魔王戦続きです。
「今のうちに叩き込むぞ!!」
レストの盾によって衝撃の剣に溜め込まれた衝撃エネルギーが消滅し、それに伴い衝撃の剣も消滅した。今が絶好のチャンスだ。
ニアの魔法とステラの矢がいち早く放たれて魔王に向かって飛んでいく。衝撃の剣の展開は間に合わない。そう判断した魔王は、空を飛んで退避することで魔法と矢を回避する。
「逃がさないわよ!」
外れた矢はそのまま直進するも、ニアの魔法は魔王を追尾し続ける。さらに魔法を放ち、逃げ場を封じていく。
「くっ...!」
魔王の手に衝撃の剣が現れ、ニアの魔法が受け止められる。空を飛ぶ際の空気抵抗を使って衝撃の剣を顕現させたのだろう。
「……なぜ速度操作で止めない?」
今の魔王の行動を見て、俺は疑問を持つ。追尾し続ける魔法の対処として衝撃の剣を使うのは分かるが、飛んでくる魔法を減速させればもっと余裕が生まれていたはずだ。
「あの時も、僕の攻撃は全て減速されることがなかった。おそらく、僕らの攻撃にも勇者の加護の力が乗っているのだろう」
近くに来たライトが言う。
「なるほど、そいつはありがたい。にしても...また展開されちまったな。解除しようにも...」
ニアの魔法を受け止めた魔王は拳銃を生み出す。先程から生み出す銃は全て同じ。神様への許可無く生み出せる近距離用の小型拳銃だ。魔王に銃の知識があまりないのも関係あるだろうが、セーフティのおかげで創造の銃をフル活用されずに済んでいるな。まぁ、幻痛の熱による軌道修正の補佐のせいで射程距離の問題は解消されているから、あの銃でも俺らに攻撃できてしまうわけだが...
「降りてこないとどうしようもない!」
魔王は空中からの射撃での攻撃を開始した。衝撃の剣は防御のみで使うようにしたのだろう。衝撃の剣で攻撃するには基本的に近づく必要があり、近づけばレストの盾で吸収される恐れがあるからだ。こうして遠距離攻撃をしているうちは、盾で吸収することはできない。このまま魔力を使わない能力でじわじわと攻撃するつもりだろう。
だが、回避の目がある俺らに当たることはない。ライトは武器で叩き落とし、クミリアは掴み取り、ニアは魔法で撃ち落とし、レストと俺は盾で受け、ステラは飛行で回避する。幻痛の熱による軌道変更はあるものの、急激な軌道変化は出来ないためステラの機動力ならば回避は可能だ。
「ニア!レストの盾と同じ効果を出せる魔法はあるか?」
「あるわ!けど、近づかないと無理よ」
「じゃあ近づけ!」
「無茶言うわね...やってやるわよ!」
ニアは魔法で銃撃を撃ち落としながら飛行し、魔王に近づこうと試みる。
「近づかせるわけがないだろう」
「っっ⁉︎」
ニアが空中で何かに衝突する。額を打ってのけぞると、コツンと後頭部も何かにぶつける。
「なにこれ、動けない...⁉︎」
ニアはペタペタとパントマイムのような仕草を取る。まるで、本当にそこに壁があるかのような...だが、障壁なら魔法拡散で無効化できるはず...
「……っ、そういうことか...!空気を減速で固定させやがった!」
速度操作による空気の固定。俺たちを直接止められないからって、無理矢理俺らの行動を阻害しにきたか...!
