神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8138字。

微戦闘と移動回。


逃走魔族と起爆魔法

「今考えても、あの回復方法でどこも異常がないっておかしいわよねぇ...」

 

「いつまで言ってんだよ」

 

今は、元の世界に戻って身体検査と休憩を済ませた後、魔界に戻ってきて南に向けて次元転移による移動中である。そのため、身体検査からすでに結構経っているのだが、まだニアに訝しがられている。

 

「たしかに俺もさ、速度操作であそこまで綺麗に治せるとは思ってないよ?けどさ、実際に治ってるんだし、きっと何か魔王がしたんだよ。それで良いだろ?」

 

「その何かが気になるのよ...人体の自然治癒能力を速度操作で加速させたとしても、完全に治すなんてことは不可能。どこかに異常が出るか、傷跡が残る...はずなのに、傷跡すら残らない完全治癒なんてどう考えてもおかしいもの」

 

「って言われても、何も手掛かりないんだしさぁ。なんか速度操作と魔法を同時に使えるようになってるっぽいし、治癒魔法も同時に使ったんだろ。魔王しか知らない古の魔法とかあるのかもしれないし、考えるだけ無駄だって」

 

「そうは言っても、異常は徹底的に調べたほうがいいわ。どうするのよ?私にも気付けないような細工が施されていて、いつでも魔王の意志一つでカリヤの身体の一部が爆散して強制的に意識を持っていかれる...そんな状態だったら」

 

「……よくそんな発想できるな。恐ろし!」

 

「私に恐怖を抱くんじゃないわよ...それにこういうこと、私じゃなくてカリヤが思いつくようなことでしょうに。この発想に至らないなんて、衰えたんじゃない?」

 

「なんか急に貶されたんだが?...まぁ、その可能性はないと思うぞ。もしそんな細工がされていたら、その時点で爆散の未来を回避するために回避の目が発動しているはずだ」

 

「不可避の攻撃で見えてないってことはない?前もそれで喰らっちゃったわけだし...」

 

「その可能性もあるけど...そもそも、そんな細工を身体に施してるのなら俺自身がそれに気づけないわけない。完全なる異物が身体の中に入っているわけだからな。魂への細工でなけりゃ分かるぞ」

 

「……魔王に寄生されていたことに気付かなかったくせに、と言おうと思ったら先に潰されたわね」

 

「そんなことを言われることくらい先読み出来るさ。あんま舐めるなよ〜」

 

そんな話をしていると、シレンの穴の試練中に作り出した次元転移のゲートのある場所が見えてきた。

 

「そういえば、魔界でも雷って降り続けているのかな?」

 

これから出る場所は、元の世界では神の怒りの降り注ぐ荒野...つまりは雷が常に落ちている荒野である。雷が降ることによって生じる妖精がエネルギーを循環させることで、永遠と雷が落ちては天に戻っていくのを繰り返している。

 

そんな場所なのだが、果たして魔界でも同じように雷が降っているのだろうか?町が再現されているのを見るに、元の世界と魔界は建造物や自然物がリンクしていると思われるのだが、雷はこの聖杖世界においては女神の力と密接に関わっているため魔界でそれが再現されているかは微妙だった。

 

「ちょっとライトかクミリア、先に外に出て確認してきてくれ。雷降ってるならそれ相応の対策が必要だからな」

 

二人は全身に雷を流すスキルである雷装を会得している。それの発動中は雷が直撃してもノーダメージでいられるため、斥候には適任だ。

 

「わかった、僕が行ってくるよ」

 

ニアが開いたゲートを通って、ライトが魔界に戻る。そして、しばらくするとライトが戻ってくる。

 

「大丈夫だったよ。雷どころか雲も無かった」

 

「そっか、それなら良かった。それじゃあ行くとしますか」

 

安全が確認できたので、全員で魔界に戻る。

 

「おぉ、たしかにあの荒野だけど、雲ひとつないな」

 

空を見上げると、他の場所と同様に星空が広がっていた。元の世界じゃ常に雷雲に覆われていたから、だいぶ印象が違って見えるな...

