第五章 回避の目
ついに完結です。
「ハァッ!!」
回復した魔王に雷装を纏った刀で攻撃を仕掛け、その対処をさせることで時間を稼ぐ。
「転移でみんなをシレンの穴まで転移させる!すぐに出れるように準備を!」
「『ダメです!空間が歪みすぎて、今転移をしても狙った場所には飛ばせません!最悪、全身のパーツが別々の場所に出現しかねない!』」
キネットが俺の口を使って叫んだ。転移が使えないってマジか...!
「じゃあ俺が殿になる!みんなは自力でシレンの穴まで迎え!」
転移が使えないならば、走って向かう他ない。とある理由から死ななくなっている俺が魔王を食い止め、その間に逃げてもらうのが一番効率的だろう。
「必ず追いつきなさいよ!」
「……ああ!追いつく!回避の目があるから気にせず走れ!!」
先ほど俺の腕を切断した空間の切断では回避の目が発動しなかったが、おそらく避けようが避けまいがどうせ治るからと発動しなかったのだろう。雷装発動中に雷を受けると光で目がやられたりするのに、ダメージはないからと回避の目が発動しないのと同じようなことだ。
そのため、おそらくみんなが巻き込まれる時にはしっかり回避の目が発動してくれることだろう...というか、そうであってくれなきゃ困るのでそう信じるしかなかった。
「さーて...時間を稼がせてもらうぜ!目一杯遊ぼうじゃないか!!」
ここからは魔王を倒すのではなく時間稼ぎにシフトする。牽制でも何でも良い。とにかく時間を稼ぎ、魔王を魔界の崩壊に巻き込むのだ。
「っ...こうする他ないか...!」
魔王がそう呟くと、魔界の崩壊が目に見えて緩やかになる。魔界の崩壊の速度を減速させたのか。
「良いのか?崩壊を加速させれば俺ら全員を始末できるが」
「バカ言え、巻き込まれてたまるか...!」
魔王も巻き込まれるのは御免のようだな。だが、完全に止めることができていないのを見るに、魔界の崩壊を完全に止めるのは速度操作をもってしても不可能なのだろう。減速が手一杯ってわけだ。
……崩壊の速度をある程度自由に操作できるとなれば、魔界の崩壊までは思っていたよりも時間がかかってしまうだろう。崩壊の瞬間に俺らだけ離脱...ってのはこのままだと難しいだろう。どうにかして、魔王を完全に行動不能にするしかないな。
「……そういえば...」
ここでふと疑問に思う。魔王はなぜ魔族擬きの中に入り続けているのだろう。その気になれば魔族擬きの中から飛び出して、接近して戦っていた俺やライト、クミリアに乗り移ることもできたはずだ。少なくとも、雷装がクリティカルに効果が出ると分かった時にはもう身体を捨てて別のに乗り換えても良さそうなのにだ。
それをしない理由が必ずある。例えば、身体から出るには何か条件があって、それをする余裕がなかったとか...
……なんとなく、見えてきた気がする。これを利用すれば、魔王の動きを封じて、完璧に消滅させることができるだろう。
だが、この方法では...
……いや、やるしかない。この方法で、この聖杖世界を、みんなのことを救うんだ。やり遂げるしかない。
そう俺が考えた瞬間、回避の目が発動して未来が見えた。それは、少し先の未来。そして、この未来はみんなには共有しなかった。
「……やるか!」
魔王が刀を受け止めるために展開した衝撃の剣を、刀の表面に小さく這わせた俺の衝撃の剣で斬り裂く。衝撃の剣の防御を突破したら、一度衝撃の剣を解除して衝撃エネルギーを撒き散らし、すぐさま雷装を込めた刀で魔王を斬る。
「良い加減気づきな!お前はもう詰んでいるんだよ!」
攻撃を浴びせながら俺は叫ぶ。
魔王は魔界崩壊速度を落とす減速を発動させている。そして、同時に自身の魔力回復速度の加速や自身の移動速度の加速を発動させている。
つまり、魔王が主に使っているのは加速の方。これにより、減速は一種類に対してしか発動できず、そして魔界崩壊速度に対して既に発動してしまっている。そのため、空気を固定させての攻撃の妨害や移動の阻害が出来ないのだ。
魔王の発想力が少しでも良ければ、魔王は必ず勝てただろう。なのに、それに気づかない。
俺が魔王だったなら、加速を魔力回復速度に絞り減速を自由に発動できるようにしていただろう。なにせ先ほどキネットが言った通り、転移が発動できない状態にあるからだ。空気の壁で俺らの動きを完全に封じてしまえば、転移で出られない俺らは身動きが取れなくなる。
無心の弓で空気の壁を破壊する行為も、すぐさま空気を固定するだけだし、なんなら弓を引けないほどの大きさで囲ってしまえば良いだけのことだ。そうして俺らを封じ込めている間に魔界を出て、加速させて一瞬で崩壊を導けばそれで終わりだ。
俺に乗り移っていたってのに、頭脳はてんでダメみたいだな。バカで助かるぜ...!
