魔王との戦闘、略奪を発動させるところからです。
「奪え!略奪!!」
9931ページ 略奪
サーマルの固有能力で増幅させた魔力と腕輪の魔力を使い、略奪の魔法を発動させる。対象が発動時に一番拠り所としている力を奪い取るという魔法だ。今の魔王なら、衝撃の剣が対象となるだろう。
奪うにはその力を略奪以外で使ったことがないという条件があるが...実際はスキルを会得していないという条件であるため、過去に衝撃の剣を使っている俺でも奪い取れるはずだ。
「……よし!奪えた!」
魔王が展開しようとしていた衝撃の剣が、俺の手の元まで飛んでくる。
「あっけねぇなァ!もっとガッチリ掴んどけよ!」
魔族の固有能力やかつての俺の速度操作のように、魂に刻まれた能力は略奪で奪うことができない。魂ごと能力を引っ張り、激痛を与えて一時的に能力を使用困難にするのが関の山だ。
だが、魔王が俺から奪った能力は別だ。魂に能力が刻まれているわけではなく、寄生の力を使って魂に刻む能力を取り込んでいるだけだ。そのため、引っ張れる。魔王が奪われまいと強く拒んだならともかく、一発目の奇襲で予測されていない状態ならば奪い取れる...そうして、目論見は成功した。
「久しぶりの感覚だな...チッ、嫌な記憶まで蘇ってきやがる」
法術世界でのあれこれが衝撃の剣を手にしたことで想起される。あの時の感触が手に残っている。けれど、俺はこの力を振るうしかない...過去を受け入れ今を見据える。そんな気持ちで、俺は衝撃の剣を構える。
『……まずいよこれ。消費魔力が多すぎる...!』
「ん?...たしかにそうだな」
略奪の魔法はほぼワンナにしか使えない。適性値が全て基準値であり古代の魔法含め全ての魔法を扱える俺や、膨大な魔力の暴力で無理矢理扱えるニアという例外はあるものの、それでも大量の魔力を発動と略奪の継続に使ってしまう。
それに今までは魔族に対する略奪しかほぼしていなくて、奪い続ける経験が浅かった。そういうわけもあり、サーマルの魔力増幅があってもこのまま衝撃の剣を奪い続けるのは難しそうだった。十分の制約よりも前に返却しなくてはならないだろう。
『このまま略奪を続けるのは難しい。どうするつもり?』
『短期決戦で決着をつけるかい?』
「んいや、策はあるさ。なぁフロート?」
『……チッ、そういうことか。待ってろ』
フロートの力を使い、衝撃の剣を模倣する。一度模倣さえ済んでしまえば、衝撃の剣を返してしまっても問題はない...!
『完了だ』
「りょーかい!返却!」
略奪を解除して衝撃の剣の力を魔王に返す。
しかし、フロートの模倣によって衝撃の剣の力は手に入った。手をパンパンと叩き、俺も衝撃の剣を展開する。
「こっからは俺が衝撃の剣を受け持つ!みんなは攻撃に集中してくれ!」
「了解!」
失った魔力を増幅によって補充し、キネットの転移を使って魔王のすぐそばに現れる。
「練度勝負といこうか!」
魔王の衝撃の剣めがけて、俺のまだ未発達の衝撃の剣を振り下ろす。同じ能力同士がぶつかるという俺自身も経験したことのない行為。その行方は...
「ッシャオラァッ!」
俺の衝撃の剣が魔王の衝撃エネルギーを奪い取り、そのまま魔王の身体を透過切断した。完全な練度勝負。法術世界でずっと衝撃の剣を扱っていた俺と、今この場で初めて使い始めた魔王とでは練度の差が大きい。
魔王に奪われたからってそう簡単に上回られてたまるかってんだ。まぁ、模倣をする際に生じる僅かな差異を俺に都合が良いような形で起こしているから勝てるってのはあるが...別にデメリットを消すだけでなくメリットを伸ばすようにして複製することもできるからな。魔王の衝撃の剣よりも衝撃を吸収する機能に優れているため奪い取ることができたのだ。
「このまま削り取る...!」
衝撃の剣で無防備な魔王を斬り裂く。魔神の身体を構成する魔力と魔王のスタミナが衝撃エネルギーに変換されて貯蔵されていく。
「させ...るか!」
魔王は俺の腕に蹴りを叩きこみ、俺に攻撃すると共に衝撃の剣を足裏に生成、直後に爆発させて俺から離れるようにして吹き飛ばされていく。
「逃げたところで無駄...っと、小癪な真似しやがって」
魔王を追いかけようとしたその瞬間、固定された空気の壁に阻まれてしまう。そんなことしたところで、転移があれば脱出も魔王への接近も一瞬で出来るというのに...
