神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8216字。

今回は第三者視点で話を進めて行きます。


魔族の村、届かない声

「はぁ...なぁ、本当に魔族殺しとやらが来んのか?」

 

「サギリとハルラが止められなければ...の話だがな」

 

テザルグは非常に苛立っていた。数十分ほど前、急にサギリがやってきてこう告げたのだ。

 

魔族を十人近く殺してきた魔族殺しがこの村に近づこうとしている。俺たちで止めてくるが、もしいつまで経っても帰ってこなかったなら必ず奴が来るから気をつけろ...要約するとこういう話だった。

 

勝手な話だ。どこからこの場所のことが漏れたかは知らないが、どうせ死んでいった誰かが漏らしたんだろ?そいつのせいで俺らが危険に晒されて、サギリの奴らが帰ってくるまで常に警戒しないといけないのが非常に面倒...テザルグは一応警戒はしていたものの、心の中で表に出しているもの以上の悪態をついていた。

 

「アイツらが負けるとかあり得るか?」

 

「既にハルラは二度戦い、そのどちらも返り討ちに遭っているらしい。たとえサギリがいたとて、勝てるかどうかは...」

 

「そんな奴が来たら俺らでも無理だろ。そんときは潔く諦めようぜ」

 

「そんなことするもんか。俺らが死んだら残るのは...ともかく、なんとしてでも生き延びて、人類に復讐しなければならない」

 

「へいへい、ご苦労なこった」

 

「そう言いながらしっかり見張しているよねテザルグ」

 

「んなもん仕方ねぇだろ。頼まれたし、俺だって本当は死にたかねぇ」

 

「そこら辺律儀だよね」

 

「うっせぇ」

 

そんなことを言いながらも、テザルグの視覚は未来を見通していた。

 

テザルグの持つ能力の一つ、未来視。未来の自分の視点を先取りして見ることができるが、見れる未来はほんのコンマ数秒先。ほとんど意味はない...普通ならば。

 

もし、そのコンマ数秒先の自分がさらにコンマ数秒先の未来を先取りして見ていたら?そのループが永遠と続いていたら?その要領で、源流世界のテザルグは数秒先の未来をも見通すことができるようになっていた。魔族として能力を最大限活用しようとしたために手に入れた能力の応用であった。

 

能力の発動条件は、意識して目を開くただこれだけ。瞬きによって解除されてしまうため、大抵の場合連続して十秒ほど先の未来までしか見れないが、それをほんのコンマ数秒のうちに全て視認することができるので、一気に十秒分見てまた数秒後に十秒見るを繰り返すことで永遠と未来を見ることが可能だった。そして、見た未来は行動によって変えられる。それゆえにサギリに警戒を頼まれたのだ。

 

「未来はどんな感じだ?」

 

「どうもこうもねぇよ。普段と何も変わりねぇ。ってか変なことあったらきちんと報告するからいちいち聞くな」

 

「でもでも、やっぱり気になっちゃうじゃん...」

 

「心配すんなよミシュ。というか自分の心配してくれよ?お前自分自身は治せないんだから」

 

「正体不明の毒にも注意だな。全身の激痛に加え、力が使えなくなるらしい」

 

「なんだよそれ。そいつ俺らを皆殺しにするためだけに生まれてきたんじゃねぇの?」

 

「実際に十人殺してるしな。この世界が生み出した特異的存在なのかもしれん」

 

「世界を救うヒーロー様ってことかぁ?ハッ、笑わせる...っ⁉︎」

 

テザルグは未来を見た。九秒後、突如としてこの家の入り口の方が爆発し、大量の木片が飛散して俺らの身体に突き刺さり、建物の倒壊に巻き込まれる...そんな未来だった。

 

「クソっ、何が...!」

 

テザルグは入口の方へ走った。視点を変えれば、見れる未来の視点も変わる。外に出て、これから何が起こるのかをハッキリさせにいく。

 

皆への注意はノストールに任せる。未来を見た俺の思考をノストールが読み取り、皆へ伝達する手筈になっているからだ。適材適所、いつもやっていることをいつものようにやるだけ...その結果の連携だった。

 

「っ!アイツが...!」

 

外に出て、未来視を発動させるテザルグ。その目には、二秒後に男が木の影から身体を出し、持っていた何やら見慣れない大きなものをこちらに向かって発射する光景が映っていた。それは今テザルグが立っている場所を通って三秒後家にぶつかり、爆発を生じさせていた。

