神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8193字。

とうとう、魔神復活。


円環の竜と復活の魔神

「……出るか。出なきゃ始まらない」

 

回避の目で外に出ても問題ないことを確認した俺たちは、次元転移のゲートを潜ってシレンの穴の目の前に出る。

 

その瞬間だった。

 

ギャオオオ!!

 

と、咆哮を上げながら黒竜と白竜が空間を裂いてシレンの穴の真上から飛び出す。

 

「はは...今度は二体同時に倒せってことかな?」

 

「それならもう一度同じことをするだけ。カリヤは黒竜を、僕たちが白竜を倒せば...!」

 

「俺の負担だけデカすぎじゃね?ったく...やるしかねぇよな!」

 

全員武器を構えて、竜と戦う用意をする。

 

……しかし、黒竜も白龍も、俺らに見向きもしなかった。二対の竜はシレンの穴の真上で旋回し続けており、俺らに攻撃する様子は見せない。

 

「攻撃してこない...?」

 

竜は旋回を続ける。心なしか、少しずつ竜同士の間隔が狭まっているように見える。竜の目の前に、もう一方の竜の尻尾がある、それくらいの距離感になっている...?

 

「……っ⁉︎」

 

「尻尾に...食いついた...⁉︎」

 

竜は目の前の尻尾に噛みついた。二対の竜は円環をなし、グルグルと旋回を続ける。

 

「……ウロボロス...?」

 

「何よ...それ」

 

「自らの尾を噛んで環状になった蛇や竜を図案化した象徴...円環によって終わりと始まりのない無限や不滅、死と再生を表している。一匹で自身の尾を噛んでいるパターンもあるが、二匹で互いの尾を噛んでいるものもある...今見ているのがそれだ」

 

「死と再生...まさか、魔神復活を表して...⁉︎」

 

「それよりも見て!あの竜、さらに飲み込んでない⁉︎」

 

ステラに言われて二対の竜を見ると、たしかに竜はもっと深くまで相手の体を飲み込んでいた。ジリジリと少しずつ噛み進めていき、円環の半径がどんどん狭くなっていく。

 

「……サイズからして、あそこまで飲み込めるはずがない。なのに、まだ飲み込むのか...!」

 

竜は互いの身体を飲み込んでいき、とうとう頭部のみになる。それでもまだ身体を飲み込もうと大口を開けて...

 

口が閉じ、二対の竜は消失した。

 

「消え...っ!」

 

次の瞬間、空間全体にヒビが入る。魔界全体が揺れ響き、異質な気配が周囲に充満する。

 

「顕現する...魔神が...!」

 

ヒビ割れた空間の向こう側から、何者かが覗き込んでいるような気配を感じる。溢れ出る魔に、鳥肌が全身に浮き出る。

 

世界が、割れる。

 

「アレが...魔神...!」

 

十メートルほどの体格に、四対の腕。脚はなく、巨大な肉団子に四対の腕と仮面のような顔が一つ付いている...そう表現するのが一番近いだろう。

 

「神があんな歪な姿を取るか...封印でああなったのか、それとも元々ああだったのかは知らんが...見ていて不快感が凄いな」

 

女神が生み出した人類には、魔物に対する敵対心が植え付けられている。おそらく魔神に対しても同様に、敵対するように精神に指向性を与えられているのだろうな。

 

「……だが、まだ魔神が敵対するかはわからない。ひとまず静観を...っ、クソッ!」

 

回避の目が発動した。空中に浮いている魔神が謎の光線を放ってきたのだ。走って回避が可能であったため、魔法で防御せずに自力で回避する。

 

「攻撃してきた...!」

 

「いやでも、あの様子、ただ暴れてるだけのような...何か変だ。まるで、苦しんでいるみたいな...」

 

攻撃に意思がない...とでも言おうか。魔神はたしかに復活したようだが、完全な復活には至っていない...そんな気がした。

 

「なんにせよ、奴は倒さないとダメだ!最低限無力化!再封印が可能になるまで痛めつけるしかない!」

 

「攻撃予測は俺に任せろ!攻撃は頼んだぞ!!」

 

魔神は周囲を無差別に攻撃していた。破壊をもたらす光線が撒き散らされ、魔界を蹂躙していく。全く狙いをつけていないため、俺らに向かってくる光線はほとんどなかったが...光線による地響きが酷い。このままでは、魔界自体が破壊されてしまうのではないだろうか...

