神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8186字。

白竜との戦闘回です。


女神の山の竜、聖の試練

「ふぅ...ようやく頂上だな」

 

ライトの魔力切れを治すために一度元の世界に戻って回復を終えたあと、俺たちは次元転移で大空洞まで戻ってきた。この二つ目の大空洞を抜ければ頂上はすぐだ。

 

「二体目の竜、白竜...また試練として戦うことになるんだろうなぁ」

 

「だろうね」

 

「アイツを倒したらどうなるんだろうな?まさか第三の竜が現れたりはしないよな...」

 

「何か進展があればいいのだけれど...これが魔神を見つけることに繋がっているのかすら分かっていないのが少し不安よね」

 

「試練っていうくらいだから、流石に関係無しってことはないと思うけど...」

 

「……ひとまず、行くしかないよな」

 

「今度は負傷しないように気をつけなさいよ。また魔王に出てこられても困るわ」

 

「はは...努力するよ」

 

そうそう不可避の攻撃が襲ってくることはないと思うが、先の二の舞にならないように警戒はしておかないとな...

 

と考えていると、頂上が見えてくる。すでに上を見上げると白竜が視界に入っているが、おそらく頂上に辿り着くまでは白竜は何もしてこないだろう。黒竜も登り切るまでは一切妨害して来なかったからな。

 

「到着っと...」

 

「……うわっ、喋った!」

 

「え?」

 

頂上に辿り着くと、俺以外の全員が耳に手をやった。

 

「喋ったって...白竜が?」

 

「そうだよ?聞こえてないの?」

 

「ああ。なんの音も聞こえてない。翻訳能力が発動してないから、そもそも音自体が俺の耳に届いていないのか、はたまたみんなが幻聴を聞いているのか...なんて言ってる?」

 

「聖魔集いし時、ついに来たり」

 

ニアが聞いた声をそのまま話してくれる。この台詞は...黒竜も言ってたな。

 

「試練を与えよう。聖の者よ。我を打ち砕くが良い...ですって」

 

「微妙に違う...?って、来るぞ!」

 

白龍が口を開く。回避の目が発動して、白い稲妻が放たれる未来が見えた。

 

「こっちは雷かよ...!」

 

「防御は任せて!」

 

ライトとクミリアが地面を蹴って空に跳び出す。雷装を身に纏うと、白竜が吐いた稲妻をその身に引き受けて俺らに被害が向くことを防ぐ。

 

「足場を!」

 

「わかってるわ!」

 

ニアが二人の真下に足場を作り、そこに着地させる。皆よりも高い場所に立たせることにより、二人を稲妻を引き受ける避雷針にしてしまう。

 

「ステラちゃんはクミさんより下にいるんだよ、いいね!」

 

「わかった!ここからでも私なら...!」

 

ステラが低空飛行をしながら弓を引き、白竜に向けて矢を放つ。上空を飛んでいる白竜との距離はかなりのものだが、ステラの実力ならば真下からの射撃でも命中させられる...弾かれなかったらの場合だが。

 

「……あれ、当たった!当たったよ⁉︎」

 

ステラの放った矢は結界であるとか、そういった防御に遮られることなく白竜の身体に命中した。

 

「黒竜の時とは違う...?」

 

「……私の魔法も当たるようね」

 

ニアが魔法を牽制程度に放ってみると、これまた防御されずに白竜を貫いて焼き焦がす。

 

「今度は防御されないのか...?いや、さっきの話から考えると...こうか?」

 

4566ページ 閃光 黒 灰

 

射程を伸ばした閃光を放ってみる。距離的には白竜に届くはずだが...

 

「……っ、弾かれたか...!やっぱり、そういうことか!」

 

放った閃光は白竜の目前で結界のようなものに弾かれた。黒竜にみんなの攻撃が弾かれていたのと全く同じだ。

 

「聖魔集いし時に始まる試練。前回は魔の者、我を打ち砕け。そして今回は聖の者、我を打ち砕け...攻撃が出来る奴は最初から決まってたんだ!」

 

試練開始前の竜の言葉の僅かな違い。声そのものを聞き取れない者がいること。そして、攻撃が通る者と通らない者が前回と綺麗に反転していること。それらから答えは導き出される。

 

「今回は俺は攻撃に参加出来ない!魔王を内包している俺は聖の者じゃないからな!」

 