「ほらよっ!」
魔王の足を切断する。諸事情により、今この場で魔王を殺すことは叶わない。死なない程度に四肢を切断して動きを封じ、再生に手間取らせて逃げる時間を稼ぐ。それが今できる最善だ。
「ぐっ...貴様に構っていられるか!」
今の魔王を倒せないように、魔王も俺を殺せない。殺してもすぐに復活してくる。俺を殺せないことはもう魔王も気づいているため、魔王は俺の隙をついてこの場から離脱しようとした。
切断された足はまだ修復できていないため、腕を地面に叩きつけて押し、それで推進力を得た瞬間に加速させることでシレンの穴目掛けて吹っ飛んだ。
「これなら...追いつける!」
雷装とアクセルの力の合わせ技で高速移動しながら、衝撃の剣を生み出して地面を透過切断する。そうして得た衝撃エネルギーを背後で衝撃の剣を解除することで撒き散らし、背中で受けてさらに加速する。
「待てこら!」
加速した状態からドンッ!と地面を蹴って空中に飛び出す。計算し尽くされた動きによって、魔王の進行経路にジャストで割り込む。
「っ...!」
このままだと衝突する。そう考えた魔王は衝撃の剣をドーム状に展開して身を守ろうとした。それに合わせて俺も衝撃の剣を生成して、前方に薄く広げる。
互いの衝撃の剣がぶつかり合い、互いの慣性が全て吸収されて空中で静止する。
だが、こちらの衝撃の剣のほうが吸収性能に特化している。魔王の衝撃の剣を食い破り、穴を開ける。そこに雷装を込めた蹴りを叩き込み、魔王を地面まで突き落とす。
魔王は地面に叩きつけられる...が、その衝撃は吸収したようで激突によるダメージはゼロだ。だが、雷装キックのダメージは相当なものだ。回復には時間がかかるだろう。
「っと!とりあえず爆弾処理だな」
衝撃の剣を使って安全に着地した俺は、衝撃の剣を小さく圧縮して球状にし、適当に放り投げてから能力解除する。これにより、俺にダメージなく、そして魔王に吸収させることなく溜まった衝撃エネルギーの解放ができた。
「さて、このまま止まってくれるってんなら話は楽なんだが...」
そう呟いてみるものの、現実はそう甘くはない。魔王は衝撃の剣を拳銃のような形に変形させた。俺が衝撃の剣を使っていた時にたまに使っていたやり方だな。銃本体と弾丸に二分割し、弾丸に衝撃エネルギーを撃ち込んで射出、弾丸が命中した相手に内側から衝撃波を叩き込んで殺す技だ。
透過によって盾は意味をなさず、弾くことも衝撃吸収によって無意味と化す。回避しても、空中で炸裂して衝撃波を叩き込まれる。かなり厄介な技だ。
「けど、これがあれば話は別...!」
衝撃の剣があれば話は別だ。全て取り込んでしまえばいいだけだからな。
「無駄だ!」
魔王は弾丸を放った。発砲音は無く、速度操作によって加速した弾丸が真っ直ぐ飛んでくる。
だが、そのタイミングを読んでいた俺は衝撃の剣を展開し、完璧なタイミングで弾丸を叩き切った。衝撃エネルギーが吸収され、弾丸は消滅し...