 

もし魔界が破壊されたら...どうなる?魔界にあるもの全てが丸ごと破壊されて消滅するのか、それともシレンの穴を通じて魔界のもの全てが元の世界に流れ込むのか...何が起こるかはわからないが、危険なことが起こる気配しかしない。魔界が破壊される前に魔神を倒さなければ...俺はあまり攻撃に参加できないのが心苦しいな。

 

「下がるよ。攻撃は僕が防ぐ」

 

レストに守ってもらいながら、俺は魔神から遠ざかる。あの無差別攻撃に巻き込まれるわけにはいけないからな...

 

「第一陣行くよ!」

 

クミリアが魔神に向かって臆せずに飛び込む。自己バフによる強化された身体能力で魔神の光線を避け、一直線に跳んで魔神の目の前に躍り出ると、雷装を込めた拳を魔神の腕に叩き込む。

 

「どう⁉︎」

 

「効いて...るかわからないね。打撃じゃ効いてるかわからない...!」

 

「なら僕が...!」

 

武器に雷装を纏わせたライトが魔法で空を走る。

 

「斬る!」

 

ライトの武器が変形し、やや離れた位置から魔神の腕の表面を切り裂く。

 

「傷はつけられる...ようだね!」

 

「黒竜白竜のような攻撃制限は無い...と見て良さそうね」

 

「攻撃は当たるけど、単純にデカすぎて効き目が薄いって感じがするね」

 

ステラが空中から矢を放って魔神に攻撃するも、小さな矢では数が刺さったところで焼け石に水。大きなダメージにはならない。

 

「けど、やっぱ雷装は効いてそう...!」

 

今度は普通の矢ではなく、雷装を纏わせた矢を放つステラ。雷装の矢が刺さるごとに、少しだが魔神の動きが鈍っているように思える。雷装の矢は命中からしばらくの間雷を流し続ける。しばらくの間は雷によるデバフを与えられ続けることだろう。

 

「雷は女神の力...魔神といえどもその力には抗えないようね」

 

やはり、頼れるのは雷装だな。魔神に対してもある程度効き目があるとは...勇者以外にも雷の力を使えるのは大きいな。本来ならば、勇者にしか雷は扱えないはずだった。そんな力を、雷装や落雷魔法として全員が使う術を持っている...魔神を倒すのにうってつけの人材が揃っているわけだ。ここで俺らが敗れれば、魔神は誰にも止められない...!

 

「でも、不気味...あそこまで雷装の矢を撃ち込んだんだから、少しは反応を示してもいいのに何もしてこないなんて...」

 

魔神は少し動きは鈍ったものの、変わらずに無差別攻撃を続けている。身を守ることもせず、傷を治すこともせず、俺らを狙って攻撃をすることもしない。

 

ただ、意思なく暴れ回るだけ...逆に恐ろしいまである。魔神という存在は、これほどまでに無機質なものなのか...?

 

「心無き神...か。予想外の行動さえされなきゃ問題ない。このまま攻撃を続けて、情報を探りつつ変化が現れるのを待つだけ...っと、そりゃこんだけ撃ってりゃ飛んでくるよな...!」

 

魔神の無差別光線が俺とレストに向かって飛んでくる。

 

「僕が...!」

 

「いや待て!避けるぞ!」

 

レストが前に出て、魔法吸収の盾で受けようとした瞬間に回避の目が発動する。魔神の光線がレストの盾を貫いて直撃してしまう未来が見えたのだ。俺は咄嗟にレストを突き飛ばして自身も倒れ込み、魔神の光線を回避する。

 

「あの光線、レストの盾すら貫けんのかよ...!」

 

「防御を貫く魔法...?そもそも魔法なのかな。あの見た目で物理的なものの可能性も...」

 

「黒竜の炎みたいなものか、あり得るな...だとしても、魔法吸収貫通はともかくレストの盾を貫けるのはおかしい。不可侵領域のおかげで何が来ようと受け止められる...そのはずだろ?」

 

「なら、魔道具の無効化かもしれない。シレンの穴にそんな力を持った魔物がいたはずだよ」

 

「それだな。魔道具無効...もしかしたら魔法無効も一緒に付いてるかもな。とにかくあの攻撃は回避安定...!」

 

またこちらに光線が飛んできたため、レストの肩を掴みながら走って回避する。

 

「障壁...!」

 

