久しぶり...というかこの三部作ではほぼ使ってこなかった三人称視点、いわゆる神の視点を使ってみました。
なんで使ったのか、その理由は...読んで確かめてください。
「さぁ、死んでもらうぜ?魔族様よォ...!」
落ちてきた魔族に向かって言い放つ。
「……ここ、は?」
「一応言っておくが、もう出られないぜ?空気の壁で完全に包囲されているからな」
俺の背後にある空気の壁をコンコンと叩き、壁が確かにそこにあることを確認する。
「ここにいるのは俺とお前だけだ。まぁ、すぐに俺だけになるがな」
拳銃を生み出し、魔族に向ける。
「へぇ...その奇妙な形の武器、あなたが魔族殺しなのね」
「ああそうだ。冥土の土産にもならねぇだろうから、さっさと忘れて死んでくれ」
「……私の大手柄ね」
ドサリと、音がした。仮谷幸希の身体が、力なく崩れ落ちて地面に倒れた音だった。
「ふふ...本気で私を殺したかったのなら、ここまで飛ばされてきた瞬間に殺せばよかったのに。ペラペラと私の目を見ながら喋るからこうなるのよ」
少女の魔族は仮谷幸希に近づきながら独り言を呟く。
「どうせもう聞こえてないでしょうけど、冥土の土産?だったかしら。あんたがやったみたいにペラペラと喋ってあげるわ。どうせ、壁に囲まれてるから外には出られないようだしね」
仮谷幸希がやったことの意趣返しが出来て嬉しいのか、ニヤーと笑いながら魔族は口を開く。
「私の力は二つ。一つは人の暴力性を高め闘争本能を刺激する精神干渉。そしてもう一つが...目があった者の意識を強制的に奪う力。どう?目を見てさえくれれば無敵なのよ、私」
敵軍の兵は皆、この魔族の精神干渉によって闘争本能を高められていた。それが原因で、センフリに攻め込むことになったのだ。恐怖といった強い感情を抱くと精神干渉の影響下から脱するため、実は仮谷幸希がやっていた戦法は敵を無力化するのには最適だったりするのだが、それを仮谷幸希が知ることはない。
二つ目の能力である意識の途絶は、一対一の戦闘においては無敵だろう。目を合わせるだけで終わりなのだから、それを知らなければ避けることはほぼ不可能と言っていい。この魔族の見た目が少女なため、なんとなく目を逸らしてしまう人も多いかもしれないが、ここは戦場、敵から目を逸らす奴などいない。ほぼ確実に発動でき、意識を失った相手を殺すのは容易だろう。
「……あー、投げ飛ばされた時に武器を落とされてしまったようね。誰の力か知らないけれど、器用な真似するわね...」
そう言いながら魔族は、仮谷幸希の上に跨った。そして、仮谷幸希の首に手をかけて万力のようにゆっくりと力をかけていく。
「仕方ないから、じっくり殺してあげるわ...!」
気道や血管が締め付けられ、呼吸ができなくなると同時に既に血中にある酸素が脳に届かなくなる。このまま首を絞め続ければ、仮谷幸希の命は絶たれるだろう。
だが、そうはならなかった。
「んぐっ...⁉︎」
魔族の顎に衝撃が走った。仮谷幸希の掌底が顎に直撃したのだ。魔族の軽い身体は撥ね上げられ、少し先の地面にお尻から落ちる。
「なんで動ける...意識は奪ったはずよ!」
そう叫ぶ魔族とは裏腹に、仮谷幸希は軽く咳き込んで喉の辺りを押さえながら立ち上がった。どう見ても、まだ意識が残っている。
「何かの力で意識を取り戻したの...?けど、それならもう一度消すだけ!」
仮谷幸希は喉から手を離すと、敵である魔族の方を見た。その瞬間に、魔族が能力を発動させた。
意識の途絶。目が合った相手の意識を必ず落とす、防御不可能の絶対的な能力。
そのはずなのに、なぜか仮谷幸希はまだ動いていた。
「なぜ効かないの⁉︎」
仮谷幸希は一歩魔族に近づく。それに合わせるように、魔族は一歩後退りする。
「まさか、意識がないのに動いているの...?いや、無意識にこんな動き出来る人間なんて存在しない...!」
魔族の背中が空気の壁に当たる。
もう、下がれない。
「じゃあ何よ...もう一つ、別の意識がコイツの中にいるっていうの...⁉︎」
仮谷幸希?は魔族に近づいた。完全に壁に追い込んだため、もう逃げられることはない。そんな状況で、腕を振り上げる。
「っ...!」
魔族は、自らの容姿を活かした立ち回りをした。一瞬でも攻撃を躊躇わせ、その隙に距離を取るために最大限怯えたフリをした。もっとも、九割方は本当に怯えていたのだが、そんな中でもなんとかしてこの場を切り抜けようとしていたのは流石魔族といったところだろう。
だが、仮谷幸希...いや、彼の中に巣食う魔王には通用しない。
ドカッ...!
