神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8345字。

銃を作る能力の意味が最近無くなりつつあるけど、シナリオ上この能力でなければならないので、この能力で面白い戦闘シーンを書くしかないんですよね...むずい!


多勢に無勢、遊撃特攻

「伝令は無し...先延ばしのツケが回ってきたな」

 

俺が魔力弾で撃ち抜いた人全員の治療が終わった。ここからどう動こうか...

 

「……っぱ、魔族と戦う方が楽かな。右翼側に向かいながら前線行くか」

 

自分に身体強化の魔法弾を撃ち、走り出す。

 

「もういちいち魔力銃作るのもめんどいし、自力で撃つか」

 

体内に魔力を溜め込んでおく。攻撃に合わせて凝縮させれば盾にもなるし、射出して拒絶反応を起こさせることもできるから、普通に魔力銃を作って撃つよりも便利...って、これだと銃を作る能力じゃなくてもいいじゃんって感じだな。でも仕方ねーじゃん便利なんだもん。

 

「……ってか、だいぶ敵軍も攻め込んできてるな。俺が魔族を追ってる間にここまで来たのか」

 

最前線にいたあの魔族と戦い、逃げた奴を追っていた時はここまで攻め込まれてはいなかった。その短時間でだいぶ距離を詰めてきていたようだ。側面からの奇襲への対処のせいで正面が疎かになってしまったのかもしれないな。

 

「こっち選んで正解だったかもな。全員、そこで眠っててもらうぜ?」

 

指先から魔力の塊を射出して敵兵に攻撃する。たったそれだけで、能力と身体の自由を奪い無力化できてしまう。はいはいチートチート。次の世界でも魔力に拒絶反応を起こすようなら、魔力を作れない能力にしないとダメだなこれ。いやまぁ、そもそも銃を作る能力で魔力を作れてるのがおかしいんだがな。

 

「っと、危ねぇななんの能力だ?」

 

まだ無力化できていない敵兵の能力なのだろう、急に辺りが暗くなったかと思えば俺の真上に大量の土砂が現れていた。バックステップで土砂の下敷きになるのを回避しながら、何の能力であるかを予想する。

 

おそらく、物質生成能力か物質転移能力のどちらかだろう...っと、また別の攻撃が来たし今度はなんだ?

 

「氷の射出かそれなら撃ち落とす!」

 

飛んでくる氷に対して魔力弾を撃ち込み、軌道を逸らして回避する。

 

「今度はなん...土人形⁉︎ぐっ!」

 

さっき落ちてきた土砂がいつのまにか人型に変形しており、その巨大な拳で殴り飛ばされる。魔力の盾が間に合ったが、その衝撃はかなりのもので数メートルは吹っ飛ばされてしまう。

 

「クソッ、一度後手に回るとだいぶ厄介だな...」

 

連携の取れた連続攻撃をこうも続けられてしまうと、こっちの攻撃の機会が無くなってしまう。相手の能力が何かをいちいち考えている余裕もあまりない。こんな時、思考の加速が出来たらなぁ...無い物ねだりしても仕方ないか。

 

「……あの氷、着弾箇所を凍らせるのか...滑るの得意だし問題ないな」

 

まずは...あの土人形を壊すか。

 

地面を勢いよく蹴り出し、全速力で土人形に向かって駆け出す。土人形は俺を迎撃しようと腕を引いて待ち構えている。けれど、その手前の地面に張っている氷を使ってスライディングすれば、パンチの下をくぐり抜けて足元までいける。そこから真上の攻撃すれば破壊できるはずだ。

 

タイミングに気をつけて...ここでぇっ⁉︎

 

「落とし穴⁉︎」

 

氷の張った地面の上で滑ろうとしたら、急に氷が割れて穴に落ちた。さっきまでこんなところに穴なんてなかったはず...まさか、さっき落ちてきた土砂は元々ここにあったもの?それで穴を隠すように氷を張って俺を誘い込んだ?クソッ面倒な連携しやがる...!

 

「オイオイ生き埋めは勘弁...だぜ!」

 

土人形を形成していた土砂が俺の真上に転移した。それが落ちてくる前に、魔力で強化した脚力で跳躍して穴から脱出...

 

「って二段重ねなの流石すぎる!!」

 

穴から飛び出した俺を撃ち落とすように氷が飛んできた。魔力を皮膚表面から噴出させて固め、即席の盾にしてなんとか受け止める...けど、盾も凍っちゃうのかよというか魔力も凍るの⁉︎なんでも凍らせる能力か何かなのか?