 

「親父!!時間停止!!」

 

テザルグのその言葉を聞いたセグレイドは、男...仮谷幸希がロケットランチャーを発射させた数瞬ののち時間停止を発動させた。

 

セグレイドの意識以外の全てが止まる。そして、視界に入っていた謎の飛翔物が一体何なのかを考え...答えは出ず考えるのをやめる。

 

セグレイドの意識時間で十秒ほど経ち、もう十分かと思いセグレイドは時間停止を解除した。

 

だがしかし、ロケット弾は未だ前方方向への推進力を残していた。多少推進力を失ってはいたものの、このままでは家に衝突することに変わりない。セグレイドはギョッとして再度時間停止を発動させた。特に大きなデメリットなく連発できる自らの能力に、セグレイドはこれほど感謝したことはなかっただろう。

 

今度は一分近く時を止めた。先程の停止による速度減衰の程度と今までの経験からして、これくらいは必要だろうというセグレイドの見立てだった。もう流石に十分だろうと判断したセグレイドは、自身の能力を解除した。

 

次の瞬間、今度はセグレイドの目論見通りにロケット弾はその勢いを完全に失い真下へと落下し始めた。弾頭が地面に当たり、爆発を引き起こした。

 

また、時間が止められる。爆風の到達を防ぐためだった。襲撃者に向かっていった爆風も一緒に消えてしまうが、それよりも身の危険を回避する方を優先したようだ。

 

時間停止が解除され、爆風が消える。止まった時を認識できないが、起きた事象からセグレイドの時間停止の仕業だろうと予想した仮谷幸希は苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「ってかなんで撃つ前に気づかれたんだよ...未来視が強化されてたりすんのか?」

 

そう呟きながら仮谷幸希は拳銃を生み出してセグレイドに向けて放つ。しかし、銃弾は届かない。途中で勢いを失って落下してしまうからだ。

 

「チッ...それなら!」

 

仮谷幸希は魔力銃を生成し、特に照準を合わせることなく引き金を引いた。銃口からは水が発射され、周囲を水浸しにしていく。

 

「……親父水から離れろ!!」

 

セグレイドの足に水が触れるよりも前に、テザルグが声を張り上げた。その声を聞き、セグレイドは疑問を持つよりも前にそこを飛び退き、水から距離をとった。未来を見れるテザルグが言うのだから触れたらまずいのだろう...とすぐに信じることができるのは流石は親子といったところか。

 

「やっぱ未来視か...!なら直接切る!」

 

セグレイドに銃撃は通用しない。水を介しての魔力操作も未然に回避された。となると、あとは直接流し込むしかない。触れるか、魔力で作った剣で攻撃するかの二択...仮谷幸希は後者を選んだ。

 

バシャバシャと水を跳ねさせながら仮谷幸希は走り、魔力で剣を作り出してセグレイドに襲い掛かる。

 

「っ...⁉︎」

 

仮谷幸希の身体が急につんのめった。セグレイドの時間停止によって移動の勢いを削がれてしまったのだ。そのことに気づいた仮谷幸希は、前に倒れそうになるのをなんとか抑えて足を前に出し、再度加速しようとする。

 

「……ハァッッ!」

 

そこに迫るは第三の魔族。ノストールは目にも止まらぬ速さで駆け寄ると、そのまま水溜まりを飛び越えて蹴りを放った。気付くのが遅れた仮谷幸希の左肩に飛び蹴りが突き刺さる。

 

「グ...アバッ⁉︎」

 

ノストールの蹴りによって仮谷幸希は自らが生み出した水溜まりに叩きつけられる。そして、蹴りの反作用を利用してノストールは水溜まりのエリアに足を踏み入れることなく脱出していた。

 

「クソッ、なんつー蹴りだよ...」

 

ノストールの能力は思考の盗聴。決して身体強化ではない。にも関わらず老人にしてここまでの威力を発揮できるのは、ひとえに本人の努力の賜物である。直接的に火力を出せる力ではないため、魔族であるノストールが体を鍛えているのは別段不思議なことでもないだろう。

 

「魔力は流せたが...ほぼ無意味か」

 

攻撃された瞬間にノストールに魔力を流すことは一応できていた。しかし、その量は少量。能力は封じることができても、その身体能力までを縛ることはできない。つまり、まだまだあの暴力的な身体能力が発揮されるというわけだ。

 

「相手してやる」

 

