神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8364字。

展開がどんどん加速していく...


暗殺襲撃、魔の目覚め

「はーダリぃ。一週間も居れるような町じゃねぇやここ。空気最悪だし」

 

アマガリは町の暗がりを歩いていた。敗戦ムードがまだ続いており、魔族であってもその空気は不快なものだったのだろう。出来るだけ人のいない通りを優先して歩いているようだった。

 

「そろそろ次の町行くかぁ...センフリにでも行こうかな。そこで町のトップの奴らを丸ごと飛ばしてやれば混乱が訪れる。そうなれば、戦争が成功した時と同じ流れに持っていける...だろ?サギリ」

 

「そうだな」

 

アマガリの近くに空間の裂け目が開き、そこからサギリの声が聞こえてくる。アマガリが独り言を呟いていたのは、サギリに聞こえるように話していたからだったのだろう。

 

「ってわけで、俺をセンフリまで連れていけ。普通に入ったんじゃ力を無効化されちまうからな」

 

「わかった。今開く」

 

アマガリの目の前に空間の穴が開く。アマガリは次なる町に行けることに上機嫌になったのか、口笛を吹きながら空間の穴に入ろうとして...

 

パァンッ!!

 

と、口笛の音をかき消す乾いた破裂音が響いた。放たれた弾丸はアマガリの背中を貫き、背骨の隙間を縫うように通り抜けて心臓を突き破った。

 

「な、ん...」

 

そんな声を口から漏らしながらアマガリは地面に倒れ込んだ。あの位置に穴を開けてしまえば、今からミシュの所に運んで治療したとしても助からないだろう。サギリに気づかれる前に仕留められてよかった。

 

「なぜお前が...この世界にいる⁉︎」

 

「ああそうそう。お前に言っておくことがあったんだった」

 

サギリは無視してアマガリに近づく。どうせサギリ自身には攻撃性能ないからな。無視しても問題はない。

 

「俺に迷惑をかけるんじゃねぇ...だってさ。まぁ、もう迷惑をかけることも出来ないがな」

 

「……まさか、並行世界のアマガリに...⁉︎」

 

「もう俺は戻ってこないとたかを括ってたようだが、当てが外れたねぇサギリ?」

 

「っ...次は無いぞ。覚悟しておけ」

 

そんな捨て台詞を残して、空間の裂け目が閉じられた。

 

「次がないのはお前らだぜ?戦闘ができる魔族なんてほとんど残ってねぇ。ハルラを除いて他に一人いるかいないかってレベルなはずだ。それを返り討ちにして、続けてお前も殺してやるぜ、サギリ」

 

そんなことを呟きながら俺はアマガリに近づく。まだ息があるからな。しっかり仕留めなくては。

 

「お前には感謝しないとなアマガリ。お前のおかげで情報収集が出来た。お前が俺を並行世界に飛ばしていなかったら、村のことなんて知らなかっただろうし奴らの素性と能力を知ることもできなかった。戦犯、ご苦労様」

 

アマガリの頭に銃弾を何発か撃ち込み、魔族の反応の消滅をもって死亡を確認する。

 

「……よし、行くか」

 

アマガリが死んで、この町には魔族はいなくなった。さっさと次に行くとしよう。

 

次に向かうのは、魔族の住む村とこの町の中間ら辺に位置している町、クストル。そこで休憩と物資の補給をしてから村に突撃するのだ。

 

魔族は残り十人。得体の知れない二人の魔族はどうにもならないが、それ以外の八人は殺す目処が立っている。もちろん、ハルラもだ。あくまで仮説ではあるが、ハルラの対処法も思いついている。もはや敵ではないだろう。

 

十人中八人を確実に殺す殲滅作戦。その始めの一歩を俺は踏み出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っぱ、視線が気になるな」

 

さっきからずっと視線を感じていた。魔族の気配も同時に感じているので、おそらくサギリが空間の裂け目の向こうからこっちを見ているのだろう。無性に弾丸を撃ち込んでやりたくなるが、確実に空間置換で跳ね返されてしまうだろうからやめておく。

 

「こりゃ落ち落ちと寝ることも出来なさそうだな...けど、寝不足の状態で戦う方がもっと怖いからなぁ。魔力で身を守りながら寝るか...」

 

一週間も安全な世界で過ごしていたから、ちょっと危機感が薄れてしまっていた気がする。寝込みを襲われても良いように、しっかり防御策は考えておかないとな。

 

「……っと、クストル到着だな」

 