「んなっ⁉︎」
その裏に隠れていた二発目の弾丸が突き刺さった。
「ブラインド...!」
発砲音が無いことを利用した、隠れた二発目の弾丸。俺自身が対象の回避の目が発動しなくなってしまったため、気付くことができなかった。
突き刺さって体内に残った弾丸が崩壊し、内に溜め込んでいた衝撃エネルギーが撒き散らされる。当然耐えられるはずもなく、内側から爆散する。
「……逃がさ...ねぇぞ!」
再生を終えた俺は、シレンの穴へと向かおうとする魔王を睨みつけながら素手で弓の構えを取る。
『無心の弓』
全てを消滅させる無の矢が魔王の下半身を消し飛ばす。足を失った魔王は支えを失い、速度を保ったまま地面を転がっていく。
「ちょ...無理矢理進むつもりか!」
速度操作があれば、地面を転がったとしても速度を落とさずに移動することができる。転がりながら身体を再生させ、そのまま復帰するつもりだろう。
「させるかってんだ!」
衝撃解放による加速も交えて全力で走り、転がる魔王に追いつく。
「みっともねぇなァ魔王!」
魔王に追いついた俺は、衝撃の剣で魔王の胴体を透過切断する。魔王の移動速度を衝撃エネルギーとして吸収してしまうことでゼロにし、動きを完全に止めてしまう。
「ここで...決める!」
俺は魔道具を介して次元収納を発動させ、中からあるものを取り出す。それは、ただの水。魔法で作られたものでもない、本当にただの水だ。それを魔王の周囲に振り撒く。
「分解...」
その水に全力の雷装を流し込み、電気分解を引き起こす。
「そして...!」
銃を手に持ち、銃口を魔王に向ける。
「爆発!!」
引き金を引くと、弾丸と共に本来とは考えられない量の炎が飛び出す。サーマルの固有能力を使い、発砲の際に生じる炎を極限まで増幅させたのだ。
その炎が周囲に漂う水素と酸素の塊に着火させ、水素爆発が周囲を包み込む。俺も魔王も同時に爆発を浴びて互いに吹き飛ぶ。
「ぐっ...おそらく、これで...!」
魔王の次の行動を予想し、準備を整えて待ち構える。
その次の瞬間だった。スライム形態に戻った魔族擬きの中から突き破るようにして魔王が飛び出し、俺に再び寄生しようと飛びかかり...
「……遅いわね」
「カリヤのことだから多分大丈夫...だと思うけど、心配...」
「よぉ!待たせて悪いな!」
シレンの穴の前でみんなが話しているところにようやく追いついた。
「カリヤ!良かった...!」
「魔王はどうなった⁉︎」
「何とかなったよ。奴はもう動けない...それよりも、もう魔界は持たない。早く離脱するぞ」
「そ、そうね。話は後...!」
全員でシレンの穴を下っていく。シレンの穴の内部は元の世界と繋がっているためか他の場所よりも空間の裂け目が少なく、崩壊が遅いようだ。だが、ここもいつ崩壊するか分かったものではない。急がなければ...
「ついた!戻るよ!」
ライトが聖剣に触れる。元の世界に戻る人全員が触れて、戻ることを望めば聖剣に触れている人は戻ることができる。他のみんなも次々と聖剣に触れていく。
「……カリヤ?」
「何をしてるの?時間が無いって言ったのはカリヤじゃ...」
「……悪いな、俺は一緒に行けない。ここに残る」
「何言ってるの⁉︎戻らないと死んじゃうんだよ⁉︎」
「そうだな。戻らなきゃ俺は死ぬ。だが...俺が死なないと魔王も死なないんだ」
「なんで...まさか、また魔王に寄生されて...⁉︎」
「いや、俺には寄生していない。もっとも、そうしようとはしてきたが...フロートの力で俺自身を複製して、身動きの機能を削ぎ落とした人形に騙して入れたからな」
魔王が寄生しようとしてくることは想像がついていたため、水素爆発によって視界が封じられている間に俺は自身の複製体を作り出していた。わざと身体機能を削ぎ落とすことで、寄生した魔王が一切身動き出来なくなるように細工もしてあるため、魔王は完全に行動不能に陥っている。
「じゃあなんで...」
「俺が途中から異様な再生をしていたのは見ていたか?レジリスの再生とも違う死からの復活...それは、魔王が俺の姿を取った時から使えるようになった。近しい存在は互いを補完しあい、双方が同時に死を迎えない限り真に死ぬことはない...そんな力に見覚えがあるはずだ」
「……っ!まさか!」
「サーマルとキネットの⁉︎」
俺は黙って頷く。
サーマルとキネットはそれぞれの固有能力とは別に、二人で一つの能力を持っていた。同時に殺さなければ無限に再生可能な運命共同体の能力。それが、魔王が俺の姿になった瞬間から意図せず発動していたのだ。
「その能力のおかげで俺は死ぬことがなかった。だが、それは同時に魔王も死ぬことがないのを意味していた。あっちも俺が生きている限り再生してしまう。だから俺は、あの時ライトを模倣しようとした。他の姿になれば能力は発動しないから...だけど、魔界の崩壊のせいで失敗した」
あれが成功していれば、こんなことにはならなかったんだけどな...