ノストールは少なからず感じているであろう魔力の拒絶反応の痛みを感じさせない声で仮谷幸希に語りかけてきた。その隙にテザルグとセグレイドは家の入り口の方へと戻っていく。

 

「逃すかよ!」

 

ノストールの声を完全無視して仮谷幸希はテザルグたちを追おうとする。

 

しかし、地面を蹴り出した勢いが即座に消えてしまう。時間停止の妨害のせいだ。

 

「あの野郎思ったより面倒...だな!」

 

ノストールの体内に入り込んだ魔力のおかげで見ていなくともある程度の位置は掴める。背後からの攻撃を仮谷幸希は軽々と避け...られなかった。

 

回避行動を時間停止で止められてしまったのだ。当然ノストールの攻撃動作も止まってしまったが、そういう連携を何度もやっていたのだろう、いつものことのように空中で動きを変えて攻撃を仕掛けてくる。

 

「ぐっ...こんちくしょうが!!」

 

無理矢理放たれた攻撃に力はそこまで篭っていなかった。それもそのはず、外からはわからないがノストールの全身には今も魔力による痛みが走っている。無理な動きをしたことも考慮すると威力が落ちているのも致し方ない。反応が遅れた仮谷幸希だったが、それでも魔力の盾が間に合い完璧に受け止めることに成功する。

 

「テメェはもう...終わりだ!」

 

魔力の盾を分解してノストールの体内に魔力を流し込む。先ほどの量では魔力が少なかったため身動きを封じることができなかったが、これでもうノストールは身動きひとつ取れなくなる。

 

全身に走る激痛。ノストールの意識は必死にその痛みに耐えようとするものの、もはやどうにもならない。心は最後まで屈さなかったが、生命としての防衛本能のせいで意識が飛んでしまい、地面に倒れ伏す。

 

「まずは一人...って、殺させないつもりか?」

 

仮谷幸希はノストールに向けて銃弾を放ったが、全て勢いを失ってしまった。銃撃は否が応でも止めてくるようだ。おそらく、直接剣などで攻撃しようとしても、その初動をセグレイドは時間停止で妨害してくるだろう。

 

「はぁ...めんど」

 

仮谷幸希はいくつか思案する。グレネードランチャーの弾を作る、というように能力を発動させれば手榴弾を作り出すことはできる。適当に上に放り投げて逃げればノストールを殺すことができるだろう。

 

この場合考慮しなければならないのは、突然ノストールから離れる仮谷幸希の動きをセグレイドが怪しんで止めようとする可能性だ。もし時間停止で止められてしまったら、仮谷幸希自身も手榴弾の爆発を喰らってしまう。やばかったら能力を解除すれば良い話だが...そこまで考えてもう一つの策へと思考は移る。

 

もう一つは至極単純。セグレイドに知られない形で殺すこと。例えば、地中から魔力の剣を出現させて背中から胸にかけて突き刺して殺すとかだ。けれど、これもこれで面倒なことがある。これは先ほどの案にも言えてしまうことだが、テザルグの未来視でノストールの死を予見されて時間停止されることだ。

 

魔力も一種のエネルギーなため、時間停止中に減衰してしまうのだ。実は仮谷幸希はさっきからセグレイドの時間停止をされるたびにノストールに魔力を注ぎ込んでいた。今はまだ魔族たちはそのことに気づいていないようだが、気づかれたらかなり面倒なことになるのは明白だろう。

 

「……じゃあ、こうするか」

 

色々考えた仮谷幸希は、いよいよ行動に移した。その決意をしたのと、動き始めたのはテザルグが瞬きのために目を閉じた瞬間だった。目を閉じる瞬間の未来は見えないだろうという予想から組み上げた行動だったのだろうが、それがテザルグの能力の弱点にマッチしていた。

 

テザルグの見る未来は、その能力を発動した瞬間の全員の行動や意志から派生した未来である。よって、その未来を見終わった瞬間に行動を変えてしまえば、テザルグの見た未来とは全く別の未来を辿ることになる。行動を移す決意をしたのが目を閉じた瞬間だったため、その数瞬前にテザルグが見た未来は何の意味もなさなくなった。それゆえに、これから仮谷幸希が起こす行動を先読みできず、セグレイドへの指示が遅れることとなる。

 

仮谷幸希の手の中に魔力銃が作り出され、魔法弾がテザルグに向けて発射された。セグレイドはそれを見て時間停止を発動させる...が、無意味だった。なにせ、その弾丸に攻撃性能はないのだから。

 

「なっ...⁉︎」

 

勢いを失って地面に落ちた魔法弾が、特大な光と音を周囲に撒き散らした。これにより、テザルグの目が死ぬ、目を開けなければ未来視は使えない。音が聞こえないから発砲音も聞こえない。よって、セグレイドが闇雲に時間停止を使って妨害しようとしても...

