神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8134字。

今回はハルラ戦になります。


繋がる景色、君の見る景色

「魔力を体内に溜め込んだ状態で、眠ったり気絶するなりで意識を失うと魔王に身体を乗っ取られる...か」

 

目が覚めた後、俺は急いで宿に戻り、旅の準備に取り掛かりながら魔王乗っ取りについて考えていた。とりあえず条件はこんなところだろう。

 

「まさか、また夢遊病じみたことをするようになるとは...」

 

寝ている間に魔王が俺の体を操って出歩く擬似夢遊病。この世界では初だな。どうやら出歩いている間に魔族と遭遇し、殺してしまったようだ。一体どんな魔族だったのかは皆目見当もつかないが、身体つきからして俺の知らない二人の魔族のうちの一人であろう。これは不幸中の幸い...と言って良いのか?

 

「これを回避するには、魔力を体に溜め込まないことが必要...だけど、魔族と戦闘するには魔力で防御したり攻撃したりする必要があるからなぁ...」

 

天秤にかける必要があるな。魔王を抑えるために魔力無しで魔族と戦う縛りプレイをするか、魔王復活の危険を孕みながらも比較的安全に戦える魔力あり...まぁ死んじゃ元も子もないから使ったほうがいいんだろうな。意識さえ失わなければ問題ないわけだし。

 

「ったく、魔王の奴が何考えて動いてんのかまるでわからん...魔族を返り討ちにしたのは宿主の俺に危険が迫ったからだとしても、俺の身体を乗っ取っていったいこの世界で何をするのやら...」

 

聖杖世界では魔神の復活のために動いていた魔王だったが、魔神が存在しないこの世界で何をしようというのだろう。安直に人類の支配とかか?

 

「……あれこれ考えてても意味ないか。さっさと魔族殺してこの世界を去る、それが一番手っ取り早い」

 

あんまり休憩することができなかったが、それは肉体的な疲労だけ。俺自身の精神は眠り続けていたからそっちの疲れは取れている。魔王の実害が出始めた以上ゆっくりしていられないから、とっとと出発することにする。

 

「チェックアウトするわ。ほれ鍵」

 

宿の主人に鍵を返す。

 

「まだ時間は残っているが良いのか?時間分の返金は一応可能だが」

 

「別に良い。ちょっと急いでるんでな」

 

少し勿体無いような気もするが、お金よりも時間優先だ。どうせこれからやる襲撃が成功すれば残る魔族はあと一人。お金を大量に持っていても使う機会がないのだからケチる必要はないだろう。

 

「よーし、行きますか」

 

「旅はこれで終いだ」

 

「っ⁉︎」

 

魔族の気配。そして、俺の足元の地面が消滅...否、空間の裂け目が開いたことによりそこに吸い込まれるように落ちていく。

 

「クソッ...!」

 

俺は即座に魔力銃を作り出し、空間の裂け目の向こう側にある地面に魔法弾を撃ち込んだ。次の瞬間、重力が強化されて俺の落下速度が増し、勢いよく地面に降り立った。

 

「……まさか、俺の切断から逃れるとはな」

 

降り立った先の地には、サギリが立っていた。

 

「その切断現象は何度か目にしてるんでな...」

 

一度目は空間の裂け目に突っ込んだ魔力銃の切断。そしてもう一つは、首の切断された魔族だ。俺の能力ではあのような綺麗な断面にすることは不可能だ。サギリが関わっていたと考えるのが妥当。そして、急に裂け目に吸い込まれれば同じようなことをされるかもというのは容易に想像がつく。だから重力を強化して落下を早め、即座に裂け目から抜け出したのだ。

 

「にしても...良い場所に連れてってくれたな。ちょうど麓じゃないか」

 

裂け目を抜けて出てきた先は魔族の村がある山の麓だった。

 

「やはり、並行世界で情報を得ていたか」

 

「ああそうだとも。アマガリの力、しっかり利用させてもらったぜ」

 

「まさか裏目に出るとはな...」

 

「長話に付き合うつもりはないぜ。わざわざこの場所を選んだことの理由はわからんが、こうやって姿を現してくれたんだ。死ぬ覚悟はできたと解釈していいか?」

 

「ほざけ。俺らは死ぬつもりはない」

 

そう言ってサギリは空間の裂け目の向こうへと消えていく。そして、上の方から入れ替わるように魔族の反応が一人。

 

「俺も、死ぬつもりはねぇよ!」

 

