神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8255字。

なんとなく考えていたやりたい事があらかた出来た...そんな回です。


もしもの襲来、精神切断

「……ってわけで、これから俺はドンカラを離れて一人で魔族を探しに行こうと思うんだ。どうだろう?」

 

ドンカラの事務所に戻り、みんなからよく無事に帰ってきてくれたとひとしきり喜ばれて、ようやくそれが落ち着いてきた頃に俺は話を切り出した。

 

三人の魔族を無事に倒してきたこと、スイレイの隔離村で戦った魔族の記憶が残っており、魔族に俺の顔が知られてしまったこと、いつ魔族が襲いかかってくるかわからず、このままだと巻き込んでしまいかねないこと、だから一人で旅をすることにしたということ...全て話した。

 

「えーそないなことせんでも一緒に来ればええやん。遠慮せんくても...」

 

「これは遠慮とかじゃないぞカミレ。マジで危ない。切断と再生の魔族は周囲の非生物を一瞬で切り刻めるし、生物でも触れたらなんでも切れてしまう。俺は対処法があるが、みんななら一瞬でお陀仏だ。それに、俺の知らない魔族が襲いかかってくることもある。だから俺は離れるべきだと考えたんだ」

 

「うーん...たしかに、急に魔族が現れたら僕たちは足枷にしかならない。カリヤが思う存分戦うためにも、僕たちみたいな足手纏いはいない方がいいのかも...」

 

「でもよ、こんなすぐに別れる必要はないんじゃないか?この国を周り切るまでは移動だけでも俺たちの力を借りるのも手だと思うぞ」

 

「せや!カリヤだけ別の馬車に乗ってアタシが力で動かせばええんや!そないなら魔族が来てもアタシらが巻き込まれることはないで!数百メートル後ろの馬を操ることもできるし、それでオーケーや!」

 

「……それだと、足を潰すためにまずあなたが狙われると思うわよ。殺されるかはわからないけれど、少なくとも力を使えなくなるくらいボコボコにはされるでしょうね」

 

ペトラのその発言を聞いて、カミレの顔が青ざめる。あーあ、想像しちゃったか。

 

ってか、みんなめっちゃ真剣に考えてくれてるな...ちょうど上手いこと賛成反対が二対二になってしっかり議論をしている。どっちかに偏るかなと思ってたんだが...ちょっと意外だな。

 

「う、うぅ...せやけど、このままカリヤを一人でほっぽりだすってのも違うやんか!」

 

「感情ベースで考えたらそうなるわね」

 

「そっちも巻き込まれたくないってゆう感情やないか!」

 

「……それを突かれると痛いわね...けど、死にたくないのは誰でも一緒よ。そして、彼は私たちの身を案じてこの提案をしているのよ。彼の意志は汲み取るべきだわ」

 

「あ、あのな?あんまり喧嘩はしないで欲しいんだが...っ⁉︎」

 

俺は近くにいたカミレとアンスをユーリたちのいる方向に突き飛ばした。

 

「襲撃!今すぐ扉から外出ろ!!」

 

俺がそう叫んだ瞬間、いつのまにか天井付近に開いていた空間の裂け目から剣を持った男が降ってきてそのまま襲い掛かられる。落下中、服が捲れ上がり腹に第三の目がちらりと見えた。どう見ても魔族だ。

 

「なっ...⁉︎」

 

俺は即座に能力を応用し、銃剣の銃抜きとすることで短剣を作り出して魔族の振り下ろす剣を受け止めようとした。だが、魔族の剣はこちらの短剣をすり抜け、そのまま俺の身体にめり込む。そして俺の身体をもそのまま通り抜けてしまった。

 

「ぐっ...精神を切る剣か...!」

 

切られた身体に傷はない。痛みもない。けれど、確かな精神の疲労を感じた。それと同時に、身体中を駆け巡っていた魔力が一部消え去ったのも感じた。魔力は切る対象...ということは、魔力での防御は一応可能というわけだな。

 

「チッ、仕留め損ねたか...完全に不意打ちだったろなんで避けれんだ?」

 

空間の裂け目が開いた瞬間に感じた魔族の気配が無ければ避けられなかっただろう。正直かなり危なかった。実際攻撃は喰らっちまったしな。けど、まだ対応できた方だろう。

 

「ほら!早く逃げろ!」

 

後ろにいるみんなに向かって叫ぶ。みんなが逃げてくれれば少しは戦いやすくなるはず...