 

「ようやく一人目だ」

 

ノストールの死は止められない。

 

「次はどちらにしようかなー」

 

魔法弾の効果が切れ、少しずつ皆の視覚と聴覚が戻りつつあった。そんな中、ゆっくりと仮谷幸希はテザルグたちの方に歩いていった。

 

「……より面倒い方からだな。ってなわけでセグレイドよ死んでくれ」

 

「クソ...なんなんだよお前!なんで俺らを殺そうとすんだよ!」

 

テザルグはそんなことを叫んだ。まぁ当然だが、そんなことを聞こうと思って叫んだわけではないだろう。その証拠に、うまいこと後退りして建物の中に入っていた。仮谷幸希を同じ建物内におびき寄せ、能力を使って完全に動きを封じてしまおうというつもりなのだ。そのまま止め続ければ呼吸もできなくなり、それだけで殺すことができる。

 

「……w」

 

思わず仮谷幸希は笑みをこぼした。テザルグの目的が分かり易すぎて思わず笑ってしまったのだろう。これからやることを考えれば、できれば笑みはこぼさずに隠したかっただろうが...

 

「お前らが魔族だから。理由はそれだけだぜ」

 

そう言いながら仮谷幸希は家の中に足を踏み入れた。

 

次の瞬間、テザルグの能力によって全身が硬直する。

 

「は...はは!引っかかりやがった!これでテメェなんかもう怖かねぇ!」

 

先ほどまでの怯えたような演技の表情から打って変わって、感情のこもった歓喜の表情を浮かべながらヒャッホウ!と声を張り上げるテザルグ。

 

「親父!武器持ってこい武器!俺が仕留める!俺が止めてんだから良いだろ!」

 

「わかったわかった」

 

セグレイドは冷静にそう返したが、内心は高揚感でいっぱいだった。同族を何人も殺した敵討ちを取れるのだ。冷静でいられるはずもない。それでも表に出していないのは、その様子を息子に見られたら確実に弄られると思ったからである。

 

「ほら、使いな」

 

セグレイドは壁に立てかけられていた槍を手にして、テザルグに手渡した。

 

「あまり近付くなよ。返り血を浴びて毒を喰らうなんてことは御免だ」

 

「わーってるよ。そもそもタイミングが重要なんだから集中させてくれ」

 

実はテザルグの能力では行動阻害中の対象に対してどんな干渉をもすることができないのだ。そのため、攻撃するには能力を解除する必要がある。そのせいで思わぬ反撃を喰らう可能性があるが、攻撃するほんの一瞬前に解除することは、ほんの数瞬先を見ることができるテザルグには容易なことであるため、避けられたり反撃されたりといったことは今までに一度もない。

 

……そのまま止め続けて窒息という選択肢があったはずだが、どうやら喜びすぎてセグレイドもテザルグも気づいていないようだ。

 

だが、少し時間のかかるこの方法ではなく、槍での攻撃を選んだことは結果論で言えば正解だった。もっとも、辿る結末は変わらなかったが。

 

「っ゛...⁉︎」

 

「ガ...ッ⁉︎」

 

槍で仮谷幸希を突こうとした瞬間、魔族二人が膝から崩れ落ちた。

 

「ふぃ〜危ない危ない。時間ギリギリでビビったぜ」

 

テザルグの能力が解除されて動けるようになった仮谷幸希は、ぐぐーっと伸びをしていた。

 

「な...ぜ...」

 

「水に触れたわけでもねぇってのに...なぜ毒が...!」

 

「あーそういう勘違いしているわけね」

 

テザルグの能力で封じれるのは身動きのみ。体内に魔力を生成することや、その魔力を体外に出すことはできる。少々魔力効率は悪いが、建物の建材を経由することで魔族たちに魔力を流し込んだのだ。

 

もし、テザルグが意気揚々と自分で槍を取りに行って即刺していたなら、魔力を流す時間などなくそのまま死んでいたかもしれない。喜びすぎ...それが魔族たちの敗因だった。

 

