神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8562字。

ニスとの戦闘回です。


小石に込める力、行き着く先は

「よぉニス。テメェでここは最後だ覚悟しな」

 

そう言って俺は拳銃をニスに向け、そのまま引き金を引いた。

 

「っ...!」

 

銃弾が放たれ、ニスに向かって飛んでいく。しかし、空中で勢いをなくして真下へと落ちていった。どうやら、セグレイドの時間停止能力を使われたらしい。それと同時に、ニスの握り込まれた手から何か...発光している小さな石のようなものがこぼれ落ちて、地面に落ちると共に粉状になって消えるのが見えた。

 

「その武器で...みんなを殺したのね!!」

 

今見たものはなんだったのかを考える暇はなかった。ニスは激昂しながらこちらに向けて何かを投げてきた。一見、ただの小石のように見えるが...ニスの能力は物体に他人の能力を込めるというものだ。何が起こるかわからないため、すぐに後ろに飛んで小石から距離を取る。

 

「……何も...起こらない?」

 

能力を込められていないただの小石をブラフで投げたのか...?まずいな、俺がニスの能力を知っていることに勘付かれたかもしれない。

 

「私の無限の能力で...お前を殺してやる!」

 

無限の能力...?確か、物に込めた能力は一度使ったら消えるはず。おそらく、さっき光っていた小石が粉になって消えたのもそれが関係しているのだろう。一度使ったらああやって消滅するようだ。まぁ一度使ったら消えるとは言え、いろんな能力を使えるのは事実だろうけど...無限って...?

 

……やべっ、まさかモンネの...!

 

「……はは、上手くいったわね」

 

ニスが握りしめていた手を開くと、そこには小石があった。その小石はほんの少しだが発光しており...そのまま発光が止まった。小石は消滅しなかった。

 

「少しだけ思っていた内容とは違ったけれど...これで私の力は無限よ」

 

怒気の中に笑みが混ざり、ニスの顔が歪む。

 

「この力で...お前をぐっちゃぐちゃの醜い塊にしてやる!!」

 

ニスのその叫び声に呼応するかのように、先ほど投げられた小石が光り出した。すると、小石の周囲の地面からイバラのようなものが生えてきて、俺の方に襲いかかってくる。

 

「クソッ、わざと発動させなかっただけか!」

 

後ろに飛びながら火炎放射器を作り出し、炎を撒き散らしてイバラを燃やし尽くして攻撃をなんとか回避する。

 

しばらくするとイバラの生成は止まったが...またしても小石は粉にならず残っていた。

 

「無限ってそういうことかよ...!」

 

ニスがモンネの能力を使って真実にした嘘は無限の能力を持つということ。その結果、込められた能力は一度しか使えなかったのが何度でも使用可能になってしまった。

 

ニスが動けているのだから、モンネの力も使ってくることくらい予想できたはずなのに...迂闊だった。ヒヤリングの翻訳をオンにしていなければ、この事態は避けられたはずだ。

 

……後悔はもう辞めだ。これからどうするかを考えなければ...まず、またモンネの力を使われる可能性があるわけだけど、どうやって対策する?ヒヤリングを切るのは一つの手だけど、ニスの声がノイズのように聞こえてしまうため集中を乱してしまう可能性がある。他の魔族とは危険性が段違いだから、あまり許容できないな...かといって、そのままにしておくわけにもいかない。

 

……仕方ない。あまりやりたくはなかったが、あの方法を使うしかない。

 

「やられたよ。けど、二度目はない」

 

魔力銃を作り出し、自分の頭を撃ち抜く。認識改変の魔法弾により、これ以降ニスの発した言葉は全て真実だと自らに思い込ませる。これにより、もう一度モンネの力を使われたとしても嘘が真実になることはない。全てを真実だと思い込んでしまうため、利用されてしまうと少々困ったことにはなるが...まぁバレなきゃ問題ない。

 

「さぁ、一方的な虐殺の再会だ」

 

拳銃を作り出しながら横へと走り、ニスとの間に落ちているイバラの能力の小石を迂回してニスに接近する。

 

「それはこっちのセリフ...!」

 

ニスは服のポケットの中から小石をいくつか取り出すと、それをこちらに向かって投擲してきた。

 

「っぱ能力込めるなら小石だよなぁ〜」

 

俺はそう言いながら投擲された小石を銃弾で撃ち抜いた。小石は弾け飛び、あらぬ方向へと飛んでいく。

 

「取り回しやすいし、ちっさいから幾つも持てる。そして、傍目から見ても見分けがつかないから、適当にばら撒いてしまえばそこらの普通の石に紛れてわからなくなる...お前と俺、思考の根っこが同じなのかも...な!」

 

さらにニスに近づき、銃弾を放った。

 

「っ、この力...!」

 

空中で光が瞬き、真下に銃弾が叩き落とされる。誰の能力かすぐに理解した俺は、すぐにその場を飛び退いた。

 

次の瞬間、俺がさっきまで立っていた場所を光線が突き抜けた。

 

「くっそ、ハント呼びて〜」

 

魔力銃を生み出し、ニスに向けて魔法弾を放つ。光の魔族の能力によって真下へと弾き落とされてしまうが...

