神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8208字

テスト期間中に二週間近くかけて書いた話なのでクオリティが...けどそれなりに話が動く回でもある。


伝わる情報、全速急行

「よーし怪我見せろ」

 

結局魔族の記憶を消せたかどうか分からずじまいなためもう考えるのをやめた俺は、自分の怪我を回復弾で回復させるとそのままハントの元に向かった。

 

「うわー痛そ。鎌鼬喰らった後そのまま墜落してたからな...土ついてるし一旦洗うか」

 

魔力銃をもう一本作り出すと、引き金を引いて水を水圧弱めで射出し、ハントの傷口についた土や植物片を洗い落とす。

 

「ハル姉は...?」

 

身体をなんとか起こしながらハントは俺に聞いてきた。まだそんな動こうとしなくていいのに...

 

「あの位置からじゃ見えなかったのか...逃しちまったよ。もう一人魔族がいてな。異なる空間をつなげる能力を持ってるようで、それで逃げられちまった」

 

「そう、なのか...」

 

「けど、能力の解除は無理矢理させたぜ。とりあえず最低限のノルマは達成したわけだ」

 

「……それってどういう...?」

 

困惑しているハントの額に魔力銃を押し当て、引き金を引く。回復弾がハントに刻みつけられた第三の目に命中し、その傷を癒す。

 

「治っ...た?」

 

「魔力弾を...つってもわからないか。まぁ前にお前に撃ち込んだのと同じやつを奴の身体に流し込んだんだ。それで能力が解除されて、この村にいる人につけられた第三の目は全部治療可能になったわけだ」

 

「それは...本当なのか⁉︎」

 

「ああ本当だ。現にお前の傷は治ってるだろ?」

 

「じゃあここから外に出れるのか⁉︎」

 

「あー...それはわからんな。魔族の仕業だったことを証明できればいいけど、正直それは難しい。第三の目がないことをアピールしても、何かしらの能力で隠したのかと疑われるだろうしな。だからすぐに出られるって保証はできない」

 

「そっか...でも、出られる可能性はあるんだよな?」

 

「まぁあるだろうね」

 

よっしゃあ!とガッツポーズを取るハント。前向きで良いねぇ...ってかこの世界にもガッツポーズはあるのね。

 

「ああ、そういやだけどハントってあの魔族の名前ってハルだと思ってた?」

 

「違うのか?そう名乗ってたけど」

 

「本当の名前はハルラって言うらしいんだ。もう一人の魔族がそう呼んでいたよ。偽名を使ってたってわけだな...結構用心深い奴だなあいつ」

 

戦闘時のあの表情を見てハントはとても驚いていたから、普段はもっと違う性格で通していたのだろう。能力が幻覚や記憶操作といった人の認識に干渉できるようなものじゃないから、能力抜きで本性を隠して人に接する必要があったはず。それで今まで疑われもせずにここにいたわけだから、かなりの演技上手だな。

 

「まぁ何はともあれ、ひとまず撃退できたことを喜ぶか。殺せなかったし、顔を見られたかもしれないけど、こっちも二人の魔族の顔と能力を把握できたしな。アドバンテージはかなりあるはず...とりあえずみんなを治して回るか。着いてきてもらうぞハント。お前がいてくれた方が話が早い」

 

ハントについてきてもらい、俺らの戦闘を遠くから眺めていた村の人たちの元に向かう。そこでハントに諸々の事情を話してもらい、俺が回復弾を使って第三の目を消して回った。

 

「そーいやこの人たち全員マルチなんだったっけか...マルチをこうやって隔離して、魔族たちになんのメリットがあったんだろ...」

 

回復弾を撃ちながら思考を回す。戦闘前に少し考えてたけど、その目的に関してはあまり考えていなかったよな。

 

わざわざ殺すのではなく、第三の目に見える傷を作って魔族だと思わせて隔離させるという面倒な手を使っているのも気になる。ただ殺すだけだと、マルチが次々と殺害されていくことになるから不自然で魔族の関与が疑われてしまう。だから魔族だと思わせることで人間の手で合法的に処理をする...って感じなのかもしれないが、生かすことがメリットだという可能性も考えられる。

 

例えば、フロートのような模倣能力。他にも洗脳によってマルチの奴を操って能力を使うってのも考えられるな。そうでもないと生かして隔離のメリットが無い...