黒竜に対して俺の攻撃のみが通ったのは、俺が魔王を宿している魔の者だったから。黒竜の声が俺にだけ聞こえていたのは、翻訳能力のおかげではなく魔の者だから。

 

それを今回にも当てはめると、白竜に攻撃を通せるのは聖の者のみ。俺を除いた勇者パーティーの面々だけだ。白竜の声が聞こえなかったのは、試練を受ける資格のない魔の者だったから。一応俺も勇者の加護を得ているから聖の者になり得そうではあるが、先程の攻撃が弾かれたから魔の者扱いされているのは確実なようだな。

 

「なるほど...?私たちの攻撃が通るのなら、前よりかは苦戦しなさそうね。カリヤはしっかり下がって回避に専念しておきなさい!」

 

「おう!」

 

先程俺は攻撃に参加できないと言ったが、一応俺にも攻撃手段がないわけではない。黒竜に次元収納内の魔法を放った際、幾つか結界に遮られたものがあったのを覚えているだろうか?先程分かったことからあの現象について再考してみると、すぐに理由に気づくことができた。

 

次元収納内には、魔王が俺の中に寄生する前に入れた魔法と寄生された後に入れた魔法が混在している。あの時にはどの攻撃が通るのかを確かめるためにも、中に入っていた魔法を適当に放っていたがおそらくそこが関係しているのだろう。

 

寄生される前の俺は聖の者であるためその時点で放った魔法は黒竜には効かず、寄生後の魔法は魔の者扱いされてその場で発動した魔法と同様に命中したのだろう。となると、寄生前に入れた魔法ならばあの白竜にも攻撃が通るはずだ。

 

だが、寄生前の魔法は収納数が少ない。魔王戦で既に大部分を使い切っていたし、魔界での戦闘でも少しずつ使っていたためほぼほぼ残っていない。もしかしたら今後も同様に聖魔によって攻撃可能な者が限られる可能性があるため、みんなが動けるうちはなるべく使わないことに決める。

 

「さーて、こっからは回避の目に集中...!」

 

ニアの作った足場の下に陣取ることで身の安全を確保する。能力に集中しながら、上を向いて戦況全体を観察する。

 

「とぅっ!」

 

クミリアが足場から跳躍魔法を使って跳び出し、一息つく合間に白竜の目前に辿り着くと空中で一回転して白竜の頭に蹴りを叩き込む。

 

「……ちょっ、眩し!」

 

攻撃を受けた白竜が反撃として放った稲妻がクミリアを貫く。雷装を纏っているためダメージはないものの、眩い光と空気を引き裂く轟音によってクミリアは怯んでしまう。仕方なく追撃を諦め、足場に着地する。

 

「ちょっとカリヤー!回避の目発動してないよ!」

 

「雷装で何もしなくてもノーダメージだったからか...?そういうこともあるのか、一応気をつけてくれ!」

 

「気をつけろって何にさ!」

 

「今のはノーダメージだったけど一瞬怯まされただろ?その一瞬の怯みのせいで次の攻撃が回避不可能になる...なんてこともあるかもしれん!安全な時以外は雷も出来るだけ回避しろ!」

 

「そういうことね、了解!」

 

クミリアは頷くと、空気の腕を伸ばして白竜の吐いた稲妻を受け止める。空気を引き裂く稲妻だったが、魔法で押し固められた空気を通ることは出来なかったようで、稲妻は空気の腕に弾かれて横方向へと駆け抜けていく。

 

「そしてとりゃっ!」

 

稲妻を弾いたクミリアは続け様に白竜の頭を殴って上を向かせる。

 

「そこっ...!」

 

その瞬間にライトは足場を飛び出し、上を向かされた白竜の下顎に斬撃を浴びせる。

 

「これで口は開きっぱなし!魔法を撃ち込めニア!」

 

下顎の破壊によって開いた口目掛けて、ニアが魔法を撃ち込む。白竜はその魔法を見て、稲妻を放つことで撃ち落とそうとする。

 

「させないよ」

 

その瞬間に、レストが盾を合わせて完全反射を発動させる。魔法を撃ち落とすために放たれた稲妻は、直後に軌道を変えてレストの盾に吸い込まれていく。

 

完全反射は、全ての攻撃を受け止めるまでは威力の反射が起こらない。そのため、反射が起こるよりも前に白竜の口の中にニアの魔法が入り込むはずだ。反射によって白竜が仰け反ってしまい、口の中に入らない...なんてことは起こらない。

 

