神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8335字。

魔族たちとの共闘開始です。


共闘魔族と身体共有

「ああ!反撃といこうぜ!!」

 

アクセルの力、超身体強化を行使して音速で魔王に突撃する。魔王は先程俺に対して衝撃の剣を使い切ったため、身を守る壁はない。音速で近づき、すれ違いざまに蹴りを叩き込む...!

 

「オラァッ!...ッグ...!」

 

魔王に強烈な一撃を叩き込み、魔王を遥か彼方まで吹き飛ばした...はいいものの、速度に気を取られすぎていて身体の頑強さに力を行き渡らせることを怠ってしまい、蹴りを放った足が音速の攻撃に耐えきれずひしゃげてしまう。

 

「『傷は僕が治します。アクセルが治すよりも効率が良い』」

 

俺の口から魔族の声が出る、その直後、ひしゃげた俺の足が治癒していき元通りになる。

 

「ありがとよ!ところであんた誰だっけ⁉︎」

 

「『レジリス。最後に魔王さまに取り込まれた魔族です』」

 

「なるほど、そういやそんな奴いたなァ!」

 

レジリス。シレンの穴に潜り込み、固有能力である超再生能力によって試練の妨害を試みた魔族だ。魔王戦の後半にようやく姿を現し、そしてすぐさま魔王によって取り込まれたため完全に忘れていた。

 

この超再生能力があれば、どんな傷であろうと治すことができる。一応、アクセルの超身体強化があれば自然治癒力の強化によって傷を治すこともできるが、完全に治すならレジリスの方がたしかに効率が良いな。

 

「……そうだ!あの力があればみんなを...キネット!力を貸してくれ!」

 

「『仕方ありませんね』」

 

キネットの固有能力、転移の力を行使する。魔素と身体の置換による転移。魔素で全て包まれたこの魔界ならば、完全なゼロ時間転移が可能だ。これにより、固定された空気の壁に囚われていた仲間を救出する。

 

「っ、この力って...カリヤ!一体どういうこと⁉︎」

 

「今のはキネットの力だ。俺の中には今、アクセル、キネット、サーマル、フロート、そしてレジリス、五人の魔族がいる。そいつらの力を借り受けているんだ」

 

「『そういうことよ。感謝なさい』」

 

「その声...本当に魔族が中にいるというの...?カリヤは平気なわけ?」

 

「問題ない。そんで、どうやらこいつらも魔王に対しては思うところがあるらしい。協力してくれるってさ」

 

まず、なぜ俺の中に魔族五人の魂が存在するのか。

 

魔王は勇者パーティーとの戦いの最中、魔族たちの魂を取り込んでいた。その魂は解放されることなく魔王の中にとどまっており、そのまま魔王は俺の中に寄生した。

 

その後、魔王は魔神に取り込まれた。魔神が取り込みたかったのは魔王のみ。そのため、魔王だけ俺の身体から飛び出し、魔族たちの魂は俺の身体の中に取り残された...というわけだ。

 

……今にして思えば、俺の意識が飛んだ後、俺の身体を使って黒竜と戦っていたのは魔族たちだったのだろう。

 

速度操作によるものかと思われた瞬間移動や高速移動は、キネットとアクセルの固有能力。傷の修復も自然治癒加速ではなくレジリスの超再生。幻痛の熱かのように思われた手の発火は、サーマルの固有能力であるエネルギー増幅による摩擦熱の増幅。創造の銃による拳銃の生成は、俺の持っている拳銃をフロートがコピーしたのだろう。黒竜の魔法を使ったのも、模倣の傷ではなくフロートの固有能力だった。

 

衝撃の剣を使わなかった理由は、そもそも戦っていたのが魔王ではなかったから。類似している能力によって魔王が戦っているように見えていただけで、実際は魔族たちが戦っていたのだろう。

 

そして、魔族が俺に協力してくれる理由だが...魔王に幻滅した、で良いんだな?

 

『その通り』

 

魂から発せられる俺にしか聞こえない声が脳に響く。

 

『黒竜を仕留めたのは、魔神復活に必要だったから。その時点までは、魔王様に忠誠を誓っていましたが...今は違います』

 

『よりにもよって魔神様を取り込むだなんていうことをしでかしてくれたからねぇ。魔王様...いや、魔王がそんな奴だなんて思ってなかったよ』

 

『私たちは魔王の配下であると同時に、魔神様の配下だ。魔神様への最大の背信行為。その制裁をしなくてはならないってわけ』

 

『そもそも、僕たち魔族は魔王さまの手助けをするとともに、行きすぎた暴走を防ぐ役割を持っています。でなければ、女神を嫌う魔神さまがわざわざ人間の魂を使って配下を作るような真似はしません』

 

『……だからと言ってお前に手を貸さなきゃならんのは癪だがな。下手打つんじゃねぇぞ』

 

フロートは相変わらずだな...