「ニア!あまり動くな!!動けば熱されるぞ!」
「っ...大人しくしておくわ」
外に出ようともがけば、固定された空気との摩擦熱を増幅させる幻痛の熱がニアを襲うことになる。速度操作による完全固定はもはやどうしようもない。魔法拡散でも無効化できないからな。大人しくして幻痛の熱を発動させないことが重要だ。
幸いにも、完全固定の空気の壁に覆われている間は魔王からも攻撃をされることがないから大人しくしていてもバチが当たることはない。俺たち全員に同じことをしないのも、攻撃が通らないからだろう。一瞬で全員行動不能にさせられるようなことがないのは僥倖だな。
「今助けるよ!ニアさん端に寄って!」
ステラが無心の弓を構えて、ニアを囲っている空気の壁に向けて放つ。無心の弓ならば、空気の壁も空気ごと消し飛ばしてしまえるだろう。
「ちょっ...危ないことしてくれるわねあの子。けど助かったわ!」
自身のすぐそばを通る無心の弓にヒヤッとしながら、ニアは空気の檻から外に出る。
「ニア!熱操作で奴の温度を下げてやれ!」
「了解...!」
熱操作を発動させ、魔王周辺の気温を丸ごと下げてしまう。速度操作は、速度がゼロのものを操ることができない。それゆえに、絶対零度が速度操作の弱点の一つであった。
絶対零度になる前に、魔王は速度操作で対処しなくてはならなくなる。そして、それをすれば唯一の加速枠を気温上昇で潰すことができ俺らに有利になる。ライトが魔王と戦う際にやった戦法だ。
「チッ、面倒な...!」
速度操作によって魔王の周囲の気温が平温に戻る。
「今のうちに...!」
熱操作を発動させ続けながらニアは魔王に近づく。加速枠を潰し、そして加速によって超高温状態にさせないためにも気温を下げ続ける。
「打ち破る!」
ニアは魔王に触れる。正確には、魔王の皮膚の上に展開されている衝撃の剣に。その瞬間、ニアのスタミナ吸収の魔法が発動して、衝撃の剣が吸収されていく。
「せいっ!」
そしてその直後、ニアは魔王に蹴りを叩き込んだ。魔法が付与されていたようで、魔王は地面まで叩き落とされる。
ニアらしからぬ物理攻撃だが、そういえばレストも同じようなことをしていた。吸収したスタミナが過剰暴走して身体が勝手に物理攻撃を叩き込んでしまうのだろうか...?
「降りてきた今がチャンス...!」
クミリアが叩き落とされた魔王に接近する。雷装を身に纏い、拳を叩き込みにいく。
「あつっ...!」
クミリアが一瞬だが怯む。全身の動きによって生じた摩擦熱を増幅されたのだろう。速度探知があるため、些細な擦れでも目ざとく察知して増幅させられるため、幻痛の熱と測度探知のコンボはなかなか厄介だ。
「けど、進む!」
幻痛の熱によって怯んだクミリアだったが、それも一瞬。すぐに復帰して魔王に拳を叩き込む。
しかし、その一瞬があれば衝撃の剣の再展開には十分だった。
「っ...!」
渾身の一撃が衝撃の剣に受け止められる。一気に衝撃の剣が成長して、すぐさまクミリアの首筋を切り裂いた。回避の目は発動しなかった。回避不可能の一撃だった。
「なっ...ぐっ...!」
クミリアが膝をつく。首筋という人体の弱点を透過切断されたことにより、瞬時に大量のスタミナが奪われてしまったのだろう。そして、スタミナ切れを起こしてしまう。雷装によってスタミナ切れを起こしていても動けるものの、全身に痺れるような痛みが走る。
「まずは一人」
今度は回避の目が発動する。衝撃の剣の先端がクミリアに突き刺さる。そして、溜め込まれた衝撃エネルギーが放出され、内側から爆散する...そんな最悪な未来が見える。
見えたのならば、今度は回避できる。しかし、その方法は俺にもわからない。これが解決策になると信じて動くしかない。
4566ページ 閃光 黒 青
閃光を高速化のカスタムを込めて放つ。
「何をしようと、未来は変えられない」
ニアの魔法も同時に放たれていたが、俺の魔法含め魔王の衝撃の剣が受け止めてしまう。薄く周囲に展開するだけでも、クミリアへの攻撃に支障をきたさないままに攻撃を受け止めることが可能だ。まったく、バカみたいに強い能力作りやがって俺...!
「ガネルは死ぬ。見ているといい」
俺らの攻撃は魔王の動きを一切妨害できなかった。俺が回避の目を持っていることを知っている魔王は、まるで俺への当てつけかのように言いながら衝撃の剣をクミリアに突き出す。
先端が、クミリアに突き刺さる。衝撃の剣が細くなっていき、衝撃エネルギーが放出されていることが目に見えて分かる。
……しかし、クミリアは爆散しない。
その代わりと言わんばかりに、地面が揺れだす。強烈な衝撃エネルギーが直接地面に流れ込んでいるかのようだった。
「なぜ...なぜ死なない!ガネル!」
「クミさんが死ぬわけないじゃん...ガネルの英雄、舐めないでよね!!」
最後まで衝撃の剣の攻撃を耐え切ったクミリアは、反撃として全力の蹴りを魔王の左肩に突き刺した。衝撃の剣は消費済み。雷装を含め、直接攻撃がついに魔王にクリーンヒットする。
「う、ぐぅっ...!!」
魔王はよろめく。好機と見て、クミリアはさらに追撃を加えにいく。
「させるか...!」
「っ...まぁ良い」
空気の固定によってクミリアの攻撃は阻止されてしまう。周囲にも固定空気があることを確認したクミリアは、雷装を解いてその場に座り込む。
「ハァ...ハァ...今のうちにやっちゃいな!」
クミリアが魔王を指差す。今度はクミリアが作ってくれたチャンス。無駄にはしない!