魔族の頭に、拳が突き刺さった。
「あぐぁっ...!!」
よっぽど威力が強かったのか、魔族は頭から血を流しながら斜め下へと吹っ飛び、地面を何度もバウンドしてそのまま横の壁へと叩きつけられる。
「っっっ〜〜〜!!!」
頭を押さえ、痛みに悶絶する魔族。
そこに向かって、魔王はゆっくりと歩みを進める。
「なによ...何なのよアンタは...!」
「……余は」
魔王が、その口を開く。
「余は魔そのものにして、魔を統べる魔王」
「魔...王...?」
「貴様、別世界の魔族か。余の配下と似てはいるが...ダメだな。魔力を持たぬ魔族なぞ論外。その身体に刻まれている傷といい、なんとも穢らわしい。まさに世界のバグ...これから余が統治する世界に、貴様のような異分子は不要だ」
ダンッ!!
地面に倒れている魔族の背中に魔王の足先が突き刺さる。そして、グリグリと背骨の辺りを押して更なる痛みを与えていく。
「出来れば時間をかけて貴様を嬲り殺しにしてやりたいのだが...生憎時間が無くてな。即効で終わらせてやる。感謝しろ」
背骨を刺激するのと連動するように泣き叫ぶ魔族の悲鳴に満足したのか、魔王は魔族の背中から足を離す。
そして、魔族の身体の下に足先を突っ込むと、魔力で強化した脚力で真上へと魔族を蹴り上げた。
天井を覆う空気の壁に魔族は激突し、重力に引かれて落ちてくる。魔王は落ちてくる魔族の首をタイミングよく掴み取り、そのまま壁に押し付けた。
「っ...がッ...い、きが...」
魔王は左手一本で首を絞めあげながら壁へと押し付け、魔族の足を地面から離す。
「先の意趣返しだ。余を殺そうとした罪は大きいぞ」
魔王はフリーとなっている右手を大きく振りかぶり...
その拳を、魔族の顔面に叩きつけた。
ドカッ!バキッ!グシャッ!!
何度も、何度も何度も何度も魔力で強化された拳が魔族の顔面に叩き込まれる。
途中、何度も魔族は諦めずに能力を使って魔王の意識を落とそうとしたものの、効果はない。それもそのはず、魔王の目はそこにはないのだからそもそも発動条件を満たせていないのだ。魔王は仮谷幸希の視覚を利用してはいるものの、魔王自身の目は仮谷幸希の中だ。
もし魔王が自身の目を仮谷幸希の目の位置に移動させていれば効力を発揮していただろうが、魔族自身が能力の発動条件を喋ってしまったがためにそれは起こり得ない。
武器を落としていることも、魔族自身が口にしていた。闘争本能を高める能力は逆効果を生むだろう。つまり、魔族には反撃手段が一つもない。それを、魔王も理解しているからノーガードで攻撃しているのだ。
何度も殴られ、魔族の顔はどんどん変形していく。それに伴い、殴った時の音も少しずつ変化していき、骨を砕く音から肉を叩くネットリとした音へと次第に変わっていく。
仮谷幸希ならば、魔族を殺すのにこのような残虐な方法を取ることはなかっただろう。しかし、魔王には躊躇がない。気の赴くままに暴力を振るい、傷つける。仮谷幸希も魔王の寄生によって微妙にだが精神性が引っ張られてしまっているが、ここまでにはならない。今はまだ能力の制御は奪われていないものの、もしその制御をも明け渡してしまった時、果たしてこの世界はどうなってしまうのだろうか...