 

「……魔界でも雷落としたら循環するようになんのかな?」

 

「さぁ?魔力の無駄だから検証する気にはならないわね」

 

「ああでも、妖精が現れるのかどうかだけでも検証しておこうぜ。ニアの戦力の一部なんだし」

 

ニアは雷装は使えないものの、魔法で周囲の気候を操ることで雷雲を生み出し、擬似的に雷を操ることが可能である。さらに、その雷によって生じた妖精を操ることもでき、生じる三種の妖精は強力な攻撃手段であり雷への防御手段でもあった。

 

「流石に出せると思うけれど...」

 

そう言いながらニアは魔法を発動し、小さな雲を生じさせる。雷の発生条件を整え、小さく雷を落とす。

 

「……テトラが生まれない...⁉︎」

 

本来ならば雷の軌道上に生じる、赤い正四面体の妖精であるテトラが生まれてこなかった。同時に着弾点付近に発生する、黄色い球体のスフィアや白い立方体のキューブも出てくることはなかった。

 

「どの妖精も出てこないな...この程度の雷でも現れるはずだよな?」

 

「そのはずよ。魔界では生まれない...そんなことあるのかしら?」

 

「雷は女神の力と密接に関わっている。そして、雷に関係している妖精たちも女神関連だとすると、女神の力が及ばない魔界では妖精が生まれることはない...ってな理屈だろうな」

 

「妖精が出てこないのはそこそこ面倒ね...妖精がいるから、雷雲の維持に魔力を使わずに済んだというのに」

 

三種の妖精のうちのキューブは、雷のエネルギーを増幅させて雷雲に返すという役割を持っている。それを利用することで、雷雲を作って一回雷を降らせたら、あとは妖精たちの作用によって自動的に雷雲が保たれ続けるようになるため雷雲の維持のために魔力を消費する必要がなくなるのだ。

 

だが、妖精たちが生まれてこないのなら自力で雷雲を維持する必要がある。ニアの魔法適性ならば、維持させ続けるのにそこまでまま力を消費することはないだろうが、消費があるのとないのとでは大きく変わってくるため手痛い弱体化と言えよう。

 

「スフィアの爆発とか、テトラの変形による武具の生成とか、キューブの砲撃とか、それらが使えないのってかなり痛いな...」

 

「まぁ雷そのものは使えるしさして問題はないわ。より威力を強めたプラズマも使えるしね」

 

「ニアが問題ないっていうなら構わないが...あれ?今ふと気づいたんだが、そういやあの黒竜に対して俺ら一切雷で攻撃してなくね?」

 

「言われてみれば...そうかも?」

 

「普通の攻撃が効かないってんなら真っ先に試すべきだよな雷は...何で忘れてたんだ?」

 

「レストのカウンターとか私の無心の弓が弾かれて、みんな動転しちゃってたのかもね...」

 

「当たる当たらないは別にしても、試すべきではあったよな絶対。ライトの勇者専用雷魔法もそうだし、あとは水素爆発とかも試すべきだったな...」

 

水に雷装などの雷を流し込むことによって電気分解を起こし、水素と酸素に分解、そこに着火することによって生じる水素爆発は、この聖杖世界ではそれなりに特別な意味を持っている。

 

水素爆発が起こると、その箇所だけマナ...聖素と魔素が存在しなくなる。消滅するのか、それとも爆風によって吹き飛ばされているのかはわからないが、重要なのはマナが無くなること。これにより、爆発範囲内にいる人間や魔物は、聖素や魔素から受けられるバフを受けられなくなる。また、マナがないことで別の物理法則が適用されることもあり、結果的に大ダメージを負うことになる。

 

この性質は、シレンの穴の魔物が使ってきたことから想定された挙動であり、勇者パーティーが身につけるべき武器であると考えられる。魔素を排除しながら攻撃できるこの攻撃は、魔素しか存在しない魔界ではかなり重要になるはずだ。もしかしたら、水素爆発だったら結界に弾かれずに攻撃を通せたかもな...