 

「なに...これ...」

 

「し、閉めなさい!」

 

背後から扉の開閉音が聞こえた。だが、どうやらまだみんなは事務所の中にいるようだった。

 

「ちょっ、なぜ逃げない⁉︎」

 

「外がヤバい!目が逝ってる奴らばっかでしかも中に入ろうとしてやがる!」

 

外から扉を叩く音が聞こえる。なんだよ外じゃゾンビパニックでも起こってるってのか⁉︎

 

「逃げ場はないぜ?奴らに襲われるか、それとも俺に斬られるか選びな。もっとも、斬ったとて軍団に加える気はないがな。そのまま殺してやる」

 

ペラペラと良く喋りやがるな...今のから察するに、この剣で斬られると最終的に外にいる奴らのようなものにされてしまうわけだ。精神が衰弱し、洗脳状態になる...って感じなのだろうな。

 

「勝手に二択にすんなよ魔族様よォ...お前を殺してハッピーエンドを付け加えな!」

 

魔力銃を作り出し、魔族に向けて放つ。魔族はこの魔力弾を斬れば消せることを知らない。剣を振っても通り抜けると考えて左右への回避をするはずだ。そうして避けたところを実弾で狙い撃つ...!

 

「あぐっ...⁉︎」

 

魔族は一歩も動かなかった。そして代わりに背後から呻き声が聞こえた。今のは...アンスの声?

 

「あ゛...ガア゛ァ゛ッッッ!!」

 

「空間置換...!またかよチクショウ!!」

 

またサギリのサポート付きかよ!クソッ、どうやってコイツ殺せばいいんだよ...ってかそれより前にアンスの治療!」

 

「すまんアンス!今治す!」

 

走ってアンスの下まで駆け寄り、体に触れて体内から魔力を吸い出す。

 

「カリヤ後ろ!」

 

「っ...!」

 

背中全体に魔力の壁を貼り、なんとか魔族の剣を受け止める。そしてそのまま自分も魔力の剣を生み出して剣を弾く。一瞬であれば魔力で奴の剣に干渉することができるようだ。すぐに斬られてしまうから、本当に一瞬だけどな。

 

「なんだ?その剣。俺の剣に干渉できるなんて...面白ぇな」

 

「面白がられても困る...な!」

 

魔族に近づき、脛を蹴って片膝をつかせる。そして流れるように腹に向かって蹴りを...

 

「ぐはっ...⁉︎」

 

真横から何者かによって蹴られた...いや、違う。蹴ってきたのは自分自身の足だ。空間置換で俺自身に攻撃させやがった...!

 

「小癪な真似を...!」

 

「サンキューサギリ!...って、耳は聞こえないんだったか」

 

あぁもうこいつはポロポロと情報落としてくれるな逆に混乱してくるぞオイ。耳は、って言ったな今。ってことは見てはいるんだな?能力使ってサギリはこの場を見ている。だから的確に空間を繋げて妨害してくるってわけだ。

 

「……ってみんな扉押さえてろ!侵入防げ魔族は俺が相手する!」

 

扉が開きかかっていたので、ほぼ反対側にいるみんなに向かって叫んで止めさせた。逃げられないならみんなには協力してもらうしかない。扉を押さえて外の奴らが入ってくることさえ防いでくれればそれでいい。

 

「相手する...か。どうやってだ?一回あそこまで斬っているんだ。立っているのもやっとなはずだぜ?」

 

……なるほど、体内の魔力が壁の役割を果たしていて、本来よりも精神の疲労が弱まっていたのか。こっちはもう既に限界...そう思い込んでいるからこうも余裕そうにペラペラと話しているんだな。

 

なら、こっちも演技をして更に慢心してもらおう。その隙に、今抱いている疑問が正しいものなのか検証しよう。

 

「長く楽しませてくれるってんなら乗ってやるが...っ⁉︎」

 

俺はあるタイミングを狙って魔力弾を放った。そのタイミングは瞬き。魔族が目を閉じた瞬間に魔力銃を撃ち込んだのだ。

 

結果としては、空間の裂け目が開いて魔力弾は俺の方に返ってきた、というものだったがこれで俺は核心へと至る。

 

「なんだよビビらせやがって...ってなんだ?」

 

俺は口元に手をやり、魔族から見えないように隠した。何をしているのかわからず訝しむ魔族だったが、俺が話し始めた次の瞬間にはその意味を理解したことだろう。

 

「視覚共有だな?お前の...ってよりかは、サギリのもう一つの能力か。それで俺のことを見ていたってわけだ」

 

