神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8281字。

光の魔族戦です。
久しぶりに能力バトルらしい戦闘ができた気がする...


光を操りし魔族、非実体の攻撃

「あらよっと...」

 

魔族の放つ光線を避ける。やっぱり、ある程度の距離を保っていれば見てからでも普通の光線は避けられるな。

 

「攻撃雑だな魔族!こんなんじゃいつまで経っても当てらんねぇぜ?」

 

魔族の攻撃はえらく単調だった。その瞬間に俺たちが立っていた場所目掛けてしか攻撃をしてこない。避けた先を狙ってくることもなく、そもそもの狙いもだいぶ大雑把。随分とまぁ攻撃慣れしていないように感じた。

 

おそらくだが、こいつは今まで反撃だけで出会ってきた奴らを殺してきたのだろう。ほぼ無敵とも言える防御性能と自動的に放たれる反撃があれば、魔族自らが攻撃する必要なんて無かっただろうからな。そこに付け入る隙があるはずだ。

 

「攻撃を当てられないのはお前も同じだろう」

 

「まぁな。けど、必ず当てられる時が来る」

 

「ふっ、その時は永遠と来んわ。俺を止めれるものなら止めてみろ」

 

魔族は攻撃を諦めたのか、光線を放つのをやめてセンフリへと歩き始めた。正直、この行動をされるのが一番辛い。今俺たちがやりたいのは時間稼ぎなのだが、俺らの攻撃を無視して移動されてしまうとそれが出来ない。そのことに気づかれないようにわざと煽ってムキにさせ、攻撃を続けさせようとしていたのだが...裏目に出てしまったか。

 

「しゃーねぇ止めるぞ!」

 

魔力銃を放って魔族に防御させる...が、魔族は足を止めない。歩いたまま接近してきた魔力弾を光を衝突させることにより、真下にエネルギーを加えて魔力弾を弾き飛ばしてしまう。そして、魔力弾が飛んできた方向に向けて自動的に反撃の光線が飛んでくる。

 

「チッ、こういうのは防御の時に足止めるのが定石だろ...!」

 

「それどこの定石だ?とにかく、攻撃じゃ止まらない!なら別の方法で!」

 

シンは空気を操り、暴風を生じさせた。攻撃性を持たないただの暴風は、魔族の光の防御に引っかかることなく魔族に襲いかかり、暴風をその身に浴びることになる。向かい風は魔族の進行を遅らせるどころか、逆に後退りさせるほどの風力で押し流していく。

 

「ただの風からは守ってくれないようだな!」

 

魔族の周囲の空気を奪うことには失敗している。魔族の身に危険が及ぶ事象が起こる時、自動的に能力が発動して身を守るのだろう。だから危害を加えない行為ならあの防御を無視できるってわけか。

 

「ぐ...無駄だ!」

 

魔族の前方の空気が煌めき、魔族の歩みが等速に戻る。

 

「任意防御も出来るのか...」

 

自動的な防御は発動しないものの、任意で能力を起動することでただの風も弾けるようになるのだろう。飛んでくる暴風を弾くことで向かい風を無効化し歩行速度を元に戻したのだ。

 

「それなら酸欠狙いで...!」

 

直接魔族の周囲の空気を操作することはできない。だが、魔族の能力範囲外の空気は普通に操れる。暴風を送り込んで魔族に任意操作の防御を強いながら、能力範囲内に新たな空気が混入することを防ぐ。これをすることで、魔族側にもタイムリミットを設けてしまう。

 

光を操れる範囲内の空気しか魔族は口にできない。これを使い切ってしまえば、魔族は酸欠に陥って窒息する。これを逃れる方法は、前方から飛んでくる暴風を防いでいるのを止める他ない。やめれば空気は勝手に魔族の元に供給されるが、向かい風を浴びて後退することになる。窒息か後退の二択を押し付けたわけだ。

 

「小癪な...!」

 

魔族はそう呟きながらシンに向けて光線を放った。どうやら、任意の防御と攻撃は両立できるらしい。だが、飛んできた光線はシンの能力によって屈折させられて命中することはない。

 

「チッ...ならば、流れに身を任せるのみだ」

 

そう言い放った魔族は、ハーっと息を吐いた。そして、口を閉ざしながら歩く。

 

急な行動に戸惑いながら、俺はシンの近くへと移動した。何かあってもシンの能力で守ってもらえるようにだ。どことなく悪い予感がし始めたからな。

 

「……もしかして、息を止めてる...?」

 

「空気を温存...してるわけじゃなさそうだな。もしかして...」

 