 

……いや待てよ?隔離ってのはあくまで人間側が決めたことだ。魔族側はすぐに処刑されると踏んで第三の目を刻んでおり、その思惑が外れて隔離になった...うん、あり得るな。

 

いやまぁ正直そこはどっちでもいい。一番気になるのは、なぜマルチだけを狙ったのかということだ。強い能力者を排除することで、魔族に対抗できる人間を減らす...ってのが一番妥当な線だけど、そもそも魔族だってバレなければいいんだから、わざわざこんなことする必要ないような気もするんだよな...

 

「……あーダメだ。全部妄想の域を出ねぇや」

 

圧倒的な情報不足。魔族たちの目的やその思考ルーチンの把握ができてないせいで、奴らのしたことの意図を汲み取るのは無理だな。聖杖世界じゃ魔族たちとそれなりに関わりがあったから、次の手を読んだり謎の行動の意味を察せたりできたけど、この世界じゃ出会ってすぐ殺していたからそんな関係性は無い。人読みは不可能に近い。

 

「しゃーない切り替えてこ...ってわけで治療完了っと」

 

最後の一人の治療が完了した。これでもう魔族だと勘違いされることはないだろう。しばらくは疑われるだろうけど、元々素行も良かったらしいしいずれ解放されるだろうな。

 

「んじゃあそろそろ俺外に出るわ。このまま中にいて、外にいたあいつの見回りに見つかる...みたいなことは避けたいからな」

 

建物が切断されて倒壊した時の音や、俺の拳銃の発砲音だったりとそれなりに大きい音は出てしまっている。あの見張りの性格からして中に入って確認したりはそうそうしないだろうけど、万が一ってこともある。音がしている最中は巻き込まれないためにその場に止まり、騒ぎが収まってから見に来るってことも考えられるしな。早々に俺は退散するとしよう。

 

「あとはお前らでなんとかしてくれ。じゃあな」

 

魔力銃をワイヤーモードに切り替え、壁に向けて撃ち込み上まで移動する。そして魔力銃のマガジンを重力操作に切り替えて壁に撃ち、安全に下まで降り...

 

「おい!ちょっと待て!」

 

降りようとした時、後ろから声をかけられた。ハントが俺を追って飛んできたのだ。

 

「どうした?」

 

「そういえば聞いてなかったと思って...名前、教えてくれ」

 

「それを言うためだけに追ってきたのか...?まぁいい。俺の名前は仮谷だ。別に覚えなくていいぞ」

 

「カリヤ...なぁカリヤ!」

 

「なんだ?」

 

「何か困ったことがあったら呼んでほしい。色々としてもらった礼がしたいんだ。魔族と戦う時とか、気軽に頼って欲しいんだ」

 

「……断っても無駄かな。わかったよ。でも、呼んだところでどうせ遠くて来れないだろうけどね」

 

「僕に伝わりさえすれば、僕はどこにでも飛んでいくよ。テレパスの力を持つ人に頼むとかしてくれれば、絶対にカリヤの所に行く」

 

「テレパスか...」

 

一応知り合いに一人テレパスの能力者がいる。ドンカラのアンスがそうなのだ。相手がテレパスの能力を持っていなくとも、繋がりさえすれば双方向のやり取りが可能らしく、その能力を使うことで他の町にいるドンカラの仲間と連絡を取り、必要な荷物を聞き出して輸送するものを決める...と結構重要な役割を担っているようで、前に聞いた時驚かされた記憶がある。

 

「機会があったらそうさせてもらうよ。そう言ったからには、絶対に来てくれよな?」

 

「ああ。絶対に行く」

 

「頼んだぜ〜...じゃあ、今度こそまたな」

 

ハントに別れを告げた俺は、壁に向いた重力を利用して垂直の壁を下っていき、地面に降り立つ。

 

「よし、とりあえず戻るか。そろそろ時間だしな〜」

 

前にドンカラの商店から買った懐中時計を見て、もうそろそろ仕事に戻らないといけない時間だなと確認する。

 

太陽を見ても時間を把握することができないから、時計ってこの世界で一番重要なんじゃね?と思いながら、俺はスイレイの町へと歩いて戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーっすただいまー」

 

「おかえ...ってお前どうしてそんなにボロボロなんだ⁉︎」

 

「うおっ、そういや服はそのままだったか...」

 

