋らない普通の魔物と戦っていると思えば良いだけなのだが、なまじ形が魔族だからそれに合った戦い方をしようとしてしまうため変に厄介に感じてしまう。魔族ほど強力な敵だとそういう手を使わないと勝つのが難しい...けれど、やるしか道はない。

 

相手の次の手を読め。読んで初動を潰せ。目は口ほどに物を言うと言うだろう。声に出ないのなら、目線で心中を読め。次の行動を予測して全て上回れ!

 

「そこだ!」

 

魔族擬きは魔道具を作り出して失った腕を補う義手を嵌めようとしていた。そこに差し込むようにしてダガーを投擲し、腕との接合部に突き刺すことで義手の装着を阻止する。

 

「ステラ!」

 

「うん!」

 

ステラが空中から速射による五本の矢の超速射出をし、魔族擬きを蜂の巣にする。指輪がないため巻き戻って防御されることはない。そして、何か他のものにダメージを肩代わりされるようなことも...ない。ほぼ致命傷に近いダメージがそのまま魔族擬きに与えられる。

 

……しかし、魔族擬きは動き続ける...!

 

「ちょっ...あぶねぇ!」

 

魔族擬きは球状の魔道具を生み出すと、それを足で蹴飛ばしてこちらに飛ばしてくる。魔道具は空中で変形をすると、四方八方に炎を吹き出し始めた。

 

俺は一瞬回避しようかと思ったが、このまま後ろに流すとニアのいる方に向かってしまうし、そのまま結界の端まで飛んでいけば結界の反射作用によって跳ね返ってきてさらに炎を撒き散らすだけだ。だから、左腕の盾で一度受け止め、落ちたところを足で踏みつけて地面に埋めてしまう。

 

「無駄な抵抗を...!」

 

俺から離れようとする魔族擬きに向かって走りながら、先ほど投擲したダガーを回収してその背中に切り掛かる。

 

ザクッ!と背中を切る感触の中に、パキンッと何かを砕いたような感触があった。

 

その次の瞬間、周囲を覆っていた魔法拡散が消滅する。いつの間にか発生した魔法拡散の大元となる魔道具を偶然にも破壊したようだな。どこに隠しているのかと思っていたが、背中側に隠していたとは。

 

「ようやく...私の出番ね!」

 

短時間とはいえ魔法が一切使えないことで鬱憤が溜まっていたのか、明確な殺意のこもった魔法が魔族擬き目掛けて放たれる。

 

「無駄よ!」

 

魔族擬きはまた新たな魔道具を生み出し、それによる効果なのかニアの放った魔法の軌道が捻じ曲がる。しかし、魔法の操作でニアの右に出るものはいない。軌道変更の魔法によって捻じ曲げられた魔法を元の軌道に戻して主導権を取り返す。そして、魔法が魔族擬きの全身を貫く。

 

「これで...終わりよ」

 

地面から杭のようなものが三本現れる。そのうちの二本には、地面に埋まった魔道具が杭の先に刺さっていた。俺が先ほど踏んで埋めた炎の魔道具と、外との出入りを封じる結界の魔道具だろう。そしてもう一本には魔族擬きが刺さっていた。魔力探知で既に魔道具の位置を割り出していたんだな...

 

パキンパキンッと魔道具が割れていき、消滅するとともに炎や結界も消滅する。そして、魔道具たちと同様に魔族擬きも形を崩していき、元のスライムのような状態に戻る。

 

「ふぅ...美味しいところだけ持っていっちゃって申し訳ないわね」

 

「良いよ別に。倒せりゃ過程は問題ない...にしても、なかなかハードな戦いだったな。完全に魔法を潰されるとここまで面倒だとは思わなんだ」

 

前は速度操作による肉弾戦でのゴリ押しがあったから魔法が使えなくとも何とかなる場面が多かったが、速度操作無しの完全物理オンリーだとだいぶ決定打にかけるな。魔法に頼り切りというのも考えものだ...それ以上に速度操作に頼りすぎだったというのもあるが。