見たところ、魔族は息を止めているようだった。嫌な予感がどんどん増していく。

 

「身の危険を自演している...?」

 

しばらく立ち、魔族の周囲に直視し難いほどの光が発生した。その光がさらに光量を増した次の瞬間、全方位に向けて光線が放たれた。

 

「んなっ⁉︎」

 

シンは驚きながら身を屈めた。俺もそれに合わせて身を屈めると、シンはほぼ全力の能力行使によって空気を操り、俺らに向かって飛んでくる光線を受け流していく。身を屈めたのはそもそもの被弾面積を減らすためであったが、それをしてなおギリギリだ。シンの鼻から血が垂れる。長く続いてしまえば能力の過剰行使によって倒れてしまうだろう。

 

「頑張れ!耐えるんだ!!」

 

回復の魔法弾を撃ち込んでサポートする。今はこんなことしかできない。あとできるのはシンを信じるのみだ。

 

「っっっ...ハァッッ!」

 

放たれた光線の最後の一片を逸らしきり、シンは能力を解除した。そのシンの首根っこを掴み、俺は真横へと跳躍する。

 

シンの脳天をピンポイントだ狙って放たれた光線が空を切った。なんとか魔族の攻撃を凌ぎ切った。

 

「まさか、自ら危険を演じて能力に対処を任せるだなんてな...」

 

あの魔族の能力は自身の脅威になる事象全てを自動的に対処してしまうようだ。たとえそれが自ら首を絞めたのが理由であっても同様に発動するのだろう。自ら息を止めて窒息の危機を演じ、能力はその危機から逃れるために根本の原因であるシンの能力を吹き飛ばそうとして自動的に光線が全方位に放射された。結果として、シンは防御に能力のリソースを割くことになり、魔族を窒息させることに力を割けなくなってしまった。

 

「……自動的に守るとかどこの精○バリアだ...?つーか、これが効かないってなるとだいぶキツイな」

 

シンの体を抱え、魔族が放ってくる光線を避けながら次の策を考える。まず、シンは動けるのか...?

 

「なぁシン、動けるか?」

 

「なんとか...な。けど、正直限界は近い」

 

「じゃあシンは一旦下がって休んでてくれ。しばらくは俺が受け持つ」

 

「任せた...降ろしていいよ」

 

一度立ち止まり、シンを降ろす。

 

「そいつは通らねぇぜ」

 

シンを降ろすその瞬間を狙われて光線が飛んできたが、少し先の地面から氷柱が飛び出してきて光線を遮った。氷柱は光線の持つ熱エネルギーを奪いながら屈折させ、あらぬ方向へと光線を飛んでいかせる。止まった瞬間に撃ってくることなんて分かり切っていたから、止まる前に魔法弾を放っておいたのだ。

 

氷柱を生み出すこの魔法弾があれば、奴の攻撃には対処できる。あとは、その歩みを止める方法と、光の防御をすり抜けて攻撃する方法が必要だな。

 

「こっから先は通さん。大人しく殺されるか、回れ右して引き返すか選ばせてやる」

 

シンを下がらせた俺は、魔族に魔力銃を向ける。

 

「その脅しは優勢な奴が言って初めて意味を持つ。お前が言ったところでなんの意味もない」

 

そう言いながら魔族は一つ前に足を踏み出す。

 

それを見た俺は、あー罠でも仕掛けておけばよかったかなと思いながら魔族に向けて魔力弾を放った。当然のごとく真下へと弾かれ、その後反撃の一撃がこちらに向かって飛んでくる。それを回避して、俺は後ろを見た。

 

「……やっぱりか」

 

わざわざ当たるはずのない攻撃をしたのは、奴の反撃で飛んでくる光線を見るためだった。今放たれた光線はセンフリの壁まで届かず、あと半分くらいの距離で消え去っていた。俺が壁の上から狙撃した時は壁を貫くほどの射程があったのに、今回は届いていない。

 

おそらく、威力が関係している。こちらの攻撃が強ければ強いほど、反撃で飛んでくる光線もその威力や飛距離を強めるわけだ。だからなんだって話だが、要はあまりに強い攻撃をしてしまうと氷柱の防御を貫通されてしまう恐れがあるから、色々試すのなら出来るだけ威力は落としておきましょうねってことだ。

 

「じゃあまずは...!」

 

魔族の放つ光線を避けながら魔力銃のマガジンを入れ替え、銃口を魔族に向けて魔法を起動させる。

 