 

「まぁそういうわけで、これで俺もまともに戦えるようになった。一緒に戦わせてくれ!」

 

「……本当に戦えるの?」

 

「『私たちがいるんだ。安心してくれ』」

 

「魔族だから少し信用ならないのだけれど...まぁ良いわ。力を貸しなさい!魔族たち!」

 

「『指図されるとムカつく...』」

 

「まぁまぁサーマルそう言うなって。まずは力、借りるぜ?」

 

サーマルの固有能力を行使する。エネルギーの増幅によって、全員の魔力を増幅させて満タンにさせる。

 

「ちょっ、これって...!」

 

「これで全員全快だ。あっそうだ。クミリアはスタミナも戻しとくぞ」

 

スタミナも生命力といった一種のエネルギーだ。増幅させて回復させることは容易い。

 

「……こうしてみると本当にめちゃくちゃな力ね」

 

「さて、そろそろ魔王が戻ってくる」

 

アクセルの力で五感が強化されているため、遥か彼方に蹴り飛ばした魔王が戻ってくるのがわかった。

 

「戦闘再開だ」

 

魔王は衝撃の剣で生み出したドームに包まれて、衝撃エネルギーの放出による推進力で俺たちの元に飛んできた。自身の加速を使ってこないのがずっと謎なんだよなぁ...まぁ、ああやって衝撃の剣を成長させた状態で来られるのも厄介ではあるがな。

 

「……悪いが今の俺には衝撃の剣の対抗策がない!対処は頼んだ!」

 

「初っ端丸投げ⁉︎」

 

「しょうがないだろ意外と小回り効かないんだよ!」

 

今の俺に使えるのは、アクセルの超身体強化、サーマルのエネルギー増幅、キネットの転移、レジリスの超再生、そしてフロートの模倣複製...直接的に衝撃の剣をどうにかできる能力は無い。

 

一応、捨て身で衝撃の件の攻撃を喰らって消滅させて自身は超再生で復活するだとか、フロートの模倣で対処可能な誰かをコピーするといった方法はあるが、前者は絶対みんなに止められるし、後者はコピーにかかる時間を考えるとすぐには実行できない。

 

「……あっ、でもこれならいけるぞ!」

 

5114ページ 思考共有 黒のみ

 

思考共有の魔法を発動して、レストにこれからやる作戦の概要を送りつける。

 

「おっ、こっち来るか...なら好都合!」

 

先ほどの俺の発言を聞いたからか、魔王は衝撃ドームに包まれたまま俺に近づいてきた。俺は後ろに下がりながら準備を進め...

 

「よっと!頼むぜレスト!」

 

転移の能力を発動させた。盾を構えたレストが俺の目の前に出現し、近づいてくる衝撃ドームを受け止める。

 

「っっ!」

 

魔王の展開した衝撃の剣が盾に吸収されていき、ドームが崩壊していく。

 

「今のうちに...!」

 

クミリアが飛び出して、衝撃の剣の防御が消えた魔王に攻撃を仕掛けにいく。

 

「そんじゃ俺も!」

 

クミリアが攻撃する瞬間に、音速で反対側に移動して拳を叩き込む。双方からの同時攻撃を喰らった魔王は、カフッ...と魔力の塊を口から吐き出す。

 

「チィッ...!」

 

魔王は俺たちの追撃から逃れるために、空気の固定で身動きを封じてから距離を取ろうとする。しかし...

 

「無駄だ!」

 

転移があれば空気の固定による行動封じからいとも容易く逃れることができる。それと同時に攻撃を仕掛けることくらい造作もない。魔素で包まれた魔界では転移能力は無敵の力となる。

 

「く...!」

 

クミリアの蹴りが魔王の肩を砕き、俺の音速の拳が顔面に突き刺さる。魔王は吹き飛ばされ...その空気抵抗を衝撃エネルギーとして吸収する衝撃の剣が展開されていく。

 

「今度はそう簡単に吹っ飛ばされてはくれないか。にしても、いちいち展開されるのも面倒だな...」

 

衝撃の剣を使われると、まずはその対処に走らなければならない。だが、無事に対処できたとしてもまたすぐに展開されるのがオチだ。根本的な解決にはならない。

 

「……考えるしかないか。俺に出来ることは考えること...みんな、俺の身体を操れ。思考に集中したい」

 