「……終わったか」
魔族が抵抗をやめてからもしばらく殴り続けていた魔王だったが、魔族が完全に死んだと理解して殴る手を止めた。
「この程度で死ぬとは軟弱者め...む?」
魔王の意識が遠のき始めた。そして、仮谷幸希の魂の奥底に引き戻されるような感触を覚える。
「ふむ、魔族が死んだことで意識の途絶も解除されたのか...仕方ない。此度は戻るとしよう」
魔王は抵抗することもできたが、ひとまずは流れに身を任せることにした。
魔王が表に出るには、魔力が必要だ。ここで無理矢理表に出続けたところで、仮谷幸希が作り出して体に溜め込んでいた魔力が尽きるまでしか活動することはできない。本気で乗っ取るなら、もっと多くの魔力を溜め込んでいる時か、魔王も能力を使えるようになって自由に魔力を作り出せるようになってからだろう。
故に、魔王はしばらく鳴りを潜めることにしたのだ。
「……感謝するぞ魔族。貴様のおかげで、此奴を乗っ取る経験ができた。再度の乗っ取りも容易になるだろう...その時が楽しみだ」
そう呟いてから、魔王の意識が裏に消える。
魔王は聖杖世界の生き物だ。それ故に、たった一度の経験でもスキルとして力にしてしまえる。魔力を大量に抱えた状態で仮谷幸希の意識が遠のけば...何が起こるかは、想像に難くないだろう。
「……んえ?」
なにこれ、時間飛んだ?なんか知らんけど魔族死んでるんだが。なんか立ち位置も変わってるし...
「ってか手ぇめっちゃ痛い!!んで何この血の量⁉︎」
よ、よーし一旦落ち着け?落ち着いて状況を冷静に観察しようそうしよう。
えーっと、まず、だ。魔族が死んでる。首には片手で絞められたような痕があって、顔面がグチャグチャになっている。んで、俺の手には血がべっとり...この痛みといい、もしかして...
「俺が...殺したんか?」
状況的には、俺が魔族を殴り殺したってのが一番それっぽいんだよな...空気の壁があるから中にいたのは俺とこいつだけだし、ほぼ確定だよな?
「と、とりあえず血は洗い流して...手の傷も治しておくか」
魔法弾を色々使って血を洗い流し殴った時にできたのであろう右手の傷も治しておく。
「……時間が飛んだように感じたのはこいつの能力なのか?いやでもそんな能力あるのか...?あったとしても意図が不明だし...」
俺がこいつと戦った記憶がないのは何かしらの能力によるものなんだろうけど、なんの能力によるものなのか皆目見当もつかない。この魔族が死んでるってのが一番のノイズすぎる...
「……まぁいっかもう死んだ魔族のことなんて。残る魔族はあと1人...そっちに集中しないと」
よし、切り替えて最後の魔族のもとに行きますか...ってあれ?
「これどうやって出れば...?」
空気の壁はシンが作り出している。そのシンが気付いてくれなかったら、俺はここから動けないんじゃ...
「……あれ?壁が消えたな」
頑張って空気の壁を凝結させて通ろうかなとか考えていたら空気の壁が消えた。ベストタイミングで気付いてくれたのか?なんかあまりにもタイミング良すぎて、空気の壁を維持できない状況にシンが陥ってしまったのではという悪い想像をしてしまうな...
