神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8290字。

まだまだ続くよ魔王戦。


聖なる剣と放出する衝撃

「悪い!待たせたな!!」

 

シレンの穴で作戦のための準備を終えた俺たちは、アクセルの力を使って魔王の元まで戻ってきた。行きはキネットの転移が使えたが、魔素が止められていて帰りでは使えなかったので戻るのに少し時間がかかってしまった。

 

「遅いわよ!早く合流...ってなぜそれを⁉︎」

 

ニアが俺の持っていた物を見て驚く。まぁ、そりゃ驚くだろうな。

 

「これを取りに行っていた!ライト!使え!!」

 

良い加減このまま握り続けていると手が焼けこげるか筋肉が破壊されてしまうかしてしまいそうなので、さっさとライトに向けて投擲する。

 

「これ...⁉︎」

 

俺がいない間にそこそこ被弾してしまっていたライトだったが、俺が投げ渡した物を掴んだ瞬間に少しだけ気力が戻ってくる。

 

「存分に使ってくれ!」

 

「ああ...!」

 

「待て、なぜそれがここにある...!封印の維持に使っていたはずだろう!」

 

「お、焦りが見えたな。そりゃ焦るよなぁ?ここにあるはずがない聖剣が持ち出されているんだからよォ!」

 

そうだ。俺が持ってきたのはシレンの穴の最下層に刺されていた聖剣だ。魔界の封印を繋ぎ止め、魔界と元の世界を行き来するために必須なものである。

 

「まさか持ち出すはずが...もしや、フロートか!!」

 

「『ご名答!苦労したぜ』」

 

聖剣を複製するのはかなり苦労した。人の模倣複製とは違い、物の複製は触れれば即座に行うことが可能だ。だが、聖剣は勇者の資格を持つものにしか触れられない。無理に触れようとすれば聖なる力によって弾かれ、それでも無理に持とうとすれば手を焼かれてしまう。

 

以前の俺は減速を駆使してその拒絶反応を無効化してしまったが、今の俺にはその方法は取れない。そのため、アクセルの超身体強化による筋力で無理矢理掴み、レジリスの超再生で傷をすぐさま治すというゴリ押しで触れ続けて複製に成功した。

 

99.9%の模倣、やろうと思えば拒絶反応を消すこともできた。だが、わざとそれはせずに複製品にもその機能を残した。その拒絶反応が勇者には力を与える可能性があったからだ。

 

0.1%の本物との差異。それは、現在の聖剣を上回り、本来の性能に近づけることに使った。現在の聖剣は俺やライトが無理な使い方をしたせいでかなり消耗しており、その性能を少し落としていた。そこを0.1%に割り当てることで、完璧とはいかないものの本来の聖剣の性能に近づけてみせたのだ。

 

「聖剣があれば...『聖剣展開』!」

 

ライトは聖剣の機能を解放する。鞘が変形し、剣としての姿を形取った。それに伴い、聖素が聖剣から漏れ出す。

 

魔素が動きを止めており、そして漏れ出た聖素がライトの周囲を包むことによって、聖素100%の環境が形成される。聖素による人間に対する強化がなされて、ライトの力が爆発的に向上する。

 

その結果、一瞬でライトは魔王へと接近することに成功する。そしてすぐさま聖剣が魔王に向けて振り下ろされて...

 

「ぐ、ぬぅ...!」

 

ギリギリのところで魔王は衝撃の剣での防御が間に合い、ライトの聖剣が受け止められる。法術世界の勇者とは違い、武器に異能力解除の効果は付与されていない。そのため、聖剣でも衝撃の剣ならば受け止められてしまう。

 

「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!」

 

アクセルの力で接近し、衝撃の剣を振るう。聖素を放出しているライトに近づいたことでアクセルの力が弱まり速度が落ちてしまうものの、魔王は俺の攻撃を避けることができなかった。魔王の衝撃の剣を切り裂き、衝撃エネルギーを奪い取ってしまう。これによってライトの攻撃を防ぐ手段が消滅し、聖剣が魔王を斬る。

 

「ぐゔっっ!!」

 

周囲の魔素を反転させる聖剣は魔神の身体にも有効なようで、魔王は大きくダメージを負うこととなる。

 

「この...人間風情が!!」

 

「っ...!」

 

魔王が反撃として放った魔法がライトの左肩を撃ち抜く。

 

「まずい、模倣の傷が...」

 

「模倣の傷は気にせず攻撃しろ!魔法拡散下では死んでいる能力だ!」

 