メルトロの町を出てからおよそ二日。クストルの町へと辿り着いた。まぁ町と言っても町と町の中継地点という側面が強く、いわゆる宿場町だから永住している人は少ない。こっちの国でのドンカラのような配達組織の拠点や宿が町のほとんどの敷地を埋め尽くしているからな。娯楽とか観光名所のようなものは一切ないから一泊して休憩したらすぐに発つことになるだろう。

 

この町から魔族の村まではおよそ半日もあれば着くはずだ。段々と目的地が近づいてきたな。

 

「……魔族の反応が二人...?」

 

一人はサギリだろう。だが、もう一人は?村にいる奴らが動いているとはあまり考えられない。ハルラか、もしくはまだ未確認の二人の魔族のどちらか...ってところか。知らない奴だったら嬉々として狩りに行くが、どうだろう?

 

「あー...ダメだな。サギリがいるせいでもう一人の居場所掴めねぇ...」

 

魔族が一人だけならば居場所を掴むこともある程度できるのだが、複数人居られるとそれも難しい。センフリに三人魔族がいた時にそれぞれの場所が掴めなかったのもそのためだ。サギリは別にこれを狙って近くで監視をしているわけではないんだろうけど、非常に邪魔だ。早急に消えて欲しい。

 

「こりゃ探しても見つからなそう...あっちから出てくるのを待った方がいいか?」

 

歩き疲れてるし、休むのを優先しても良いかもな。さっさと宿を取って休んでしまおう。

 

「前にも取った宿にしよーっと」

 

もう既に一度来た町だ。目的地である宿に一直線に進んで行き、中に入る。

 

「……あ?この宿を選ぶ奴がいるだなんて珍しい...」

 

この宿めっちゃガラガラなんだよな。並行世界でも、他の宿はほぼ満室の中この宿だけは真逆で空き部屋ばっかだった。それだけ人気がないってことなんだろうが、なんで人気ないんだろうな?立地もそこそこ良いし設備も他の宿とあまり大差ないように思えるんだが...まぁそのおかげですんなり宿を取れるんだからラッキーとでも思っておくか。

 

「一泊頼めるか?」

 

「ああ。料金は先払いだが、何時間だ?」

 

この世界には夜はない。常に昼だからこそ、一応一日の区切れは定められてこそいるが生活リズムは人によってまちまちだ。それゆえに、宿は一泊いくらではなく時間制になっている。カラオケかな?

 

「んー...十時間で」

 

そんだけ寝れば十分だろう。料金を払って...って、そうだ。人気がない理由思い出した。めっちゃ料金が割高なんだった。人が来ないから赤字を取り戻すために料金を上げて...ってのを繰り返したせいでクソ高になったらしいんだよな。俺は結構金持ってたんで普通に払えてしまったから忘れてしまっていた。

 

「……そうだ。一つ注意喚起をしろと言われてたんだった...鍵を渡す前に一つ聞いちゃくれないか?」

 

「なんです?」

 

「最近この町で殺人事件が何件も起こっていてな...通称、漆黒の切り裂き魔」

 

……厨二全開のネーミングだな。体がむず痒くなってきやがる。

 

「先月から人気のない道で全身を切られて亡くなった人の遺体が見つかるようになってな。軍警も動いたが、犯人の目星すら付いていない始末だ」

 

「へーそれは怖いな」

 

多分、この町にいる魔族の仕業だろうな。切り裂き...ってことはハルラの仕業か?...いや、先月から起こっているならハルラは違うか。スイレイの隔離施設にハルラが入れられたのは結構前のはずだ。それに、隔離施設に入れられる前も後もハントと共にスイレイにいたからこの町の事件には無関係だろう。サギリの空間置換はあるが、隔離施設内からハルラが消えていればハントも気づくはず。そんな話は聞いていないからハルラではないと見て良いだろう。ってことは知らない魔族の仕業か...?

 

「でも、ならなんで漆黒なんだ?切り裂き魔の前にそんな異名じみた名前付けているのが不思議なんだが」

 

「実は、一人だけ被害に遭いながらも生還した奴がいてな。極度の自己再生の力を持っていた奴だったんだが、そいつの証言によると、道を歩いていたら急に周囲が真っ暗になって、驚いている間に全身を切られたらしいんだ。犯人は完全なる暗闇を操る力を持っている...そう考えられたから、漆黒の名がついている」

 

「へぇ...そいつは怖いな」

 

「だからよ、あまり人のいない道は通るんじゃねぇぞ。通るときはそこに元々二人以上いる道にしておきな。一人いるからと安心しちゃいけねぇ。そいつが漆黒かもしれんからな」

 

「ああわかった。注意する」

 

「俺は言ったからな。あとは自分で気を付けてくれ。ほれ、これが部屋の鍵だ」

 

鍵を受け取り、部屋まで移動する。

 

「さーて、休んだら裏道通って魔族探すか。あんな注意行けって言ってるようなもんだろ」

 

サギリがいるせいでうまく魔族を探せないなら、向こうから来て貰えば良い。まぁ、魔族の襲撃を何度も返り討ちにしてきたから、今更単騎で襲いかかってくるかは微妙なところだけど...