すぐにその場を飛び退き、奴が伸ばした手から逃れる。

 

「待ってたぜハルラ。確実に妨害してくると思っていたよ」

 

「みんなのところへは行かせない...!」

 

「そのみんなのところに行くのはお前らだ。死んであいつらに会うんだな」

 

空間の裂け目から現れたハルラに魔力銃を向ける。

 

「一対一...いや、一対二を始めようか」

 

周囲に魔族の気配は一人だけ。ハルラの視界を共有してサギリの妨害が飛んでくることだろう。だから一対二だ。

 

「その武器、ほんと怖いよね。今からじゃミシュちゃんの回復も間に合わないだろうしぃ...近づいて触れても直接毒を流せるんでしょ?」

 

そう呟きながらハルラは俺の方に近づいてくる。まだ能力の範囲内に入ってないからだろうな。近づいて、俺の持つ魔力銃を破壊しようというわけだ。

 

「だからぁ...」

 

ハルラが範囲内に入る。次の瞬間、俺の首が浅く切り裂かれる。聖杖世界の鎌鼬のように、空気を切り裂くことで気圧差を発生させ俺の皮膚を間接的に切り裂いたのだ。

 

「こうやってチクチク全身を切り裂いていけば良いよねー」

 

「こんなの、ただ治せば良い話だろ」

 

「やってみなよ。その前に、その武器を粉々に...」

 

言い終わる前に俺は魔力銃のマガジンを入れ替え、首の傷に向けて回復の魔法弾を放った。

 

「……え?」

 

ハルラの反応が遅れた...わけではない。ハルラはこの魔力銃を切れないのだ。

 

「切れない...?」

 

「どうしたよハルラ。切ってみろよ」

 

ゆっくりとこれ見よがしにマガジンを入れ替え、ハルラに銃口を向けて...引き金を引いた。

 

「あつ...っ!」

 

火球が発射され、ハルラの髪を焦がし皮膚を焼く。

 

「あんた...まさか私の弱点に気づいたの⁉︎」

 

「きっかけから聞かせてやるよ。最後まで聞きたきゃ頑張って避けるんだな」

 

引き金を引き続ける。ハルラは地を駆けたり空気の切断によって火球の進行方向を帰るなどして命からがら攻撃を避ける。

 

「一つ目の疑問は服だ。お前、俺の服とか靴を切り刻むようなことはしなかっただろ?靴を破壊すれば移動しづらくなり、服を壊せば防御が薄くなるし恥じらいがある相手なら行動を封じることができる。メリットだらけだ。なのにやらないのは、それが出来ないから」

 

最初に戦った時には抱いていた疑問だな。コンプラ遵守してんのかと冗談で考えたりもしたが、きちんとした理由があったのだ。

 

「最初に考えたのは、生物が触れているものは切れないってのだった。だが、これはすでに否定されていた。握っていた銃を粉々に切り飛ばされたからな。そして、二度目の戦闘でも否定材料が出てきた」

 

「っ!あの軍服か...!」

 

「そうだ。あの時俺が咄嗟に投げた軍服を、お前は触れるまで切り刻むことができなかった。そのせいでお前の力の制約を、衣服は触れないと切れないというものだと思い込みそうになったが...実のところは単純だった」

 

服を切れないという個別のルールがあるわけではなかった。制約は単一なものだったのだ。

 

「生物は切れない。その縛りの中に、皮脂や汗も含まれているんだろ?だから長い間来ていた服や、戦闘直後で汗まみれだった軍服を切り刻めなかった。汗が染み込み、皮脂に塗れた物は切れないってわけだ。だからこの魔力銃やマガジンにベタベタ触りまくって指紋や皮脂をつけておけば、お前はもう切れないってわけ。きったねぇけどな」

 

まぁ予想が合っているかは半分運任せではあったが、これでもうハルラに攻撃を妨害されることはない。

 

「っ...サギリくん!」

 

空間の裂け目に火球が吸い込まれ、俺の頭上から降ってきた。それを横っ飛びで回避して...右っ⁉︎

 

「あっぶね!!」

 

右から魔族の気配がしたかと思えば、そこにあった空間の裂け目からハルラの手が伸びてきていた。俺の腕を掴もうとしていたため、持っていた魔力銃を間にかませて切断を防ぐ。

 

「直接触ればこんなもの...!」

 

「まぁ、直接はそりゃ切れるわな。けど...」

 

魔力銃を作りながら、空間の裂け目から離れる。

 