ライトはついに大きな傷を負ってしまったことで、魔王の持つ模倣の傷を使われることを危惧した。だが、俺は気にせず攻撃しろと指示を出す。

 

模倣の傷は、傷をつけた対象の魔力を使って魔法を発動させる能力である。そのため、扱い的には傷をつけた対象自身が魔法を発動させたのと同じである。よって、魔法拡散によって魔王以外の発動させた魔法が散らされてしまう現状では、模倣の傷は死んだも同然の能力なのだ。魔法を無駄撃ちして無理矢理俺らの魔力を消費させることは可能だが、サーマルの力で魔力を増幅するだけで対処できるので何ら脅威ではないのだ。

 

「了...解!!」

 

右腕一本で聖剣を振り、魔王に追撃を仕掛ける。

 

「クソッ...!」

 

魔王は飛行魔法で空を飛び、ライトから慌てて距離を取った。

 

しかし、後方確認がおろそかだった。

 

「んなっ...⁉︎」

 

魔王が飛んだ先には、魔道具によって空を飛んでいるステラがいた。魔道具であれば魔法拡散の中でも魔法を発動させることができる。魔道具で空を飛び、無心の弓で魔法拡散の影響を受けずに攻撃ができるステラは通常時と何ら変わらない戦闘ができていた。魔王の背後から無心の弓で攻撃ができたのもそのためだ。

 

「まだまだ...!」

 

ステラは続け様に無心の弓を撃ち込んでいく。魔王は必死で回避を続けるも、ライトの聖剣での一撃から積み重なったダメージによって動きが鈍っており、速度探知を持ってしてもギリギリでの回避がやっとのようだった。

 

「ならば...撃ち落とす!」

 

魔王は回避を続けながら魔法を練り上げ、ステラに放とうとする。

 

だが、放たれた魔法はステラに向かう途中で軌道を変えた。魔法が向かっていく先は...

 

「っ...ガルム⁉︎」

 

魔王の魔法は盾を構えたレストの元まで飛んでいき、盾に吸い込まれる。そして完全反射が発動して全ての威力が魔王に叩き込まれる。

 

ステラと同じく魔道具を扱うレストもいつも通りの戦いができていた。遠く離れた位置から強制的にタゲを集めて味方を守ることができるおかげで、ステラは攻撃に集中することができていた。完全反射を発動することによるスタミナと魔力の消費はどちらもサーマルの増幅で対処できるため、連続で発動することもできる。魔王にとっては脅威だろう。

 

魔王はレストによってステラの迎撃を封じられてしまった。ステラが攻撃しているタイミングには完全反射を発動できないが、仮にそのタイミングで魔王が攻撃しようとしても無心の弓によって消し飛ばされるため無意味である。そして攻撃の間に動こうにも、レストの完全反射が挟まる。魔王は袋小路に陥っていた。

 

魔王はステラの無心の弓を避け続けるしかなかった。唯一できることといえば、無心の弓の発射角度を誘導して地上にいる俺たちを撃ち抜かせることくらいだが、それは回避の目によって事前察知が脳であるため十分回避可能だ。

 

「……今だぜ、ライト」

 

「ああ。魔王を仕留める...!」

 

魔王の注意はステラとライトに向いていた。俺やライトの動きを追っている暇はないのだろう。速度探知でバレる可能性はあるが...今が動くのに最適なタイミングだった。

 

「『聖剣納刀』」

 

ライトは聖剣の鞘を元に戻す。そして、心の中で呪文を唱えたのだろう。聖剣の必殺技...聖杖が発動する。

 

鞘から生み出された聖素が漏れ出る。鞘に見えていたものは聖素変換装置。剣の柄に見えていたものは杖。膨大な聖素の塊を射出し、触れた魔素を反転させながら全てを飲み込む聖杖の準備に入る。

 

「……撃つのはいいけど、反転させる魔素が道中にないのはどうする?」

 

「俺がなんとかする。サーマル、力を貸せ」

 

「『魔族使いが荒いなぁ...やってやりますか!』」

 

サーマルの力を全開で発動させる。膨大な聖素が近くにあるため、普段以上の出力を出さなければ期待通りの成果は出せない。全力で...魔王の魔素を増幅させる!!

