神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8202字。

魔神との会話から始まります。


復活魔神の聖魔問答

「『良くぞ我の封印を解いてくれたな。褒めてやろう、人間』」

 

「しゃべっ...!」

 

魔神が声を発したことに驚く。どうやらみんなにも聞き取れているようだから、この世界の人間の使う言語で話しているらしい...いや、違うな、違和感がある。今、声が二重に聞こえていた。二種類の声を発している...?人間と魔物に通じる言語を両方同時に発していて、両方翻訳されて俺の耳に届いているようだな。

 

「『あの忌々しい女神の作り出した封印...あの条件を満たす日が来るとは思ってもいなかった』」

 

「条件...?」

 

「おそらく、あの竜のことだろう。あれらを倒すには、魔の者と聖の者...つまりは、魔物や魔族、魔王と人間が手を組まなければ倒すことはできない。どちらか一方のみが魔界に踏み込んだとしても、絶対に魔神の封印は解けない」

 

こういう条件を付ければ、魔神の封印を解くことはほぼ不可能だろう。魔王が寄生した者は魔の者だも捉えられるため、魔王が単独で封印を解くことはできない。白竜が黒竜の後なので、無理矢理人間に白竜と戦わせて用済みになったら排除する...という方法も取りづらい。

 

魔王と人間が双方納得の上で魔神を復活させることに決めなければ、封印は破れない。今回みたいなイレギュラーが無ければ...だが。

 

「『勘がいいな。貴様は...魔王を取り込んでいた者だな?よくぞ彼奴をここまで連れてきたものよ。彼奴がいなければ、我の完全顕現は成し得なかった』」

 

っ...魔王を取り込むことそれ自体が、魔神の意識の覚醒に必須なファクターだったのか。となると、俺がいたらダメだったのでは...?

 

……いや、待て考えろ。俺が介入しなければならないことがこの聖杖世界では起こっていたはずだ。もしかしたら、魔神が不完全な形で顕現してしまい、魔王を取り込めずにずっと暴れ続けて魔界が崩壊して、全てが破壊される...なんてことが起こるはずだったのかもしれない。となると、魔神の完全顕現は良いこと...なのか?

 

「そ、そいつはどうも...」

 

「『そう怯えるな。今の我は機嫌が良い。なにせ、あの女神の創造物が我を封印から解き放ったのだからな。実に良い...褒美として、人類を直接滅ぼすのは止すとしよう。すでに存在している、我の可愛い魔物たちがどうこうすることまでは責任は取らないがな』」

 

……なんか、勝手に上機嫌になっているな。ちょいと不穏なことを言ってはいるが、魔神が自ら手を下すことはないと言質を取れたのは、かなり人類にとって嬉しいことなのでは?

 

「『……おや?貴様だけどこか不思議な力を感じるな。女神の創造物ではない...?』」

 

あ、多分俺のことを言ってるな。別世界の人間だからか不審がられてる...けど、魔王を運んだことに感謝しているようだし、不審だから殺す...なんてことはしないだろう。

 

「『……まぁ良い。貴様がどんな存在であるかなど些細な問題だ。それよりも...この姿に戻ってしまったことの方が問題だな』」

 

あー...たしかに、人の姿になっているのは少し妙だなと思っていたんだよな。女神の創造物の姿に魔神がなるとは思えない...ってな。けど、戻るって言ったよな?本来の姿がこれなのか...?

 

「戻ってしまった...ということは、魔神はもともとその姿だったのか。人の姿なのは何かの偶然...?」

 

ちょっ、レスト?ワンチャンそれ地雷の可能性あるんだけど...⁉︎

 

「『逆だ。元々我ら神がこの姿を取っていた。自尊心の高い忌々しい女神は自らの姿をそのまま創造物に落とし込んだだけのことよ』」

 

……意外とフランクというか...優しいな魔神。女神と争っているだけで、人類そのものに対する憎悪はそこまで無い...ということなのだろうか?これ、このまま穏便にことを済ませられそうだな...なんなら、再封印とかいらないんじゃないの?