「おーい大丈夫かー!」
おっ、シンがこっちに向かって走ってきた。無事みたいだな...流石の防御性能だ。
「大丈夫だ。魔族は殺した。記憶ないけど」
「それは大丈夫と呼べるのか?見ててやばい戦い方するなと思ったが、まさか記憶が無いとは...力を使わずに何度も殴るもんだからびっくりしたぜ」
「ってかこんなところで駄弁ってたらヤバくね?すぐに移動するぞ今からでも遅くないから透明化を使ってくれ」
「ああ、そのことなんだけど...多分、奴らにはもう戦う気はないよ。さっき、急に奴らが戦意喪失してね。多分あの魔族が死んだからだと思うんだけど、どうだろう?」
「あー...多分あの魔族の能力は精神干渉系の能力で、兵士の精神を操って好戦的にしてたんじゃないかな。それが魔族の死によって解除されて、戦う意志を失った...こんなとこだろ」
「それじゃあ、もうこの戦争は終わり...か?中には魔族の力関係無しに暴れたいだけの人もいるだろうけど、どうせ数は少ないからセンフリの戦力なら十分対処できるだろうし」
「かもしれないが...残った魔族がどう出るかだな。大人しく引き下がるか、それとも単体ないしは周囲を巻き込んで攻撃を続けるか...まぁどっちにしても、逃げられて雲隠れされるのが一番嫌だからこの場で殺しておきたいんだけど」
「じゃあ魔族のいるところまで移動するか。右翼側にいるんだったよな?」
「ああ、そうだ...って、移動してる?」
魔族の反応が少しずつではあるが移動しているように感じる。その方向は...センフリ方向だ。
「どうやら、このまま攻め込む決断をしたようだな...急いで行くぞ。身体強化してやるから追い風を頼む」
「了解!」
俺とシンにそれぞれ身体強化の魔法弾を撃ち込み、魔族のいる方向に向かって走り出す。これだけでだいぶ速いが、シンが追い風を作り出して更に加速する。
「本当に戦意喪失してるな...」
俺は走りながら周りを見渡してみた。ここから見える範囲の敵軍の兵士は、皆武器を足下に置いて両手を上げ投降していた。精神干渉を受けたから戦ってただけで、本当は戦争なんかしたくなかったんだろうな。魔族によって歪められてしまった、哀れな人たちだ...センフリの方針からして殺されないことが確定しているのが救いだな。この人数全部を捕虜にするのはなかなか難しそうだけど、まぁその辺は頑張ってくれるんだろう。
「こいつら全員の精神を弄ってたのか...なんか、今回の魔族色々と厄介な奴多いな」
人物の認識を弄る幻覚能力は仲間割れを起こさせるのに適しているし、精神干渉はこの戦争を引き起こさせた。んで、最後の一人は光を操る攻防共に長けた戦闘能力...それぞれベクトルは違えど、厄介具合はだいぶ高いと思う。
これまでの二人はなんか勝てたけれど、それは俺の能力や精神性などの相性が良かっただけ。次の光を操る魔族との戦闘はそこまですんなりと事は進まないだろう。空気を操れるシンがいれば奴の攻撃を逸らすことができるかも...ってくらいだから、また戦闘中に情報を集めないとだな。
「……いた。アイツだ」
魔族を目視した。周りには数人の兵士がおり、共にセンフリへと進行を続けていた。えらく人数が少ないが...ほとんどの人が戦意喪失しているのだから仕方ないか。あの魔族について行っている奴らは、おそらく精神干渉無しでも戦争に参加していたであろう戦闘狂なんだろうな。
