神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8040字。

魔神との戦闘の続きです。


魔取り込みし魔神

「よっ...と!ちょっとは攻撃がバラエティ豊かになってきたな」

 

魔神は無差別に放つ光線以外にも魔法を使うようになっていた。どれも古代の魔法であるためどんな魔法であるかはまだ分からないが、なんとか回避しつつ情報を集めていく。

 

「ひとまず言えることは...どれも火力バカ!」

 

古代の魔法は、なぜかは知らないが火力がや性能が頭おかしい。

 

俺たちが把握している古代の魔法もそうだ。ステラの無心の弓、冒険者のワンナが持つ略奪、シレンの穴で魔物が使ってきた魔法改竄や過去跳躍、そして魔神が使ってきていた防御完全無視の光線。どれもこれまでの常識をまるっきりひっくり返すほどの絶大な力を持っていた。

 

魔神が今使っている魔法もそうだ。例えば、直線上に飛び、着弾するまで姿を変え続けて命中の瞬間に着弾した対象に一番効果的な魔法に変化する魔法。起こる破壊事象は防御無視の光線と大差はないが、自動的に最適な魔法に変化するおかげで何も考えずに適当にばら撒いても効果が出るのが強いところだ。障壁での防御が一応可能なのがまだマシだな...

 

他にも、一見ただの炎に見えるが実際は魔力を燃やす性能を持つ炎であり、被弾すれば体内の魔力に引火して内側から焼かれると共に魔力を消耗されてしまう恐ろしい魔法であったり、加速度的に速度を増して最終的に光速を超える光の槍であったりと、ひたすらに殺意が高い魔法が多く飛んでくる。

 

「回避の目がなきゃ何度死んでたことか...」

 

魔法の回避はもちろんのこと、魔法の内容まで知ることができているのも回避の目のおかげだ。回避の目によって見ることのできる被弾の未来は、その魔法によって引き起こされる被害をも見通すことができる。まだ一度も当たっていないにも関わらず、魔力を燃やす炎に気付くことができたのはこれのおかげだ。光速に達する槍だって、なすすべもなく撃ち抜かれる未来を見てようやく理解した。

 

「とりあえず、魔神の攻撃手数は理解した。攻撃は変化した...だが、それ以外は何も変わっていない...!」

 

魔神の姿が変わった。攻撃も種類が増えた。

 

しかし、それ以外には変化はなし。それどころか、逆行しているまである。その逆行している箇所は、俺狙いの攻撃が消えたこと。俺が腕を吹き飛ばしてから魔神が大量の魔物を吸収する前は、俺に対しての攻撃を強めていた。しかし、魔物の吸収、そして姿を変えてからはまた全てを破壊する無差別攻撃に戻っていた。

 

あの時、俺を狙って攻撃し始めたのは、魔王を内に宿す俺が攻撃したからではなく、腕を吹き飛ばして魔神を負傷させたから...という可能性が浮上し始める。魔神は夜によって湧き出した魔物を光線で撃ち抜いて吸収した。吸収することによって、傷ついた腕は復元した。

 

もしも、魔神は俺の中にいる魔王を狙って攻撃をしてきていたとしたら...?魔王を吸収して、傷を治そうと試みていたのだとすれば...俺狙いの攻撃を始めたことの説明がつく。今は傷がないため無差別攻撃に戻ったのだろうと予測ができる。

 

「せっかく意思が見えてきたってのに、またうちに閉じこもりやがった...傷をつけるほどに、魔神の意識が覚醒する...って可能性あるか?」

 

魔神を傷つけると意識が覚醒して、意思を持った行動を始める。もしそれが正しいとすると、このまま攻撃し続けてもいいものかと考えてしまうが...

 

「っ...空間がひび割れてる...⁉︎」

 

魔神が暴れ、魔法を乱射するたびに魔界は破壊されていく。魔界が破壊されていくごとに、空間全体が揺らぎ、ヒビが入る。

 

「このままだとマジで魔界が壊れる...!」

 

魔界の破壊...いや、この感じだと魔界の封印の完全破壊の方が近いかもしれない。シレンの穴に存在している魔界の封印は、勇者の聖剣によってなんとか繋ぎ止められている。しかし、これだけ魔界が揺さぶられてしまえばその封印が解かれるのも時間の問題だ。

 