「っ!貴様が来るか!」
刀を構えながら走って魔王に近づく。魔王は急いで拳銃を生み出すものの、雷装のダメージと慣れない拳銃の扱いに手間取り、すぐに狙いをつけることができなかった。
そして、放たれる音速の抜刀。拳銃が綺麗に切断される。すぐさま俺はもう一歩踏み出し、両手で刀を持つ。
魔王は拳銃の生成を諦め、後ろに下がっての回避を選択する。刀を振るが、もちろん空振り。魔王はさらに距離をとって、体勢を立て直そうとする。
その瞬間だった。空から魔法が降り注ぎ、魔王の腕を貫いて焼き焦がした。
「なっ...勇者め...!」
「魔王の速度探知は不完全。世界全体の全てを探知できるわけではない。だから、意識外の攻撃が刺さる...!」
ライトは速度操作を操る魔王との戦いを経験済みだ。その経験が、この戦いでも活きてくる。
クミリアが魔王を指差した時、既にライトが魔法を打ち上げているのを俺は見ていた。魔王は雷装を喰らった直後で少し気が動転していた。速度探知に漏れが生じており、ライトの打ち上げた魔法に気がついていない。そう判断した俺は、刀で攻撃をしに行った。魔法から魔王の意識を逸らし、そして魔王を魔法の着弾地点に誘導するために。
「俺の誘導に感謝しろよライト!」
「それは魔王を仕留めてから!」
さらに俺はもう一歩踏み込む。一度納刀し、刀を鞘に押し込んで魔道具を起動させる。
……そこで気がつく。魔力残量が、俺の想定よりも少ないことに。
音速の抜刀を放つ。若干踏み込みが甘く、刀は空振りする。しかし、魔王は後ろに下がってくれたため、空から降ってくる魔法の位置調整が完了する。
「っ!」
魔王はすんでのところで飛んでくる魔法に気がつくと、さらに後ろに跳んで魔法を回避する。だが、その方向にはライトがおり...
ザンッ!とライトの剣が魔王の背中を斬り裂く。
「うぐっ...!クソッ、人間どもが...!」
魔王は空を飛んで、ライトの追撃から逃れる。けれど、空にはニアとステラが待ち構えている。矢と魔法が飛び交い、魔王の行手を阻む...が、衝撃の剣がまた展開されて攻撃は防がれてしまう。
「ダメージは通ってるがすぐに守りに入られちまうな...って、それよりも...!」
魔王の動きに警戒しながら思考を回す。
まずは魔力が少ないこと。自分で思っていたよりも魔力が少ないその理由は...魔力回復速度が遅くなっているからだ。
魔王の減速のせいではない。魔王が俺から抜け出たことにより、魔素での魔力回復が出来なくなったからだ。今の俺は、みんなと同様に勇者の加護によって得た身体の中にある聖素でしか魔力回復が行えない。その事実が頭から抜けていたため、魔力の減少に気づけなかった。
「……クソっ...!魔力切れだけは出来ないってのに...!」
魔力切れを起こしてしまうと、魔法が使えなくなるだけでなく勇者の加護まで効果をなくしてしまう。体内にある聖素は残り続けるが、デバフ無効の力が完全に消滅してしまうため、魔力切れを起こした瞬間に速度操作による減速が通じるようになり身動きを完全に止められてしまう。そのままなすすべもなく殺されるだけだ。
そのため、絶対に魔力切れを起こしてはいけない。しかし、白竜、魔神、そして魔王という三連戦。俺もみんなも魔力をだいぶ消費してきている。魔力切れを避けるとなると、どうしても攻撃の量を抑えるしかなくなる。ここまでやってようやく魔王に傷をつけられるってのに、これより攻撃を抑えるとかやって大丈夫なのか...?