サギリがここを見ているのは分かっていたが、空間置換能力を使って見ているのではないこともわかっていた。なぜならば、魔族の気配が一人分しかないから。

 

空間の裂け目を隔てていても、魔族探知の反応は出る。よって、サギリがこの場所を見るためにどこかの空間を繋げていれば、そこから魔族の反応が出ていなければおかしいのだ。出ていないということは、サギリは空間置換で見ているわけではない。けれども、的確に空間をつなげているから見ているのは確実。

 

そこでさっき俺がやった実験だ。先ほど、俺が撃った魔力弾をこちらに跳ね返すために開かれた空間の裂け目、微妙にだが開くのが遅かった。もっと具体的に言えば、魔族が目を開いた瞬間に開いたように見えた。

 

そして、空間をつなげた先が俺に命中するような位置になっていたのも重要だ。さっきはアンスを狙っていたのに、今回は俺なのはなぜか?それは、魔族の視界内には俺しかいなかったから。

 

サギリはおそらく自身のもう一つの能力によって目の前にいる魔族の視界を共有している。そして、視界内の範囲でしか空間置換を発動できないのだ。今思えば、奴の脛に対して攻撃ができたのは足元が魔族の視野から外れていたからで、腹への攻撃は片膝をついた後だったから当然視界内で発動できたってことなんだろう。

 

俺が口元を隠したのは、口の動きで会話内容を悟られないようにするためだ。サギリには能力の秘密がバレたことを知らないままでいて欲しいからだ。サギリが共有しているのは視覚だけ。声はいくらでも発していい。まぁ、俺は日本語の発音をしているから読唇術は多分無理だろうが、一応な。

 

この魔族に視覚情報だけでサギリにバレたことを伝えることはできないだろう。これで、これからの戦いを一歩リードした形で臨める。空間置換のサポートの弱点もわかったことだ。さっさとこいつは仕留めてしまおう。

 

「……まぁいい。そんなことがわかったところで、動けないなら意味がないからな」

 

「誰が...動けないって?」

 

魔族に銃口を向け...それを急に逸らして魔族から向かって左側にある壁に魔力弾を放った。

 

人間...たとえそれが魔族であっても、何かが高速で飛んでいけばついつい目で追ってしまうものだ。

 

魔族の視線が動く。その瞬間に俺は走り出し、魔族の死角からぐるっと回って近づく。そのままこっちを向かれる前に速度のある実弾で頭をぶち抜く!!

 

ガシャンッ!!

 

俺の背後にあった窓が割れた音がした。だが、そんなことに構っている時間はない。そのまま魔族の頭めがけて銃弾を放とうと狙いを定めにかかる...が、これが間違いだった。

 

「がっ...⁉︎」

 

背後から頭を殴られ、そのまま前に突き飛ばされて地面に押し倒されてしまう。

 

「コイツっ、窓から...⁉︎」

 

みんなが言っていた外にいた奴らなのだろう。確かに目が逝ってしまっている。けど力は弱いようで、少し身じろぎしたらすぐに振り解くことができた。急いで窓の方から離れて、窓に向かって魔法弾を放ち凍らせることで奴らの侵入口を塞ぐ。

 

「なんだよ、まだ動けんじゃねぇか」

 

背後から声がした。振り返るよりも先に横っ飛びをして、魔族の振り下ろした剣を回避する。

 

……が、急に全身から力が抜けた。どっと疲れが押し寄せてきて、危うく意識を失いかける。

 

「なん...避けただろ...」

 

魔族の方を見る。すると、剣の切っ先が空間の裂け目の中に突っ込まれているのが見えた。空間を繋げて回避先に剣を先回りさせていたのか...クソっそんなのできるなら射程無限じゃねぇか遮蔽物も意味ねぇぞ。

 

「この手は面白くねぇからあんまし使いたくなかったんだがな...あとは、奴らに任せるか」

 

そう言いながら魔族は俺から離れる。チクショウ近づいてくれれば魔力を直接流し込めたかもしれないのに...もう身体を動かすことすら出来ねぇ...!

 

というかマズいぞこれ。さっき凍らせた背後の窓はだいじょうぶだが、他にも窓はいくつかある。そこから続々と精神喪失状態の奴らが雪崩れ込んできている。そいつらを消しかけて動けない俺を始末するつもりか...!