「『分かった。私がやろう』」

 

俺は身体を手放すイメージをする。俺の意識は身体の制御を手放し、代わりにアクセルの魂が身体の制御権を得る。

 

何度も何度も身体を乗っ取られたことで、自身の意識を保ちながら身体の主導権を渡すことができるようになった。まぁ、魔王相手にやろうとしてもそう上手くはいかないだろう。協力的な魔族たちだからこそ出来る芸等だ。これで俺は思考に集中できる。戦いはしばらく魔族たちに任せるとしよう。

 

「『悪いけど、ちょっと荒っぽくいくよ!』」

 

アクセルは地を蹴ると、空を飛んでいる魔王まで音速で突撃する。

 

魔王は迎え撃つかのように衝撃の剣を振った。横一閃。飛行魔法を使っていないただの跳躍では空中で攻撃を避けることなど難しい。

 

「『よっ...!』」

 

しかし、ことアクセルにはその常識は通用しない。空中で身を捩り、放たれた斬撃をその身体能力によって回避する。

 

だが、無理な回避によって軌道がわずかに逸れ、このままでは魔王に攻撃は届かなくなってしまった。攻撃したとしても空振り。

 

そう判断したアクセルは、手を伸ばして衝撃の剣にわざと触れた。衝撃の剣にエネルギーが流れ込み、アクセルの速度が落ち、静止する。魔王の上を通り越すことが無くなった。つまり...

 

「『セイッ!!』」

 

「っぐ...!」

 

一度は静止した状態から放たれた音速の蹴りが、魔王の側頭部に叩き込まれる。衝撃の剣に自ら触れるという思わぬ行動に魔王は判断が遅れ、衝撃の剣による防御が間に合わずダメージが通る。

 

それだけの攻撃を放ったというのに、俺の身体へのダメージは一切無い。やはり、餅は餅屋とでもいうべきか。アクセルの力はアクセル自身が一番使いこなせる、というわけだな。

 

「この...!」

 

「『っ!』」

 

魔王の手に拳銃が握られる。銃口が向けられ、そこから銃弾が飛び出す。アクセルの動体視力と身体能力であれば、至近距離だとしても銃弾を受け止めることくらいわけないだろう。

 

「『なっ...ぐっ⁉︎』」

 

銃弾を掴み取ろうとしたその瞬間、その軌道が捻じ曲がる。幻痛の熱による銃弾の軌道操作。それに対応すべくアクセルはもう片方の手を伸ばすが、僅かに間に合わなかった。

 

銃弾は鳩尾を貫く。銃弾は身体を貫通し、その際に生じた摩擦熱が増幅されて幻痛の熱が体内を熱する。

 

「『っ...レジリス!!』」

 

「『分かってます!』」

 

レジリスの力が発動して、銃創を即座に治癒してしまう。急がなければ、魔王の模倣の傷が発動してしまうからだ。

 

「……チッ...!使えない能力だ!」

 

魔王はそう吐き捨てながら空を飛んで俺から離れる。俺の身体は重力に引かれて落ちていく。

 

「『なんとか模倣される前に治せたか』」

 

アクセルは安堵する。

 

……まぁ、俺に対しての模倣の傷はそんなに脅威にはならないから、そこまで意識しなくてもいいんだけどな。

 

「『どういうことだ?』」

 

模倣の傷は傷をつけた相手の魔法を使えるようになるというもの。魔法以外なら使われることはない。魔族の固有能力や回避の目を使われる心配はないってわけだ。

 

「『なるほど...ならば、もっと手荒にやっても良さそうだな』」

 

「少しはカリヤの身体に配慮なさいよ」

 

近くまで飛んできたニアが若干睨みながら言う。

 

「『もちろん、無闇に傷つけることはしないさ。キネット、任せた』」

 

「『任されました』」

 

身体の主導権をキネットが握り、即座に飛行魔法が発動される。

 

「『ところで、熱操作は諦めたのですか?』」

 

「……ああ、そのことね。遠くまで魔王が吹き飛んでいったあたりで諦めたわ。正直あのまま続けても無駄な魔力消費だとしか思えなかったし」

 

「『加速枠とやらが何に使われているか不明になる方が怖いですよ。魔王のことだから、何か良からぬことに使っているはず...』」

 

「熱操作を仕掛けたとしても、魔王は全世界静止をしているわけではないのだから減速を魔神を止めることだけに使って、加速を複数に対して発動させるといったこともできるはずよ」

 

「『なるほど...その可能性がありましたね』」

 