 

「む...なに⁉︎」

 

魔王の保有する魔素が急激に増幅され、魔王を中心として周囲に撒き散らされる。魔王は一瞬驚愕し、そして困惑する。魔王にしてみれば、魔素を増幅させて溢れさせることなんて利敵でしかないからな。

 

だからこそ、対処が遅れた。俺らの目的に気づくのが遅れ、溢れた魔素を減速させて静止させることができなかった。

 

「全て...飲み込め!!」

 

聖杖が振り抜かれ、溜め込まれた反転聖素が放たれる。魔王に向けて飛ばされた反転聖素は、サーマルの増幅によって撒き散らされた魔素を反転させながらその威力を増していく。

 

そして、最後のダメ押しとして反転聖素を増幅させる。

 

光の奔流が、魔王を包み込む。

 

「はぁ、はぁ...どうだ?」

 

聖杖を鞘に戻しながらライトはつぶやく。

 

しばらくすると、魔界全体を覆っていた魔法拡散が解除された。

 

「やった...やったぞ!魔王を消し飛ばした!」

 

ライトは喜びの声を上げながら、身体に刻まれた傷を治癒魔法で治していく。ちゃっかりしてんな...と思って見ていたら、他の仲間たちも魔法で傷を治していた。自己治癒が出来ないステラもニアに治してもらっていた。

 

「お前ら...偉いな」

 

「偉いってなによ」

 

「いや、次に備えるのが早すぎて正直驚き...魔王を倒したんだから、しばらく喜びに耽るものだと...」

 

「魔神が一度周囲の魔物を一掃させたとはいえ、また湧き出していないとも限らないわ。警戒するのも当然でしょう?...カリヤが腑抜けているだなんて珍しいわね」

 

「あ、ああ。そうだな...」

 

……俺の中にずっと巣食っていた魔王が抜け出て、今ようやく消し去ることが出来たからだろうか?みんなよりも魔王討伐の達成感が大きかったのかもしれない。この世界の住人じゃないってのに...そう思うと、何とも不思議な経験をしたものだと考えてしまうな。

 

「……よし!魔王を倒したことだし、元の世界に戻るか!」

 

聖杖世界での役目は終わった。ひとまず魔界から脱出して、後のことは脱出した後に考えよう。

 

……そういや俺って、このまま死ぬまでこの世界にいても良いのかな?元々はこの世界に死ぬまで残っていて良いという話だった。色々な世界を巡った後であるが残っても良いのだろうか...

 

あれ?そういや今の俺の中には魔族の魂があるんだよな?どうなるかわからないけど、少なくとも元いた地球に戻るという選択肢だけは消えているか?魔族の魂を抱えたまま地球には戻れないし...

 

「さっさとこんな場所から離れようぜ」

 

俺はそう言って、シレンの穴の付近まで全員をキネットの力で転移させようとする。

 

その時だった。

 

「っ⁉︎」

 

「また⁉︎」

 

魔法拡散が魔界全体を包んだのだった。

 

「まさか...まだ魔王は生きている...⁉︎」

 

魔王は確実に消し飛んだと思ったのだが...いや、よくよく考えてみたら前も魔王を仕留めきれずに俺の身体に寄生することを許してしまったな。また消される直前に魔神の身体から抜け出して生きながらえた可能性は大いにある。

 

だが、魔神を抜け出たのならば新たな宿主が必要なはずだ。俺に乗っ取られていないことはもう流石にわかる。おそらく回避の目が発動するだろうから、他の誰かに乗り移ったってことはないだろう。

 

では、何に魔王は乗り移った...?

 

「……あれか...!」

 

魔王が乗り移ったのであろう存在がこちらに向かって歩いてきた。

 

「あの姿...魔族擬きか!」

 

近づいてきたのはスライム状の魔物、魔族擬きだった。よりにもよってそいつに乗り移るか...!

 

「どの魔族が来る...?」

 

「……いや、少し様子が違うわ。魔王以外の魔力が見えない...魔族の魂が入っていない?」

 

ニアがそう言った瞬間、魔族擬きは姿を変えていく。

 

「……チッ、悪趣味な...!」

 

「魔王がカリヤの姿に...!」

 

おそらく、魔王にとっての人間のイメージが俺なのだろう。長く乗り移ってきたから、一番扱いやすいというのもあるのかもしれない。

 

「……けど、やることは変わらない。また消し飛ばすまで...!」

 

ライトは聖剣を構える。

 

しかし...