体内への魔法攻撃と完全反射による攻撃...この二重の攻撃がほぼ同時に叩き込まれれば、白竜にかなりのダメージを与えられることだろう。

 

……しかし、そうはならなかった。

 

「っ、こっちは再生すんのか...!」

 

ライトが破壊した下顎が再生して、開きっぱなしだった口が閉じられる。それによってニアの放った魔法は口に命中し、多少の破壊だけに止まってしまう。

 

そして次の瞬間、レストの完全反射が発動して稲妻の威力全てが白竜に跳ね返る。だが、元々は白竜自身が生み出した稲妻であることと、体内への魔法攻撃と同時に叩き込む想定であったためか思っていたほどの効果は現れなかった。

 

「黒竜にはなかった再生能力か...聖魔の反転といい、何かと違うところが多いな」

 

「そうだね。黒竜と性質が反転したものが白竜...だとすると、他の攻撃を予測することもできるかもしれない。例えば...黒竜がしてきた魔物の生成とか!」

 

そういやそんな攻撃もあったなと思い出す。炭でできた魔物を生み出してきたよな...魔物を生み出すという点は同じで別種の何かを呼び出すのか、はたまた根本から反転しているのか...

 

「ひとまず、あの再生を上回る速度での攻撃を...っと、来るぞ!」

 

白竜の稲妻が降り注ぐ未来が見える。ちょうどライトとクミリアが攻撃に出ているタイミングであるため、避雷針になってもらうことはできない。となると...俺がやるのが早いか!

 

「これで...受ける!」

 

『雷装・剣』

 

ダガーを一本抜き、雷装を纏わせて放り投げる。その直後、白竜は少しの間咆哮を上げると、稲妻を吐き落とす。稲妻は雷装を纏っているダガーに引き寄せられるようにして落ちて行き、ダガーに命中、そのまま貫いて地面まで流れていく。ダガーで誘導したおかげで、感電した者は誰もいない。

 

「よし、このまま攻撃を...っ⁉︎」

 

ダガーを回収しに行こうとした瞬間、俺はその存在に気づいた。

 

「……あん時は現れなかったってのに、なぜ今...!」

 

そこにいたのは、雷によって生じる精霊。テトラにスフィアにキューブ...ニアが生み出そうとしても現れなかった精霊が、白竜の雷によって生み出されていた。

 

「ここが女神の山だからか?それとも、白竜が特別...?そもそもの発生条件が雷以外に分かってねぇから考えるだけ無駄か...!」

 

「……この場でなら、精霊を生み出せる。それならば、私は私の力をフルで扱える...!」

 

周囲の空気が変わる。風が凝縮し、圧縮され、高度的にあり得ないはずの雷雲が生じる。

 

「魔界の封印は女神が作った物。魔神を封じ込める女神の力が、魔界のどこかにはあるはず...それが、おそらくここなんでしょうね」

 

生み出された雷雲から雷が落ちる。そして、その軌道上に精霊が生み出されていく。

 

「さぁ、やっておしまい精霊たち!この雲を更に発展させ、力をつけるのよ!」

 

精霊は雷を受け、エネルギーを生み出し増幅して雷雲に返す。それらの繰り返しによって、ニアの生み出した小さな雷雲を巨大にしていき上昇させていく。その過程で、白竜の稲妻によって生み出された精霊を自身の生み出した精霊に破壊させて障害を取り除く。

 

「はは...ニアの独擅場だな」

 

「これは、僕たちは避難しておいた方がよさそうだね」

 

「全員退避していなさい。手出しは無用よ。アイツは、私が一人で倒す...!」

 

攻撃しに行っていたライトとクミリアが戻ってきて、ニアの生み出した足場の真下に隠れる。

 

「いくらでも雷を落とすがいいわ。その全てを取り込んであげる」

 

雷雲はとうとう白竜の上にまで登っていく。白竜は下にいる俺らに向けて稲妻を落とそうとするものの、空中でニアのキューブやスフィアに命中してエネルギーを吸収されるため俺らまで届くことはない。吸収したエネルギーは雷雲に向けて発射され、さらに勢力を強めていく。

 

「再生されてしまうのなら、その速度を上回る速度で攻撃するか、一撃で全て滅ぼす...両方試してみましょうか」

 

雷によって生み出された大量のキューブが白竜の近くを漂い出す。キューブは自身の中にある氷の粒同士を衝突させ続け、甲高い音を響かせながらエネルギーを貯めていく。

 