 

「まずはお前からだ氷使い!」

 

指先から魔力弾を放ち、氷を飛ばしてくる敵兵を攻撃する。能力を使って防御しようとしたのだろうが...魔力弾は確かに凍ったものの勢いまでは消すことができず、凍った魔力弾が腹部に直撃した。敵兵は腹を抱えて蹲っている。

 

どうやら凍ったせいで体内に魔力は入り込まなかったようだな...けど、結構痛かったらしく、もう一発魔力弾を撃っても撃ち落とされることなく直撃した。痛みで能力を使う余裕がなかったんだろうな...

 

「次は...ってお前らうじゃうじゃ居すぎだろ多いよ」

 

これだと何人撃ってもすぐ後続が来るな...面倒がすぎる。殺してもいいなら実弾撃ったり強力な魔法弾を撃てば済むけど、殺しちゃいけないからな...なんで殺されそうになってんのに殺しちゃいけないの?不公平じゃね?

 

「……お」

 

いいこと思いついた。試してみるか...騙し討ち。

 

俺は両手を上げて降参だと示す。通じてくれると嬉しいけど...

 

「流石にこの人数差じゃ無理だわ。降参降さ...って問答無用かよ」

 

流石に怪しすぎたか?捕虜にするために近づいてきたところに魔力を流し込んで無力化し、そいつを人質に取って戦いを有利に進めようとしたんだけど、普通に攻撃してきた。相手の兵士は何があっても殺せって命令されてんのかな?降伏してきた奴を攻撃するとかダメでしょ普通。

 

「なんか魔法弾使うか...?いやでも対人は使い勝手悪いからな...」

 

敵兵の攻撃を避けながら魔法弾を吟味する。魔物に向けて撃つ想定のものが多いから、人間相手に使うと普通に殺しかねないんだよな...チクショウこれだから人間とは戦いたくないんだ魔族と戦わせろ魔族と!

 

「もう記憶改竄が一番手っ取り早い!」

 

魔力銃を生み出し、引き金を引く。

 

「チキショウ防ぐんじゃねェ!今から俺が真実を教えてやるってのによォ!」

 

そっちの仲間に魔族が紛れていることを伝えてやろうとしてるってのに防ぎやがって...あーなんかダメだわ内側からドス黒い感情みたいなのが沸々と湧いてくる...こうなったらバフ全開にして直接ぶん殴るか。

 

両手に魔力銃を握り、自分の身体に撃ち込む。全身に魔法の力が巡り、身体能力が急激に強化される。

 

「本気で行くからよ...死ぬんじゃねぇぞテメェら!!」

 

まずは、いつのまにかまた作り出されていた土人形の真下に滑り込み、地面に手をつきながら真上に蹴り上げる。インパクトの直後、土人形を構成していた土砂が勢いよく舞い散り、敵兵の方に降り注ぐ。

 

その降り注ぐ土砂に気を取られている敵兵に近づき、掌底で顎を撃ち抜く。それと同時に魔力を流し込み、能力も封じてしまう。

 

「結局物理が最強なのおかしいだろオイ!!」

 

次だ。ここから近く、なおかつ敵が密集しているところ目がけて走る。俺が走ってきたのを見て、敵たちは慌てて能力発動の構えらしきものを取るが...俺は一番手前の敵を無視して直進し、敵の集団の中央に入り込む。

 

フレンドリーファイヤーは誰だってしたくない。中央にいる俺に向けて能力を使って、それを避けられでもしたら反対側にいる味方に当たってしまうこの状況で、すぐに攻撃の踏ん切りがつく奴なんてそうそういないだろう。

 

「オラァッ!!」

 

能力から武器へと、即座に獲物を変える決断をした奴らから攻撃していく。判断が遅い奴らは後回しだ。この状況では能力よりも取り回しがよい普通の剣の方が怖い。だから優先して殴り飛ばし、魔力を流し込んで行動不能にしていく。

 

行動不能になった奴らは魔力の拒絶反応によってその場に崩れ落ちる。横たわったそいつらが地面を占領することで、敵たちは足の踏み場を無くして俺に近づけなくなる。まぁ俺は容赦なく踏み潰して攻撃しにいくけどな。奴らの思考にはある種のストッパーがかかっているせいで仲間を踏んで乗り越える発想がすぐには浮かばないが、今の俺には躊躇なくそれができる。その差が命取りだ。

 

敵を踏みつけながら敵を殴り飛ばし、少しずつ行動範囲を広げていく。そしてある程度の空間を確保できたら、中央に戻る。

 

中央に立てば、もう奴らの武器は届かない。敵は仲間を踏み潰すか、同士討ちの覚悟しながら能力で攻撃するか...どうあがいても味方を傷つけることになる二択に迫られる。対して俺は、魔力弾をここから放つだけで攻撃が可能だ。攻撃も防御もいくつか方法がある。十分勝てるだろう。

 

「さぁ、かかってきなよ」

 

敵を挑発し、攻撃を誘う...動かないな。何かこの状況を打ち砕く策があるか、それともただ臆病なだけか...