 

「でも、その手はもう攻略済みだぜ?」

 

真下に弾き落とされた魔法弾が効力を発揮し、真下へと強力な重力を発生させる。それにより、ニスは無理矢理地面に這いつくばされる。

 

「なん...⁉︎」

 

「ほーらもういっちょ行くぜ?」

 

反撃で飛んでくる光線を避けながら重力の魔法弾を放ち、さらにニスにかかる重力を強めていく。

 

「なんで切れないのよ...!」

 

「おっ、ハルラの力でも使ってんのか?残念切れないんだなぁ」

 

この世に本来存在していないものはハルラの力で切ることができないらしい。そのため、魔法弾も切れないのだ。そして、重力も形がないため切れない。これから逃れるには...

 

「そうするしかねぇよなァ!」

 

ニスは自身の真下に空間置換の裂け目を開き、そこを通って移動することで重力から逃れようとした。それを予見していた俺は、左方向に開かれた裂け目の真下にある地面に向けて魔力弾を何発か撃ち込んだ。今度は、下から上へと重力を生成するように、だ。

 

「捕らえたぜ?」

 

「ぐ...ぬぅ...!!」

 

空間置換の裂け目をちょうど境にして、両方向から重力がかかることによってニスの体は軋んでいく。

 

「もうそこからは逃れようがねぇぜ?ハルラの再生転移も全身の細胞が圧縮されるだけ。他の魔族の力を使ったって...」

 

あっ、やべ一個思いついちゃった。どうしよ...

 

「もういっそのこと死んで楽になった方がいいんじゃねぇか?ほら、その裂け目を閉じればお前はすぐにでも死ねるんだぜ?」

 

あいつは重力を発生させている魔法陣の存在にまだ気づいていない。そこに気づいていないのだから、きっとアレも気づいてない...

 

「……そんなわけなかったか」

 

ニスの姿が一瞬にして消えた。それと同時に、周囲から魔族の気配が完全に消えていた。

 

「アマガリの力...か。元々病弱だったのは他の世界でもそうだろうし、ちょっと離れた並行世界に行けば死んでてもおかしくないわな」

 

アマガリの世界間移動は、移動先の世界に対象が存在していないことが条件だ。おそらく病気のせいで死亡している並行世界に飛んで重力を回避したのだろう。

 

「……来たなっ!」

 

しばらく待つと、俺の背後から魔族の反応が出た。しっかり背後から現れてきたところは素晴らしいが...それゆえに読みやすい!

 

「っ、アーテルか!」

 

前方に飛び退きながら後ろに振り向くと、そこには剣を持ったニスがいた。どう見てもアーテルの精神切断の剣だ。俺は急いで魔力の剣を生み出してその剣を受け止め...

 

「ってマジモンの剣⁉︎」

 

精神切断の剣ではなかった。おそらくは何かしらの物質生成能力で作り出した剣だったのだろう。即席で作った魔力の剣は耐えきれずに折れ、そのまま左腕を浅く切られてしまう。

 

「チッ、予想外したか...」

 

何回か地面を蹴って跳躍し、ニスの追撃を回避する。元々精神切断の剣だと予想していたため全身を魔力で覆っていたのでダメージは最小限に抑えることはできたが...ここに来て予想を外すか。

 

ダメだな、魔族の能力しか使ってこないって先入観がいつのまにか入り込んでしまっている。イバラとかいう知らない能力使ってきたんだから、魔族以外の能力者の力も持ってるはずだ。想定を広げなければ...