 

そういえば、神様からはこの聖杖世界での問題を解決しろ、としか言われていない。そして、その問題を解決すればすぐに魔王を除去することができる、とも言っていた。

 

魔神の討伐や魔界の再封印という目的はライトが言ったことである。それを聞いて、俺はそれが解決すべき問題なのだと思ったが、実際は違ったのかもしれない。魔神の不完全顕現を阻止して完全顕現を促す...それが、神様の願っていたことである可能性はないだろうか?魔神は復活したが、このままいけば争うことはないだろう。魔王も俺の中から消えた。もう既に神様の言う問題は解決した...そう捉えることも出来るだろう。

 

てっきり、魔界の再封印が終わって聖剣を自由に扱えるようになった後、聖杖によって魔王を除去する...という流れになると思っていたが、まさかこんな形で全てが解決するだなんてな。

 

「『忌々しい女神と同じ姿であることも、同じものを創造することも嫌悪した我は、自らの姿を変えて魔物を生み出した。封印から解き放たれた際にこの姿に戻ってしまったがな...』」

 

あ、どうやら魔神の一人語りが続いていたらしい。正直、あまり興味がない。魔界騒動が落着したわけだから、早めに話を切り上げて元の世界に戻りたいんだが...どうやってその流れに持ち込んだものか。

 

「……先程、人類を滅ぼすのは止める...そう言ったわよね?」

 

「『そうだな。それがどうした』」

 

「私たちは魔神と魔界の再封印を目的としてここまでやってきたわ」

 

ちょっ...ニア⁉︎そんなこと言ったらマズイだろ...!

 

「『なに...?』」

 

「貴方の封印を解いてしまったのも、半ば偶然のようなものよ。けれど、再封印は人類に降りかかる脅威を排除するための手段。貴方が人類に敵対しないのなら、再封印の必要はないわ」

 

「『ふむ...結論を言え』」

 

「貴方は女神を憎んでいるのでしょう?だったら、互いに不干渉を貫くことにしましょう。私たちは元の世界に戻る。貴方はほぼ同じ空間であるこの魔界で自由に過ごす。干渉できないように、魔界と元の世界を分けてしまう。これでこちらの目的も達成出来るし、貴方も自由に使える世界が手に入る。どうかしら?」

 

「『ほう...この空間は女神が生み出した物。それを我が自由に組み替えられるのもまた一興か...良いだろう』」

 

お、おお!ニアが完璧に交渉を済ませた!

 

女神と魔神が争ったのは、生み出された聖杖世界の主導権をどちらが握るかという問題で起こったことだった。しかし、今は魔界がある。そちらを魔神が掌握し、表の世界を女神が掌握する...互いに自由にできる世界があれば、神同士で争うこともないだろう。最初の争いの理由はアクセルから聞いていた。アクセルの話をニアも覚えていたからあの交渉が出来たのだろうな。

 

「『ならば、早速創造を始めるとしよう。我を失っていた間に、破壊の限りを尽くしてしまったからな...創造のしがいがある』」

 

魔神がそう言うと、破壊し尽くされた魔界が一瞬にして改変されて修復される。世界のヒビ割れは消え、破壊された地面も元に戻る。

 

「『……と、世界の断絶は貴様らが出た後にすべきだな。疾く元の世界に戻るが良い』」

 

「わかったわ。出来れば古代の魔法をいろいろ教わりたいところではあるけれど...大人しく帰りましょうか」

 

そう言いながらニアは次元転移のゲートを開いた。魔神が魔界を修復したおかげで、ゲートは破壊されずに保たれる。このままシレンの穴に向かえば元の世界に帰れるだろう。

 

「『さらばだ、名も知らぬ者どもよ』」

 

ゲートに入ろうとする俺らの背中に向けて、魔神はそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『……む?』」

 

そして、魔神は何か訝しむような声を発した。

 

「『これ、は...内から何かが...!』」

 

何か異変が起きている。魔神の声からそう察した俺は、ゲートに入るのをやめて振り返った。

 

そこには、胸と頭に手をやって苦しんでいる魔神の姿があった。

 

「『貴様、我を飲み込むつもりか⁉︎創造主だぞ!そんなこと許すと思うか!』」

 

魔神が叫ぶ。ドッと魔のオーラが溢れ出し、魔神は平静を取り戻す。

 

「『……まさか、魔王が叛逆を企てるとはな。なぜそのようなことをしでかしたかは分からぬが、我を飲み込むなどありえぬ...  』」

 

……魔神の動きが止まった。

 

そして、魔神の中から黒いモヤが飛び出して魔神の全身を包み込んだ。

 

「なっ...ま、まさか...!」

 

黒いモヤは完全に魔神の中に吸収されていく。

 

魔神の目が開く。目から伺える。あれはもう、先程までの魔神ではない。

 