「いくらでも作れるんだぜ?」

 

一度作ったものならば、製作スキルのように同じ銃を作り直すことは可能だ。当然、ハルラ対策をしたものもな。

 

「さーて、どうやって遊んでやろうかな」

 

急な空間置換に気をつけながら思考を働かせる。ハッキリ言って、ハルラを殺すこと自体は楽勝だ。サギリのサポートがあるため直接魔力弾を放つのは難しいが、魔力弾をこちらに跳ね返したり、ハルラの腕を俺の方に飛ばしたりするために開かれる裂け目に向けて弾を放つことで魔力を浴びせることは可能だ。

 

だが、それだけではハルラしか殺せない。一番重要なのはサギリをどうやって殺すかだ。きっと、このタイミングを逃せば奴は永遠と雲隠れしてしまうだろう。近づいては逃げ、近づいては逃げ...そうやって、永遠と奴を捉えることができなくなってしまう。だからこのタイミングでサギリを俺の前に出させて殺す必要がある。

 

けれど、それはどうすれば可能なのだ?サギリとこの場を直接繋ぐ空間置換は存在しないし、今後も開くことはないだろう。サギリはハルラの目を通してしかこの場に干渉していない。だから、ハルラの視覚に何かしてやれば良いんだろうが...不自然すぎて怪しまれてもいけない。どうしたものか...

 

「……そういやお前、火傷は治さねぇんだな...いや、治せないが正しいのか?」

 

今思えば奴が再生能力を使って転移じみた移動をした時、服も一緒に直っていたな。となるとただの再生ってよりかは逆行...切断という事象を逆再生して復元しているってのが正しいのかもしれない。

 

「そっか、だから細切れになっている間には攻撃してこないのか」

 

自身を細切れにして移動している最中に俺に触れてしまえば、それだけで俺のことを殺せそうだと思っていたのだがどうやらそれは出来ないみたいだな。全て逆再生してしまうから、移動中に切断したとしてもその傷も治してしまうからって感じかな。

 

「その方がありがたい。切断以外なら治せないってことだから...な!」

 

マガジンを入れ替え、ハルラに向けながら引き金を引く。

 

「サギリ!」

 

ハルラが叫ぶと、ハルラの目の前に空間の裂け目が開く。だがしかし、銃口から射出されたものはそこには入らない。

 

「お、今ビビったっしょ」

 

銃口からチロチロと飛び出したのはただの水だ。水圧が激弱なためすぐに地面へと向かい辺りを水浸しにしていく。

 

「ったく、ビビりすぎだぜ?避けんのに必死で最初の一回しか俺にダメージ与えられてねぇじゃねぇか。つまんないねぇ...テメェじゃあアクセルみたいなライバルにはなれないってこったな」

 

「言わせておけば...!」

 

ハルラの動きが変わり、一直線にこちらに向かって走ってくる。守りなどどうでも良いって感じだな。まぁ実際今の俺は水をばら撒いているだけだから攻め時ではあるんだけど...

 

「そうやって激昂するところが小物なんだよな」

 

左手に魔力銃を生成し、足下に向けて魔法弾を放つ。

 

着弾した次の瞬間、魔法弾は強烈な光と音を周囲に撒き散らした。

 

「っっっ〜〜〜!」

 

当然ながら俺の目と耳もやられるが、それはハルラも同じこと。そして俺は魔力を使ってある程度周囲の様子を確認できる。先ほど水を撒いたのはそのためだ。魔力は水の中をほとんど抵抗無しに通ることができる。そのためあまり多くの魔力を使わずに探知ができるのだ。

 

ハルラの視覚と聴覚が回復する前に背後に回り込む。そして、マガジンを入れ換えて幻覚の魔法弾を装填する。

 

ハルラの声に反応していたことから、おそらくアーテルの時とは違い聴覚もサギリは共有しているはず。だから、幻覚を見せるのは視覚だけじゃ不十分だ。不自然さを生まないよう、聴覚にも手を加える魔法団を...!

 

「さぁ、狂え」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこにいるの...!」

 

あいつの攻撃で目と耳を潰されたせいでどこにいるのかわからない...!

 

『落ち...着け!周囲全てを切断して居場所を探るんだ!』

 

共有しているサギリくんの聴覚から声が聞こえてきた。そうだ、冷静にならなきゃ...私の力なら居場所を探ることだって...!