 

「今更悔やんでも仕方ないわ。悔やむくらいならあの白竜に全てぶつけてやりましょう」

 

「だなぁ...そのためには、まずは辿り着かないとだが」

 

ここから白竜がいる女神の山まではまだそこそこ距離がある。とはいっても、ガルムから魔王の山までと比べると短いから、一度夜を越すくらいでたどり着けるかなといった感じだ。

 

「……そんで、またまた登場ってわけか」

 

話をしていると、そーっと近づいてくる魔物が一体...あのスライム状、おそらく魔族擬きだ。

 

「変身前に仕留める!」

 

そう言いながらステラは恐るべき早業で矢を魔族擬きに向けて放った。一瞬遅れてニアも閃光を放ち、魔族擬きを変身前に仕留めにいく。

 

「速っ!当たんない...!」

 

スライムは変身を続けながら二人の攻撃を華麗に避けていく。

 

「追尾カスタム付けているのによく避けるわね...!」

 

ニアの放つ閃光には追尾機能がつけられていた。にも関わらず、魔族擬きは回避に成功し続ける。命中の直前に避けることで追尾し切る前に閃光を地面に当てさせて、閃光を消滅させているのだ。タイミングが少しでもズレれば、地面にぶつからずに追尾し続けるか被弾してしまう。そのギリギリのところを、何度もうまく誘導して回避している...擬きとはいえ流石は魔族といったところか。

 

「回避特化の能力でも持ってんのか?それとも、単純に逃げ足が速いだけか...」

 

そうこうしていると、魔族擬きの変身が完了する。

 

「……あの魔族は...」

 

ライトが過去の勇者の記憶を頼りにして魔族の正体を暴こうとする。

 

その時だった。

 

「っぐ...イヴェ?」

 

一瞬の頭痛とともに、目の前の魔族擬きに対する既視感を抱く。そして、自分でも気づかないうちに声が漏れていた。

 

「奴は...イヴェ。逃走、回避の固有能力を持つ魔族...チッ、こりゃ魔王の記憶か?」

 

「……その情報が真実ならば、異常なまでのあの避け様にも納得ね」

 

「その回避の力はどこまで働くの?」

 

「普通なら絶対当たるような攻撃だろうが避けてくるらしい。絶対に逃走できるルートを確保する力...と言えば良いかな。時には攻撃の軌道を捻じ曲げることもあるようだ。そして、その回避ルートにいる奴には絶対に攻撃が当たらない」

 

「へぇ...たしかに当たらないようね」

 

ニアは閃光を撃ち続ける。先程までよりも追尾性能が上がり、ほぼ直角に曲がり標的まで最短距離を進めるようになって地面への衝突が起こらないようにされていたが、それでも魔族擬きに閃光が当たることはなかった。

 

接近の途中で不自然に減速するだとか、ギュン!と曲がって地面を撃ち抜くだとかが起こってしまい、魔族擬きまで閃光が届かない。それもそのはず、今魔族擬きは自身の固有能力によって生み出された回避ルートを走っているのだから当たるはずがなかった。

 

「対処法は?ここにいるならこの魔族は倒されているということでしょう?」

 

「奴の力は回避に特化しすぎている。逃げ回ることはできるが、攻撃はてんでダメ...攻撃の瞬間は絶対安全圏の回避ルートの外に出なければならない」

 

「そこをカウンターで仕留めれば良いってわけね」

 

「奴が攻撃してくるのであれば、の話だけどな」

 

魔王の記憶らしき断片から察するに、こいつは相手の攻撃を引きつけて避ける回避タンクの役割を担っていたようだ。そもそも攻撃には参加せず、ひたすら逃げ回るだけ。攻撃はほぼ他の魔族や魔物に任せっきりなようだ。

 

そのため、この魔族単体でなら何の脅威にもならない。無視をすれば良いだけだからな。そうして他の魔族を倒され、こいつ一人が残ってもう攻撃するしかないという状況に追い込まれてやむを得ず攻撃したところに反撃を喰らって死...それが、コイツの死因だ。

 

「まぁ、攻撃してこないのならいないも同然だ。無視して先に進めば良い。攻撃してくるのなら、その瞬間を狙うまで。タネさえわかってしまえば対処は簡単だ」

 

「そう...なら雑魚ね。無駄に魔法を使って損しちゃったわ」

 

ニアがわかりやすく煽る。擬きであるため喋ることはしないが、流石に人の言葉は理解しているだろう。この挑発に乗って攻撃してきたならサクッと倒してしまおう。

 

「……来ないなら行きましょうか」

 

「だな」

 

「いいのかな...?」

 

「問題ないさ。攻撃してきたなら回避の目で分かるし、いないものとして扱おうぜ」

 

なかなか攻撃してこないので、無視して進むことにする。どんな拷問よりも、完全に無視を決め込まれていないものとして扱われることの方が辛いという話を聞いたことがあるが、果たして魔族でもそれは同じなのだろうか...一方的な我慢くらべといこうか。