「貫きなさい!」

 

キューブは溜め込んだエネルギーを放出し、光線を発射する。無数のキューブが無数の光線を生み出し、白竜の全身を貫いていく。

 

「今の、一撃で滅ぼす方?」

 

「違うわ、前者よ」

 

よく見ると、光線を放っているのは全体のうち半分のキューブだけだった。そいつらが光線を撃ち終わると、待機していたもう半分が光線を放って途切れさせずに攻撃を続ける。

 

「十分高火力だが...」

 

「足りないわね。まだ再生の方が早い...」

 

ニアはそう呟くと、これまた大量に生み出されているテトラを集める。この量ならば合体させればかなりの大きさになりそうだが、今回は全て単体の状態で白竜のもとに向かわせた。今回目指しているのは、一撃の火力ではなく継続的なダメージ。数を活かした突撃をさせることで傷を増やしていく。

 

「……少し変ね。さっきよりも傷の再生が早まった...?」

 

「光線の密度が高すぎてなんも見えねぇんだが...そうなのか?」

 

「ええ。傷をつけた側から修復されているわね。これは、ただの再生というより...何かしらの制約によって強制的に巻き戻されている...攻撃回数に上限がある?」

 

……どういう思考の流れでそこに行き着いたのかはわからないが、ニアはピタッと攻撃をやめた。そして、全ての傷が癒えるのを待ち、キューブに一発光線を撃たせる。

 

それによって傷ついたことを確認すると、また一発、一発と撃ち込んでいく。

 

それらを繰り返して、十発目を撃ち込んだ直後だった。白竜についた傷が少しずつ再生しだしたのだ。

 

「攻撃に参加できる人数が多いから、攻撃できる回数に制限がかかっているようね。十回の攻撃のうちに白竜を倒さないといけない...か。後者しか道はなかったわけね」

 

ニアはそう言うと、スフィアもテトラもキューブも全て白竜の周りに終結させる。

 

「十回、本気の攻撃を浴びせれて消滅させられれば私の勝ち...けど、十回も私には必要ない!」

 

白竜の周囲に集まったスフィアが一つに合体、融合していく。スフィアはいくつもの個体が一つに融合すると、エネルギーの放出によって爆発を引き起こす。あれだけ巨大な雷雲によって生み出された大量のスフィアを一斉爆破させれば、かなりの威力になるが...

 

「それ、一撃判定になる?」

 

「そんなヘマはしないわよ!吹き飛びなさい!」

 

融合による爆発が全精霊を巻き込んで引き起こされる。爆発は白竜の全身をすっぽりと覆い、放たれる爆風と衝撃波は真下にいる俺らを叩く。

 

「……流石に、これ一発で終わらせられるとは思っていないわ」

 

爆風が収まったのを待ってから上を見上げると、全身が焼けこげた白竜の姿が目に入った。だがまだ動けるようで、ゆっくりと空を旋回していた。

 

「だから、次で決める...これでもダメなら、うちのパーティーじゃ諦めるしかないわね」

 

そう言いながらニアは次の攻撃への準備に移る。

 

たしかに、俺らは手数は無数にあるものの一撃の威力に富んだ者は少ない。無心の弓や完全反射など、他を圧倒する威力を出せる攻撃も存在するが、あの巨体を一撃で滅ぼせるような攻撃ではない。普通の魔物相手ならそれで問題ないのだが、巨大な相手に対しては攻撃を当て続けて少しずつ削っていくことしかできないため、攻撃回数制限がついているあの白竜とは分が悪いのだ。

 

聖杖があれば話も変わってくるが、それがない以上、現在一番火力を出せるのはニアだ。自然現象による大火力の雷、それによって生み出される精霊の行使。精霊によって自然循環を起こせるため魔力の消費も少ないあの雷雲は、魔力効率の観点から見ても最大効率の攻撃だ。そんな攻撃でどれだけ白竜を削り切れるか...この攻撃に全てがかかっていると言っても良い。

 

「さぁ...行くわよ!」

 

ニアは上空の雷雲を圧縮する。溜め込まれた電気エネルギーごと空気を圧縮し、その温度を数千、数万と跳ね上げさせていく。

 

「すべてを食い尽くせ!プラズマ!!」

 

固体・液体・気体の三態の枠を超えた、もう一つの物質状態。プラズマと化した空気に指向性を与え、白竜に向けて射出する。

 