 

「っ!そこか!」

 

背後に切れない何かがあるのを捉えたため、すぐにそちらに向かって走る。

 

「逃げるな!...きゃっ⁉︎」

 

目が見えない状態で走ったためか、何かにつまづいて転んでしまう...切断できないってことはあいつが持っていた武器か。逃げる時間を稼がれた...?

 

『ここは見通しが効く。見えるようになるまで待っても追えるはずだ。深追いはせず回復を優先しよう』

 

「そう...だね...」

 

まだ少し目がチカチカして耳もキーンとしているが、少しずつ治りつつある。あと少しすれば見えるようになるはず...

 

「……みーつけた」

 

私の力の範囲から少し外れたところにあいつは倒れていた。さっきやたらめったに切り刻んだ時に空気をも切断していたから、間接的に全身の皮膚を切り刻んでいたんだろう、服や皮膚の至る所が裂けていた。

 

「あーあ、自分で撒いた水でびっちゃびちゃじゃん。自業自得って奴だね〜」

 

倒れているそいつに近づき、力の適用範囲内に入れる。

 

「……そーいやサギリくん、こいつってなんて名前なんだっけ?知ってる?」

 

『知らないよ。それに今から殺す相手の名前知ったところで意味ないだろ?』

 

「それもそうだけどさぁ...ほら、こいつって初めて私の力の全てを見抜いてきたでしょ?」

 

『そうだな』

 

「そんな奴いなかったから覚えておきたいなーって思って。それに、こいつの名前を知っておけばこいつの知り合いを探すこともできそうでしょ?私のことを言いふらしているかもしれないから全員排除しないとだけど、名前を知ってた方が都合良さそうだなって」

 

『それもそうだが...今から聞き出すのも難しいだろう。ノストールの思考盗聴も無意味だったしな。どうしても知りたいというのなら、後でこいつが泊まっていた宿の名簿でも見てみるが』

 

「じゃあそれでお願いねー...さーて、どうやって殺そうかな」

 

『あまり近づきすぎるなよ。また毒を流し込まれるかもしれん』

 

「わかってるって...時間かかるけど、今ある傷を深めるしかないかな」

 

空気を断ち、間接的に皮膚を切り裂く。私が生物に対して行える唯一の遠距離攻撃だ。それによって元からあった傷をズバッとさらに切り開いて出血を早める。

 

『うめき声...やはり、近づいてきたところを攻撃しようとしていたようだな』

 

切り刻んだ瞬間、奴の口からうめき声が漏れ出た。死んだふりみたいなことをしようとしていたんだろうけど、私たちも馬鹿じゃないからね。そんなのには引っかからないよ。

 

「危ない危ない...そろそろ死んだかな?」

 

『流石にまだだろ』

 

「でもでも、結構血出てるよ。あれだけ出てたら出血性ショックで死んでるんじゃない?」

 

『あんなに切ったとはいえ、あそこまで血が出るものなのか...?まぁ良い。確認したいなら切ってみれば良いだろ』

 

「それもそうだねー」

 

生物はきれないが、死んでいるなら切れる。例外は汗とか皮脂などの分泌物だけど、それもそれを出した生き物が死んだなら切ることができる。生死確認も私の能力でできるというわけだ。

 

「じゃあ切るよー...えいやっ!」

 

首がスパンっと切れ落ち、地面を転がる。

 

「ちゃんと死んでるみたいだね」

 

『そうみたいだな。ご苦労様だハルラ』

 

「いやーそれほどでも...やーっと殺せたね」

 

『ああ。払った犠牲は実に多かった...新しい魔族はもう生まれないというのに、半数以下にまで減らされてしまったからな。困ったものだ...残りの俺らだけで、なんとしてでも人類を滅ぼすぞ』

 

「だね。それじゃあサギリくん移動お願い。水ビチャビチャで気持ち悪いんだよね」

 

『わかった。今開く』

 

空間置換の穴が開き、そこからサギリくんが手を伸ばしてくる。

 

「……ほら、早く来い」

 

「うん」

 

サギリくんの手を掴む。

 

その次の瞬間、私の足が何者かによってものすごい力で引っ張られ、足場が水浸しだったのもあって滑ってしまい、背中から地面に叩きつけられてしまう。手を握りしめていたせいで、サギリくんも引っ張られて私の上に落ちてくる。

 

「んぐふっ⁉︎」

 

「ハルラ...何を...?」

 

「わかんないよ何かに急に足を引っ張られて...というか、早く共有を切ってくれない?自分を見るって変な感じ...って、え?」

 

サギリの力のせいで、私にはサギリの視覚情報が共有されている。だからこうしてサギリのことを見ている視覚とは別に、私を見ているサギリの視覚も同時に見ているんだけど...私にしか見えていないもの、そしてサギリにしか見えていないものがある。

 

私の目には先ほど殺した奴の死体が見えている。だけど、サギリの目には見えていない。

 

私の目には私たちの横には誰もいないけど、サギリの目には誰かがいるのが映っている...!