 

「いやはや、どんな魔族になるかと身構えてたのにまさかあんな雑魚とは思わなかったな。殺意マシマシの固有能力を持ってなくて良かったぜ」

 

女神の山に向けて移動を開始しながら会話を続ける。

 

「完全に受け身の能力で助かったわね。まぁ、他の魔族擬きが合流してくる可能性だけ警戒が必要だけれど」

 

「だな。あとは、別の魔族に変身するかもってだけだが...あの様子だとしなさそうだな」

 

魔道具を生み出す魔族に変身していた魔族擬きは、一度倒された後、別の魔族に変身しようとしていた。同じ個体でも複数の魔族に変身できることは確実。一度倒されないと次に変われないのか、何か勝算があってあの姿を維持しているのかは分からないけれど、まぁ、姿が変わらないうちは安全なことには変わりない。

 

「……付かず離れずの距離をついてくるわね。ほぼ害がないのは分かってるけど、近くにいると気が散る...」

 

「それが奴の狙いだ。焦って攻撃しても避けられるだけ。何もしてこないんだからノータッチが正解だ」

 

……と、俺が言ったその時だった。回避の目が発動する。どうやら痺れを切らして魔族擬きが攻撃を仕掛けてきたようだ。それも、何を思ったか近接最強のクミリアに近づいていく。

 

「あらよっと!」

 

魔族擬きの拳を掴んで受け止め、グイッと引っ張って念入りに回避ルートから引き剥がす。そして、すぐさま頭突きをかましてダメージを負わせ、流れるような連撃で喉、胸、腹と身体の正中線に的確に拳を叩き込む。

 

「仕上げに...雷装!」

 

一度全身に雷を纏い、すぐに右拳に全て集約させる。そして拳をぐぐ...と振りかぶり、全力を込めて魔族擬きの顎に右拳を叩き込む。

 

「ふぅ!楽勝!」

 

魔族擬きは雷装の電流によって身体をビクビクと震わせながら吹き飛んでいき、地面を転がる。

 

「あらら...なんでクミリアを狙っちゃったんだか」

 

「近接戦闘において一番敵にしてはいけないところを的確に選んだね...あの魔族に変身したことといい、魔族擬きはそこまで頭が良くないのかもね」

 

「かもしれないわね...とりあえず、サクッとトドメを刺しちゃうわよ。ステラ、やっちゃいなさい」

 

「はーい」

 

ステラが無心の弓を構える。無の矢を番え、引き絞り...

 

「ステラ待て!」

 

「ひゃっ、なに⁉︎」

 

矢を放とうとしたところで声をかけて引き止める。

 

「このままじゃ避けられる。奴を対象認定したのに回避の目が発動しなかったからな」

 

「な、なるほど...」

 

「あの状態じゃとても避けてきそうには思えないけれど...」

 

「逃走の力を甘く見ないほうがいい。あの状態だと矢の方が勝手に逸れていくだろうな」

 

「そこまでの影響力を持っているのか...ということは、また奴が攻撃してくるまで僕らは手出しできないということ?」

 

「奴があの変身を保ち続けている間はな」

 

「ね、ねぇ。この行き場のない矢はどうすれば良い...?」

 

矢を引き絞り続けているステラが少し腕をプルプルさせながら言った。

 

「あー...今やっても当たらないけど、無駄撃ちするのもなぁ...」

 

無心の弓を発動させた以上、発動に使った魔力はもう戻ってこない。発動後に消すこともできないから、自由に動けるようにするためにもとりあえず今作った分は放つ必要があるが...

 

「……とりあえず、この中に射ってくれ。問題なく取り込めるはずだ」

 

俺の中に入っている魔道具を介して次元収納の裂け目を開く。この中に撃ち込んだとしても、俺の次元収納が消滅するなんてことは起こらないはずだ...多分。

 

「わかった。上手く使ってあげてね」

 

ステラは俺が開いた裂け目の中に無心の弓を放つ。これで、無心の弓という超強力な攻撃手段が一発貯蔵されたことになる。ここぞというときに使ってやろう。

 

「……さて、ひとまず奴の無視は継続。進めるだけ進んで、奴が動けるようになって戻ってきたらまたカウンターを...っと、形が崩れた?」

 