 

「っ、崩れ...⁉︎」

 

その瞬間、聖剣はボロッと形を崩してしまった。

 

「クソッ...いや、一回でも複製品で女神の力を使えたんだから良い方か...!」

 

もう聖剣は使えない。また模倣しにいけば使えるようになるだろうが...流石に魔王も許してはくれないだろう。絶対に妨害してくるはずだ。聖剣なしで対処する必要があるな。

 

運のいいことに...というより、みんなが用意周到であったおかげで傷は全て治すことができている。魔力もサーマルの力で回復できているし、またもうしばらくは戦えるだろう。

 

「さぁ、今度こそ魔王をっ⁉︎」

 

回避の目が発動した。魔王が超高速でこちらに近づいてきて拳を腹に叩き込んでくる...そんな未来が見えた。

 

「っ、この⁉︎」

 

アクセルの力を全開で発動し、魔王の拳をなんとか弾き落とす。

 

「こいつとうとう自身の加速を...!」

 

『魔神から離れたからです!魔力の身体の維持や魔王の意識を止める必要が消えたから、魔王は自身の加速に踏み切られるようになった!』

 

「くそっ、マジかよ...!」

 

この速度に追いつけるのは、魔法拡散を使われている今ではアクセルの力を扱える俺のみだろう。けど、もっと速く...音速の数倍とか光速にまで達してしまったら俺でももうどうしようもないぞ...

 

……けど、最初の一撃でそれをしてこなかったことには必ず意味がある。それはおそらく...

 

「速度に魔族擬きの身体が耐えきれていない...!」

 

先ほどの攻撃を弾いたとき、魔族擬きを構成するスライムの一部が弾け飛んでいた。速度操作には加速させた対象に加速に耐えられるだけの保護を付与する機能があったはずだが、スライムという特殊な形状が悪さをしたのだろうか、この程度の速度に抑えても肉体を保つのはかなりギリギリなようだ。

 

「なら、勝機はある...!」

 

魔王の動きにとにかく食らいつき、強力な攻撃のみを弾いていく。喰らっても大きな問題はない攻撃は弾かずにわざと受けてレジリスの超再生で治癒することで対処する。喰らったら不味そうなものだけ凌ぎ、みんなの攻撃できるチャンスを作り出すことに専念する。俺が反撃を叩き込むことはほぼ不可能...仲間に託す!

 

「そこっ!!」

 

ステラの放った矢が飛んでくる。無心の弓ではなかった。放たれたのは雷装が込められた矢。雷装というスキルは魔法の産物ではないため魔法拡散を使われていても発動できる。無心の弓で俺を巻き込むことを恐れたのか、それとも...

 

放たれた雷装の矢は魔王の背中に命中する。そうなるように俺が攻撃を弾いて魔王の体勢を誘導させたからだ。

 

「う、ぐぅっっっ!!」

 

雷装の矢を喰らった魔王はこれ以上ないほどの呻き声をあげた。

 

そして俺は思い出す。魔族擬きは雷装を喰らうことで身体が消滅することを。

 

魔王が魔族擬きに乗り移ったことで、雷装という新たな弱点が生じた。やはり、まだまだ勝機はある...なんならこっちが有利なのでは?

 

「ク、ソが...!」

 

魔王は空を飛ぶステラに手を向ける。回避の目が発動し、魔法がステラを撃ち抜く未来が見える。速度操作によって放たれた魔法は加速されるため、放たれてから自力で避けることは不可能だろう。

 

「ハッ、減速がおろそかだぜ!」

 

魔王が魔法を放った瞬間、ステラの姿が消滅し魔法が誰もいない空間を撃ち抜いた。

 

魔王は自身の加速に集中したことで周囲の魔素を止めることができずにいた。そのためキネットの転移が使えるようになりステラを回避させることに成功したのだ。

 

「なっ...⁉︎」

 

「バーカ!俺の能力を使ってそのザマじゃ笑えるなァ!」

 

衝撃の剣で魔王を切り裂き、削り取っていく。俺は雷装を使えないが、衝撃の件があれば同じことはできる。

 

「クッ...!!」

 

魔王も衝撃の剣を生み出して対抗を始めるものの、衝撃の剣の性能は衝撃吸収においてはこちらの方が上だ。逆に魔王の衝撃の剣をも削り取ってしまう。

 

「だが...偽物を使う貴様には勝てるわ!」

 

魔王は地面を切り裂いて衝撃エネルギーを溜めると、俺に向かって衝撃の剣を振り下ろした。こちらも衝撃の剣で受けようとするが...