 

「つーか、サラッと回復してやがんな。ミシュの治癒能力か?」

 

並行世界にいる間にミシュの治癒能力を使って治したのだろう。おそらくだがミシュの能力では自分自身を治すことはできない。しかし、並行世界のセグレイドがミシュの能力をコピーすることで再生速度は二倍とかなんとか言ってたのだから自分にも治癒をかけることはできるのだろう。

 

多分、物に能力をこめているから発動させているのは自分じゃない、だからニス自身にも治癒を使える...的な感じだろうな。聖杖世界でも似たようなこと俺やってたな...俺自身は魔法は使えないけど、魔道具自身が魔法を発動させてるだけだからってので楔の縛りをすり抜ける奴だ。魔道具をニスによって能力が込められた小石に置き換えれば同じように説明ができるだろう。

 

「ってこの場所は...!」

 

後ろに飛ぼうとしていたのを無理矢理真横へと変える。次の瞬間、背後からイバラが飛び出してきて俺に向かって伸びてくる。どうやらいつのまにか誘い込まれていたようだ。

 

「無限に再利用できるから罠にできんのか...めんどくせぇ!」

 

魔力銃を生み出して真後ろに肩の上から銃口を向けて引き金を引き、火球を放つ。火球によってイバラは燃やされるが...ああ火の粉が飛んでくる!燃え滓が飛んできてアツゥイ!

 

「クッソようやく距離取れた...マーキングしておくか」

 

ニスともイバラとも距離を取れたので、魔力の有無で普通の石と見分けをつけられるように魔力弾を小石に向けて撃ち込んだ。これからは積極的に魔力弾を撃ち込んで、魔力探知で位置を追えるようにしておこう。

 

「よーし落ち着け...結局のところこいつはフロートの下位互換だ」

 

ニスの剣や光線での攻撃を回避しながら思考をまとめる。フロートという複数の能力を扱える魔族との経験を活かして、ニス攻略の手順を導き出していく。

 

「フロートとは違って残機の概念はないから、一度殺せればそれで終わり。魔力を叩き込めば能力を使えなくなる。物に能力を込める特性上罠としての使い道はあるけど、マーキングしたから罠にはならない。そして、一番の違いが戦闘経験の量の差」

 

どう考えてもフロートの方が強かった。その人の能力だけでなく、姿形や身体能力、記憶や戦闘経験まで会得できるのだから、模倣した分だけ戦法が広がる。それに対して、ニスは能力しか模倣できない。その人がどうやってその力を使いこなしていたのか、どんな弱点があるのか...といったことを知らない状態で人の能力を使っている。百パーのポテンシャルなんてものは出せていないはずだ。

 

それなのに俺がここまで苦戦しているのは、単純に魔族たちの能力がそれ単体で強いのと、他にどんな能力を使ってくるかわからないという不確定さと、俺が聖杖世界の時よりもずっと弱いためだ。速度操作や魔法図鑑があればこんな奴瞬殺だろう。だが、それらは今ここにはない。今ある手数でどうやってニスを崩すかが問題だ。

 

「何か一つきっかけがあれば...」

 

光の魔族の力には重力、イバラには炎、精神切断の剣には魔力、といったようにそれぞれに対するカウンターはある。しかし、他の能力で回避されてしまうため決定打にはなり得ない。奴に直接魔力を流し込めるような、そんなきっかけがあれば一気に戦況は変わるのだが...というかそうなったらもう勝ちだな。

 

「ブツブツ呟いてんの気味悪いのよ!その口塞ぎなさい!」

 

そう叫びながらニスは小石を投げてくる。俺は横に飛んでまずは小石から距離を取る。そして魔力銃で小石を撃ち抜いておく。このままだとどうしても視界から外れてしまうので、後でマーキングするってのが難しいからだ。

 

「爆ぜろ!!」

 

爆発すんのか⁉︎じゃあ魔力銃で水を...!

 

……しかし、爆発はしなかった。

 

「またブラフ⁉︎」

 

しまった!ニスの言うことを全て信じてしまう状態だからブラフの可能性に思い至らなかった!嵌められた...!

 

「なん...で?なぜ爆発しない⁉︎」

 

えっ、なにニスも想定外なの?...ダメだ少しは疑えよ認識改変したのはミスだったか?

 

「っ...なら、これでも喰らえ!」

 

また小石が飛んでくる。さっきまでよりも小さいから狙いにくいな...と思いながらも正確に撃ち抜く。

 

「……また不発⁉︎なんなのよその武器...!」

 

……もしかして、魔力弾を能力を込めた物にぶつけると発動しなくなるのか?まぁ考えられなくはないけど...そんな単純なことで良いのか?試してみるか...