 

「……っと、時間もったいないし早く寝よ。魔力を多めに溜めといて...」

 

部屋に入った俺は、すぐに背負っていた荷物を床に下ろし、窓に設置されている遮光カーテンを閉じて寝る用意に入る。鍵はしっかりかけたがサギリの能力の前では無意味も同然なので、寝込みを襲われても良いように魔力を身体の中に巡らせておく。攻撃されたら即魔力を流し込んで無力化してやろう。

 

「おやすみグッナイ」

 

ベッドに滑り込み、俺は目を閉じた。常に昼のこの世界だが、その中でも寝れるように遮光カーテンの性能が段違いになっているので、今この部屋は真っ暗闇だ。そのおかげで、元々疲れていたのもあってすぐに眠りにつくのだった...

 

………

 

次に目を覚ました時、そこは宿ではなかった。

 

そこはどこかの道端で、血を流しながら壁にもたれかかっている男がいた。そいつは首から上が消失しており、胴体には無数の銃創があった。そして俺の右手には拳銃が握り締められていた。

 

「魔、族...?というか、この状況は...!」

 

前にも同じような状況があった。そして、今俺の手に握り締められている銃は、神様の許可無しに作り出すことができる銃だ。更に、寝る直前に溜め込んでいた魔力が全て無くなっている...これが意味するのはつまり。

 

「魔王の意識が...復活しつつある...!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……出てきたか」

 

標的が建物の中から出てきた。ズボンのポケットに手を突っ込みながら、荷物も持たずにフラフラと歩いている。

 

「追うか」

 

俺はその後を追うことにした。付かず離れずの距離で、奴を見失わないようにつける。こちらに気づいている...かは判断できないが、とにかく奴が一人になった瞬間に動こう。人気のない道でも良し、クストルから出ても良し...誰にもバレずに襲えればなんでもいい。

 

……こちらを誘っているのかと疑いたくなるくらいにすぐに脇道へと入っていったな。どうにも嫌な予感がする...が、見失うほうが困る。ほんの少しだけ時間を置いてから俺もその脇道に入っていく。

 

奴はゆっくり道を歩いていた。こちらを警戒している素振りは特にない。そして、周りに人は誰もいない...これは、今が狙い目か。

 

懐からナイフを取り出す。そして...俺は力を発動させた。

 

周囲一帯が暗闇に包まれる。俺だけはその中でも視界を確保できるが、標的は何も見えず戸惑って...ないな。冷静すぎて少し怖いが、何も見えていないことには変わりない。いつものように足音を立てずに背後から近づき、ナイフを背中に...刺す!

 

ガキンッ!

 

ナイフを止められた⁉︎なんだこの壁のようなものは...

 

「っ!」

 

こいつ、蹴ってきた⁉︎ギリギリで避けられたから良いものの...攻撃を止められたのといい、こいつまさか見えているのか?

 

「早速来たか。魔族のなり損ない」

 

標的が口を開いた。聞いていた雰囲気とだいぶ乖離しているな。それに、身体の動かし方や表情がぎこちなく見える。まるで、人形使いが操り人形を操作しているかのような...動きが直接意識とリンクしていないように思える。

 

それよりも...だ。よく見たらこいつ、俺の方向を向いてはいるが俺を見ているわけではない...?瞳孔の向きからして俺の少し横を見ているようだ。完全に見えているわけではなく、気配のようなものから俺のことを認識しているということだろうか。足音は完全に殺せているから、音で俺の位置を把握しているわけではないはずだ。

 

「のこのこと余の前に現れたこと、後悔させてやろう」

 

っ、仕掛けてきたか!標的は拳や蹴りを使って俺を攻撃しようとしてきた。やけに大振りな攻撃が多いのは、大体の位置しかわからないからか?だが、そのおかげで避けやすい...反撃もしやすい!

 

標的の攻撃をギリギリまで引きつけてから避け、その腕にナイフを滑らせる。

 

「無駄だ」

 

まただ。またよくわからない壁のようなもので防がれてしまった。妙な武器を作る能力と聞いていたが、攻撃を防ぐ盾も作れるのか...?