このマガジンは特別なものだ。魔法弾を射出するのではなく、銃口から飛び出した瞬間に魔法が発動する。まぁそれだけだと火球とか閃光を放つのと同じだが、これが特別なのは目に見える弾丸を撃たないことだ。

 

飛ばすのは音。音の塊を飛ばす魔法...音撃だ。

 

思考性を持った音の塊が魔族の頭めがけて飛んでいく。その轟音は鼓膜を傷つけ直接脳を揺さぶる。当たればしばらく動けなくなるだろうから、追撃はできなくとも時間稼ぎをすることはできるだろう。音は空気の振動で、それ自体に形があるわけではない。暴風を防げなかったように、あの守りを無視してくれることを祈る。

 

「……む?」

 

光が迸り、音の塊が真下へと進行方向を変える。音の塊は地面に当たるとそこから四方八方に拡散し、そのまま自然消滅していく。

 

暴風と違って明確に攻撃性能を持ってるから流石にダメか...と思いながら反撃で飛んでくる閃光を避ける。

 

「次どうしよっかなぁ...」

 

奴の防御を貫くには、光の衝突しない物質...完全に透明であったり、そもそも実体が無い攻撃であることが大前提だ。だが、俺の持つ攻撃手段は全て弾丸という形を持ってしまっている。洗脳やデバフを普通に魔法として発動できていたら遠隔で魔族に効力を発揮できただろうが、俺の力では魔法弾として発射しなければならないから防がれてしまう。

 

だから、魔族には弾丸は撃たない。別の方法で魔族を足止めしてやろう。

 

「まずは...!」

 

マガジンを入れ替え、四方八方に魔法弾を放つ。弾丸は十数メートルほど飛んでいった先で止まり、その場に魔法陣を形成、障壁を発動させて辺り一帯を隔離する。

 

おそらくだが、魔族は障壁を破壊できる。壁まで近づき、光を操れば障壁の内部から分解することができるはずだ。故に、この障壁に足止めの効果は期待していない。なのに障壁を発動させたのは、偏に空気の拡散を防ぐためだ。

 

別の魔力銃を生み出し、適当に地面に向けて放つ。着弾地点から煙が噴き出し、障壁で囲まれた領域内全てを覆ってしまう。

 

「光を遮ったつもりか?完全な暗闇など生み出せるはずがない」

 

だろうな。こんな煙程度で遮光し切ることなんてできないさ。けど、俺の姿や行動を隠すことだけはできる。このまま準備を続けるぞ。

 

煙によって視界が遮られている魔族は、やたらめったに光線を放ってくる。それを素の身体能力で回避したり、氷柱を作り出して逸らしながら至る所に氷を生成していく。次は熱で勝負だ。低体温症...これに、奴の能力はどんな挙動を見せる?

 

……何も反応を示さない、か。光を自身に衝突させて暖めているのか?光線自体熱を含んでいるし、低温で攻撃するのはそもそも間違いだったか。けれども今から温度を上げるのも難しい。次のプランに行こう。

 

俺は立ち位置と狙いを吟味しながら調整し、魔族に向けて一発、銃弾を放った。銃弾は当然のように撃ち落とされ、反撃が飛んでくる。それをスッと横に動いて避けると、飛んできた光線が氷柱に命中し、屈折して進行方向を変える。

 

進行方向を変えた光線はまた別の氷柱に当たり屈折、それを繰り返すことで、魔族に光線を跳ね返す。氷柱に命中するたびに光線は熱を失ってしまうが、威力の低い魔力弾ではなく実弾、それも火力の出るマグナム弾を使ったため反撃の威力も申し分ない。減衰はしたもののそれなりの火力を残したまま魔族に向かって光線が飛んでいく。

 

「……どいつもこいつもやることは同じだな」

 

光線の周囲が一瞬光ったかと思えば消滅した。光同士をぶつけて相殺した...のか?魔族が驚いてないのを見るに、もう何度かやられていて知っていたんだろうな。流石にありきたりすぎたか...