「模倣していたレストの姿は、魔王がスライム形態に戻った瞬間に放った攻撃で消費してしまった。他の姿になる方法は無く、手詰まりだった。その時点で俺は、この結末で全てを終わらせることを決めたよ。魔界に俺も残り、魔王と同時に死ぬ。俺が戻ってしまえば、魔王は魔界の崩壊からも復活してしまうからな」
「そんな...」
「今から僕の姿になれば良い!魔王は今動けないんだろ⁉︎なら、僕を模倣して姿を変えてしまえば魔王は動けないまま魔界の崩壊に飲み込まれるはず!」
「……俺が他の姿になった瞬間に、魔王は複製体の檻から脱出してしまうだろう。魔王が寄生先から飛び出すには、その身体を破壊しなければならないんだ。致命傷を与える...が近いかもな」
ライトは、俺の中から魔王が自力で抜け出た時、首を引き裂いて出てきたのをみていたはずだ。そして、スライムから脱出する時も破壊してから出てきた。致命傷を与えなければ出られないわけだ。
「そして致命傷を与えるということは、俺との共鳴によって身体が再生することを意味する。破壊は修復され、魔王は外に出られず閉じ込められる。俺が別の姿になれば能力は発動せず、魔王は外に出られるようになる。それは避けなければならない」
「……なら、一瞬だけ姿を変えて、その瞬間に魔王を無心の弓で仕留めて戻ってくる...それじゃダメなのか⁉︎」
「時間が足りない。まず一瞬で仕留めるのが難しい。それに、魔王は速度操作によって魔界の崩壊速度を減速させている。魔王が死ねば、減速は解除されてしまい、僅かにあった猶予もすぐに無くなる。そうなれば、時間的にここまで戻ってこれない。俺が戻る方法は無い。諦めてくれ」
無情に思えるだろうが、これしか魔王を滅ぼす方法はないのだ。もっと上手いやり方があったのだろうが、もう後の祭り。俺の力ではこれが限界だ。
「……最後の、別れの挨拶をさせてくれ。前はろくに挨拶できなかったからな。一人ずつ...面と面で向かってやりたい」
俺はそう言って、まずステラの前に立つ。
「初めて会った日からずっと、最高の相棒だった。奇跡のようで、必然のようでもあるあの出会いに感謝してもしきれない...今までありがとう。魔王も魔神もいない世界で、カリスで幸せに過ごしてくれ」
「カリヤ...もう、バカ」
「ごめんな」
「謝んなくて良い!これがカリヤの選択なら、私は飲み込むよ...一生許してあげないけどね!ほら、時間ないでしょ次!」
「そっちから進行することあるんだ...次はレストだな」
レストの前に立つ。
「これまで俺を、みんなを守ってくれてありがとう。平和になったら盾を置く日が来るかもしれない...そんな世界でも、やりたいことを見つけて幸せに生きてくれ。ゲームにはのめり込みすぎるなよ」
「……僕は変わらないよ。自分のやりたいことをするだけ...だから、一番最後の言葉は聞かなかったことにする」
レストお前なぁ...と思いながらクミリアの前に立つ。
「雷装を手に入れたり、たくさんの魔物や魔族と身一つで渡り合ったりと、大変なことは多かったと思うが...クミリアは楽しかったか?」
「もちろん。強い奴らと戦えてクミさんはとっても楽しかったさ」
「なら良かった。これからもガネルでそういう好敵手と戦えることを祈っているよ」
「欲を言えば、魔族をうちに抱えた今のカリヤとも戦ってみたかったけどね」
「はは、叶えられなくてすまんな」
そう言いながら今度はニアの前に立つ。
「ニアにはずっと助けられたよ。魔法の解析や蘇生魔法だけじゃない。卓越した魔法・魔力操作の技術...それらを持つニアがいなければ、どこかで必ず躓いていただろう」
「驕るつもりはないけど、褒め言葉は受け取っておくわ」