「さーて、かなり面倒だったテメェら二人をようやく殺せてせいせいするぜ。親子で死ぬんだな」

 

両手に拳銃を作り出し、魔族たちの背中に何発か撃ち込んだ。発射された弾丸は何にも遮られることなく命中、貫通する。

 

「……おっ、まだ死んでないのか。地味にしぶといな...今度は頭に撃つか」

 

魔族の反応が消えなかったのでもう一発ずつ銃弾を撃ち込もうとしたその時だった。

 

仮谷幸希や魔族たちが入ってきた入り口とは別にあった裏口から、一人の魔族の少女が入ってきた。治癒能力を持つミシュだった。瀕死の重傷を負っている二人の魔族を治しにきたのだろう。

 

魔族としての彼女の能力は、何度も使い続けてきたことにより並行世界のものよりも強化されており、触れれば即座に治癒させることができる。二人の魔力の拒絶反応も回復できれば、一気に形勢逆転できるだろう。

 

出来れば、の話だが。

 

「そんな無造作に出て良いのか?」

 

ミシュの脳天が撃ち抜かれた。

 

「自己再生も出来るのか?もうちょい撃っとくか」

 

背中から床に倒れ込むミシュに何発も銃弾を撃ち込む仮谷幸希。しばらくして...拍子抜けだという表情を浮かべた。

 

「なんだよ自己再生は出来ないのか。じゃあ出るタイミングが悪かったな」

 

警戒していた回復担当の魔族を殺せて安堵する仮谷幸希。そして、ミシュが殺されて絶望していた二人の魔族の頭に続け様に銃弾を撃ち込んだ。

 

「これであと2人か...」

 

「ねぇ」

 

仮谷幸希に背後から声がかけられる。

 

「私の力、貴方に殺された魔族を蘇らせる力なの」

 

魔族モンネの口から嘘が発せられる。この嘘を、この場にいるもの全員...今回だと仮谷幸希が嘘だと思えば真実へと変貌してしまう。真実になれば、仮谷幸希に殺された魔族16人全員が蘇ることとなる。

 

「……あ?」

 

仮谷幸希は振り返り、モンネの頭に銃口を向けた。

 

「……え?」

 

「ワリィ、何言ってんのかさっぱりわかんねぇや」

 

そう言って仮谷幸希は引き金を引き、モンネを撃ち殺した。

 

「どうせ、わかってても嘘だろって思っちまうようなこと言ったんだろうが...そもそも言語を理解できなきゃ嘘だと思ねぇんだよな」

 

仮谷幸希は最初から対策をしていた。いつどこでもモンネの能力を使われても良いように、ヒヤリングの翻訳を切っていたのだ。他の魔族の発した言葉から情報を得ることができないという問題はあったものの、一番怖いのはモンネの能力の発動であったため、それを封じれたのはデメリットに見合ったメリットがあったといえよう。

 

「これで五人か...村にいる魔族はあと1人、ニスだけ...」

 

仮谷幸希は家の中を見渡した。この家は並行世界で入った家と同じものだった。だがしかし、この中に魔族はもういない。寝たきりだったはずのニスの姿がどこにもないのだ。

 

「ミシュの力で病気から回復した...ってところかな」

 

ヒヤリングの翻訳をオンにしながら仮谷幸希は家から出る。ここにいる魔族がニスだけになったため、魔族の反応からおおよその位置を探ることができるようになったのでその反応を追って外に出たのだ。

 

「……お、あの中か」

 

位置的にもう一つの家の中にいることがわかったので、仮谷幸希はその手にロケットランチャーを生み出した。

 

「これでも喰らえ...!」

 

ロケット弾を建物に撃ち込むと...哀れ爆発四散、木材で出来ている建物は爆ぜて倒壊する。

 

「……生きてるのか、こりゃだいぶ強敵らしいな」

 

魔族の反応が消えなかったため、魔族は生きていると判断する仮谷幸希。

 

次の瞬間、倒壊した建物の瓦礫が斜め上へと吹き飛んだ。そして、ゆっくりと女が立ち上がる。

 

「やって...くれたわね...!」

 

「よぉニス。テメェでここは最後だ覚悟しな」

 

魔族の村での、最後の一対一が始まる。




カリヤくんの知り得ない情報を開示しやすいというのと、カリヤくん視点だとモンネ対策の翻訳切りが初っ端からバレてしまうので第三者視点にしてみました。
次回はニスとの戦闘をカリヤくん視点で進めて行きます。
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