レストは俺に引っ張られながら障壁を発動させた。もう回避済みであるため防御する意味はないが、わざわざレストは光線を障壁で受け止めた。

 

光線が障壁に接触した瞬間、障壁は跡形もなく消し飛んだ。光線は止まることなく直進し、地面を撃ち抜く。

 

「うん、魔法無効化もあるみたいだね」

 

「確認のためにやったのか...偉いぞレスト。にしても、威力減衰も起こらずに打ち消すのか...」

 

「魔神があの攻撃を続けるなら、僕に出来ることはほぼないね...どうしたものか」

 

「レストは既知の攻撃に対する反応速度が良い。それゆえに、回避の目との相性が抜群だ」

 

慣れの極致によって、レストは一度体験したことならいとも容易く対処可能となる。そのため、回避の目で攻撃の未来を見ることでその攻撃は初見ではなくなり、適切な対処が可能になる...といったように、回避の目との相性が恐ろしく良い。

 

「みんなと比べて未来が見えてからの動きが一番良い。アイツらのところに行って、回避の手助けをしてやってくれ。くれぐれも、手癖で盾で受けないようにな」

 

「カリヤは大丈夫?」

 

「問題ない。自分の身は自分で守るさ」

 

「……わかった。行ってくる」

 

レストは俺の元から離れ、戦闘中のみんなのところに向かっていく。

 

「ふぅ...俺も集中しないとな」

 

俺が出来ることは今も昔も変わらない。情報収集、分析、最適解の発見。思考を回すことが勝利への近道だ。

 

「あの光線は見たことがない。おそらく古代の魔法...そりゃそうだよな。封印されてた魔神が使う魔法だ。昔のものでなきゃなんだってんだ」

 

あの魔法の解析はニアにやってもらうしかないな。あの手の作業はニアの右に出る者がいない。

 

そんなニアは、魔神に様々な魔法を撃ち込んでいた。どの魔法なら効き目が強いかを試すかように、威力の低い火球や光弾から、火力の見込める閃光や変わり種の重力操作による攻撃など、ニアの知るすべての魔法を放っているようだ。

 

「……そういや、黒竜と白竜の要素はここまで一切無い...よな?」

 

あの魔神は黒竜と白竜を倒すことで復活した。あの竜が封印の鍵だったのか、それとも魔神を二分割して生まれたものだったのか、どちらなのかはわからないが、復活のトリガーであったことには変わりない。

 

だというのに、黒竜と白竜の要素は一切魔神に受け継がれていない。黒竜の魔物を生み出す黒炎のブレスや近づいた者を切り裂く空間切断。白竜の精霊を生み出す稲妻と条件付きで無限の再生をもたらす攻撃回数制限。その片鱗は魔神のどこにも無い。

 

それらの要素が少しでも受け継がれていたならば、この戦闘はもっと緊迫感あるものになっていたはずだ。容易に近づくことを許さず、遠距離からチクチクと攻撃してダメージを蓄積させていくことも許されない。魔物や精霊を生み出して逆にこちらを手数で追い詰めていく...そんな戦闘になっていたはずだ。

 

少なくとも、無差別に飛んでくる光線を定期的に回避しながら攻撃を積み重ねていく単調な戦いにはなっていない。

 

「……まだ魔神は力を秘めている...その力を解放する前に、倒すことができればいいんだが...」

 

ステラの継続的な雷装の矢による攻撃によって、魔神の動きは僅かではあるが常に鈍っている。

 

飛び交う光線を掻い潜ってライトとクミリアが近接戦闘を仕掛けに行き、意味ありげに伸びている腕を落とそうと一点を狙ってひたすら攻撃を重ねている。

 

ニアが全ての魔法を試し終わり、少しでも効き目のあった魔法を撃ち込むフェーズに入る。

 

魔法解析に集中しなければならないニアの回避をレストがサポートし、防御不可の光線を回避する。

 

全員がなすべきことを成している。今の自分にできることをやっている。俺だって、回避の目によってサポートができている。回避の目がなければ、あの光線の回避はそう何度もできない。

 

全員が、自身の力を振り絞っている...だというのに、停滞。なかなか盤面が動かない。

 

心の奥がざわつく。これまで幾度となく感じてきた悪寒が全身を駆け抜ける。

 

……魂の奥底に眠る魔王が笑っている...そんな気がした。

 

「このままではダメ...そんな気配だけがする。解決策は出てこないってのに...!」

 

考えろ。

 

もしも、時間経過によって何かが起こるのであれば、それによって俺たちに何かしらの悪影響が及ぶのならば、回避の目が発動するはずだ。回避の目が発動して、この時間までに状況を変える必要があると分かるはずだ。それが起こっていないというのも情報の一つである。

 

まだしばらくは、魔神がアクションを起こすことはない。この戦いの流れを変えるのは魔神ではなく俺たち...いや、俺だ。

 

「状況を変える一手...裏目の可能性も高いが、やってみるか...!」

 

聖の者の攻撃はそこそこの効果を生んだ。ならば、魔王を身に宿して魔の者と化している俺の攻撃はどうなる?