「クミリアはスタミナ切れも起こしてるし、マジで限界が近い...!」
衝撃の剣で斬られるとスタミナを奪われてしまう。ニアとレスト、そしてライトはスタミナを奪える技を持っているが、俺とステラとクミリアはスタミナを奪われれば自然回復を待つしかない。魔力切れも困るが、衝撃の剣で斬られることも十分困る。
魔王の攻撃はどれも当たれば死が迫るものばかりだ。ずっと気が抜けないってのに、さらに考えなければならないことが増えて頭がパンクしそうだ...!
「っ...そろそろ降りなきゃ...!」
ステラも魔力が少なくなってきたようで、温存のために地上に降りてくる。無心の弓での攻撃は、今のステラならほぼ魔力を消費せずに放てるためいくらでも出来るが、飛行にはそこそこ魔力を使う。そのため、地上に降りて攻撃に魔力を回す選択をしたようだ。
「……ニア!魔力は平気か⁉︎」
まだ空中を飛んでいるニアに向かって叫ぶ。一番魔法を使っているが、流石に魔力が限界じゃないのか...?
「まだまだ平気よ!それと...受け取りなさい!」
「うおっ、これは...!」
ニアは魔王の攻撃を回避しながら俺に向かって何かを投げ飛ばしてきた。それを片手でキャッチする。
「サンキューニア!これでまだ行ける...!」
渡されたのは俺の魔力を溜め込んだ腕輪だった。これを外付けの魔力タンクとして使えば、かなりの間戦うことができるだろう。
「チッ...やはり、貴様から倒すのが得策か...!」
魔王が降りてくる。回避の目を持つ俺を先に仕留めるつもりか...だが、降りてきたならレストがスタミナ吸収をしてくれるはず。物理攻撃をしてこようものなら、攻撃誘導もあるため確実に衝撃の剣を消せる...!
「ならば、有象無象は止めるとしよう。一対一だ」
「っっ!くっ、隔離された...!」
俺以外の全員が空気の壁によって身動きを封じられてしまう。
一対一か...クソッ、死ぬわけにはいかない...!
魔王が衝撃の剣を構えながら迫ってくる...しかも、向かってくる方向がマズい。魔王はステラのいる方向から近づいてきているのだ。ステラは無心の弓を使うことで、固定された空気の壁を解除しながら衝撃の剣で守られている魔王に攻撃することができるが、一直線上に俺もいるためステラは放つことができない。魔王を同時に攻撃できなければ、空気の壁を解除できてもすぐにまた身動きを封じられてしまうため無心の弓を使う意味がないのだ。
俺も腕輪の魔力を使えば無心の弓を使えるものの、同一直線上にいるステラを巻き込んでしまうため使えない。横方向に走って向きを変えようとしても、魔王はすぐさま移動してステラとの間に入ってしまう。やってほしくないことを的確にやってきやがる...!
「どうにかして...衝撃の剣を貫く...!」
腕輪のおかげで魔力だけはある。次元収納内の魔法もまだある。どこかに方法があるはずだ。
思考を回しながら後退りを続ける。
一歩、また一歩と下がるたびに足裏が熱くなる感覚が強くなる。幻痛の熱によって偽りの熱を増幅されているのだろう。その熱に耐えながら下がり続け...
トンッ、と背中が何かに当たった。
「面倒だ。これ以上逃しはせん」
「っ...!」
背後、そして側方も固定された空気に覆われてしまう。逃げられるのは魔王のいる方向のみ。
ひとまず、時間を稼ぐしかない。未来跳躍で回避する...!
7801ページ 未来跳躍 黒 赤
カスタムを施し、効果時間を延長させる。最大秒数の三秒。これで魔王の背後に移動し、直後に無心の弓を叩き込む...!
1,2,3...
「……んなっ...⁉︎」
未来跳躍が不発になった。それはつまり、移動先に向かうことが不可能であったということになる。目には見えない空気の壁...それが魔王の背後にも貼られているのか...!
クソッ、無駄に三秒使っちまった!確実に衝撃の剣で攻撃される...!