 

「動かないなら...こっちからいくぞ!!」

 

勢いよく地面を踏みつけ、魔力を流し込む。地面を伝う魔力は、倒れこんでいる敵兵の身体を経由しながら放射状に広がっていき、まだ動かない敵兵の足に突き刺さった。

 

「うめき声うっるっさ...」

 

魔力を流し込まれた人の苦しむ声が辺り一帯から聞こえてきてとてもうるさい。こんなんじゃ足音とか敵の発する会話も聞き取れないし、耳を塞いでしまっても変わらないな。魔力を固めたものを耳栓代わりにして音を遮断する。

 

「……おっ、ようやく決心がついたか」

 

俺の視線の先にいた敵兵が能力を使う決心をしたようで、彼の周囲に水の球が浮かび出した。急に空気が乾燥し出したのを鑑みると、空気中の水分を凝縮して作り出したのだろう。

 

そして、彼は作り出した水の球を射出した。形状からして特段威力はなさそうだけれど、手足にへばりついて拘束してきたり、顔にくっついて窒息させたりは出来そうだから侮れない。しかも、味方には当てないように下から上に向けて打ち上げていた。これなら外れても空に向かって飛ぶだけだから、味方を巻き込むことはない。かなり考えられた攻撃だ。

 

「いいね。なら、その心を折ってやろう」

 

そうやって頭が切れるやつほど、失敗した時のダメージはデカい。そう奴は周りに一目置かれていることも多いから、そいつが失敗すれば、自身の心が折れるだけでなく周囲の人の心も折れてくれる。逆らう気を失くさせてやろう。

 

「よっと」

 

地面を軽く蹴り、魔力を流し込む。多量に送り込まれた魔力は物質化し、地面の下から倒れていた敵兵の体を押し上げた。ちょうど、水の球の軌道上に割り込むようにだ。

 

押し上げた敵兵の体に水の球が付着する...いや、もはやそれは水とは呼べない代物になっていたらしい。液体が触れた箇所の服や皮膚が溶け始めていたのだ。空気中から水分を取り出すと共に、酸性を付与させて強酸へと変化させていたのだろう。ちょっと予想外だったが...まぁ、この程度なら死にはしないだろう。

 

……おお、ちゃんと青ざめてくれてるな。今頃は自分の力で傷つけてしまったのだと、攻撃したことを後悔していることだろう。そして、俺は転がってる奴らを肉盾として使うこともできるのだと奴らは認識したことだろう。攻撃を躊躇する材料が一つ増えたわけだ。

 

次々と倒れていく仲間、それを容赦なく踏み潰し肉盾として使い潰してくる狂気に染まっている敵...どんな能力によるものかもわからず、ただただ蹂躙される...そんなふうに思ってくれていれば嬉しい。恐怖が蔓延し、そのまま戦意を失ってもらいたいものだ。

 

「次にやられたい奴はどいつだ?」

 

指先を向けると、敵の方がビクッと飛び跳ねた。どうやら、もうだいぶ心が折られているようだな。これなら...少々思い切った行動をとっても、すぐに反撃することはできないだろう。

 

「んじゃあ...全員終わりだ」

 

足に魔力を集め、真上に跳躍する。空...能力で攻撃したとしても味方を巻き込むことはないため、奴らにとっては絶好の攻撃の機会だ。だが、さっきも言った通りすぐに攻撃に移ることは精神的理由から難しく、そもそも急にやった俺の行動に反応できた奴がどれほどいるかって感じだ。まず反撃はないと見ていい。

 

真上に飛んだ俺は、敵一人一人に向けて魔力弾を放ち、ここから狙える奴らを全員撃ち抜き着地した。見たところ、身を捩ったり能力を使ったりで回避した奴らがいたようだが、それも数人。あれだけいた敵はその数人を残して全員倒れてしまったわけだ。

 

「耳栓で聞こえねぇけど阿鼻叫喚なんだろうなぁ...あとはお前らだ。降伏してもいいんだぜ?」

 

あの攻撃を捌いた奴らに向かって叫ぶ。ちゃんと聞こえてるかな...?