「多分、今回の魔界調査、魔神や魔王との戦闘で色々得るものがあったと思う。魔法使い、研究者としてはこれ以上ない経験だろうな...そういう研究、それだけにも限らず、やりたいことをやってこの先の人生を幸せに生きてほしい」
さて、最後はライトだ。
「……二度目の別れになっちまったな」
「……うん」
「魔神は消えて、魔王もこれから消える...そうなった後の世界がどうなるか、俺にもわからない。魔界が消えたことによる影響も出てくるかもしれない...後始末を押し付ける形になって申し訳ないが、この先も勇者として頑張って欲しい...それが願いだ」
「押し付けるだなんてとんでもないです。元は僕らの世界の問題だ。カリヤが気負うことじゃない」
「……やっぱり優しいな、ライトは。もしも本当に平和が訪れたのなら、勇者ではなくただの人間ライトとして、幸せに生きてくれ」
一人一人に言うことはこれくらいだろう。時間も迫ってるから、これが限界だな。
「そろそろ時間だ。みんなは元の世界に帰還してくれ」
「……わかった」
「最後に一つ...このパーティーは最高だ!この仲間たちと旅できたこと、そして再会できたことが何よりも嬉しい!」
心からの言葉をぶつける。
「さよならは悲しいから、希望を込めてこう言おう!しばらくのお別れだ!またいつか会おう!」
大きく手を振って別れを告げる。
その直後、聖剣から光が放たれて周囲を純白が包む。
少しして光が収まると、みんなの姿はなかった。無事に元の世界に帰還できたようだ。
「さて...待ってればもう終わるが、最後にやるだけやっておこう」
そう言って俺はシレンの穴の坂を登って外に出る。
「最後まで付き合ってくれるか?みんな」
『もちろんだ。どうせ自力じゃ出れないしね』
魔族たちも俺と共に魔界の崩壊に巻き込まれることになる。まぁ、巻き込まれた後どうなるか、何となく想像はついているがな...
『……にしても、まさかカリヤが言っていたことが実現するだなんてな』
アクセルの力を使って魔王の元まで走っている最中、アクセルがそう言った。
「……たしかに、そうだな」
アクセルが言っているのは、俺がよく口にしていた、アクセルと一緒に戦いたかった、という言葉のことだろう。
「まぁ、一緒の意味がだいぶ違うけどな...共に並び立つのではなく、まさか同化することになるとは...」
『どんな形であれ、カリヤと共に戦えたことが嬉しいよ。出来ることなら、カリヤ自身ともまた戦ってみたいがね』
「そうだな...もしかしたら、これもまたいつか実現するかもな」
そんなことを話していると、動けなくなっている魔王が見えてくる。何度も複製体から脱出しようとして、その度に修復されて失敗しているのが見てとれた。
「ハッ、惨めだな、魔王!」
「き、貴様...!!早くここから出せ!!」
「ずっと俺に住み着いていた罰だ。その中で終わりを迎えな」
「っ...貴様もタダでは済まないぞ!」
「なに、それくらいの覚悟、とうに出来ている」
魔界の崩壊が本格化する。速度操作をもってしても止められない崩壊が、魔界全体に広がる。
もう、タイムリミットのようだ。
「終わりだ。お前も...俺もな」
その瞬間、魔界は砕け散った。
魔界に存在していた一切が消し飛び、俺と魔王は同時に終わりを迎えるのだった。
「……戻って来れた、か」
目が覚めると、俺は真っ白な空間にいた。見慣れた光景。聖杖世界から、神様のいる空間に戻ってきたのだ。
『……なに、ここ』
頭の中に声が響く。
「はは、流れ的にそうだろうなぁとは思ってたよ」
俺の魂の中には、五人の魔族たちが残ったままだった。
「これはこれは...困ったのう」
神様が現れて、開口一番にそう言った。