 

ニスは能力がきちんと機能していないため困惑でいっぱいになっており周りに目がいっていなかった。その隙に俺は、イバラの能力が込められた小石へと近づき手に取った。

 

「発動しない...マジで魔力で抑えられるのか」

 

能力発動の源である小石に魔力を流せば機能停止する。それさえわかっていれば、やりようはある。

 

「まずは...!」

 

音撃の魔法弾を放ち、爆音をニスの頭に響かせる。ただでさえ混乱していた頭がさらに混乱を引き起こす。

 

「な...揺れ...」

 

ドサリとニスが倒れ込んだ。元病弱の身体には少々キツかったのか...轟音が三半規管を揺さぶりのかもしれないな。ともかく、倒れた拍子にいくつかニスの手から小石がこぼれ落ちた。

 

「次!」

 

光弾のマガジンを魔力銃に装填し、ニスに光弾を放つ。光の弾丸は光の魔族の能力と相殺するため反撃が飛んでこない。牽制をするなら一番の手段だ。

 

「い、痛...!」

 

「……え?当たった?」

 

光弾が光の魔族の能力を貫通した?いや、そんなはずはない。光線を跳ね返しても相殺してきたから光弾でも相殺はできるはず...もしや、こぼれ落ちた石の中に光の魔族の能力が?

 

「今しかねぇ...!」

 

ニスに向かって全速力で走りながらこぼれ落ちた小石に向けて魔力弾を放つ...が、今度は真下へ叩き落とされてしまった。やはり、あの小石を中心にして光の魔族の結界が貼られているようだ。

 

よく考えてみれば当然だ。あの能力は自身を自動的に守り反撃する力。その自身とは能力が宿っている小石であり、ニスではない。ニスは恩恵にあやかっていただけ...そこに弱点があったのだ。

 

「テメェはここで終わりだ!!」

 

ニスに魔力弾を放ち...命中する。そして、ビクンッと身体を跳ねさせガクガクと痛みに苦しむニスにそのまま突進し、魔力を纏わせた足で思い切り蹴飛ばす。ニスはゴロゴロと地面を転がり、ポケットから小石を撒き散らす。

 

「これでもうテメェは能力を使えない。苦しいだろ?すぐに楽にしてやるぜ」

 

地面に倒れ伏すニスに拳銃を向ける。

 

「そん...な、ことにはさ...せない!」

 

俺が引き金を引いたのと、ニスが小石を投げてきたのは同時だった。

 

「なっ...止めた⁉︎」

 

銃弾は空中に作り出された壁のようなもので受け止められてしまった。なんで魔力を流したのに能力を使えるんだ...?

 

……まさか、ニスの能力を封じても止められるのは新たに能力を物に込めることだけで、物に込められた能力はそのまま使えるのか...⁉︎

 

「私が死んだらあとはお婆様だけ...絶対に死ぬわけにはいかないのよ!」

 

「もう動け...⁉︎」

 

急にニスは立ち上がり、そして走り出した。ミシュの能力を使って魔力の拒絶反応から回復したのか!それで転がる最中に落とした小石を拾いに...!

 

「させるか!!」

 

手当たり次第に小石を魔力弾で撃ち抜く。一つ当たるたびにニスの手数が減る。全て撃ち抜けば、ニスは丸裸も同然...だが、全てを妨害するのは無理だった。

 

「あった!」

 

ニスは地面を転がりながら一つの小石を掴み取った。そして、すぐさま口を開いた。

 

「この石があれば...お前なんて一撃で殺せる!!」

 

おいおいマジかよ...そんな能力があんのかよ早く消さねぇと!

 

直接魔力弾を撃ち込んだんじゃまた壁で止められる。ここは地面からニスの足を経由して流し込む...それまでに能力を使われたら終わりだな。

 

間に合え...間に合え!

 

「……間に、あった...?」

 

結構な時間がかかったにも関わらず、俺は死ななかった。ニスの持つ必殺の小石には魔力が流れ込み、もう能力は使えない。

 

「もしかして、嘘だった?」

 

あの石は実はモンネの能力が込められた石で、嘘をついて形勢逆転を狙っていたのか?認識改変のおかげで真実だと思い込んだから回避できた...そういうことで良いのか?

 

「は、はは。随分とまぁ強心臓をお持ちなようで」

 

ニスに拳銃を向け、引き金を引く。

 

「防御したな?なら、もうその力は使えない」

 

放たれた銃弾をニスは小石の能力を使って壁を作り出すことで受け止めた。しばらくすると壁は消え、ニスの手の中から粉がこぼれ落ちる。

 

「モンネの能力が消えたんだから、改変されたお前の力も元に戻ったわけだ。こっからいくら足掻いたところでジリ貧だぜ?」

 

ニスは怯えたような表情でまた走り出した。落ちている小石を拾いに行こうとしたのだろう。

 

「だから無駄だって。お前はもうじき死ぬ」

 

落ちている小石に魔力弾を撃ちながら、ニスには本物の銃弾を撃ち込んでいく。まだ防御系の能力があるようで、ニスはなんとか対処しながら一つの小石を拾い...