魔界が壊れるよりも先に魔界の封印が解かれれば、元の世界と魔界が完全に繋がってしまう。魔神が元の世界に移動して、破壊の限りを尽くしてしまうだろう。それだけは避けなければならない。

 

「攻撃したら多分、俺が狙われる...が、保身なんてゴメンだな。攻撃あるのみ...!」

 

9929ページ 閃光・改 黒のみ

 

飛んでくる光速の槍を回避した直後、しばらくの間攻撃が飛んでこないことを回避の目の不発動によって知った俺は、その隙に魔法図鑑に魔力を流して閃光の魔法を練り出す。

 

仲間の攻撃を遠くから伺って気付いたことだが、魔物吸収前よりも攻撃の効きが悪くなっている。大量の魔物を取り込んだからだろうか?魔法への耐性が相当上がっており、皮膚の頑強さも向上していて物理攻撃もやや通りにくくなっている。

 

だから、前よりも魔力を込める。今度は腕だけではなく胴体ごと吹き飛ばすつもりで、上がった魔法耐性をも上回るほどの魔力を込めて放つ。そのために、ひたすら、ひたすら魔力を込める。全て絞り出す。

 

回避の目は魔力無しでも発動できる。魔力での身体強化は魔力切れした後でも使える。魔素があれば魔力もすぐに回復できる。全て絞り出して一発どデカいのを放つ...それが今の俺の魔力量からしても一番効率が良かった。

 

「……っ!そこだ!!」

 

回避の目が発動する。魔神の攻撃が勇者パーティーの誰かに命中する未来ではなく、俺の放った閃光が魔神を貫く未来が見える。それが見えた直後に、その未来の通りに閃光を放つ。

 

閃光は魔神の身体を貫いた。斜め下から、百を超える足の何本かと、胴体、そして右腕二本を貫いて消し飛ばしてしまう。

 

「良し...!」

 

魔神に開いたどデカい風穴を見て俺はガッツポーズを取る。全てを絞り出すと言ったものの、偶然にもほんの僅かに魔力が残ったおかげで魔力切れは回避された。魔力が溜まり次第、二発目を撃つことができるだろう...

 

「……ッッッ!」

 

ゾクゾクッ...!と背筋に寒気が走る。

 

見られている。魔神に凝視されている。

 

敵...いや、取り込む捕食対象として見られている...!

 

「やっぱこうなるよな...!」

 

魔神のヘイトが一気に俺に向いた。魔神自身が沈まない月を生み出したために魔物は少量しか出現しない。そのため、傷を治す材料として魔物を使えず、魔王を取り込む他ないのだろう。

 

「俺が引きつける!攻撃頼むぞ!!」

 

魔神に背中を向けて逃げる。目指すは南。魔神が俺を狙っている今なら、魔神を誘導することも可能だ。出来るだけシレンの穴から魔神を離すことで魔界封印が崩壊するのを遅らせ、また女神の山に少しでも近づくことで女神の権能を期待する。こっちはほぼ期待できないから気休め程度だがな...しかし、もしも女神の山に到達できたなら、ニアは落雷魔法を使うことができる。その可能性が少しでもあるなら、動かない手はない。

 

回避の目の対象を勇者パーティー全員と魔神に設定する。これにより、魔神からの攻撃予知ができ、仲間の魔神への攻撃も観測することもできる。

 

……と、早速回避の目が発動する。ライトの魔神への攻撃の未来が見える。

 

どうやら、切り札を一つ切ったようだ。

 

俺にヘイトが向いたことで、ライトは落ち着いて攻撃する機会を得た。それにより発動に時間がかかる魔法を発動することができ、ライトは色彩剣装を発動させた。

 

赤・青・緑、三色の原色が混ざり合い、純白を生む。

 

色彩剣装・混色の白。ライトの持つ剣から大量の光の刃が放射状に伸び、それらが合体を繰り返しながら追尾し、空間を引き裂きながら魔神を追う。そうしてできた純白の一刀が俺を追って飛行する魔神を背後から引き裂く。

 

空間ごと引き裂く純白の刃は魔神の左腕を胴体の一部ごと斬り飛ばし、空間の裂け目に飛ばした腕を引き摺り込むことで再生を許さない。肉体を抉り取ると共に、その箇所に溜まっていた魔力を奪うことができたため見た目以上に魔神に与えたダメージは大きいだろう。

 

「次は私が...!!」

 