「魔王が...魔神を乗っ取りやがった!!」

 

「ふ...ふははは!!!もう気付くか!」

 

魔神...いや、魔神を乗っ取った魔王が高笑いを上げる。

 

「流石は余と行動を共にした男なだけはある!」

 

「ハッ、お褒めに預かり結構。にしても、魔神様を乗っ取っちまって良かったのか?お前の創造主だろう?」

 

「なに、初めからこれが目的。魔神を復活させるのも、最後に乗っ取るための過程に過ぎない...!」

 

「忠誠心皆無かよお前...」

 

「貴様には感謝しているぞ、仮谷幸希。貴様の力が無ければ、魔神を乗っ取ることなど出来なかったからな」

 

「……っ、速度操作か...!」

 

魔神は一度は魔王を封じ込めた。しかし、俺から奪い取った速度操作の能力を使って魔神の動きを止めることにより、完全に魔神を乗っ取ることに成功したのだろう。

 

「その通り。さて...仮谷幸希の力を存分に使い、貴様らを葬るとしよう」

 

魔王は俺らに手を向ける。

 

俺から奪い取った五つの能力。速度操作、創造の銃、衝撃の剣、模倣の傷、幻痛の熱...そのどれが来るかわからない。俺たちは武器を構えて身構える。

 

「……む?」

 

魔神は困惑の表情を浮かべた。

 

「……なるほど。言っておくが、俺らに減速は効かないぜ」

 

「チッ、勇者の加護か...忌々しい」

 

魔王はおそらく、俺らに対して速度操作による減速を発動させていたのだろう。しかし、俺ら全員には勇者の加護が与えられている。加護の中の、ありとあらゆる不利益を回避する力...いわゆるデバフの無効化によって減速を無視できているのだ。

 

「……仕方あるまい。少しは労力をかけなければな」

 

「総員警戒!!」

 

減速は俺らには通用しない。そのため魔王は俺らを完全に行動不能にしてのイージーウィンをすることができなくなったが、それでも他の能力による蹂躙は可能だ。

 

特に、速度操作による加速が一番まずい。減速と加速の両立はほぼ出来なくなっているが、一つだけならば片方を全開にしていてももう一つを使うことができる。現在、魔王は魔神の動きを封じる減速をしている。それと同時に、自らの移動速度を加速させることも出来るはずだ。光の速度で動かれては、回避の目があろうとも発動すらせずに攻撃を喰らってしまうことだろう。

 

光の速度による攻撃はもはや対策は不可能。それ以外の攻撃に対応するために警戒をする。

 

「周りの奴らはともかく、貴様は戦っても無駄だと分かっていると思ったが...無駄な抵抗、それでも良し。無駄に足掻いて、無様に散るがいい」

 

そう言うと魔王は手をパンパンと叩く。

 

「衝撃の剣...!!」

 

「展開される前に叩く!」

 

クミリアが飛び出し、空を飛んでいる魔王に近づく。手を叩いたのは、衝撃の剣の展開に必要なエネルギー生成のため。衝撃の剣はありとあらゆる攻撃を受け止める絶対の防御であるため、それが展開される前に攻撃を仕掛ける必要があった。

 

「っ...!クミリア!」

 

回避の目が発動して、未来が見える。手を叩いた魔王は、その手に拳銃を生み出していた。衝撃の剣を警戒させての銃撃。同時に複数の能力を使える状況であるからこそ出来る、俺には使えなかった攻撃だ。

 

「分かっていれば...!」

 

見えた未来通りに魔王の手に拳銃が握られる。銃口はクミリアに向けられ、引き金が引かれる。

 

「掴める!!」

 

クミリアは放たれた銃弾を掴み取り、握り潰して推進力を消してしまう。

 

「お返し!」

 

掴み取った弾丸を魔王に投げ返すクミリア。その弾丸を魔王は衝撃の剣を展開することで受け止める。

 

「やっぱ防がれるよね...未来視ありがとカリヤ!」

 

「おう!これは取られなくて良かったぜ...」

 

回避の目まで奪われていたら完全に勝ちの目は消えていただろう。回避の目で魔王の攻撃を先読みすることができれば、攻撃の回避の成功率は大幅に上がる。回避し続けて攻撃の試行回数を稼ぎ、魔王を倒す手段を見つける必要があるな。

 

「まず、衝撃の剣を貫く手数を探すぞ!」

 