「……あれ?」
転移が発動しなかった。魔王のすぐ側に飛ぼうとしたのに、なぜ発動しない?
『……おそらく、魔素が減速によって動きを止めているために転移に必要な置換が出来ないのでしょう。無理矢理転移を封じてきましたね』
キネットの転移は、転移先の魔素を自身と置換することによって引き起こされている。よって、魔王周辺の魔素を速度操作で止めてしまうことで転移を封じてしまえるのだ。魔王も考えたな...
「なるほど。面倒だな...だが、魔王も苦渋の決断だったはずだ。魔素を止めれば魔力回復が出来なくなるからな。そして、転移が使えないなら普通に脱出するまで」
俺は先ほど魔王に蹴られた腕をレジリスの力で治すと、無心の弓の構えを取る。
「……何気にこの世界に戻ってきてからは初めてだな。心を無にして...」
魔力が少なかったため、聖杖世界に戻ってきてから一度も無心の弓を使っていなかった。そのためスキルでの発動もできないので、ゼロから心を整えて発動させる。やり方は前にステラから教えてもらっているのを覚えている。今の俺にも発動させられるはず...
「……意外と出来るものだな。身体の慣れはないけど精神が覚えてたか」
無心の弓を放ち、固定された空気の壁を貫く。
「とうっ!」
貫いて穴が空いた空気の壁を蹴って魔王に近づき、生み出していた衝撃の剣を斬り払って消滅させる。そしてすぐさま蹴りを上から叩き込んで魔王を地面まで叩き落とす。
「ステラ!ニア!魔力は無限だぶっ放せ!!」
「うん!」
「分かってるわ!」
空を飛んでいる二人の魔力を増幅させてやる。溢れんばかりの魔力を得た二人はそれぞれ自分にできる最高の攻撃を構築する。ステラの無心の弓、そしてニアの無数の魔法が互いに干渉しない方向から魔王を貫かんと発射される。魔力切れを心配する必要がないと、ここまでの攻撃を叩き込めるんだな...
「くっ...!」
魔王は空気の壁を使ってニアの魔法を受け止めた。だが、無心の弓はこれでは回避できない。そのため、地面に叩きつけられた際に生み出した衝撃エネルギーの放出によっての回避を魔王は試みた。
その試み自体は成功する。しかし、逃げた先が不味かった。そこにはライトとクミリアが待ち構えており、雷装が込められた剣と拳が魔王に叩き込まれて魔王は元の場所に逆戻り。無心の弓の経路と重なり、幾度となく放たれた無心の弓が魔王の下半身を貫いて消滅させていく。
「この...人間風情が...!」
下半身が消滅した魔王だったが、他の部分の魔力を移すことによって元の形に戻った。だが、確実に魔力を減らすことができている。その証拠に、魔人の身体に僅かにノイズのような揺らぎがは時折走っていた。このまま攻撃し続ければ、魔王を倒すことができるはずだ。
魔神の消滅という本意ではないことが起こる可能性は高いが、この際やむを得ないだろう。たとえ魔神がどうにかなってしまったとしても、必ず魔王は倒す。そういうつもりで攻撃を仕掛けにいく。
「このまま...仕留める!!」
地上に降りた俺は、身体の見て呉れを整えたばかりの魔王に音速で近づいて衝撃の剣を振る。速度探知によって魔王は接近を知覚できるものの、自身の加速が出来ない魔王には防御手段が無い...
「っ⁉︎」
振られた衝撃の剣がすんでのところで回避されてしまう。この音速の攻撃、速度探知で見えていても避けられるはずがないのだが...何度振ろうとも当たらない。最低限の動きでことごとく回避される...!