 

「……おっ、偉く従順じゃねぇか。流石に力の差を理解したか?」

 

残っていた数人は皆武器を捨て、手を頭の後ろに回して降伏した。

 

「んじゃあそこに一列に並んで後ろ向け」

 

一定の距離を保ちながら指示を出し、降伏した奴らを後ろを向かせながら一列に並ばせる。そして...

 

「ほいっと無力化完了」

 

全員魔力弾で撃ち抜き無力化した。

 

「さっき降伏したのに攻撃してきた報いだ。殺されないだけマシだと思え」

 

よし、これでここらの敵はあらかた片付いたな。一応さっき液体被って皮膚が溶けてた奴を回復弾で治療してから、魔族のいる方へと向かうとするか...

 

「……おっ、いいこと思いついた」

 

光を操る魔族の方に行こうと思っていたが、気が変わった。敵軍がやったように、ぐるっと大回りして背後から敵の本軍を襲ってみよう。最後尾にいる魔族を叩いた方がより混乱を招けそうだからな。

 

そんなことを考えながら、魔力銃を握ってさっき怪我した奴を探すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……よし、なーんか上手いこと回り込めたな。一人なのと、まさか同じことをやってくるとは思ってないからかな?」

 

敵軍の最後尾の真横まで回り込むことに成功した。これ以上近づくことは流石にできないから、ここから敵の様子を探ることにしよう。

 

「んーこっからじゃ直接魔族を撃ち抜くのは厳しいか...」

 

スコープだけを作って、それを覗いて魔族のいるところらへんを観察する。壁の上から見た時もそうだったが、近くを護衛で囲んでるんだよな。多分防御系の能力で固めてるだろうし、どうやって崩したものか...

 

「さっきみたいに肉弾戦で引っ掻き回すのも手だが、流石にあの人数だと厳しいよなぁ...」

 

「そうだな、あそこに無闇に突っ込んでも死ぬだけだ」

 

「……びっくりしすぎて死ぬかと思ったわなんでここにいるんだ?」

 

いつのまにか真横にシンがいて、思わず大声を出してしまいそうになった。こいつ、多分空気を操って音を消しながら近づいてきたな?怖すぎんだろ。

 

「いちゃいけねぇのか?」

 

「ああもうその返しされると面倒い...もういいや別に。なぁシン、お前の力で俺らの姿を隠すことってできるか?ってか空気操れるんだからできるよな?」

 

「ああできるぞ。だが、若干景色が歪むから注意深く見られるとバレるぞ」

 

「そうか...だが、近づけるだけで十分だ。やってくれ」

 

「了解した」

 

シンはそう言うと、周囲の空気を操り俺らの姿を消す。光の屈折率をうまいこと弄って、光を逸らしているのだろう...この能力、光を操る魔族と戦うのに使えるな。覚えておこう。

 

……ところで、だ。光を屈折させることで周囲から俺らの姿を見えなくさせているわけだが、そうなると当然一つの問題が浮上してくる。

 

「あーすまん言い忘れていた。これすると何も見えなくなるんだった」

 

「まぁ、なんとなくわかってたよ原理的にこうなるって。大体の距離感は覚えてるし、魔力を地面に流せば周囲の探知もある程度できるから問題ない。構わず進むぞ」

 

「了解」

 

周囲の光を屈折させ姿を消しながら俺らは敵の本軍へと接近していく。

 

「……なぁ」

 

「ん?どうした?」

 

「お前、さっき戦った魔族に魔族殺しとか言われてたが、あれってどういう意味だ?」

 

……おおっと?その辺の記憶は弄ってなかったっけか...

 

「……まさか、あの時議員に成り代わっていた魔族を殺したのはお前だったのか?」

 

こりゃ、誤魔化すのは無理だな。今記憶操作の魔法弾を撃ち込んだら、その拍子に能力が解除されて屈折の隠れ蓑が消えてしまう可能性があるからな。大人しく真実を話すことにしよう。多少の嘘を交えてな。

 

「そうだ。奴は記憶の改竄能力であの地位についていたが、俺の能力で作った魔族を見分ける装置の前では記憶改竄など無意味だった。んで、一番奴に近づけるタイミングがあの場だったからあそこで殺した」

 

「あの日の前日に、副総長を殺したのもカリヤなのか...?」

 

えっ、あの魔族って副総長だったの?まさかそこまでの地位だったとは...少し驚かされたが、動揺を心の中に隠して冷静に話さないとな。

 

「ああ。奴が魔族だってのは前々からわかっていたが、出来れば魔族を殺すのにあまり間隔は開けたくなかったから、パーティーが始まる前日に実行させてもらった。偶然その前日に捕らえられていた魔族のところに向かおうとしていたってのもあるがな。逃されては困るから同時に始末したわけだ」

 

……こんなところかな。我ながら、即興の出任せを言うのが得意だなぁ...