 

「お...おい!」

 

「……あ?なんだ?」

 

魔力の拒絶反応から回復したアンスが、魔族のことを睨みつけていた。

 

「お前...カリヤを殺したらどうするつもりだ。俺らも殺すのか?」

 

「……そうだと言ったらどうする?命乞いでもする気か?」

 

「そんなことはしねぇよ。この状況じゃどうやっても死ぬだろうからな...だからよ、せめてお前の名前くらいは教えてくれ。どうせ外には漏れやしないんだ。それくらい良いだろ?」

 

……なるほど、魔族の名前と容姿をテレパスを使って外に教えようとしているのか!やり方はちょっと強引だけど、ここで名前を聞き出せたら、増援...は間に合わないにしても、情報は残せる。絶望的なこの状況、それが最善なのか...!

 

「ふん、いいだろう。俺の名はアーテルだ。しっかりその脳に焼き付けてから死ぬんだな」

 

「アーテル...か。しっかり覚えたよ」

 

アンスがふっと笑った。そして、その笑みは不敵なものへと変わる。

 

「おかげで、一矢報えそうだ」

 

そう呟いたのち、アンスの目が虚になる。テレパスを使っているのだろう。

 

……その時だった。

 

「……なっ、頭が...なんだこれは...!」

 

アーテルが頭に手をやり、ふらふらとよろめく。

 

「なんだ、この...圧迫される...⁉︎」

 

「もしかして...アンスお前...⁉︎」

 

テレパスを使ってアーテルの頭に語りかけ、思考を乱しているのか?俺が聖杖世界でよくやっていた思考共有による撹乱と同じことだ...そうか!アンスのテレパスはその対象の名前や容姿を知っていなければ発動できない!だから魔族の名前を聞き出したのか!

 

「お...お前の仕業か...!クソが!傀儡どもやっちまえ!」

 

俺に向かって迫ってきていたアーテルの傀儡の一部が、アンスの方へと向かい始める...が、数歩歩いたところで全個体が歩みを止めた。

 

「……あ゛ぁ゛⁉︎なぜ襲わない!言うこと聞きやがれ!!」

 

傀儡と呼ぶからには、奴らは本来アーテルの意志のままに動くのだろう。しかし、アーテルが叫んでも傀儡たちは動かなかった。

 

「意志のない人間なんて...動物以下や」

 

カミレがポツリと呟いた。まさか、傀儡たちが止まっているのって...!

 

「女...お前の仕業か⁉︎」

 

「本当なら人相手には発動できないけど...今ならアタシの力で掌握できる...!動きを止めるくらいなら手伝える!」

 

「テメェら...!せっかく後回しにしてやってたのによっぽど死にてぇみたいだな...!」

 

左手で頭を押さえながら、アーテルはギロッとカミレたちのいる方を見る。俺から視線が外れた...サギリに邪魔されずに攻撃できる絶好のチャンスだってのに、銃を作ることすらままならねぇ...動けよ身体...!

 

「んぐっ⁉︎」

 

「きゃっ!」

 

空間置換を使った遠隔攻撃によって、アンスとカミレがアーテルの剣で斬られてしまう。マズい妨害してくれている二人が落ちたらもう何もできないぞ...!

 

「っ...倒れてたまるか...!」

 

「アタシが止めなきゃ終わるんや...おちおち寝てられへん!」

 

「チッ...それなら先に標的を始末するだけだ!テメェらは後でゆっくり痛めつけてやる...!」

 

こっちに視線が戻る。アーテルの斜め前に空間の裂け目が作られ、その反対側が俺の頭の上に生成された。そして、剣が持ち上げられる。今身体の中に残っている魔力じゃ到底受け止められないだろう。あれが振り下ろされたら終わり...いや、諦めてたまるか!少しでも動いて、少しでも影響から逃れろ。活路を見出せ...!

 

「これで終わりだ...!」

 

剣が振り下ろされ、空間の裂け目を通り...無慈悲にも俺の頭に剣が刺さった。魔力の盾など一瞬で破壊された。剣が俺の頭から抜かれると、疲労が全身を襲い、意識が遠のくのを感じた。俺の精神が、泥の奥底へと沈んでいく...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたに寝られたら困るのよ。しゃんとしなさい」

 

声が聞こえた。それと同時に、全身の疲れが抜けていくのを感じた。

 

「ペト...ラ?」

 

「流石にこれを奴に押し付けるのは難しそうね...奴が死んだら力は解除されて全員回復するわよね?なら、適当に押しつけてしまいましょうか」

 

そう言いながらペトラは手に持っていた疲労の塊を近くにいた傀儡に押しつけて消費させた。

 

「女...テメェいつのまに⁉︎」

 