 

「ってか、今後もああいう魔族擬きが現れたりすんのかな...どんな固有能力を持ってるのかにもよるが、どいつも面倒なことには変わりないぞ。過去の勇者の記憶で全部カバーできてんのか...?」

 

「どうだろうね...過去の勇者が知っているものしか出ないなら良いけど、勇者が把握する前に討伐された魔族とかもいるかもしれないし、何とも言えないかな」

 

「そうか...もしかしてフロートとかも出てきたりすんのかな。何もストックしてない状態で来てくれるなら良いけど、他の魔族の固有能力を大量にコピーした状態で来られたら嫌すぎないか?」

 

フロートの固有能力は他者の模倣。触れた相手の容姿や魔力、使える魔法などを丸ごとコピーしてストックしておける力だ。ストックした力はいつでも使えるし、致命傷を負った際はそのストックを消費することで生きながらえることもできる。物品の複製や、ストックを消費してその人の複製体を作るといったこともできるが、ストックの消費による残機性が一番ヤバくて、量によっては消耗戦を強いられるため魔族の中では一番厄介である。

 

「んー、でも私の無心の弓があれば問題ないんじゃない?ストックごと打ち抜けるわけだし」

 

「たしかにステラがいれば問題ないけど、分断される可能性は大いにあるからな。例えば、キネットの転移で飛ばされるとかな。魔素しかない魔界ならマジでゼロ時間転移してくるから分断し放題だ」

 

キネットとはサーマルと姉妹の魔族である。キネットは転移の力を持っており、対象と転移先の魔素を置換することで転移を行なっていた。転移先に魔素がないと発動できなかったり発動までに長いタイムラグが発生したりするため、聖域の中には転移出来なかったり聖域展開に弱いという側面を持つが、魔素しかない魔界ならその真価を十二分に発揮することだろう。奇襲や分断はお手の物、直接の戦闘能力ではないものの厄介極まりない。

 

「そっかぁ...キネットが来る可能性もあるんだね」

 

「というか今代の魔族は誰が来ても困るな...今の俺らじゃアクセルを止められる奴いないしいてもギリクミリアか...一番マシなのがサーマルなの辛いな」

 

アクセルは超身体能力強化の固有能力を持っており、音速での戦闘を得意とする俺のライバルと言って良い存在だ。当然速度操作を持っていた俺が相手をしていたわけだが、もう速度操作を持っていない俺では相手にならないだろう。クミリアでもギリ戦えるかどうか...クミリアを信じていないわけではなく、それほどまでにアクセルは強いのだ。

 

「今代の魔族はいないと信じるしかないな...まぁいたならもう転移でキネット辺りが仕掛けてきていてもおかしくないし、いないと考えて良いだろ、うん」

 

「希望的観測がすぎるわね...けれど、いたらどうしようもないから考えないというのには賛成よ。目の前に現れたその時に考えましょう」

 

「だなぁ...案外、知らない魔族の方が面倒な可能性あるしな。どうせ来るかわからないし考えるのは後回しにしよう」

 

来るかもわからない攻撃を警戒するのも馬鹿らしい。変に集中を散らして目の前の敵に意識が向かないのも困るから一旦魔族関連のことは忘れてしまおう。

 

「そんじゃっ、先に進むか」

 

「小休憩はいるかしら?」

 

「いらないかな」

 

「一番動いたカリヤがそうならいらないわね。月もかなり傾いてきたし、完全な夜になる前に進めるところまで進みましょう」

 

「だな。いやぁ、魔族擬きと戦ってる間に夜にならなくてよかったぜ...」

 

そう言って俺が歩き出したその時だった。前を歩いていたニアがギョッとした表情を浮かべながら振り向いた。

 

それに釣られて俺も振り向くと、目線の先には先ほど倒して元の姿に戻ったスライムがいた。そして、そいつはウヨウヨと動いて先ほどとは別の人型を撮ろうとしている最中だった。

 

「ちょっ...まだ生きてんのかよ!」

 