 

魔王の力によって逆に魔神の力を覚醒させてしまう恐れもある。より攻撃が激しくなってしまうかもしれない。だが、魔神に対してあえて魔の力をぶつけることで、同種の力の反発によって威力が向上する可能性もないとは言い切れない。

 

やってみる価値は大いにある。

 

「……魔素の力を引き出せ。魔力を編み、今できる最高の魔法を練り上げる...!」

 

今の俺は、内に秘めた聖素でも魔界中に存在する魔素からでも魔力を回復できる。そうしてできた魔力の中から、魔素由来のものを引き出して魔法を発動させる。

 

9929ページ 閃光・改 黒のみ

 

カスタムが施されたこの閃光は、魔力を込めれば込めるだけ威力が上がる。魔力を引き出した側から回復していく魔力をすぐに注ぎ込んで閃光を組み上げていく。

 

「これで...どうだ!」

 

制御できないほどに強化した閃光を魔神に向けて放つ。強化されたのは威力だけなので速度は元の閃光のまま。だが、ステラの雷装の矢で動きが鈍っている今なら、この速度でも外すことはない。

 

放たれた閃光は俺の狙い通りの場所に飛んでいき、魔神の右腕の一本を吹っ飛ばした。

 

「よし...!」

 

これまでで一番のダメージが魔神に刻まれる。腕一本を根本から吹き飛ばしたんだ。何かアクションが起こってくれないと困るぞ...!

 

「……つぎ込んだ魔力の量を考えると、この結果は期待以上。俺の攻撃は少し通りが良い...そう見えるな。けど...これでも変化無しかよ...!」

 

魔神の動きは依然として変化無し。ただ浮遊して、無差別に全てを貫く光線を放つのみ。四対八本の腕の一本を吹っ飛ばしたにも関わらず、ここまで何も変わらないとは...

 

「ならもう一発...っ、クソッ!」

 

光線が飛んできたため、その場から飛び退いて光線を回避する。

 

「……心なしかこっちに飛んでくる量が増えてる...?チッ、集中できない...!」

 

魔法図鑑を介した魔法発動は、速度操作を持たない今の俺には少し時間がかかる。狙った魔法に魔力を流し込むのには集中が必要で、回避の目による未来視や回避が挟まるとその集中は途切れてしまい、魔力の体外操作が乱れてしまう。上手く攻撃されない隙をついて魔法を発動させる必要があるが...

 

「……やっぱり、俺狙いの光線増えてね⁉︎変化あんじゃねぇか!嫌な変化だけどよォ!」

 

回避の目によって光線の軌道を先読みし、魔力操作によって僅かに強化した身体能力でなんとか回避していく。

 

「起こったのは、ちょいと俺に対する攻撃が増えただけ...けど、少しだが意思が表れたな」

 

俺を狙うという明確な変化によって、戦況が少しだけ変化する。ライトたちに向かって飛んでいく光線が減ったおかげで、攻撃に転ずる機会が増えた。

 

ライトは飛び上がると、先程からクミリアと協力して傷をつけていた腕に接近して武器を振る。武器には雷装と、黄色いオーラが纏わり付いている。色彩剣装の黄...見えない刀身を伸ばし、空間ごと引き裂く剣を用いて魔神の腕を切断することに成功する。

 

「よし、二本目...!」

 

俺がそう呟いた直後、ニアの周囲から大量の閃光が飛び出す。一発一発に別々のカスタムが施されており、まるで閃光の二つ名を持つニトラスが放ったかのような七色の閃光が魔神に向かって飛んでいく。

 

七色の閃光は魔神の腕の一点に次々に命中していく。カスタムによって付与された追加効果が連続して発動し、それらがコンボを引き起こして魔神の腕を少しずつ破壊していき削り取っていく。

 

「ナイス!三本目!」

 