純白の刃が消えたのを確認してから、ステラは無心の弓を連射する。攻撃範囲は狭いものの直線上のものを全て貫くため、ステラは魔神の周りを飛び回ってさまざまな角度から無心の弓を放っていく。攻撃範囲が被らないようにして一発ごとのロスを少なくしつつ、一番多く魔神の身体を巻き込めるように角度を吟味して放つ。

 

無心の弓の魔力消費はどう放っても変化しない。消費魔力を無駄にしない、最大効率での攻撃。放たれた無心の弓は魔神の全身を貫き、身体を削り取っていく。

 

「っ...攻撃激しすぎ...!」

 

攻撃を回避しながら、隙を見て魔法図鑑に魔力を流そうとするもののなかなかうまくいかない。避けるのに手一杯だ。もうここまでくると、閃光を放つ用意ができたとしても狙いを定めることすらできないだろう。一度放ってしまえば、魔法を貫通できる閃光なら飛んでくる魔法を無視して攻撃できるだろうが、命中率は期待できない。

 

回避に徹する他ないだろう。

 

「カリヤ!!」

 

「うわっ⁉︎」

 

レストが遠くからすっ飛んできて、俺の近くで受け身を取って体勢を持ち直す。大方、クミリアに投げ飛ばされてここまできたのだろう。狙われている俺を守るために強引に飛んできたなぁ。

 

「回避できない魔法は僕が受け止める...!」

 

回避の目で見えた未来を元にレストが盾を構える。魔力を燃やす炎、光速の槍、それらを見極めて右腕の盾で受け止めて吸収し魔力に変換する。極小サイズの魔法拡散を展開しているようなものなので、魔力を燃やす炎も効力を発揮することなく吸収されていく。

 

「助かる...!けど、無理はするなよ。特に、カウンターだけは使うな。自滅するだけだからな」

 

「なんで?」

 

「わかんないのかよ誘引であの光線も引き寄せちまうからだよ!手癖で使うなよ絶対だからな!」

 

カウンターを発動させると、その時点で放たれていた攻撃全てを引き寄せてしまう。その中にありとあらゆる防御を貫くあの光線が混じっていれば、攻撃を受け止める段階で貫かれてカウンターが不発に終わるだけでなく身の危険を招くことになるのだ。

 

「そっかたしかに...見極めて吸収するだけならいいよね?」

 

「もちろん!頼んだぞレスト!」

 

レストが近くに来てくれたおかげで、俺が気をつければいい攻撃は光線のみとなった。それ以外の魔法は魔法を吸収する盾で防いでくれる。着弾の瞬間に最適な魔法に変化する魔法だけ、一度障壁で受け止めて魔法を変換させる工程を挟む必要があるが盾で吸収は可能だ。

 

これにより、光線の回避にのみ意識を割けば良くなった。使える脳のリソースが増え、魔法を発動させる余裕も出てくる。命中不安も、回避の目を応用すれば今なら当てることができるだろう。レスト様様だな。

 

「さーて、やるぞ!」

 

9929ページ 閃光・改 黒のみ

 

閃光のチャージに入る。魔神の肉体はだいぶ削れてきた。過剰にチャージしたとしても、当たる位置と攻撃範囲によっては既に削れている箇所を通ってしまいあまり意味がない...なんてことが起こりかねない。そのため、奴の魔法耐性を貫ける程度に抑えて、数を撃てるように威力を調整する。

 

「まず一発...!」

 

回避の目によって当たるとわかった方向に向けて閃光を放つ。どの位置に当たるか吟味することができないからこそ、数をこなす。数で魔神の身体を削り取る...!

 

「次...次...!」

 

チャージした閃光を逃げながらノールックで放つ。目視でどれだけ削れたかわからないのが難点だが、一番すべきことは魔法の回避。そこを履き違えてはいけない。

 

「次...っ⁉︎」

 

回避の目が発動する。突然暴風が吹き荒れて、俺の身体だけ空に吹き飛ばされる未来が見えた。回避をしたいが...どうやって?閃光を放ち続けた直後であるため魔力が少ない今の俺では、魔法による回避は難しいだろう。俺の身体能力でも回避は不可能。となるとこれは、俺以外の誰かが動くことで回避可能となる攻撃...!