アンスに驚かれて、俺は先の戦闘で服がボロボロになっていることをようやく認識した。地面転げ回ったり建物が倒壊してきたりとまぁ色々あったからなぁ...ってか、あの魔族に服を粉微塵に切り刻まれなかったの軽く奇跡じゃね?初っ端全裸にされてたら戦えなくなって死んでたな...してこなかった理由があるのかもだけど、一応また会った時は気をつけておくか。

 

「ちょっと魔族と戦っててな。もう一体空間置換の能力を持った魔族が出てきたせいで逃げられちまったが、まぁ目的は一応達成できたからオーケーだ」

 

「そ、そうか...上で着替えてきな」

 

「おう、そうするわ」

 

事務所の上の階へと向かい、空いている部屋の中に入る。それまでの間に俺のことを見て驚いていた人が何人もいたけど、俺は気にしないことにして着替えに入った。

 

「流石に服を直す魔法をマガジンにした奴はいねぇか...」

 

もったいないから直せるのなら直してやりたいが、どうやら聖杖世界には物を直す魔法の魔法陣をマガジンに刻んだ奴はいないようで、魔法で直すことは出来なかった。需要が無いんだろうなぁ...と思いながら、持っている別の服に着替える。ボロボロになった服は、後で誰かから針とか糸を借りて自分の手で直すとしよう。

 

「よいしょっと...よし、仕事するか」

 

この町とあの隔離された村の中にはもう魔族はいない。ここに滞在する間はドンカラの仕事に専念することにしよう。まぁ空間置換を使って戻ってこないとも限らないけど、とりあえずは魔族のことを忘れてしまおう。

 

「なぁー俺は何をすればいいんだー」

 

階段を降りながら、下にいたアンスに声をかける。

 

「……?」

 

返事が返ってこなかった。なんか、突っ立ったままボーッとしてる?

 

「どうしたーアンス?おーい?」

 

顔の前で手を振ってやるが、反応を示さない。ほんとどうしちゃったの...?

 

「や...」

 

アンスがゆっくりと口を開いて、言葉が漏れ出る。

 

「や?」

 

「やばい...ことになった...っ!カリヤ!今すぐ事務所の中にいるみんなを呼んでくれ!外に出てる奴らは俺が呼ぶ!」

 

俺に気づいたアンスは焦った様子で指示を出してくる。

 

「すまん呼ぶのはいいんだがなんて言えばいい?ってか何があったんだ?」

 

「ああ、えっと...センフリで戦争勃発、武器防具と食糧色々詰め込んでセンフリに向かうから急いで準備!こう伝えてくれ!」

 

「センフリで...戦争⁉︎」

 

あの町は隣国との境界に近い場所にある。隣国と戦争が始まってあの町が戦場になった...?もしや、あの町にいた魔族たちがやってた細工ってこの戦争を引き起こすため⁉︎

 

「わかった!伝えてくる!」

 

アンスに向かってそう叫ぶが、アンスはまた上の空みたいな様子でぼんやりとしていた。さっき外にいる奴らは俺が呼ぶって言ってたけど、一歩も動いていないぞ...って、そうかテレパスを使っているのかそれなら納得だ。

 

「って、そんなん考えてる場合じゃねぇ!」

 

俺は事務所内を駆け回り、アンスが言ったことを伝えて回った。アンスからの伝言を伝えると、みんなはすぐに準備に動き出していき、事務所内がドタバタと騒がしくなってくる。

 

「……これで全員か...?」

 

中にどれだけ人がいるのか把握してないが、多分全部の部屋を回ったはず。俺が伝えた人から別の人への伝達もあるだろう。これで事務所の中にいる人は全員呼べたと思う。

 

「全員呼んできたぞアンス!もうみんな動いてる!」

 

階段を駆け下りながらアンスに報告する。

 

「でかしたカリヤ!俺らも準備するぞ急げ!」

 

慌ただしく動き回るみんなに紛れて俺も馬車の荷台に積荷を乗せていくのを手伝う。おそらくここの貿易港から仕入れてきた商品がほとんどなのだろう。ここまでに来た町では見たことないものが大量に積まれており、全て高品質なように見えた。

 

「よし、第一陣はこれで十分だ!カミレとペトラが戻ったらすぐ出発するぞ!」

 

「今戻ったで!ユーリとペトラも一緒や!」

 

「じゃあここからここまで一気に運ぶぞ!みんな乗り込め!」

 