「いいか?奴の能力は光を操るものだ。俺が壁の上から放った攻撃を撃ち落とし、自動的に反撃もしてきた。圧縮された光線は膨大な熱量を保持していて、当たったものを熱して溶かしてしまう。能動的な攻撃をする時はどんな攻撃をしてくるのかとか、他にも能力があるんじゃないかだとか色々と分からないこともあるが、とりあえず覚えておいてくれ」
「光...ということは、僕の力を使えば攻撃を逸らしたりできるかも?」
「かもしれないな。出来そうだったら頼む」
「了解」
「それじゃあまず出来る限り無力化するぞ魔族以外優先で!」
高速で魔族の近くまで近づいた俺らは、魔族に気づかれる前に二手に別れた。
俺は魔力銃を用いて魔力弾を魔族とその周囲に立っている兵士に向けて放つ。そしてシンは兵士の周囲の空気を操り、強制的に窒息状態にさせて昏倒させた。これらの行動により、兵士たちは一瞬にして能力使用不能になりながら昏倒した。
シンにはああ言ったものの、俺は魔族に対しても一応魔力弾を放っていた。しかし、魔力弾は魔族の近くまで迫ったものの、急に魔力弾が光ったかと思えば真下に向かって進行方向を変え、地面に命中した。
そして、俺が魔力弾を撃った場所に向けて高熱エネルギーの塊とも言える光線が放たれた。既に移動していたおかげで喰らうことはなかったが、放出された熱がここまで少し伝わってくる。
「魔力弾も止められるのか...!」
「今のは...開戦前の攻撃と似ているな。お前の仕業か」
自らの周りでバッタバッタと倒れていく兵士には目もくれず、魔族は俺のことを見る。
「魔族殺し...か。そんな面倒な奴とはなるべく戦いたくないのだが...」
「なら、攻撃やめてそのまま殺されてくれねーか?」
「そいつは御免だな」
魔族の周囲に光が瞬く。それを見た瞬間すぐに飛び退くと、直前まで立っていた場所を光線が突き抜ける。
「攻撃も同じか。それなら避けられる...!」
自動的になされる反撃と同じように、奴の攻撃には瞬く光という予備動作が必要らしい。これならまだかろうじて避けられる。魔族との間にある数メートルの距離を少しでも詰めてしまったらそれもできなくなるだろうが、銃で遠距離攻撃が出来るのだから距離を詰める意味はないだろう。今よりも少しだけ距離をとり、回避の余裕を作りながら攻撃方法を探る。
「……っ、操れない...?そいつの周囲だけ空気を操れないぞなんでだ⁉︎」
おそらく...というか、十中八九能力によるものだろう。光を操る力でシンの空気操作を封じる方法はよくわからないが...銃弾や魔力弾を叩き落としたのと原理はおそらく同じだろう。窒息させられれば一番楽だったんだが、出来ないのなら仕方ないか。
「とりあえず...お前の能力の限界を測らせてもらうぜ」
俺は能力を使い、ミニガンを...手で持てるサイズのガトリング銃を作り出す。まぁ本来なら手で持って使うようなものじゃないのだが、こいつは現実の地球から引っ張ってきたものではない。『映画やアニメなどのフィクションにおいて使われたもの』として生み出したため、その作品で描写されたことはこの銃で再現が可能だ。よって、本来不可能な手で持っての運用が可能となっている。その分発射レートは本物と比べて落ちてしまってはいるものの、十分すぎるほどの物量は叩き出せるだろう。
「防げるなら防いでみな!」
引き金を引くと、一秒に何十発もの弾丸が放たれて魔族を襲う。
「うわ反動すっごぉ...!」
ヤッベェ立ってるのが限界だわなんとか魔族に向けて放ち続けられているのはほぼ奇跡みたいなもんだ。撃ってる間は一歩も動けないけど、これ今反撃を喰らったら終わりだな...