 

「くっ...!」

 

他者に委ねなければならない攻撃は回避するのが困難なことが多い。未来を見た俺が伝達した仲間、もしくは回避の目の共有によって知り得た仲間が直接干渉する必要がある。回避の目が発動した以上、回避可能ではある。しかし、猶予は短い。伝達の遅れや、回避の目の情報の吟味によってタイムラグが発生すれば間に合わなくこともしばしばだ。

 

それに、俺目線では自力での回避は不可能だとすぐに分かるが、周りからはすぐにそうだと分かるわけではない。そのため、助けが必要であると気づけないままその時を迎える時もある。

 

今回も、それが起こったのだろう。誰が必要なファクターだったのかはわからないが、攻撃や防御などの行動の途中であったり、助けが必要だとすぐに判断できなかったりといった理由で俺のことまで手が回らなかったのだろうな。

 

俺は避けられない暴風をその身に浴びて空に吹き飛ばされる。

 

「っ...!」

 

魔神の顔と目が合ったような気がした。

 

そして、またしても回避の目が発動する。魔神が放った初見の魔法が俺の身体を貫く未来が見える。魔法は俺に命中すると、身体がボロボロになって風化していき、ついには魂だけが残される。最後に、魔王の宿る魂ごと魔神に吸収されて...

 

「そんな未来...現実にはさせない!」

 

俺を蝕む魔法が放たれる。真正面から、真っ直ぐ飛んでくる。暴風が俺の身体をこの位置に固定しているため、身動きによる回避は不可能。初見の魔法であるため、魔法での防御がどれほど通用するかわからない...

 

……少なくとも障壁ではダメなようだ。魔法図鑑に魔力を流そうとした瞬間に回避の目が発動して無駄であったことがわかる。他の魔法も試そうとするが、いずれも俺の身体を貫く未来が見えるだけ。どうやら俺の魔法は全て貫いてしまうらしい。ならば...これしかない!

 

「穿て...!無心の弓!!」

 

次元収納を開く。開けた穴から、ステラが放った無心の弓が飛び出して魔神の魔法を貫き、消滅させてしまう。そしてそのまま魔神に命中して体の一部を削り取る。

 

「あっぶねぇ...これがなきゃやられてたぜ。ステラには感謝してもしきれないな」

 

おそらくあの魔法は、俺の魔力で出来たものを貫いて風化させるものだったのだろう。そのため、俺の魔法では防ぐことは不可能だった。女神の山突入前に収納したステラの無心の弓が無ければ、なすすべもなく撃ち抜かれていたことだろう。

 

「……っと、落ちる...!」

 

俺を浮かせていた暴風が消滅し、俺の身体は落下を始める。

 

「カリヤ!!」

 

遠くからステラが飛んできて、落下する俺を受け止めてくれる。

 

「サンキューマジで助かる!」

 

「大丈夫⁉︎怪我してない⁉︎」

 

「ステラのおかげで平気だ!...それよりも、俺と一緒にいると危ない。早めに降ろしてステラは攻撃に戻ってくれ!」

 

「う、うん!...あれ?攻撃が止まってる...?」

 

「え?...ほんとだ」

 

回避の目が発動しないなと思っていたら、魔神の攻撃が止まっていた。先ほどの無心の弓で何かが起こったのか...?

 

「とりあえず降ろしてくれ」

 

「うん...」

 

ステラに地上に降ろしてもらう。

 

「とりあえず、上から様子を見てみるね」

 

「おう、近づきすぎないように気をつけろよ」

 

ステラは再び空を飛び、上から魔神の様子を見に行く。はてさて、なぜ急に動きを止めたのやら...

 

「……っっっ⁉︎」

 

回避の目が発動した。俺が見えない力で吸い寄せられて、魔神に取り込まれてしまう未来。まさか、動きを止めたのは俺らを油断させるため...⁉︎ステラが俺から離れるのを待ったのか!

 

「まず...!!」

 

2007ページ下 拘束 黒のみ

 

なんとか吸い寄せられる力に抗おうと足に力を込めるものの、すぐに俺の身体が空中に浮いてしまった。俺は即座に魔法を発動させて、地面から鎖を召喚して俺の腕に絡み付かせる。

 

「ぐっ...ぐぅっ...!!」

 

腕一本で繋ぎ止めるのには限界があった。負荷に耐えきれず肘関節が外れて激痛が走る。それでもなんとか食い止めようとするが、今度は鎖が持たずに破壊されてしまい、またしても俺の身体は宙に浮く。

 

「誰か、助け...!」

 