「このまま地球に戻るわけにはいかない。魔族の魂が剥がれるまで、もうしばらく他の世界を巡って仕事をしろ...だろ?」
魔族の魂が宿るのは完全にイレギュラーなことだ。本来起こり得ない事象であるがために、魔族自身は魂から抜け出す方法を知らない。そして神様も、人の魂の中にある異物をどうこうすることはできない。今すぐに解決することは不可能だ。
「……そうじゃな。色々調べておく。お主は一旦休んでおいてくれ」
「りょーかい」
『なぁ、何が何だか分からないんだが、説明してくれよ』
「分かった。順に説明してやる」
どうやら俺の役目...神の使いとしての仕事はまだまだ続くようだ。
だが、これまでとは違う。魔族たちという仲間たちがいる。
「……っと、その前に...これからもよろしくな、アクセル」
最大の好敵手であり、これからの相棒に挨拶を告げるのだった。
これにて第五章 回避の目は完結です。
そして、人魔憑依編の完結でもあります。
カリヤくんに憑依していた魔王が離れるまでの物語である、人魔憑依編...いかがだったでしょうか?
行き当たりばったりなところも多かったですが、この結末は決まっていたのでなんとか纏まらせることは出来たのではないでしょうか...
この章での確定事項は、魔界内部を聖剣無しで挑むこと、白竜と黒竜の討伐とそれによる魔神復活、そして魔王による乗っ取り、それに伴う魔族の意識の復活、雷装の再入手、最後に複製体に閉じ込めて同時に死ぬ...大きなイベントは全て事前に決まっており、人魔憑依編の最終章に相応しい完成度で動かせたと思います...後半はギチギチになりましたが。
唯一追加した点といえば、魔族擬きの存在ですね。
あれだけは途中で急遽追加しました。
そのおかげで、カリヤの姿を取らせて討伐不可になるイベントであったり、アクセルたちの能力を振り返る良い機会を作れたので、かなり良かったのではないかと思います。
魔族の復活は次編においてかなり重要なファクターになるため、色々と伏線を仕込んでいました。
黒竜戦での伏線は本編でも説明しましたが、それとは別に第三章でも伏線を仕込んでいました。
フォルスの、幸希の中には七つの魂がある、と言う箇所です。
カリヤくんと魔王の他に五つ...その時は、翻訳能力も含めたこれまでに手に入れた能力だと解釈していましたが、実際は魔族たちの魂だったわけです。
レジリスの影がだいぶ薄かったので、気づけた人は少ないかな...と思います。
気付いてくれていたら嬉しいです。
さて、振り返りはここまでにして次編の話をしましょう。
次回からは、魔族たちと共闘して世界の歪みを修正する話、人魔一体編となります。
魔王の憑依という一方的なものではなく、互いに手を取り合い一体となる話です。
そんな次回の投稿はいつも通り三日後...ではありません。
理由は二つあり、一つはストックが枯渇していること。
もう一つは、当初の構想にない章を書こうと思っているからです。
当初は、人魔一体編を四章編成にしようとしていたのですが、これでは魔族たちとの日常パートがあまりにも不足してしまうことに気付き、急遽一番最初に平和な章を挟み込むことに決めました。
これまで以上に大まかしか決まっていない話を書くため執筆に時間がかかることは確実...ストックのない現状では三日ペースは恐ろしく困難です。
よって、ストックが貯まり切るまで投稿は一時停止します。
次回投稿は、ストックが十話貯まってからになります。
上手く三日ペースで書き続けられた場合でも一ヶ月はかかる計算です...気長にお待ちいただけると幸いです。
これからも、ダイヤモンドリリーの作品を、そしてカリヤくんの物語をよろしくお願いします!!