「また別の魔族にでもなるつもり...?何に変わろうと、すぐ潰す!」

 

ニアの放った高速閃光が人型になりかけたスライムを撃ち抜いて形を崩す。

 

……しかし、しばらくすると飛び散ったスライムが集まりだし、再度人の形を取ろうとする。

 

「こいつ不死身かよ...!」

 

「ふんっ!」

 

「セイッ!」

 

クミリアとライトがそれぞれ攻撃を与えてスライムを飛び散らさせる。しかし、それらは一時的な変身封じにしかならず、しばらくするとまた変形しようとしてしまう。

 

「斬撃も打撃も無駄か...!」

 

「返信を試みるたびに魔力は削れているようだけれど、このペースだと魔力を削り切る前に夜が来てしまうわ」

 

「チッ、早めに蹴りをつけるか、一旦退却するかの二択か...」

 

倒せるに越したことはないが、もし倒しきれずに退却した場合、それまでの攻撃は全て無駄になってしまう。そして、魔界に戻ってきた後、どこかのタイミングでまた魔族擬きとの戦闘が始まることとなる。動きを封じて先に進んでしまうというのも手ではあるが...

 

「そんなの、すぐに倒すの一択でしょ!」

 

そう言ってステラは弓を構えるような仕草を弓を持たずに行う。無心の弓の発動動作だ。無心の弓による矢に触れたものは全て消滅する。この一撃でスライムを消し去ることができれば、復活を許すことなく消滅させられるだろう。

 

しかし、スライムも黙ってみていることはしない。無心の弓の危険性に気が付いたのか、変形を取りやめてスライム状のままステラに飛びかかろうとする。そういう未来が、回避の目によって共有された。

 

「やっと、僕の出番だ」

 

回避の目による未来を見て、レストが飛び出した。両腕の盾を合わせて一つにすることで、あの古代道具の真なる力が発揮される。魔法起動に必要な魔力が吸い寄せられ、巨大な半透明の盾が広く展開される。

 

広く散らばって全方位からステラに襲い掛かろうとしていたスライムが、その軌道を変えてレストの盾に吸い寄せられていく。攻撃の誘引によって、散らばったスライムが集まっていきひとまとまりの状態で盾に衝突する。

 

完全反射。起動の瞬間に放たれている攻撃全てを引き寄せて展開した盾で受け止め、その全ての威力を攻撃者にノータイムで反射するという最強の反撃。これによって、スライムはひとまとまりになった状態で後方に吹き飛ばされる。

 

「あとは頼むよ」

 

お膳立てが終わったレストは横にはけてステラの射線を確保する。

 

「任せて!」

 

矢を引き絞るステラの手が離れ、無心の弓が空を引き裂き飛んでいく。飛んで行った矢は塊となって吹き飛んでいったスライムの全身を貫き、丸ごと消滅させる。

 

「ふぅ...いっちょ上がり!」

 

完全にスライムが消滅したことを確認したステラが、ほっと胸を撫で下ろしながら言う。

 

「相変わらず殺傷力ヤバいな...それと、ナイスサポートだレスト」

 

「ここまで何一つできていなかったからね。位置の入れ替えに利用されたくらいだったからようやく仕事できてホッとしたよ。魔力はそこそこ使っちゃったけど」

 

完全反射はその威力からも察せられる通り、大量の魔力を消費する。右腕の盾による魔法吸収で貯蔵した魔力を使うのが想定された使い方であり、自身の魔力のみで発動させると結構な量を持っていかれてしまう。まぁ今回の敵は普通の魔法を使ってこなかったから自身の魔力を使うのは仕方ないと言えよう。

 

「魔力消費か...休憩いる?」

 

「多分平気。どうせすぐに夜になるし」

 

「わかった。それじゃあ進むか。一応周囲警戒な」

 

もうすぐ夜になるが、進めるところまでは進もうと俺たちは先を急ぐのだった。




前作に登場した魔族の振り返りを色々としましたが、果たして出てくるのでしょうか...?
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