「こうなったら...」
魔王が衝撃の剣を振りかぶり、回避の目が発動する。
「やるしかない!!」
俺は反撃流の構えをとった。これが、衝撃の剣に対抗するための術。
クミリアが衝撃の剣での攻撃を耐え切ったのはおそらく反撃流のおかげだ。衝撃を受け流す反撃流ならば、流し込まれた衝撃エネルギーをそのまま受け流してしまえる。まさにうってつけの魔法だ。スタミナこそ吸収できないものの、攻撃を受け流して衝撃の剣を消すことはできる...!
ズバッ...!!
「えっ...⁉︎」
衝撃の剣が俺の身体をすり抜ける。透過切断は受け止められないのか...⁉︎くそっ、スタミナが持っていかれる...!
「終わりだ」
腹に衝撃の剣の先端が突き刺さる。溜め込まれた衝撃エネルギーが放出され...反撃流が発動する。
流し込まれた衝撃エネルギーがそのまま足をつたって地面に流れていく。地面が破壊されるものの、片足が地についていれば発動できる。魔力は十分。このまま全て流れ出るまで耐え切る...!
「ッッ...カヒュッ!」
俺はスタミナ切れを起こした。先ほど透過切断されてしまったために、限界が近かったのだろう。スタミナ切れを起こしたことによって全身の力が抜けてしまい、呼吸も乱れてしまう。
反撃流の発動には特定動作...とあるリズムでの呼吸が必須である。
……呼吸が乱れたということはつまり、反撃流が解除されたことを意味する。
流れ込んだ衝撃エネルギーが、俺の身体の中で炸裂する。
「ガ、ゴフッ...!!」
衝撃の剣が消滅する。どうやらあと少しのところだったみたいで、炸裂した衝撃エネルギーは少量で済んだらしい。
しかし、少量でも威力は十分。体内が丸ごとシェイクされた感覚がする。
内臓破裂。大量出血。スタミナ切れによって地に倒れ込みながら口から血を吐き出す。
「く、そ...!」
魔法図鑑に魔力を流し込む。この傷ならば、まだ逆行再生を発動させられれば復帰可能だ。
……しかし、現実は非情だ。
「させるわけがないだろう」
「っ...模倣の、傷...!」
俺を傷つけたことで、魔王は模倣の傷を発動させられるようになった。魔法図鑑に流し込もうとした魔力が奪い取られ、そのまま放出されてしまう。回復すら許してくれない...!
「これで貴様は終わりだ。死してこの世界から立ち去るが良い」
魔王はそう言って俺から離れていく。
ハッ、トドメを刺さないなんて、俺のことを舐めてやがるな...けど、どうしようもない。魔法を発動させようとしても、その瞬間に魔力を奪われてしまうだけ。
……クソッ、意識が朦朧としてきた。体内での出血が思っていたよりも酷い。脳に血が回らない...
『……諦めるの?』
……幻聴、か?
『簡単に諦められちゃ、こっちが困るよ』
幻聴が勝手言いやがる...
『私の最大の好敵手がこんなに簡単に諦めるだなんて拍子抜けだな。カリヤなら、最後まで足掻く...そうだろう?』
……いや、幻聴じゃない。少しずつ声が大きくなっている...?
『これが神の使い?笑わせるなぁ...もっと足掻いて見せろよ』
幻聴は異なる声色で聞こえてくる。全て、聞き覚えのある声だ。
『貴方さまが望むのであれば、僕たちは力を貸します』
『諦めない心が残っているのなら...私と共に立ち上がって!カリヤ!』
……悪いな。意識が朦朧としているせいで、誰なのかまるでわかんねぇ...
わからねぇが...力を貸してくれるってんなら頼む。俺に、立ち上がる力を...魔王と戦う力を貸してくれ!!
『カリヤは一人じゃない。私たち五人の力...共に使おう!』
全身に力がみなぎる。うちから体力が湧き出してきて、同時に体内の傷が復元されていくような感覚が伝わってくる。
「なっ...なぜ、立てる」
速度探知で気付いたのか、魔王は立ち上がった俺を見て困惑する。スタミナ切れに内臓破裂。到底立ち上がれるはずがなかったからな。
「なぜ立てるか...だって?」
俺は立ち上がりながら理解する。力を貸してくれた者たちの正体を知り、ニヤリと笑う。
「まさか、こんな日が来るだなんてな!
「『まったくだ...共に行こう、カリヤ!』」
俺の口からアクセルの声が出る。
「ああ!反撃といこうぜ!!」
……みなさん、驚きましたかね?
次回、戦闘しながら解説していきますので、ご都合主義とは思わないでくださいね...