「なぜ避けれる...!」
『……魔素が止められているからだ。魔族の能力の出力は周囲の魔素の量によって変わる。魔素が完全に止められている現状では、私の一番の実力...音速は出せない』
「っ、なるほど...!」
魔素による速度の増減...そんな話があったなと思い出す。今はおそらく、ガネルでアクセルが試合していた時の速度くらいしか出せないのだろう。それでも十分速いのだが、これくらいの速度なら魔法を使えれば対処可能だし、魔族たちは普通に対応してきたはずだ。魔王ならば回避できても不思議ではない。
「なら、魔法を上乗せするまで...!」
魔法図鑑に魔力を流し込み、とある複合魔法を起動させる。
9934、9935ページ
「ウオラァッッ!」
ありとあらゆる加速魔法とそれに耐えうる保護魔法を同時発動し、アクセルの超身体強化に上乗せする。
アクセルを上回るために生み出した全力疾走。それがアクセルと共に戦うために行使される。俺たちの速度は一瞬にして音速を超え、マッハ1.5ほどの速度を叩き出し魔王に衝撃の剣を振り下ろす。
一刀両断...透過していなければ綺麗に切断されていたことだろう。切断によって生じるはずだった被害が全て衝撃エネルギーとして吸収されていき、衝撃の剣をさらに成長させていく。そしてそのまま二度三度と透過切断を重ねていき、魔王を削り取っていく。
……その時だった。
「っっ!」
久しぶりに発動した回避の目。だが、それ自体は何も問題はない。問題なのは、見えた未来の内容だ。
魔王が魔法を使っていたのだ。突如として放たれた閃光が俺の頭を撃ち抜いて焼き焦がす...そんな未来だ。超身体強化のおかげでそこまで酷いダメージにはならないが、魔王が魔法を使い出したという異常が起きていることと、この攻撃から連鎖して次の攻撃を叩き込まれる可能性を考えて俺はすぐさま防御を選択する。
「あっぶねぇ!」
なんとか衝撃の剣を滑り込ませて、魔王の放った閃光を受け止める。そして魔王を蹴り飛ばして一度距離を稼ぐ。このまま至近距離にいるのは危険だと判断した。一旦体勢を整えて、魔王の動きを伺うべきだろう。
「急に魔法使いやがって...」
「創造主を封じ込めるのはなかなか骨が折れたが、加速も相まってようやく終えることができた。これで、ようやく本気が出せる」
っ...キネットが言っていたな。魔王が魔法を使えないのは、おそらく魔力で身体を構成している魔神の意識を速度操作で完全に止めているからだと。魔王は、他の手段で魔神の意識を封じ込めることによって減速での意識停止を解除し、魔法を扱えるようにしたのだろう。
この様子だと、速度操作との魔法併用不可の制約は既に無かったと考えて良さそうだな...あくまで俺の魂に依存していたものだから、魔王が単体で使う分には関係ないってのは納得ではあるものの、面倒だという感想しか出てこない。
「ここまで煮湯を飲まされてきたが、ここからは違う。貴様らを蹂躙し、全てを余の手中に収める...!」
魔王がそう言ったその瞬間、回避の目が発動する。その光景には、空中から落下していき地面に激突してしまうニアが映っていた。
どう見ても飛行魔法が発動していなかった。おそらく魔法拡散が発動されている。だが、普通の魔法拡散ならば、ニアの実力であれば上から覆うようにして魔法拡散を発動させて上書きしたり、なんなら自身の周囲だけ上書きしてしまうことも可能なはずだ。そのため、ニア自身の手では解決できない問題なのだと読み取れる。
「ステラ!」
「うん!」
俺が叫んだ瞬間に、魔王を中心として結界が周囲に広がり出す。魔法拡散が展開され、ニアの飛行魔法を打ち消してしまう。だが、無効化されない魔道具による飛行をしているステラが落下するニアを受け止めて地上まで下ろすことにより、回避の目によって見えた未来は回避された。