 

と、そんなことを考えていたその時だった。バリンッッ!!と何かが砕け散る音が聞こえた。多分、障壁に穴を開けられてしまったのだろう。いつのまにか魔族はもう端まで辿り着いていたのか。

 

「逃すか!」

 

魔族を逃さまいと魔法弾を放つ...が、無情にも魔法弾は真下へと撃ち落とされてしまう。

 

「お前は俺を止められない。もうわかっただろう?さっさと諦めるんだな」

 

「いいや、諦めねぇぜ」

 

反撃の光線を避けながら俺は言い放つ。

 

「だってよ...俺の策に、お前はもう乗っちまってるんだからな!」

 

魔族の足元が光り出す。魔族の能力?否。それは先ほど撃ち落とされた魔法弾によって地面に刻まれた魔法陣の光だ。

 

「ぬおっ...⁉︎」

 

「重力は!光を凌駕する!!」

 

真下へ向いていた重力が真横に向き、魔族は横へと落ちていく。脱出したはずの障壁結界内に逆戻りだ。

 

「この弾丸なら...お前を止められる!」

 

重力の魔法弾を直接魔族に命中させることはできない。しかし、弾かれた先の着弾地点から重力を発生させることは可能だ。そして、重力は形を持たない力。光の衝突でエネルギーを与えて相殺することはできず、質量がないため重力を持たない光で異常な重力を修正することもできない。あの魔族に対する完全なるメタ魔法弾だ。

 

無論、この魔法弾一つで魔族を殺し切ることは難しいだろう。けれど、この場に留めておくことは可能だろう。時間稼ぎにはうってつけだ。

 

「くっ...何が起こった...?」

 

重力魔法の範囲外に出たことにより地面に投げ出された魔族は困惑していた。重力と言われてもピンときてない様子だな。この世界にはいろんな能力があるから重力の概念もちゃんとありそうなものだが、念動系の能力と混同視されてしまっているのだろうか...とにかく、あまり知られていないらしい。知らないということは対処にも時間がかかるはず。このまま攻めよう。

 

「しばらくそこで大人しくしててもらうぜ」

 

重力の魔法弾を魔族に向けて連射する。そのどれもが魔族の能力によって自動的に撃ち落とされるが、それは魔族にとっては逆効果だ。撃ち落とされて地面に着弾した魔法弾一つ一つが下向きの重力を増幅し、通常の何倍もの重力が魔族に襲いかかる。

 

「く、そ...なんだ...これは!!」

 

何倍にも増幅された重力によって魔族はうつ伏せのまま身動きが取れなくなってしまう。理解の出来ない攻撃を喰らい、俺に向かって闇雲に光線を放つ魔族だったが、ただでさえ単調だった狙いが焦りによってさらに単純化したため避けることは容易かった。そのままさらにもう何発が魔法弾を撃ち込み、重力を強めていく。

 

「こいつ...か!!」

 

地面に魔法陣が増えると共に下向きの異様な力が増していることに気がついたのか、魔族は光線を生み出して魔法陣を地面ごと撃ち抜いた。魔法陣の破壊によって、増幅された重力は消え去った。

 

「まさか...力の特性を逆手に取られるとはな。だが、もう通用しない!」

 

自動防御では勝手に下向きに弾いてしまい、重力の餌食になってしまう。だから、これからは任意防御にて別方向に逸らそうとすることだろう。任意防御をされないように走り回って死角から撃つだとか、さっき穴が開いたことで流れていってしまった煙をもう一度作り出してから撃つだとか、色々やりようはあるけれど...

 

「そいつはどうかな?」

 

そう言いながら俺は魔法弾を放った。魔法弾は魔族のもとまで飛ぶと、一瞬光に包まれる。そして...真上へと進行方向を変えた。

 

「忘れたか?ここは箱の中なんだぜ?」

 

いつもなら真上に打ち上げればそれで終わりだっただろう。しかし、ここは障壁で作り出した箱の内側。真上に打ち上げれば、もちろん天井にぶつかる。そして魔法が起動する。

 

「……なっ...⁉︎」

 

魔族の身体が重力に引かれて浮き出す。天井に展開された魔法陣が重力を発生させ、空に向かって魔族を引き寄せているのだ。

 

「んぐっ⁉︎...こんなもの!」

 

天井に叩きつけられた魔族は、能力を使って魔法陣を天井ごと破壊した...が、重力は消えなかった。破壊した天井の穴を魔族の体が通り抜け、そのまま上へと際限なく引っ張られていく。

 

「障壁を壊したのはミスだぜ。そのまま天井を這って重力から逃れていればよかったんだ」

 

俺は魔族が上へと落ちていくのを見ながら、魔族の真下の地面に魔法弾を撃ち込んでいたのだ。そうして地面に作られた魔法陣が上向きの重力を生み出し、魔族を上へと落としているというわけだ。

 

魔族はどんどん上へと落ちていく。何か叫んでいるようだったが、ここまで届かず俺の耳には入らない。

 

「おっと、そいつは許さないぞ」

 

魔法陣を破壊しようとしたのか、光線が飛んできた。その攻撃は、天井に開いた穴に魔法弾を撃って障壁を再展開することで防ぐ。ただの光線程度では障壁は貫通できない。これで魔族に魔法陣を破壊する手段は無くなった。

 

「どこまでも飛んで...落ちて死にな」

 

豆粒程度の大きさに見えるくらいの高さまで魔族は落ちていった。そろそろ解除して落下させてみるか。果たして、落下の衝撃は能力で防げるのかな?