「アンタよりも長く速度操作と付き合ってきてんのよ私らはね!」

 

ニアは空を飛んで魔王の周りを旋回する。かなりの速度で飛び回り、時折一発だけ閃光を放つのを繰り返していた。

 

「『翻弄しているうちに私に攻撃させようと、そういうつもりか?』」

 

ニアの動きを見てキネットはそう判断する。魔王はニアの閃光を衝撃の剣で受けていたが、周囲全体に展開しての防御では無く毎回一点集中で展開して受け止めていた。

 

おそらく、全体展開をして視界が塞がることを危惧してのことだろう。先程ドームに包まれた状態のところをレストの盾で受けられてしまったからな。周りの様子を伺えない間にニアに近づかれて、スタミナ吸収魔法で貫かれる...なんてことを避けたいのだろうが、もしそうだとすると光を透過させて周りの様子を伺う技術は魔王には出来ないようだな。

 

「『……なるほど。でしたら姉さん、やりますよ』」

 

「『あいよ!』」

 

キネットが魔法を発動させると、それをサーマルが魔力の増幅によって強化させていく。

 

「『でもキネットちゃん。これで良いの?絶対警戒されると思うけど』」

 

「それで良い...いや、だから良いのよ。姉さんは増幅に集中して』」

 

「『はーい』」

 

姉妹が会話をする最中も魔法は増幅を続けていた。到底無視できない威力へと成長した魔法が出来上がり、魔王の警戒心も高まっていた。

 

そして、魔法が放たれる。魔王を一撃で仕留めんばかりの魔法が飛んでいき、魔王は衝撃の剣で迎え討とうとする。

 

その瞬間、ニアの魔法が魔王を狙う。ニアが牽制をして意識を向けている間にキネットが攻撃する...という筋道を魔王に見せて、実際に狙っていたことはニアの攻撃を当てることだった。

 

……だが、魔王はそこまで読んでいた。迷わず衝撃の剣を展開して、二方向から飛んでくる魔法を受け止めようとする。

 

「あら、私がそんな甘い攻撃すると思う?」

 

魔法拡散が魔王を中心にして展開された。それにより、衝撃の剣に吸収される前にキネットが放った魔法は魔力に分解された。ニアの魔法はそのまま衝突してしまうものの、吸収されるエネルギー量は最小限に抑えられ、そして、ニアは自由に使える大量の魔力を手に入れた。

 

「『ええ。読まれることくらい織り込み済みです』」

 

その瞬間、レストが魔王の真上に出現する。キネットとニアの二つの魔法、そのどちらもフェイント。衝撃の剣を広く展開させて視界を潰し、レストの転移によって衝撃の剣を貫くという算段だった。

 

「『今!』」

 

魔法を再発動。そして、サーマルの増幅で一瞬にして魔法が強化される。先程の強化は全力ではなく、魔王に警戒させるための見せつける強化だった。本気で強化すれば、ここまで一瞬で増幅させられるのだ。

 

レストが盾で衝撃の剣を吸収すると同時に、極限まで強化された魔法が放たれ、魔王の身体を貫く。

 

「……っ!」

 

魔王は貫かれて消滅した箇所を修復すると、レストを蹴り飛ばしてしまう。まぁ、しっかりガードしていたし、ステラが受け止めていたから問題ないだろう。

 

「……魔法使わないくせに、治癒だけはするのよね。ほんと謎だわ」

 

「『魔法を使わないのではなく、使えないが正しいです。それに、あれも治癒魔法ではありません』」

 

「そうなの?」

 

「『魔神様のお身体は物体化した魔力で出来ています。破壊されて散ってしまった部分を他の魔力を使って補っているだけです。治癒魔法を発動しているわけではありません』」

 

「なら、魔法を使えないってのは?」

 

「『魔神様は魔力的存在。そんな魔神様の意識を止めるということはすなわち、魔力そのものを止めることに近い。速度操作に掛かっている制限も相まって、魔法を発動させるのが非常に困難になっていると考えられます』」

 

「『だけど、多分魔王ならいつかその枷も外してくる。ずっと魔法は使わない...なんて思うのは危険かな』」

 

「『姉さんの言う通りです。油断はできない...さっさと仕留めてしまいましょう』」

 

「『だったらよ、俺に身体貸せ』」

 

「『フロート...ようやく動く気になりましたか?』」

 

「『しょうがねぇだろ。アイツに魂の一部を消し飛ばされて固有能力の一部が欠落してたんだからよ...ようやく復帰だ。貸せ』」

 

「『……分かりました。策があるなら任せます。ニアは魔王の動きを封じておきなさい』」

 