「カミレが棒立ちにさせてくれたおかげで、陰に隠れて動くことなんて簡単だったわ。まぁこいつらがいなくても、あなた頭に血が昇ってたから気づかなかったでしょうけど」

 

……そうか、なんで気づかなかったんだ。あの剣で精神が弱まるのは、極度の疲労を相手に与えるからだ。なら、その疲労をペトラの能力で取り除いてしまえば回復できてしまう。疲労の塊も、近くにいる傀儡に与えてしまえばいい。

 

こんな単純なことにも気づけなかったなんて...最初に一撃もらったせいで思考が鈍っていたかな...みんなを巻き込みたくないって想いが強かったってのもあるか。一人で戦おうと思ってたせいで頭が硬くなってしまっていたな。反省だ。

 

「……ほら、全部取ってやったんだからぼーっとしてないでちゃんと戦いなさい。まともに戦えるのはあなただけなんだから」

 

「お、おう。悪いなペトラ。みんなもな...助かったぜ」

 

「回復したからといって何ができる!サギリの守りがある限りテメェは俺に攻撃できねぇ!傀儡どもが道を塞いでるおかげで走り回れねぇから俺の視界から外れることも出来やしねぇ!テメェらの死はもう決まってんだよ!!」

 

「そいつは...」

 

アーテルの背後からユーリが飛びかかり、首元を掴んだ。

 

「どうかな!」

 

「なっ...なんだこれ見えねぇ...⁉︎」

 

ユーリの千里眼付与...!無理矢理アーテルの視界をズームさせて視野を狭めているのか!今ならサギリの空間置換は思ったようには使えないはず...今しかない!!

 

「終わらせる...!」

 

後ろにユーリがいるからここからでは実弾は使えない。確実に殺すために傀儡の間をすり抜けてアーテルに近づく。

 

「やめっ、やめろ...!」

 

アーテルはやたらめったに剣を振り回す。が、適当に振られた剣に当たるわけがない。見事に掻い潜り、その顔面を掴む。

 

「ガッ...」

 

目を塞ぎながらアーテルに魔力を流し込む。拒絶反応によって能力が強制解除され、剣は消え去り、周囲に立っていた傀儡たちが地面にバタバタと倒れていく。

 

「チェックメイトだ」

 

拳銃をこめかみに押しつけ、引き金を引く。

 

乾いた発砲音と共に放たれた銃弾はアーテルの頭蓋を貫通し、鮮血を飛び散らせた。ユーリと共にアーテルから手を離すと、地面にバタリと倒れて動かなくなる。

 

「……死んだ?」

 

「ああ。ちゃんと死んでるよ」

 

ユーリの呟きに答えてやる。

 

「……みんな、協力ありがとう。だが、勘違いだけはしないで欲しい。今回はたまたまみんなの能力が奴らの戦法を上手くメタれていただけで、次もこうなるとは限らない」

 

「……ああ、わかってる」

 

「次も全員無事で済むかわからない。だから...やっぱり俺は一人で行動することにするよ。それでいいかな?」

 

「そう...だな。これまで何度も魔族を倒してきたっていう報告を受けていたせいで、案外魔族も大したことないんじゃないかと甘く見ていたが、ここまで死に物狂いで戦ってようやく得た勝利だったんだと初めて知った。俺たちが着いて行っても何もできないばかりか、足手まといになる...ユーリの言った通りになりかねない」

 

「アタシも...魔族の怖さが身に染みたわ。なんや魔族のこと全部押し付けるみたいになるのは嫌やけど...カリヤに任せるしかないんやな」

 

反対していたアンスとカミレが肯定派に回った。決まり...だな。

 

「……じゃあそういうことで。これまで本当にありがとう。魔族に会ったらすぐに逃げるんだぞ、いいな?」

 

「いや、僕らじゃ魔族か見分けつかないんだから逃げるとか無理」

 

「はは、それもそうだな」

 

「というか、なにもうサラッと出て行く流れになっているのよ。これの後始末ぐらいしていきなさい」

 

「あっ、すまんすまん。それしてから出ていくわ。ったく、締まらねぇー」

 

綺麗な流れで去ろうとしたのに、なんだか恥ずかしい...

 

何はともあれ、魔族一人倒すというイレギュラーが起きたものの、無事に一人旅をすることが決定したのだった。




ドンカラのみんなと別れさせる前にちゃんと活躍させてぇなーと考えていたらなんか上手いこといきました。
こういう戦闘に使えなさそうな能力を使って一般人が危機を救ってくれる展開好き...
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