アンスの指示で馬車に飛び乗ると、そのまま即座に発進して事務所の外に出て、そのままスイレイの町から出て行ってしまった。

 

「……よし、出発できたな。ようやく気を緩められる...カリヤありがとうな。何が何だかわからなかっただろうに、よくついてこれたな」

 

「早く考えて速く動くのは慣れてるもんで...けど、色々と説明はしてもらうぞ。まず、あのボーッとしててどこか虚になってる最中はテレパスを使ってる...ってことでいいんだよな?」

 

「ああ。送受信をしている最中は普通の五感がうまく機能しなくてな。何が起こっても気づけねぇんだ」

 

「なるほど、んでそのテレパスの受信でセンフリがやばいってことを知れたと...具体的な状況はどんななんだ?」

 

「まず、隣国の軍がセンフリ近くの高原に陣地を形成したのをセンフリの監視が発見した。それでセンフリも軍を出動させて、門の前で待機させている...って感じらしい。今はまだ様子見が続いているけど、いつ戦いの火蓋が切られても不思議じゃない」

 

「だから始まる前に急いで運んでるってわけね。にしても、マジで戦争が起こっちまうとはな...それも、人対人の...」

 

俺にとっての戦争は、人間対魔物と魔族によるものだった。相手が人間じゃないから、容赦なく攻撃できたし殺すこともできた。だからこそ思う。なんで人同士で戦争なんてことができるんだよ...

 

「カリヤからしたら、魔族っていう人類共通の敵がいるのに何をやっているんだって感じだよね多分」

 

「まぁ、な。これが魔族によって引き起こされたものじゃなけりゃ、人間ってなんで愚かなんだって絶望していたところだよ」

 

「……そういや、カリヤはセンフリにいた魔族が戦争を引き起こすために行動をしていたって考えていたんだったか。だが、魔族はもう倒しただろ?」

 

「センフリのはな...多分、隣国にも魔族がいたんだよ。たとえ魔族によってセンフリの兵力が落ち込んでいたとしても、隣国が動かなけりゃ何も起こらない。双方の内側から干渉して戦争を引き起こすのか確実だからな。あっち側にも魔族がいると考えていいはずだ」

 

「きっかけも無しに戦争は起こらないからな...って、もしかしてカリヤは戦争に関与する気か?」

 

「もちろんそのつもりだ。戦場に魔族がいたら殺しにいくし、魔族がその場にいなくとも混じりにいく」

 

「……なんで?魔族がいたならまだしも、いないならカリヤが行く意味はないのでは?」

 

「この戦争は魔族がいなければ起こり得なかった戦争...だと俺は思っている。この先起こる可能性はあったかもだけど、少なくともこの瞬間には起こらなかったはずだ。だから最小限の犠牲で止めてやる。魔族のせいで世界が歪むのは避けたいんだ」

 

魔族を全て始末すれば世界のズレはおおよそ取り除かれるものの、魔族のせいで人の生き死にが変わってしまえばそれも世界のズレとなってしまう。もちろん、戦争だから全員無事で終わるだなんてことは考えられないし、そのまで最善を尽くせるとは思っていない。できる限りの最小限を目指して、出来るだけ頑張ることしかできない。

 

「……止めても無駄なんだろうな。あんだけ強い力を持ってるお前が死ぬなんてこと考えられねぇが、一応言っておく。死ぬなよ」

 

「問題ない。人同士の戦争の経験はないが、それ以上の修羅場は幾つも潜り抜けてるからな。今更こんなので死ぬほど俺はやわじゃない」

 

まぁ、ついさっき魔族との戦闘に実質敗北したばっかだから、油断はしないようにするけどさ...

 

「……ってかさ。死ぬで思い出したんだが、こんな全速力で走らせても大丈夫なのか?馬が先に死にそうなんだが...」

 

いくら急いでセンフリに向かわなきゃいけないと言っても、こんなに全力で走らせたら到着よりも前に馬が潰れると思うんだが。だいぶ多くの積荷を積んでるから、いつもの速度で走らせるのでも無理をしてるって言えるくらいなのに...

 

「その心配はないよ。カミレとペトラが頑張ってくれてるからね」

 

「あー...なんかの能力か?」

 

そういやペトラの能力って聞いたことなかったな。なんの能力なんだろ...