 

「サギrっっっ⁉︎」

 

全身に激痛が走る。それはサギリも同様なようで、身体をビクビクとのたうち回らせながら苦しんでいた。

 

「これが...毒!!」

 

「毒じゃなくて魔力なんだがな」

 

「っ⁉︎」

 

そこには誰もいなかったはずなのに、急に私の視覚にもそいつの姿が映った。

 

「なんで...私が確かに殺したはず...!」

 

「自分の見聞きしたこと全てが正しいって思わないことだな」

 

まさか...幻覚を見せられたの...?

 

「一瞬でも俺を殺せたつもりになれたわけだけど、気持ちかったか?」

 

「っ...この!」

 

隣に立っているあいつに向けて手を伸ばす。力は使えないけど、それでも出来ることはあるはず...

 

「っ゛...!!」

 

足の方から身体の方に向かって激痛が走った。

 

「なんでわざわざ水を撒いたと思う?簡単に遠くから魔力を流し込めるからさ。水溜まりができて、お前がその上に立っていた時点でもういつでも勝負をつけることはできたわけだ」

 

「……ク、ソ...僕を誘き出すために、わざとハルラを泳がせていたのか...!」

 

「御明察。お前はここで殺す必要があったからな。ハルラとの視覚と聴覚の共有を利用してお前に誤った情報を与え、油断して出てきたところを狙う作戦だった。まぁすぐに出てこなかったから無理矢理引き摺り出すことにはなったが」

 

「なんでもう一つの力まで...」

 

「そりゃあアーテルとかお前の様子を見てたら感づくさ。まぁあいつ、耳は聞こえないんだったかとか口走ってたしな」

 

「あの野郎...!」

 

「……そろそろ優越感に浸るのも終わりにするか。知らん魔族が急に乱入してきて形勢逆転とか一番怖いし、さっさと殺しちまおう」

 

あぁ...もう、私たち死んでしまうの...?何もできない...!

 

「これで残る魔族は...七人か。何か最後に言い残したいことはあるか?恨みつらみでもなんでも話すが良い。聞いてやるよ」

 

武器をこちらに向けながら、私たちの敵はそう言った。

 

「……ここまでよく殺してきたほうだよ...けど、もうお前の企みも終わりだ!あの村でお前は死ぬんだ!そして必ず!残った皆がこの世界を終わらせる!!」

 

パンッッ!

 

サギリくんが言い終えた瞬間、破裂音が敵の武器から鳴り響いた。頭に風穴が開き、そこから血が噴き出した。

 

「さ...サギリくんっ!!」

 

「言い終わったならすぐ終わらせてやる。悔いのないよう、しっかり言い残すんだな」

 

「っ...!」

 

悔いのないようって...なんなの?恨みつらみを言ったところで何も変わらない。何も残らないってのに...ただこいつを楽しませるために口を開く必要がどこn

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見聞きしたこと全て信じるな...って、言ったはずなんだがな」

 

銃口から硝煙が立ち上る。脳天を貫かれたハルラが地面に身を投げ出し、絶命した。魔族の反応も同時に消える。

 

「そもそも、敵の言うことを鵜呑みにするなってんだ。わざわざ遺言なんて聞くかよお前ら程度との親密さでよ」

 

アクセルだったならどれだけ急いでいても足を止めてじっくり聞いていただろうけど、こいつら相手じゃそんなことするわけない。かなり苦戦させられたからその憂さ晴らしをしたまでだ。

 

「……よし、次はあの六人か...万全の準備を整えて、いざ突撃!」

 

魔法弾を自らに撃つなどの準備を整え、俺は魔族の村へと移動を開始した。




ハルラは正直言ってタネさえ割れて仕舞えば聖杖世界の魔族よりも何倍も弱いので、殺すだけなら本当に一瞬で終わってしまうんですよね...サギリも同時に仕留めるというのがあったおかげでなんとか戦闘になった感じです。
生き物も切れたら最強だったんだけどなぁ...
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