「ニア!上書きは出来ないのか⁉︎」
衝撃の剣を構えて魔王を牽制しながらニアに向かって叫ぶ。
「……無理よ!魔法を散らすまでの速さが加速されているわ!」
「なるほど...そういうカラクリか!」
魔法拡散の上書きが出来るのは、こちらの発動した魔法拡散が散らされてしまう前に魔法を完成させることによって、範囲内の魔法拡散を逆に無効化してしまえるからだ。
だが、ニアのその言葉が真実ならば、魔王は速度操作の効果適用までの速度を加速させているのだろう。それゆえに、散らされてしまう前に魔法を完成させるという方法を取ることができず、上書きが不可能になっているというわけだ。
「範囲はどこまでだ⁉︎」
「おそらく魔界全域!どこまで行っても無駄よ!」
「なんつー規格外だよ...!」
これでは外側から覆い尽くすようにして上書きする方法も使えない。
「ここから先は魔法無しで戦わなきゃならんってわけか...」
『私を爆散させたあの魔法を使えば良いのでは?』
「……魔法改竄のことか」
魔法改竄を使えば、展開されている魔法拡散に干渉して対象を発動者以外の他者から発動者のみにすることは可能だ。それをした瞬間、魔法拡散それ自体が自身の効果によって消滅することとなる。魔法拡散を一時的に無効化することはできるだろう。だが、またすぐに展開されるだけ。その間に魔法を叩き込むことは時間的に難しいだろう。
「爆散は二重の改変が必要だ。速度操作を持たない今の俺一人では無効化はできても爆散までは出来ない。ニアと二人でやったとて、寸分のズレもなく同時発動させられなければ速度操作でズラされて失敗するだろう。失敗の方法によっては俺らが爆散しかねない」
魔王の魔法拡散を利用して魔力の爆散を引き起こすには、効果対象の反転と同時に魔法効果の反転も起こす必要がある。魔法の魔力への拡散から、魔力の魔法への結合といったような改変になる。このとき、もしも効果対象の反転よりも前に効果反転が起こってしまうと、俺らの体内の魔力が魔法に変わって爆散することとなるわけだ。
『魔力の増幅は出来るとはいえ、魔素が止められている今は一瞬で全回復とはいかないよ。一瞬のためだけに魔力を使うのは無駄遣いに思えるね』
『俺の複製も使えば魔力は追いつくかもしれないが、やめておくべきだろう。やるにしても、ここぞという時にだ』
「だな...ニアは後方待機!レストに守ってもらえ!戦える者だけついて来い!」
先陣を切って魔王に近づく。魔法が使えない現状では、魔族の固有能力を使える俺が一番の戦力だ。皆が戦えるように場をコントロールする...!
……そう意気込んだその瞬間だった。
「っっっ!!」
全身が燃えるように熱くなる。幻痛の熱...俺が動いた際に生じた空気との摩擦熱の増幅、それも速度操作を使って強化している...?
「っ...偽りの熱、分かっていれば無視できる...!」
「ほう、ならば現実のものとしてやろう」
「チッ...!」
摩擦熱が蓄積し、本物の熱が牙を向きだす。勇者の加護によって速度操作で俺らを直接害すること...例えば体温を極端に弄るようなことはできない。そのため、幻痛の熱を介することで間接的に熱する手に出たのだろう。
「全部...無視!!」
全身が熱によって焼けていく。だが、レジリスの超再生で補完できる程度だ。熱を耐えきり魔王に接近、高速で拳を放って魔王に攻撃する。
「無駄だ」
「っ...!」
放った拳は魔王の顔面のすぐそば、何もない箇所を貫く。まるで吸い寄せられてしまったかのように拳は逸れてしまった。攻撃の誘導魔法...面倒だな!