 

「そんなものか?やはり、余の配下たちの方がよっぽど出来が良かったと見える...長々と時間をかけてもいられないのでな。さっさと始末してやる」

 

クソッ、襲撃に失敗した以上、一旦離れて形勢を立て直すか...と、そんなことを考えたその時だった。

 

標的の手に妙なものが生成された。あれが、サギリの言っていた妙な武器か。奴の指が動いた瞬間、あの筒のような場所から何かが飛び出して体を貫かれるらしい。

 

だが、この状況だ。標的は正確な俺の位置を把握できていないのだから、指の動きに注意を払いながらあの筒の延長線上から逃れ続ければ避けられる...はずだ。いざとなれば、ナイフで弾き飛ばしてやる。

 

……来るっ!

 

「チッ、精度が悪いな...奴の仕業か。余に悪用されぬよう、許諾無しに作れるものは粗悪なものにしてあるというわけだな」

 

嘘だろ...なんだあの速度は。到底見てから避けられるようなものではない。それに、思ってた方向と少しズレた場所に命中したぞ。あの穴から狙いを見極めるのは無理か...?

 

「っ...!」

 

ひとまず今は逃げの一手だ。先の妙な攻撃はかなりの音を辺りに撒き散らしていた。何度もやられては人を誘き寄せてしまうから、集まってくる前に一時離脱だ。

 

「ほう、逃げるか」

 

標的は逃げる俺を追いかける。だが、この道はジグザグと曲がり角が多い。俺の位置は追えるようだが道は見えないはず。果たしてその状態で追えるのか?

 

「……嘘だろ...!」

 

こいつまた攻撃してきただと⁉︎しかも、曲がり角を曲がった瞬間だ。狙いが甘かったのか壁に命中したが、なぜ攻撃できた?正確に曲がれるのは何故だ?俺の足音から曲がり角までの距離を推定しているのか?

 

わからないことだらけだが、まずは逃げ切ること優先だ。切り札を切ろう。

 

「ふっ...!」

 

持っていたナイフを標的に向けて投擲する。そしてその瞬間に力を解除させた。完全な暗闇から急に光が差し込むことにより、目眩しになる。目が眩んでいる間に、先ほど投げたナイフが刺さるというわけだ。

 

「……っ、自動防御か...!」

 

どうやらあの守りは常に体全体を覆っているらしく、投げたナイフは弾かれてしまった。オーストの力と似たような防御だな...攻撃は通らなかったが、光の目眩しも併せて進行は止められた。最後の曲がり角を曲がれば...大通りに出る。これで離脱完了だ。

 

「ふぅ...聞いていた通りの化け物だな」

 

人混みに紛れ、大通りの中を歩く。標的に俺の姿は見られていないはずだ。この人混みの中、俺を見つけることは困難だろう。

 

襲撃に失敗し、一度離れるしかなくなったが、また奇襲を仕掛ければ良いだけのこと。何度も何度も何度も奇襲し、奴が痺れを切らしたその瞬間が狙い目だ。百度やり直しても、たった一度殺せればそれで良いのだ。それが俺の使命。文字通り闇に紛れて人を殺す、暗殺者の存在意義だ。

 

「誰が化け物だ?」

 

っ⁉︎こいつ、いつのまに隣に...!

 

「サギリ!!」

 

標的の攻撃を喰らう前にサギリの名を叫び、足元に空間置換の穴を作ってもらう。そこに吸い込まれて出た先は、クストルの北側。さっきまでいた場所と正反対の場所だ。

 

「なぜあの短時間で俺だと特定できたんだ...?だが、これだけ距離を離せば...」

 

「奴が真っ直ぐお前のところに向かっている!そこを離れろ!」

 

おいおいなんの冗談だ...だが、サギリの言うことが嘘だとは思えない。早急にここから離れるとしよう。

 

「なぜ俺の位置がわかるんだ...?」

 

「急げ!もうすぐそこまで来ている!」

 

「なん...っ⁉︎」

 

「よぉ、化け物が来てやったぞ」

 

「あぐっ...!」

 

突如として建造物を飛び越してやってきた標的が、その勢いのままに俺の頭を掴んで壁に叩きつけた。

 

「ほう、紛い物とはいえ流石は魔族といったところか。意識を保っておるとはな」

 

ぐっ...頭がガンガンと痛む。意識も朦朧としている...が、まだ力を使うくらいの余力はある。力を使ってナイフを生み出し、こいつの首に突き刺せばあるいは...!