 

「速っ⁉︎」

 

ニスの拾い上げた小石が光り出すと、急にニスの動きが加速した。なんとか身を捩って避けようとしたが...ニスの手が俺の肩に触れてそのまま走り抜けていった。

 

「何を...?」

 

小石の発光が止まり、それと同時にニスの動きも止まった。何かしらの加速能力だったのだろうが...なぜ肩に触れるだけだったんだ?攻撃できる余裕はあっただろうに...

 

「なんで...複製できないのよ!!」

 

「うわこっわ...なるほど、俺の能力を複製しようとしてたわけか」

 

この世界の能力ではないから失敗したんだろうな。まぁ、複製できたとしてニスには銃の知識がないから何も作れなかっただろうけど...ってか、一瞬触れるだけで複製できるのか。物に込める必要があるとはいえ随分と条件が緩いな。失敗してくれて助かったぜ。

 

「悪いな、俺の力は特別性なんだ」

 

そう言いながら俺はまずニスに魔力弾を放った。体内に魔力が染み込み、ニスは苦しみ出す。

 

「あ、ぅ...」

 

「これでもう逃げられない」

 

俺はそう言いながら拳銃を作り出し、後ろに倒れ込もうとするニスに銃口を...

 

「っ、空間置換⁉︎」

 

ニスの背後に空間置換の裂け目が開き、そこにニスは飛び込んでいった。あいつ隠し持ってたのか...!

 

「クソ待ちやがれ!」

 

ここで逃すわけにはいかない。今にも閉じつつある空間置換の裂け目に向かって走り、無理矢理体をねじ込んでいく。

 

「あぐっ...ッッッ!!!」

 

空間置換の裂け目が閉じた...右手首から先が向こう側に渡り切る前にだ。空間が断絶されたことにより、俺の右手首がバッツリと切断されてしまう。

 

「チク...ショウ...!」

 

左手で魔力銃を作り出し、回復の魔法弾を右手の切断面に命中させる。俺の手持ちの魔法弾ではこの傷を完全には治せない。逆行再生も、右手が遠すぎて発動できないだろう。だから、傷口を埋めてこれ以上の出血だけは防いでおく。

 

「っ...ここは...?」

 

周囲を見渡す。どこかの山の中のようだ。切り立った崖が前方に聳え立っており、その手前には大きな池があった。そして、その池に繋がる形で洞穴が崖に存在していた。

 

「お、お婆様...!」

 

ニスはバシャバシャと音を立てながら池を渡っていた。どうやら足は着く程度の深さらしい。魔力の拒絶反応が出ていればあんな動きできないってのを考えると、俺が右手の切断に苦しんでいる間にミシュの力を使い切って治癒したか。

 

「水の中に逃げたのは失敗だったな」

 

俺は池のへりまで移動すると、池の水に左手を突っ込んだ。そして魔力を水に流し込む。

 

「空気よりも地面よりも、水のほうがよく魔力を通す」

 

一瞬で魔力はニスのところまで届き、魔力が染み込む。そして、拒絶反応によって倒れ込む。

 

「おっ、ブクブク言ってら。浅くてもあの様子だとそのまま溺れるな」

 

しばらく待つと、ニスの動きが止まった。同時にニスから放たれていた魔族の気配も消えた。

 

……そして、気づいた。

 

「もう一つ...近くに魔族の気配がある?」

 

ニスが死んだのに魔族の気配がまだ残っていた。近くにもう一人魔族がいる。

 

「そういやお婆様って言ってたな...あの洞穴の奥にいるのか?」

 

どこに飛ばされたのかは知らないけれど...思わぬ収穫だな。

 

「ってか本当にどこだここ...」

 

前方は崖。それなら後方は?

 

「おっ、景色がひらけてる...」

 

ちょうど木々が無く、あたりの様子を一望することができた。下を見ると、どうやら元々川が流れていた痕跡が窺えた。川の跡地だったから木がないのだろう。どうも、この池は埋め立てによって作られた人工的なもののようだ。川が枯れたのはそのためだろう。

 

そして、遠くを見渡すとそこは盆地になっており、村が広がっていて...

 

「……ちょっと待て?盆地の村に、枯れた川...」

 

まさか...

 

「ここって、俺が最初に降り立ったフールの村のところか?」

 

どうやら俺の旅は、スタート地点に戻って終着を迎えるようだった。




なんとかニスを撃ち倒し、残るはあと一人。
そして、第一章は次回でラストになります。
それが意味することは...あまり戦闘はしないということです。
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