「ハァッ!!」
腕を突き出した体勢から地面を蹴って跳び、後ろ回し蹴りを魔王に叩き込む。
「無駄な足掻きはよせ」
俺の放った蹴りは魔王の手によって受け止められていた。雷装があれば、受け止められたとしても雷装を流し込んでダメージを与えられたのだがな...ライトかクミリア、どちらかから模倣する必要があるな。だが、今の魔王が模倣に必要な十秒を許してもらえるはずがない。
「そして死ぬが良い」
回避の目が発動する。魔王に捕まれた状態のまま、内側から全身を焼かれる未来が見える。レジリスの超再生を上回りかねないその攻撃、受けるわけにはいかない。
「ぐうっ...!!」
「ほう、身を削って回避を選んだか」
俺は刀を手に取ると、音速の抜刀を発動させて掴まれている自らの脚を切り飛ばした。すぐさまもう片方の脚でその場から跳び退き、魔王から距離を取る。
「身を削った...ってのは違うな。削ったのは魔力だけだぜ」
脚の切断面から立ち所に失った脚が出現する。まるで、元々そこにあったかのようにだ。
俺は脚を切断する直前に、魔力を増幅させて自らの脚と置換させていた。ニアが編み出した魔力体の技術を使い、置換した魔力の脚を切断して回避したというわけだ。失った魔力はサーマルの増幅を使えばすぐに回復できる。レジリスの力で脚を生やすよりもよっぽど早い。
「……にしても、どうしたものか。どうすれば魔王を倒せる...?」
魔法を使えない状況はとてもまずい。なによりも、回復魔法を使えないのが一番の問題だ。
俺の攻撃を皮切りに、ライトやクミリアが近接戦を仕掛け、ステラは矢を放って攻撃し始めているが、そのどれもが魔法による防御や空気の固定によって受け止められてしまっている。そして、皆が動くたびに幻痛の熱が皆を蝕んでいっている。
俺はレジリスの超再生で傷を治すことができるが、魔法が使えない皆は傷を治すことができない。戦いが長引けばジリ貧になってしまう。どうにかして魔法拡散を無効化するか、魔王を倒してしまうかしてしまわなければ皆が持たない。
『……俺に策がある。一か八かの策ではあるがな』
「乗るぜ、その策。信頼して良いか?フロート」
『出来ないのならこの話は無しになるだけだ』
「なら信用する!身体を使え!!」
フロートに身体を開け渡す。
「『いいや、まずはアクセルだ。シレンの穴に迎え』」
身体を渡した瞬間にアクセルへと主導権が移る。
「『了解...!』」
フロートの言うことに従ってアクセルはシレンの穴へと向かおうとする。
「どこへ行く気だ?」
「『っ...!』」
シレンの穴へと向かおうとしたその瞬間、空気の壁に閉じ込められてしまう。
一度俺に身体を戻せ!無心の弓ならば、魔法拡散の効果そのものを打ち消せるから魔法拡散下でも使える!空気の壁をぶち抜いて突破口を...!
「『いや、ならばキネットだ!』」
「『シレンの穴への転移、開始!』」
キネットの転移が発動し、シレンの穴のすぐ近くに出現する。
転移が封じられていたのは、速度操作によって魔素が止められており転移先に魔素が無いと判定されていたからだった。だが、魔素が動きを止めているのは魔王周辺のみ。遠い場所の魔素は止められていないため、問題なく転移が出来たのだ。
そして、ここまで離れれば魔王に妨害される心配はないだろう。魔王は速度探知によって手に入る全ての情報を処理しきれない。そのため、意識外のものや遠くのものの速度を把握することができずにいる。俺らがここで何をしていようと魔王に気取られることはないし、空気の固定で妨害を喰らうこともないだろう。
そんで、ここまで来てフロートは何をするつもりなんだ?魔法拡散は魔界全域で発動されているから、魔王から離れても魔法は使えない。遠くから奇襲を仕掛けることはできないのだ。
……まさか、一人だけ逃げようって魂胆じゃあないよな?
「『そんなわけあるか。ちゃんと、魔王を倒すための策だ』」
そう言いながらフロートは身体の主導権を握り、シレンの穴の坂を下っていく。
一度魔界を出るのか?外を出て色んなやつを模倣して戻ってくるとか?けど、そんな時間はないぞ。その間にみんなは...
「『魔界は出ない。目的のものはここにある』」
フロートは自信満々で言う。
俺はそれを聞いて思考を回し...そして、フロートの魂胆に気がついた。
「なるほど、その手が...だが、実現可能なのか?」
「『それは、今から確かめる...!』」
本当に一か八か、だな...だが、この賭けに乗るしかない。
俺はフロートの力に運命を託すのであった。
戦闘描写が難しすぎて泣いています。
もっと面白い戦闘が書きたいのに、どうしても同じことの繰り返しになってしまう...