衝撃の剣を貫くことは絶対条件だ。あの能力は魔力を使わずに発動できるものであるため、魔力切れを狙う戦法は通用しない。

 

だが、万能な能力というわけではない。実際、法術世界では勇者の持つ異能の力を無効化する力によって衝撃の剣は無効化されてしまった。この世界でも、同様に衝撃の剣を貫ける何かがあるはずだ。

 

「魔法拡散が意味ないことはわかってる。それ以外を試すぞ!」

 

「うん!」

 

元気のいい返事をすると同時にステラは無心の弓を発動させた。触れた物全てを消し飛ばす必殺の弓矢。黒竜の結界には無効化されてしまったが、衝撃の剣の仕様を考えると貫けるはずだ。これが一番手っ取り早い方法...だからこそ、魔王も警戒する。

 

「っ...無視!」

 

回避の目が発動したものの、ステラは無視して無心の弓の構えを続ける。ステラを蝕むのは幻痛の熱。存在しない弦を引く僅かな動作によって生じた服や空気との摩擦熱が増幅され、ステラの神経を焼く。

 

だが、ステラは理解している。これが偽物の熱であることを。だから回避の目によって見えた幻痛の熱を無視し、ステラは構えを続けた。見えた未来通りに偽りの熱が襲い、ステラの表情に苦悶が混じるものの弦を引き、そして手を離す。

 

「くっ...!」

 

無心の弓が放たれる。しかし、魔王は無心の弓が放たれる直前に回避行動を取っており、一瞬で魔王のすぐそばを貫いていく。

 

「避けられた...!」

 

「速度探知で放つ瞬間を見破られたか...!」

 

俺らに対する減速が使えずとも、速度探知は通常通り使える。俺らの動きや体内の魔力の巡りまで魔王には全て筒抜けだ。魔法発動の兆しすら見抜けるため、魔王に奇襲は通用しない。攻撃の瞬間を見抜くこともできるため、それを元にした回避も可能だ。自らの加速はしていないから、それは出来ないものと考えても回避には十分だろう。

 

「撃ち抜く...!」

 

無心の弓を回避した魔王に向けて閃光を放つニア。

 

「無駄だ。そんな魔法では貫けんよ」

 

閃光を衝撃の剣で魔王は受け止めた。その衝撃が吸収され、剣に力を蓄える。

 

「衝撃の剣は魔法ではない...だから閃光では貫けないというわけね」

 

他の魔法も放ってみるものの、全て閃光と同様に吸収されていく。

 

「これ以上は力を与えるだけ...か」

 

「その通り...!」

 

魔法を受け止めた魔王はニアに近づく。衝撃の剣を振りかぶり、ニアに向けて振り下ろそうとする。

 

ニアは後ろに飛び退きながら前方に障壁を張る。衝撃の剣が障壁を貫通してニアに迫るものの、障壁によって魔王の接近を拒んだことでギリギリのところでの回避に成功する。

 

「そこっ!」

 

ニアは魔王の両側から魔法を撃ち込む。魔王の攻撃の直後に反撃をすることで、衝撃の剣による防御を固める前に魔法を撃ち込もうという魂胆だった。

 

しかし、魔王は防御に成功する。衝撃の剣はエネルギーを蓄えるごとにその体積を巨大化させられる。そうして使えるようになったリソースで全身に小さな糸状の衝撃の剣を展開することにより、どこから攻撃が飛んできたとしても即座に受け止めることができてしまう。速度探知による奇襲の無効化も相待って、この方法では防御を貫くことはできない。

 

速度やタイミングでは衝撃の剣をどうこうすることはできない。やるなら、無心の弓のように性質によって衝撃の剣を貫けるような方法を探るしかない。

 

「ほう、今のを見ても向かってくるか」

 

ライトが魔王に近づく。何か算段があるのだろうか?

 

「聖剣の無い貴様など、なんの脅威でもないわ!」

 

魔王は衝撃の剣を伸ばしてライトに攻撃を仕掛ける。ライトは一度は武器で受け止めようとするが、すぐに衝撃の剣の性質を思い出したのか身を捩って回避をした。そしてすぐさま攻撃に転ずる。

 

「っ...!」

 

ライトは雷装を纏わせた剣を振って攻撃するも、魔王の衝撃の剣がそれを許さず攻撃を受け止めようとする...しかし、剣同士がぶつかる直前にライトの剣が変形する。ライトの魔道具はぐにゃりと曲がって、衝撃の剣を避けるようにして喉元を突き刺しにかかる。

 

「小細工しようが無駄だ!」

 

一度は接触を回避できようとも、全身に張り巡らせている衝撃の剣を完璧に避けて攻撃を叩き込むのは不可能に近かった。ライトの剣が衝撃の剣に接触し、攻撃の威力が全て吸収されてしまう。雷装も吸収されてしまい、魔王に流れ込むことはなかった。

 

そして、反撃とばかりに衝撃の剣が振られる。自由自在に伸ばせる衝撃の剣をこの距離で回避することは難しい。物質透過の切断があるため、何かで受け止めることも叶わない。ライトの首筋に衝撃の剣が伸びて...