 

……と、そんなことを考えていたその時。豆粒ほどの大きさの魔族がほんの少し横へと動いたのだ。あの高さであの距離だとすると...位置的に重力範囲外に出ているな。どうやったのかは知らないが、自分で重力から脱したらしい。

 

もしそれが、光を自らに衝突させて横方向に吹っ飛んだのだとすれば...多分、落下死はしないだろうな。

 

重力から逃れた魔族は、そのまま正常な重力に引かれて落下してくる。しかし、その速度は傍目から見ても遅いと言わざるを得ない。光の衝突を使って落下速度を無理矢理減速させているのだろう。だが、それは自らの体に重力とは反対の力を永遠とかけ続けるのと同義だ。体には相当の負担がかかっていることだろう。

 

「自分の力で死んでもらうぞ魔族!!」

 

そんなことを長く続ければ体はもたないだろうと判断した俺は、魔族の落ちてくる場所に魔法弾を撃ち込み下向きの重力を発生させた。これにより、魔族は能力を使ってさらに減速をかける必要がある。それは更に体に負担をかけ、地面に落ちてくる頃にはもうボロボロになっているはずだ。殺せれば御の字、殺せなくとも足を潰せていればこれ以上の進行は防げる。どちらにしても時間稼ぎは成功だ。

 

「……よし、キタキタキタ!」

 

魔族の様子が視認できるほどの高さまで落ちてきた。背中に光を衝突させ続けていたせいなのか、背中側の服は破れて原型をとどめておらず、皮膚やその下の肉もボロボロだった。背中のある箇所に第三の目があったんだろうなという痕がかろうじて残っているが、十分重傷といっていいだろう。

 

ドンッッ!と背中から魔族が地面に激突する。その直前、一瞬地面が煌めいたように見えたのでおそらく落下の衝撃自体は魔族の能力で打ち消してしまっていることだろう。土埃や土砂が宙を舞っているのも、光の衝突によるものだろうな。

 

「よぉ、これは勝負アリつっていいよな?」

 

土埃や落ちてくる土砂を風の魔法弾で吹き飛ばし、視界良好となった後に魔族に近づく。

 

「まだ...だ!まだ、俺は死んでいない!今からでもお前を殺すなんてこと造作もない!負けるのはお前だ!」

 

「へぇ...まだ諦めてないその根性は見上げたものだが、それも無意味だ」

 

「なんだと...!」

 

「もう時間だ。お前はこれから呆気なく殺される」

 

「そんな馬鹿な...っ⁉︎」

 

その時、どこからともなく一本の矢が飛んできた。魔族の頭めがけて放たれた矢、それを魔族はハッキリと視認する。

 

しかし、何もしない。それも当然だろう。何もせずとも、能力が勝手に身を守ってくれるのだから。

 

だが、その判断が仇となる。

 

「アガッッ...」

 

光が瞬くことなく、矢は魔族の脳天を貫いた。続いて数本の矢が飛んできて、魔族の四肢や胸の辺りを貫く。

 

そんな攻撃を喰らえば、普通は死ぬ。そのため、魔族の意識は一瞬にして刈り取られていった。実際は死んでいないのに...だ。

 

「……ナイスだハント」

 

見えないが、どこかにいるであろう切り札に向けてサムズアップしながら魔族に近づく。

 

矢が何本も刺さっている魔族は、身動きひとつしない。けど、急に意識が覚醒しないとも限らないので、まずは魔力を流し込む。気絶しているおかげか、魔族の能力は発動せずそのまま触れて魔力を流し込むことに成功する。

 

「じゃあな。これで終わりだ」

 

拳銃を生み出し、脳天と喉、胸に向けて何発か銃弾を撃ち込んだ。

 

しばらく経つと、神から与えられた能力である魔族探知から、目の前のこいつの反応が消える。

 

死亡確認。これにて、この戦争における最後の戦いが終わりを迎えたのだった。




カリヤくんの切り札はハントでした。
ハントの能力ならば、魔族の守りを無視できたんですよね。
その辺の説明と、なんでハントがセンフリにいるのかについては、次回説明するということで...
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