 

「カミレの能力が生き物を使役する力っていうのはカリヤも知っていると思うけど、実は使役した生き物の疲労を肩代わりすることもできるんだ。それでこの量の荷物でもこの速度で走らせることができる」

 

この数の馬の疲労を全て肩代わりだと?何台もの馬車を一気に操っているから、その数は十数頭にも及んでいる。それだけの疲労を肩代わりしたら卒倒すると思うんだが...

 

「……もしかして、ペトラの能力って人を癒す感じ?」

 

「当たらずとも遠からずって感じだね。ペトラの力は疲労の除去。触れた相手の疲労を吸収して球状の物体に変換できるんだ。まぁその疲労は誰かが消費しないといけないんだけど、いつもはペトラが休憩するときにすぐに眠るために自分で使ってるね。盗賊が出た時はそっちに押し付けることもあるけど」

 

「へーこっちはメインの能力が疲労の肩代わりなのか...なるほどな」

 

馬たちの疲労をカミレが一つに集め、それをペトラが除去。そうやって無理矢理馬たちを回復させて走らせ続けてるわけか。

 

……なんか、この四人が一つのチームになっている理由がなんとなくわかってきたな。ユーリが千里眼を使って遠くの状況を視認して盗賊の有無を確認する索敵役。アンスがテレパスの能力で他の町にいる仲間から注文を受けて、動物をを使役できるカミレの能力を使い一気に荷物を載せて大移動、急ぐときはペトラの能力で回復して全速力の移動。うまくまとまったいいチームだな。強いて言うなら盗賊が来た時に無力だってのがあるが、それも俺がいるから解決...完全無欠じゃん。

 

「……んで、この速度だとどれくらいでセンフリに着きそうなんだ?」

 

「真っ直ぐセンフリに向かうルートを通るから、特にトラブルがなければ二、三時間ってところだな。着く前に戦争が始まってなきゃいいんだが...」

 

「二、三時間か...俺やることないし、少し寝るわ。魔族と戦った疲労を回復させなきゃだしな。何かあったら起こしてくれ」

 

「寝るんだったらいくつか使ってちょうだい!その方が早く眠れて疲労も抜けるわ!」

 

「そりゃありがたい。んじゃ使わせてもらうわ」

 

ノールックでペトラが投げてきた疲労の塊を受け取る...なんだそのげん○のかたまりの対義語みたいなものは。

 

とかそんなつまらないことを考えているうちに、塊は俺の中に染み込んでいった。ほどよい疲労感に襲われて、俺は即座に眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

常に太陽が真上にあり、明るいため眠りが浅かったのかもしれない。俺はセンフリに着く直前に、自然と目が覚めた。

 

「おぉーすっげ疲労ないわ」

 

「入り込んだ疲労は比較的すぐに抜けていくんだけど、その時元々その人の中にあった疲労も一緒に抜けていってくれるのよね。疲れが取れてよかったわ」

 

どうやらもう馬の疲労吸収はしてないみたいで、ペトラは俺の真正面に座りながら俺の呟きに答えた。

 

「さて、ここからが本番よ。事務所にいる人たちと協力して荷物を待機している軍のところに運ばないといけないわ」

 

「そうか...まだ戦争は始まってないんだな?」

 

「ああ。ちょうどさっき確認したが、まだ動きはないらしい」

 

「オーケー...一つ、みんなに報告しておく」

 

「……まさか」

 

「そのまさかだ。予想通り、魔族がいやがるようだ。距離的に、こちら側の陣営にはいなさそうだな。隣国側に三人いるらしい」

 

「三人も...!」

 

「ああ。だから武器の搬入が終わったら俺を自由行動をさせてくれねぇか?」

 

「もちろんだ。死ななければなんだってしてくれていい」

 

よし、了承を得たぞ。即刻魔族を殺してこんな戦争終わらせてやる...!

 

「今からセンフリに入るで!アンスのおかげで顔パスやからすぐ奥まで突っ切るさかいいつでも動けるよう準備しときや!」

 

非常事態なこととアンスがテレパスで連絡していたこともあり、検問を素通りして中に入れるらしい。ってか、さらりと能力無効化の首輪も無視してる?まぁありがたいから気にしないでおこう。

 

……人間同士の戦争が、もうすぐ始まるからな。無駄なことは全て忘れて、目の前の出来事に集中することにした。




展開が早すぎるような気がしないでもないですが、まぁ一つの世界で四、五十話いっちゃったら流石に長すぎるのでどんどん進めていきます。
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