 

「っ...⁉︎」

 

魔王はわざと腕を引き、空振りを引き起こした。そして衝撃の剣を突き出し、俺の衝撃の剣に切先を突き刺した。俺の衝撃の剣へと膨大な衝撃エネルギーが流れ込む。

 

「貴様は一度も衝撃解放を行なっていない!そこがフロートの模倣で削ぎ落とした0.1%だ!」

 

まずい、バレた!模倣した衝撃の剣は衝撃吸収の性能を上げた代わりに任意での衝撃放出が出来なくなってしまっていた。ただひたすら溜め込むのみ。この溜め込んだ衝撃エネルギーは、衝撃の剣を解除するしか放出することは出来ない。だが、それをしてしまえば周囲に無差別に衝撃エネルギーを撒き散らすことになってしまう。俺の身体も耐えきれずに吹き飛んでしまうだろう。

 

「そこが貴様の弱点だ...!」

 

魔王は衝撃の剣を引き抜くと、俺の衝撃の剣の手元付近を切り裂いた。透過切断...それにより、中の衝撃エネルギーには手を付けずに衝撃の剣の本質である膜を切り裂いて消滅させた。

 

「まっ...⁉︎」

 

膜が消えた。それはつまり、中に溜め込んだ衝撃エネルギーが外に飛び出すことを意味する。膜を修復する間もなく衝撃波が飛び出し、俺の全身を叩いた。

 

見えない未来は、それが抗えないことを意味していた。魔王は放出された衝撃波のうち俺の身体を害さない方向に放たれたもののみを吸収して力を蓄えると、衝撃の剣を俺の胸に突き刺した。

 

「キネットの復元も出来ぬよう、粉々に引き裂いてやろう。終わりだ」

 

体内に直接衝撃エネルギーが流し込まれ...俺の身体は内側から爆散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そん、な...カリヤ⁉︎」

 

カリヤが魔王によって内側から弾け飛んだ。その事実に驚く。

 

「なんでそんな呆気なく吹き飛んでいるのよ⁉︎フロートの力は⁉︎」

 

カリヤはフロートの力を使っていた。フロートの固有能力は模倣複製だが、模倣した相手をストックとして残しておき、死ぬほどのダメージを受ける際にそのストックを消費することによって傷を肩代わりすることもできる。

 

たしかカリヤは、レストの盾を複製するために一度レスト自身を模倣していたはずだ。それを消費すれば、今頃カリヤはピンピンして立っていただろう。

 

……まさか、その能力は失われているのか?ステラが無心の弓でフロートを倒した時、魂ごと撃ち抜いてストックを全て消し飛ばしていた。その際に、ストック消費で生きながらえる機能が失われていたとすればどうなる?

 

実際、一度は複数のものを同時に模倣して操ることが出来なくなっていたはずだ。魔王がフロートの模倣を使った際にそのようなことを口にしていた。カリヤの動きからして複数の模倣をストックすることは出来るようになったようだが、それを残機として攻撃の肩代わりに使う力は戻っていない...?

 

「ようやく、厄介な奴を消せた。次は貴様らだ」

 

っ...あれこれ考えている暇はなさそうね。カリヤが死んでしまった事実はもうどうにもならない。あとはもう、私たちだけで戦うしかない。

 

……魔王が油断して近づいてきた時に使おうと思っていた切り札、使い所を見極めなければ無駄死にをしてしまう。これが逆転の一手になりうるかはわからないけれど、何とかして決めるしかない...!

 

「まずは...一番厄介な貴様から消すことにしよう」

 

魔王の目線がステラに向く。無心の弓と雷装の矢を扱えるステラは魔王にとって一番の脅威。狙われるのは必至だ。

 

魔王の手の上に火球が生み出される。加速させて放たれれば避けることはほぼ不可能...切り札で守るしかない。

 

そう思って懐のある物に手を伸ばそうとした、その時だった。

 

ステラが火球で撃ち抜かれる。そんな未来が見えた。

 

「これって...⁉︎」

 

紛れもなく回避の目。しかし、カリヤは爆散して死んでしまったはず。発動するわけがない。

 

思考が高速で動く。だが、それに応じて現実世界も動きを進める。そして今まさに、火球が超高速で放たれた。

 

火球は当たらなかった。ステラの身体が一瞬で消滅したのだ。まるで、先程と同様にカリヤが転移で攻撃を回避させたかのように。

 

「今のは...転移⁉︎バカな、確実に殺したはず...!」

 

「ああ、確かに死んださ...」

 

カリヤの声が響いた。魔王が驚きの表情を露わにしながら振り向くと、そこにはカリヤが何事もなかったかのように立っていた。

 

「だが、貴様のおかげで復活できたぜ、魔王!俺はまだ!止まらない!」

 

そう言って、カリヤは音速で駆け出すのだった。




なぜカリヤくんが復活出来たのかは、すぐには明かさないつもりです。
しばらく経った後に、適切なタイミングで情報公開をします。

ちなみに第五章はあと二話で終わる予定です。
二十四話と他の章に比べると少し短いですが、まぁあとは魔王と戦うだけなのでね...
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