と思っていたが、いつまで経っても反撃が来ない。しかし、弾丸が魔族に届いているわけでもない。弾丸は全て叩き落とされていて、魔族の足元にどんどん穴を開けていく。にも関わらず、反撃は未だ来ない。
「……どうやら、攻撃を受け続けている間は反撃出来ねぇみたいだな」
銃弾はいくらでも生成できるから、一瞬も途切れさずに永遠と撃ち続けることはできるんだが...これ、撃つのやめたらどんな威力の反撃が飛んで来るんだろうな。考えたくもねぇや。
「こんだけの銃弾を易々と撃ち落とせているのはスゲェよ。多分、どんだけ数を並べても意味ないんだろうな...なら?」
パッとシンの方に目をやる。シンは深く頷くと、空気の剣を片手に背後から魔族へと近づきそのまま振り下ろす。
「多方向から同時に...!」
「無意味だ」
魔族がそう呟くと、シンの空気の剣の軌道が一瞬で変わって地面に突き刺さる。
「チッ、無理だったか...シン!どうだった⁉︎」
シンの攻撃に対する反撃が飛んできていないので、おそらく全ての攻撃を撃ち落とし終わるまで反撃は来ないのだろう。俺が攻撃を止めるまで反撃も攻撃もされないと分かっているため、冷静に情報分析に時間を使うことにした。
「何かが光ったかと思えば、急に力が加わってきて弾かれたよ...本当に光を操る力なのか?念動力の方がそれっぽいんだが...それかマルチか?」
「……光の衝突。光のエネルギーを運動エネルギーに変換させて物体の軌道を変えてる...とかかな。光は無限に存在しているようなものだから、実質的に使えるエネルギー量も無限...けど、その代わりに操れる光は自分の周囲のみ、それも結構範囲は小さめなんだろうな」
全ての光のエネルギーを操れるのなら、俺らの背後から攻撃することもできたはず。それをせずに魔族の周囲から光線を発射させていたのは、そうすることしかできないから。けれども、魔族の周囲は完全に奴のテリトリーだ。シンが空気を操ることもできないし、魔力弾を流し込むこともできない。
今のところ、それが物質として存在しており光が衝突できるものでの攻撃は一切通用しないと見ていいだろうな。
「どうやって殺す?」
「方法はないこともないが...順番に試しながら時間を稼ぐぞ。奴にダメージを与える方法...切り札はある」
「ならそれを最初に使ってしまおうぜ。出し渋る必要はないだろ」
「今はまだ使えないんだ。だから時間を稼ぐ。ってわけで...今から攻撃を止める。頑張って避けるつもりではあるが...ヤバそうだから逸らす用意はしていてくれ」
シンの返答を待たずに銃撃を止める。なんとなくだが、これ以上続けていたらどう足掻いても避けられないような、そんな気がしたからだ。
弾丸の発射を止めた瞬間に、俺は横へと飛び退きながら持っていたミニガンを消し、適当に大きな銃を大量に生成して一応壁を作る...おそらく、無意味だろうがな。
「自業自得だ。消えろ...!」
大量の銃器によって作られた壁の隙間から、大量の光が漏れ見えた。その次の瞬間、圧倒的な程の大きさの光線が飛び出して一瞬のうちに銃器の壁が蒸発する。エグい熱量だ...熱エネルギー優先で変換がなされているためか光線の速度自体は遅いが、大きさが大きさだ。なんとか滑り込んでも体のどこかしらがあの光線に当たって蒸発させられてしまうだろう。
だが、それは俺一人だった場合だ。
「なんとなくわかっちゃいたが、随分とまぁ無理難題を押し付けてきやがる...!」
シンが空気を操り、膨大な熱量を抱えた光線を屈折させて逸らしてしまう。とは言ってもギリギリ。光線は俺の肌のスレスレのところを通って遥か彼方へと飛んでいく。おそらく、飛んでいくにつれてやがて熱量を失い無害化するだろう。俺の預かり知らないところで被害が出るとかそういったことは起こらない...はずだ。
「……っぷねぇ。身体溶かされるかと思ったぜ...」
スレスレのところを通っただけなのに熱すぎて溶けそうになったが、魔力を皮膚の表面に纏わせていたおかげでなんとか耐えきれた。わかっていたことだが、余波だけで物凄い火力だ...怖い怖い。
「っとと、危ないな」
こちらからの攻撃が途切れたことで、魔族も攻撃が可能となったのを思い出した俺は、能動的に放たれた光線をなんとか回避しながら体勢を立て直す。
「んじゃっ時間稼ぎ、いくぜ?シン」
「ああ。センフリには攻め込ませない。ここで止めてやる」
「時間稼ぎとは舐めた真似を...即刻、消し炭にしてやる」
この戦争で、最後の戦闘開始だ。
いつもならばカリヤくんの視点をベースに描写をしていくため、魔族の能力発動から魔族の死亡と魔王の意識が落ちる間の描写は丸々カットにするんですが、流石にわけわからなくなりそうなので神の視点で進めてみました。
また魔王に乗っ取られた時にも同じことをするかは未定ですが、神の視点だと当人たちには知り得ない情報を本編内で開示できるのがめっちゃ楽だと気づいてしまったのでまた使うかもですね。