作戦を決めながらチラッと横目で魔族擬きを見ていたら、急にボロッと形が崩れてスライムに戻った。

 

「そりゃかなりの力と雷装を込めて殴ったからね。致命傷だったんでしょ」

 

「……まぁあんだけやっとけば普通死ぬか」

 

「それにしても、なんかちょっと小さくなってない?あんなサイズだったっけ」

 

「たしかに小さいような...」

 

と、そんなことを話していたら魔族擬きは次の魔族に変身しようとしていた。今から変身を止めるのは間に合わなそうだったし、また先程のような回避特化の魔族になった場合は攻撃が無駄になる可能性が高いため一旦静観することにする。

 

……しかし、途中で魔族擬きの変身が止まる。作り上げた形が揺らぎ、形を保てず崩壊する。根本的に、作ろうとしている身体に対して自身の体積が足りない...そういうような挙動だった。

 

「こりゃ、マジで小さくなってそうだな。原因はなんだ...雷装か?」

 

雷が女神の力と直結しているのならば、魔族擬きの身体を消滅させる作用があってもまぁ不思議ではないだろう。元々魔物へのダメージの通りやすさも他の攻撃と比べて高かったしな。もし雷装で魔族擬きを削れるのであれば、ステラの無心の弓に頼る必要がなくなるからかなり嬉しいのだが...

 

「うーん...とりあえず、爆発で何とかなるか試しておこうか。こっちの方が当てやすいし」

 

そう言いながらライトは手のひらを魔族擬きに向ける。

 

まず、水が生成される。そこに勇者だけが使える雷の魔法を撃ち込んで電気分解を引き起こし、水素と酸素に分解する。そうして生まれた気体を、風の魔法を使って集めて塊にして魔族擬きに向かって放つ。

 

そして最後に少し時間をおいて、目に見えない気体が魔族擬きの元にたどり着いた瞬間に炎の魔法を放つ。飛んで行った炎は魔族擬きの手前で見えない気体に接近して火をつけ...

 

マナごと辺りを吹き飛ばす水素爆発を引き起こす。

 

「やった...かな?」

 

「不安げに言うのやめようか...」

 

水素爆発によって生じた水蒸気によって、ほんの少しだけ視界が遮られる。魔族擬きを倒せたかどうか...固唾を飲んで見守る。

 

「……消え去ったようだな。ひとまず爆発でも消せることがわかったわけだ」

 

魔族擬きは跡形もなく消え去っていた。回避の目が発動していたため、当たっていないということは絶対にない。命中して、そして尚且つ姿が見えないのなら、爆発によって消滅したと考えるのが妥当だろう。

 

「この感じなら、雷装でも消せそうだな。今度からはコレでサクッと倒すか」

 

「この中で唯一雷を扱えない人が何か言っているわね」

 

「なんで急に刺してきたわけ...?クソッ、俺も雷装が使えたらなぁ...仕方ないから、そこはみんなに任せるしか...ん?あれ?」

 

そこで、俺は気がついた。

 

「全身に流す雷装は無理だとしても、剣とか弓矢とか鞭とか盾とか、そういう奴の雷装は簡単に覚えられるような...?つーか、みんなに渡した雷装は元はといえば俺のだよな。返して?」

 

各雷装は全てスキルである。それを手に入れる条件を満たすか、それを実際に使ってみせるとスキルとして入手していつでも発動できるようになる。

 

全身に流す雷装は、雷によって一度心停止を起こし、再度雷を流して心臓を動かすことで入手することができる。流石にこの条件を満たすことは難しい。

 

しかし、剣や弓矢に込める雷装は別だ。誰かが雷装を発動させて武器に込め、それを渡してもらい俺が使うことでスキルとして習得できる。ステラの雷装・矢であったり、レストの雷装・盾もそうして手に入れている。それと同じことをすれば、武器に込める雷装は発動できるようになるわけだ。

 

「雷装を手に入れたのが昔すぎて、そんなことが出来るのを完全に忘れていたわね...やっておきましょうか」

 

そうして俺は、限定的ではあるが雷装を再取得することができたのであった。




今代の魔族は揃いも揃って強い固有能力を持っていましたが、そりゃ中には弱い魔族もいるよね...ということでイヴェという逃走の魔族を出してみました。
そして、少しではありますがカリヤくんも雷装を入手。
出来ることをやって女神の山へ...
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