 

「ったく、魔族にバレないように動いていたつもりなんだが、一体どこで情報が漏れたのやら...」

 

少々蛇足かもしれないが、一応魔族に正体がバレた理由はわからないといったふうにそこはかとなく示しておく。もう不自然なところはないよな?

 

「……あいにく、あの時のことはよく覚えていないんだよな...けど、本当にカリヤが魔族を殺したんだとしたら、俺は感謝の意を述べたい」

 

「記憶がないのは仕方がない。魔族が死んで記憶改竄が解除されたから、その反動で記憶が一部抜け落ちてても不思議じゃないからな」

 

本当は俺が記憶を消したんだけどね。

 

「あと、感謝はいらないぞ。俺はこの町のことを、人類のことを思ってやっただけだ。それでも感謝したいなら...この戦場にあと2人いる魔族を殺してからにしてくれ」

 

「あと二人もいるのか⁉︎」

 

「一人は敵軍右翼側の最前列にいて、もう一人はこの最後列の中央付近にいることは分かっている。後者の暗殺が目下の目的だな」

 

「なるほど...」

 

「ただ問題なのは、そいつの周りに護衛がついていることと、そいつの能力がわからないことだ。もう一人の魔族は光を操る力だってことが既にわかってるんだが、こっちのはまだ判明していない。おそらくは防御系で固められてるであろう護衛の能力にこちらの攻撃が阻まれている間に、魔族本人の力で蹂躙される可能性があるのが怖いんだよな」

 

「なら、俺が護衛を全員何とかしてやる。カリヤと魔族だけ空気の壁で隔離してやるから、一対一で戦ってしまえ」

 

「簡単に言ってるが、それできるのか?」

 

「出来るさ。空気の腕でも作って魔族をあの集団の中から引き剥がしてカリヤがいる方に投げ飛ばせばいい。護衛の方は空気を奪って窒息させて気絶して貰えばいいだけだ。こう見えて、攻撃よりも身を守る方が得意なんでね。多勢に無勢でも十分生き残れるから安心してくれ」

 

あー...確かに、シンの能力があれば自分の身を守ることだけなら簡単だよな。一定範囲の空気の壁を作りながらの耐久戦は、シンの記憶にはないだろうが俺とやってるしな。あの硬さは異常なほどだったし、きっと凌ぎ切れるだろう。

 

「んじゃあそれで任せた」

 

「魔族の近くまで来たら教えてくれ。まずはカリヤの透明化を解くから、ある程度攻撃しながら向こう側に走ってくれ。敵軍と距離が離れたら、そこに魔族を放り込んでやる」

 

「了解...っと、ここで止まってくれ。あっちの方向...六メートル先のところに魔族がいる」

 

魔族探知の能力で魔族との距離を測る。んで、地面に流した魔力を使って正確な距離を調べて...

 

「手前から四人目の奴だな。じゃあ...頼んだぞ!」

 

魔力銃を作り出しながら、敵軍から距離を取るように走る。

 

「うおっ、眩しっ!」

 

シンの屈折の隠れ蓑から出て、ずっと真っ暗だったところから光に包まれた世界に出たことで目がやられてしまう。が、今更そんなことで慌てふためくようなことはない。冷静に後ろに向けて魔力銃を構え、シンに当たらないように魔力弾を発射する。

 

一番手前にいた兵士が魔力弾を喰らいバタッと地面に倒れ伏す。それを見た数人が、俺のことを見つけて「敵だ!」と叫びながら追ってきた。それにより、兵の影に隠れていた魔族の姿が露わになる。まだ何人か専属の護衛らしき人が残っているが、まだ見つかっておらず警戒されていないシンは自由に動ける。護衛を無視して魔族を掴み、そのまま俺のいる方に向かって投げ飛ばした。

 

そこで俺はズザーっとブレーキをかけて立ち止まる。そこから数メートル手前のところに魔族が落ちてきた。

 

魔族は少女だった。見た目は小6から中1くらいで、どこからどう見ても子供だ。

 

けれど、魔族は魔族。この戦争に参加して、センフリを攻撃した魔族の一人だ。そもそもメタモルフォーゼ系の能力かもしれないし、外見はアテにならない。内側にどんな本性を抱えているかわかったもんじゃないから、見た目関係なく抹殺対象だ。

 

「さぁ、死んでもらうぜ?魔族様よォ...!」




なんかカリヤくんの戦闘が荒々しいって?
それにはちゃんと理由があって、おそらく次回辺りで種明かしされるんじゃないかなーと思います多分。
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