無事である左腕を伸ばす。しかし、掴めるものは周囲にはない。伸ばした腕は空を切る...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今度は...掴めた!」

 

「ら、ライト...!」

 

ライトの手が、俺の腕を掴み取っていた。『今度は掴めた』...そのセリフで、俺の脳裏にライトとの別れの記憶が蘇る。あの時、最後に握手が出来なかったことが、ライトにずっと心残りとして存在していたのだろう。

 

「離してなるものか...!!」

 

ライトは渾身の力で俺の腕を引っ張る。しかし、引き摺られる。おそらくこの吸引は魔王を宿す俺にしか作用していない。そのため、ライトには一切の力が加わっていない。俺に対してかかっている力が、ライトの膂力を上回っているのだ。

 

「堪える...!」

 

その時、鎖がライトの身体を縛り、地面に繋ぎ止める。

 

「これは...!」

 

さらに鎖は増え、今度は俺の身体にも巻き付いて地上に引き寄せようとする。

 

「恐るべき吸引力ね...けど、私の前でそう易々と持って行かせはしないわ!」

 

「ニア...!」

 

「クミさんもいるよ!」

 

まだなお引きずられそうになるライトにクミリアがしがみつく。二人分の重量と力、そしてニアの魔法によってようやく力が均衡する。

 

「……っ!また強く...!」

 

引き寄せる力がさらに強まる。どうやら魔神はなんとしてでも俺を引き込みたいらしい。均衡が崩れ、少しずつ魔神の方へと引き摺られていく。

 

「ごめん遅くなった!!」

 

「絶対に助ける...!」

 

ステラが空中から俺の身体にしがみついて上から押し、レストは鎖を引っ張って引き寄せようとする。

 

また、均衡。引き寄せる力と引き留める力がイーブンとなり...いや、引き留める力が上回り、ジリジリと魔神から離れていく。

 

「負ける...ものか!!」

 

その時だった。

 

俺の奥底から、何かが抜け出るような感覚が走る。

 

「うわっ、なに⁉︎」

 

俺の背中から何かが飛び出した。黒いモヤのようなものは俺の身体を飛び出して魔神のもとへと飛んでいく。

 

心の中のつっかえが取れたような感触。ドス黒い何かが消えた、清々しい感覚。

 

これは...

 

「あぶっ...⁉︎」

 

内から湧き出した感覚に意識を向けていると、突然引き寄せる力が消えてしまい、引き留める力のみが残って全員地面に倒れ込んでしまう。

 

「いってて...どうなった⁉︎」

 

急いで起き上がり、魔神の方を見る。黒いモヤのようなものが魔神に吸収されるところが目に入る。

 

「あのモヤ...間違いない。あれは魔王だ...!」

 

「魔王...⁉︎カリヤの中から魔王が抜けたの⁉︎」

 

「ああ。そして、魔神に吸収された...!」

 

魔王は魔神が自ら生み出した直属の部下だ。他の雑多な魔物を複数体取り込むよりも、何倍も効率が良いだろう。これまで付けた無数の傷の完璧な治癒と、さらなる変形。それくらいは起こっても不思議ではない。

 

「っ...姿が、変わり始めた...!」

 

魔神の肉体が脈動する。無から肉が生成されて無数の傷口を塞ぎ、けれども全長は縮んでいく。肉が圧縮されていく。十メートルはあった体格は今では二メートルほどになり、四対八本の腕と百を超える脚もその数を減らし、二本の腕と二本の脚...まるで普通の人間のような姿を取る。

 

「人型に...変化しただと?」

 

身長二メートルの人型魔神は空中を荘厳なオーラを纏いながら浮いている。人の姿に見えるが、神は神。内から溢れ出る魔のオーラが、あれが魔神であることを嫌というほど叩きつけてくる。

 

……気がつくと、変形の際に一度消えていた顔が出現する。仮面のような顔が開眼し、俺らを真っ直ぐ見下ろす。

 

「『良くぞ我の封印を解いてくれたな。褒めてやろう、人間』」

 

「しゃべっ...!」

 

魔王を取り込んで、魔神の意識が完全に戻ったのか...!

 

……しかし、何故だろう。

 

溢れ出る魔のオーラをひしひしと感じるというのに、あの魔神からは敵意が見えなかった。




ついに魔神完全復活。
そして、魔王がカリヤくんの身体から抜けました。
これにて、一件落着...?
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