 

「づ...ア゛...⁉︎」

 

全身に激痛が走り、思わず口から声が漏れ出る。それに、なんでだ?力が使えない...!

 

「さて、ネタバラシといこうか。訳もわからず殺されるのは辛かろう」

 

標的はニヤリと邪悪な笑みを浮かべながらこちらを見ていた。勝ちを確信して、俺のことを見下す目をしている。俺にはもう何もできない...そう思っているのだろう。

 

ああそうさ。俺にはもう何もできない。だが、こっちにはサギリがいる。ハルラを呼び出して奴の背後から襲わせれば、俺はもう助からないにしても標的を殺すことはできるはずだ。

 

「魔力...と言っても貴様には分からんだろうが、一番最初の貴様の攻撃を逸らした瞬間、貴様の靴に地面を経由させて魔力を流し込んだのだ。魔力の存在しないこの世界では、魔力はよく目立つ。闇に、光に、人混みに...何に紛れようとも、貴様の位置は手に取るようにわかる」

 

……なぜ、サギリは動かない?情報収集をするつもりか?今殺せればそんなもの無意味になるというのに?

 

「身体強化に防御に追跡にと、ちと魔力を使いすぎてしまったが...まぁ貴様を殺す時間の余裕はある」

 

ババンッ!と標的の持つ武器が音を撒き散らす。気がつけば、俺の腹や肩に穴が空いていた。あまりの激痛に、声すら出なかった。

 

視界にチカチカと光が舞い、今にも失いそうな意識のまま、俺は標的の背後に開いている空間置換の穴を見ていた。

 

なぜサギリは何もしない?今の攻撃、サギリならば空間置換を使って標的に跳ね返すこともできたはずだ。それをしなかったのはなぜだ?

 

……まさか...

 

「見捨て、られ...っっっ!!」

 

「誰が口を開いて良いと言った」

 

顎の辺りを勢いよく殴られ、妙な武器で足を貫かれた。

 

なんてことだ...俺は、サギリに見限られたのか。許せない。見捨てるなら見捨てるで、この場で俺ごと殺すならまだ良かった。だが、この場は諦めて、次に繋げるための情報を得るために俺を見殺しにすることだけは許せない。それは、俺の死を無駄にすることと同義だ。

 

次、なんてものはない。百回やり直すことなく一回目で殺されて終わりだ。ならば、一度目に全てを賭けるしかない...だというのに、サギリの奴は...!

 

「……貴様はもう助からない。これ以上手を下す必要もないな」

 

どうせなら、一思いに殺してくれた方が楽になれるのだが...身体がピクリとも動かない。舌を噛んで死ぬことも出来なさそうだ。このまま死ぬまで放置されるのか...

 

「よって、残された魔力は貴様を葬ることに使うとしよう。常に余を見下ろすその図太い神経...叩き直してやろう」

 

……まさかこいつ、サギリを狙って...なっ⁉︎

 

俺の首を標的はがっしりと掴んだ。そしてその腕からは到底出せないであろう力で俺を持ち上げると、標的の背後に開いている空間置換の穴目がけて...投げ飛ばした⁉︎

 

「あぐっ...⁉︎」

 

穴は小さかったため、肩がつっかえた。穴の向こう側に首から上だけがすっぽり埋まる形になった。まさかこいつ...俺を間に噛ませて穴が閉じるのを防ぎ、サギリのいる場所に行こうって魂胆か...!

 

「閉じ、ろ...」

 

サギリに向かって、なんとか声を発する。

 

奴の思惑が先の予想で正しかったのかはわからないが、もしそうだとすると奴の作戦は失敗する。空間置換の穴は何かが挟まっていても問答無用で閉じることができる。もちろん、そこにあるものは空間が閉じるのと同時に切断されてしまうが...既に死に体の身だ。やろうがやらまいが変わらない。

 

「了解した」

 

冷酷な顔をしているサギリは、一言だけ告げた。

 

次の瞬間、ゴトっと俺の首が落ちた。

 

しばらく意識が残っていたのが、苦痛だった。




まさかの一話で二人処理するっていうね。
ちなみにカリヤくんの意識が戻った時に魔族の身体が壁に寄りかかっていたのは、空間置換の穴が閉じられようとした瞬間に、穴を無理矢理広げようとして魔王が魔族の身体を蹴飛ばしていたからです。
穴が閉じた瞬間だったせいで首から下だけが壁まで吹き飛ばされて、寄りかかっている構図になったというわけですね。
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