そう言ってキネットはフロートに身体の主導権を渡す。

 

「『……チッ』」

 

フロートはレストを抱えるステラを見て舌打ちをしながら近づく。

 

「『……その弓、使い心地はどうだ?』」

 

ニヤニヤしながらフロートはステラに聞く。

 

「……ベー!」

 

「『ハッ、その様子じゃ嫌がらせは成功したようだな。結構結構』」

 

フロートはステラが本来受け取るはずだった弓を奪い、模倣複製した偽物を渡していた。そして、偽物は本物よりも使い勝手の良いものにわざと仕上げることで、本物を手にした際に使用感を悪く感じさせるという嫌がらせをしていた。

 

それがどれだけ効果があったかは分からないが、フロートは満足しているようだ。

 

「『ストックの力も戻ったし、お前に消しとばされたことはもう良い。それよりも、それ借りるぜ』」

 

そう言ってフロートはレストの持つ盾に手を伸ばした。

 

……しかし、触れられない。この盾はレスト以外には触れることすらできないからだ。

 

「『チッ。ならまずはお前からだ』」

 

フロートはレストに触れた。触れ続けること十秒。模倣複製の固有能力が発動して、フロートはレストの力と姿を手にする。

 

「『この姿なら触れんだろ』」

 

レストの姿に変身したフロートは盾に触れられるようになる。人物の模倣は十秒かかるが、物品の複製はすぐだ。一瞬でレストの持つ盾が複製される。

 

「『囮ご苦労ォ!』」

 

魔王の動きはニアが攻撃し続けていることで封じ込められている。ニアをどうにかしなければ他に攻撃しにいくことができないが、かといって近づけばスタミナ吸収で衝撃の剣を無効化されてしまう。そのジレンマに囚われてしまい、思うように動けていない。

 

そんな魔王にフロートは近づく。複製したレストの盾を構え、盾の魔法を起動させる。攻撃誘導の効果が含まれているため、魔王は攻撃しようとすれば必ず盾に受け止められることになる。そのため、魔王は迂闊な攻撃それ自体が封じられてしまう。

 

「『無駄な抵抗をするな!』」

 

盾を避けようとする魔王にさらに肉薄し、衝撃の剣に触れる。衝撃エネルギーがスタミナとして強奪されて盾に吸収されていき...俺の身体に流れ込むことなく放出された。

 

フロートの模倣複製は対象を完全に模倣することはできない。必ず、ほんの僅かに差異が生じてしまう。しかし、その差異はフロート自ら操作することが可能だ。やりようによっては、デメリットを打ち消すかのように性能を弄ることが可能だ。実際、ステラに渡された弓は本物よりもステラにあった物に改変されていた。

 

それと同じことが、複製されたレストの盾にも施されていた。衝撃の剣をスタミナ吸収で吸い取ると、過剰なスタミナによって身体が勝手に動いて攻撃してしまう。その攻撃によって魔王は吹き飛ばされてしまい、やりたかった追撃が出来なくなってしまった。だから、身体には吸収せずに放出するようにわざと性能を弄ったのだろう。すぐに次の行動に移れるように。

 

「『ここだッ!』」

 

もう片方の盾で魔王に触れるフロート。魔力吸収が発動し、魔力で形作られている魔神の身体が削り取られる。

 

「『逃すか!』」

 

魔王はギョッとして離れようとする。それに対してフロートは、複製品であることをいいことに盾を投げ飛ばして追撃を仕掛けた。

 

魔王は急いで衝撃の剣を展開して盾を受け止めようとする。しかし、その瞬間にフロートはもう片方の盾も投げ飛ばした。そちらの盾の方がより早く到着し、衝撃の剣に触れる。

 

スタミナ吸収によって衝撃の剣が消滅する。その直後に魔力吸収の盾が到着し、魔神の身体をまたしても削り取る。

 

「『時間稼ぎはこれで良いか?』」

 

……ああ。対処法はある程度思いついた。変わってくれ。

 

「『言われなくても変わってやるよ』」

 

主導権が戻ってくる。俺は一旦地上に戻り、サーマルの固有能力で魔力を溢れさせた。

 

「さてをまずは厄介な衝撃の剣を封じようか...奪え!略奪!!」

 

魔法図鑑に魔力を流し、魔王に向けて手を伸ばす。

 

流れは優勢。ここからさらに好転させる...!!




魔王弱すぎ...?
まぁ魔法が使えなくて、能力が悉く攻略されていればこうなりますよね...致命傷を与えるにはまだまだ程遠いですが...
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