プラズマが触れたものは一瞬で気化、もしくはプラズマ化する。そして体積が膨張し爆ぜる。白竜との間にある空気をプラズマ化させ、飲み込みながら白竜へと向かっていく。そして、衝突。

 

先程とは比にならないほどの衝撃波が周囲に撒き散らされ、俺らにも牙を向く。だが、今回はしっかりとニアが障壁を貼って防いでくれる。

 

雷雲という水分を含んだ空気を用いてプラズマを生み出したため、大量の水分が気化して高温の水蒸気も周囲に撒き散らされるがこれも障壁によって守られる。

 

「こりゃ、しばらく外には出れねぇな...」

 

障壁の外は高温の水蒸気が漂っているため、出れば一瞬で蒸し焼きになってしまうことだろう。ニアは再度空気を操って風を起こし、周囲の温度を少しでも下げようと試みる。

 

「ところで、白竜はどうなった?」

 

周囲の様子に気を取られていて、まだ白竜を倒せたのかの確認を取れていなかった。

 

「……無傷...だと?」

 

上を見上げると、白竜は無傷で漂っていた。あの攻撃を無傷で凌げるはずがない。となると、何らかしらの要因によって再生が始まったのか...?

 

「いいえ。一度は完璧に消し飛ばしたわ。だから無傷に戻ったのよ。前は乗っ取られている最中だったから、カリヤは初めて見るのね」

 

「……なるほど」

 

そういえば、黒竜も倒した直後に蘇ったんだっけ...?なら無傷なことにも納得だ。

 

「……と、また話し始めたわね。良くぞ我を打ち倒した...ですって」

 

「試練終わりに黒竜が言ったことと同じだな」

 

俺がそう言ったその時、白竜の声を聞いていたみんなの表情が一気に変わった。

 

「どうした?奴はなんて言ったんだ?」

 

「……聖魔の協力なくして、魔神の復活無し。聖魔和解の誓いを持って、今、魔神は復活せし...そう言ったのよ、あの竜は!」

 

「魔神が復活...⁉︎あの竜を倒すことが魔神復活のトリガーだったとでもいうのか...⁉︎」

 

白竜は北方向へと飛び去っていく。あの方向には、黒竜が消えたシレンの穴がある。まさか、あそこに...?

 

「っ...また、消えた」

 

シレンの穴の真上の空間にヒビが入る。空間に裂け目が生じ、その穴に白竜は飛び込んでいく。

 

「……他の竜は出てこない...それじゃあ、マジで魔神が復活すんのか...⁉︎」

 

「ひとまず移動よ!シレンの穴まで向かうわよ!」

 

次元転移のゲートが開かれる。魔神が復活してしまうのならば、急いでシレンの穴まで向かわなければならない。全員ですぐにゲートに入り、次元転移の空間内を走って移動する。

 

「もしかしたら連戦になるかもしれないわ。みんな、魔力は大丈夫よね?」

 

「まぁな。ニアが効率よく雷で倒してくれたおかげだ」

 

「こうなると思ってやったわけではなかったけれど、私一人で倒して良かったわね...」

 

ニアが攻撃している間、俺たちは全員身体を休めることができていた。魔力消費も抑えられたため、今ではカウンターを使ったレスト以外の魔力はほぼ回復しきっていた。唯一派手に暴れたニアも、雷の精霊たちによる循環によって魔力消費を抑えながら攻撃することができているため、たとえ連戦になったとしても支障はほぼないだろう。

 

「スタミナは平気か?」

 

「シレンの穴まで走り切れるスタミナはあるから問題ない。念のため、外に出る前に少し休憩は挟みたいが...」

 

「どれだけ時間が取れるか分からないのが悩みどころだな...魔神が攻撃的でないことを祈るしかないか...?」

 

魔王が目論んでいるのは魔神を復活させること。しかし、魔神が今も人類に敵対しているかはわからない。もしかしたら戦わずに済むかもしれない...可能性は限りなく低いけどな。

 

「それよりも、カリヤは自分の心配をなさい。魔神が本当に復活したのなら、魔王はなりふり構わずカリヤの身体を乗っ取りに来る可能性があるわ」

 

「っ...そうだな。最後まで気を抜けねぇ...!」

 

この先何が起こるか、まるでわからない状況が続く。俺に見える未来は、攻撃を受ける未来のみ...はたして、この能力で本当に全てを解決できるのか...?




白竜討伐はあくまで前哨戦。
ここから大きく事態は動いていきます。
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