 

「む...今のを避けるか」

 

命中の瞬間、ライトの身体が消滅した。衝撃の剣は何もない空間を切り裂き、少しばかりのエネルギーを蓄えるのみにとどまる。

 

その一秒後、ライトは先ほどいた位置から少し後方に出現し、そのままバックステップでさらに距離を取る。おそらく、未来跳躍を発動させたのだろう。一時的にこの世界から消滅することで速度探知からも逃れ、衝撃の剣を回避したのだ。

 

「だが、次は無い」

 

魔王の手に拳銃が生み出され、ライトに向けて銃弾を放つ。そんな未来を見たライトは身体強化をかけて、引き金を引かれる前に回避行動を取って射線上から逃れる。

 

……だが、避けたはずなのに回避の目は再発動した。放たれた銃弾が空中で軌道を変えてライトに命中する未来が見えたのだ。軌道変更の魔法...いや、幻痛の熱による銃弾の摩擦熱の増幅と操作か!

 

「任せて!」

 

レストが飛び出しながら両腕の盾を合わせ、完全反射を起動させる。すでに放たれている銃弾の軌道がさらに捻じ曲がり、ライトの盾に吸い寄せられていく。

 

「うぐっ...!」

 

レストの完全反射によって銃撃数回分のダメージが魔王に跳ね返る。銃弾そのものを跳ね返すのではなく、ダメージを過程を介さずに直接叩き込むため衝撃の剣を無視して魔王に傷をつけることに成功する。

 

「チッ...貴様も要警戒対象か」

 

完全反射によって出現した銃創が埋まっていく。回復魔法を使ったのか...?速度操作と魔法の同時使用不可の制約があるが、あれは制約を作る前に俺が使ったことのある魔法に限られているため、俺の知らない魔法で回復したのだろう...いや、俺の身体から抜け出たからその制約が無くなっている可能性もあるか?

 

……そういや、俺の体を乗っ取って黒竜と戦った魔王が閃光を使っていたな。魔力の注ぎ込み様からして速度操作による魔力回復速度加速は絶対にしているため、制約は消滅していそうだな。なぜ攻撃に使ってこないのか、という疑問はあるが...

 

「ならば、先に消すまで。カウンターは連発できまい...!」

 

魔王はレストに接近して衝撃の剣による攻撃を試みる。魔王は以前、空間操作による圧縮でレストの盾に存在する不可侵領域を無視しての攻撃を行なっていた。そして、魔王の言葉通りカウンターはスタミナや魔力消費の兼ね合いからそう何度も連続で使えるような物ではない。衝撃の剣の物質透過も相待って、レストでも受けられるかどうか...!

 

「いらないね、そんなの」

 

そう言ってレストは左腕の盾を手で持って構えた。そんなもの貫けるとばかりに魔王は衝撃の剣を振り下ろし...

 

「んなっ...⁉︎」

 

衝撃の剣がレストの盾にぶつかった瞬間に消滅した。

 

「やっぱり...ね!」

 

驚愕の表情を浮かべた魔王の腹に思い切り蹴りを叩き込み、吹き飛ばすレスト。

 

「体力略奪の魔法...溜め込んだエネルギーを吸い取れるようだ。弱点発見だね」

 

衝撃の剣は切った相手の体力を衝撃エネルギーに変換して溜め込むことができる。まさか、その逆が起こったのか?溜め込まれた衝撃エネルギーを、盾がスタミナとして吸い取ったのか?

 

「は、はは...マジでナイスだレスト!!今のうちに叩き込むぞ!!」

 

思わぬ進展。予想外の一手が戦況を大きく変えた。

 

衝撃の剣は貫けた。ここからが本番だ...!




魔王が魔神を乗っ取り、戦闘開始。
はたして、いくつもの能力を扱う魔王に勝てるのでしょうか...
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