ニアの閃光によって魔神の腕がまた一本吹き飛ばされる。俺の攻撃を皮切りに、少しずつ事態が好転してきたように思える。

 

「……二人も攻撃したのに、攻撃の標的になってるのはおれだけか...っと、そろそろガチで避けないとヤバい...!」

 

俺狙いの攻撃はどんどん増えていた。魔神の腕が一本ずつ飛ぶたびに、狙いが俺に向いてきている。このままだと自力での回避が不可能になるのも時間の問題だ。誰かの手で回避を手伝ってくれないと直撃は避けられない。ニアにバフをかけて貰えばもうしばらくは凌げるはず...だが、魔力の温存も大事。限界になるまでは自力で...!

 

「クソッ、眩しいな...!」

 

魔神の放つ光線は眩い光を放って降り注ぐ。直視すると目が眩んでしまうため、回避の目による未来視のみで光線の軌道を見て回避していく。

 

「ここまで明るいと、真っ昼間かと勘違いしちまうな。魔界はずっと夜だってのにずっと明るい...っ⁉︎待て!月はどこだ⁉︎」

 

魔神という意識せざるを得ない存在。そして眩い光を放つ光線によって、俺たちは空の様子を確認することが出来ずにいた。

 

隙を見て空を見上げる。星も月も見えない。すぐさま西の方向を見る。そこに月があり、地平線に沈みかけていた。

 

「ヤバ...ッ!!マズい!夜が来る!!」

 

魔界の夜。明かりが完全に消滅し、大量の魔物が湧き出す夜。魔神の放つ光線の明かりは残っているものの、魔物が湧き出すことには変わりないだろう。

 

光線のおかげで影の魔物は湧き出してこないだろう。しかし、他の魔物は大量に現れる。ただでさえ魔神を相手取らないといけないというのに、それに加えて魔物との戦闘が始まるとなると...どうなるかは想像に難くない。

 

「嫌な予感はこれ...?けど、それなら回避の目が発動してないとおかしい!まさか、回避不可能だとでも言うのか...⁉︎」

 

夜が来たら俺たちは終わりだ。ならば、そうならないように回避の目が発動しているはず。夜が来る前に魔神を倒すことで、魔神と魔物で板挟みになることは防げるはずだからだ。

 

しかし、回避の目は発動しなかった。

 

それはつまり...俺たちの手数では、夜が来る前に魔神を倒すことができなかった...ということを意味している。

 

「クソッ...次元転移に退避するぞ!ニア!!」

 

遠くにいるニアに向かって叫ぶ。次元転移を使って、ニアの周囲の仲間がまず退避。離れてる俺を、次元転移空間側からゲートを開いて引き込むことで戦線離脱することが可能なはずだ。

 

「……っ、なにこれ。開けた側からゲートが霧散する...⁉︎」

 

ニアが次元転移のゲートを開くが、その箇所の空間がヒビ割れてゲートを破壊してしまう。魔神の出現によって魔界全体が不安定になってしまっているのだろう。次元転移で逃げられない...そりゃそうだ。それで逃げられるんだったら回避の目は発動してる...!

 

「よ、夜が...来る!」

 

飛んできた光線を回避するのと同時に、月が地平線に沈む。

 

魔界の夜が来る。

 

大量の魔物が湧き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、大量の光線が魔界を駆け抜けた。

 

光線は現れた魔物一体一体に突き刺さり、霧散させる。そうして生じた塵は空中に舞い、そして魔神の元へと集まる。切り飛ばされた腕の傷に吸い寄せられ、吸収...再生が始まる。

 

「魔物を倒して...取り込んでる⁉︎」

 

腕が再生していく。それと同時に、魔神の姿にも変化が生じていた。巨大な肉の塊が縮小し、大量の脚が生えてくる。四対の腕と百を超える脚。そんな化け物が空を浮遊する。

 

「第二形態...ってか?」

 

魔神は光線を撃ち終えると、空に向かって魔力の塊を撃ち込んだ。魔力の塊が天に衝突すると、眩いばかりの光が溢れ出て、月と星が天を埋め尽くす。

 

「……魔神にとっては、完全な闇夜よりも月夜の方が良いようだな」

 

夜になっても回避の目が発動しなかったのは、こうなると分かっていたからだったのだろう。

 

魔神第二形態...戦闘はまだまだ続く。




カリヤくんの動きが少ないため、戦闘描写がとても難しい...
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