神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8246字。

第一章 創造の銃の最終話です。


最後の魔族、集まる魔

「なんでこの場所に魔族が...気づかなかったな」

 

俺がこの村にいた時にはもうあの洞穴の方にいたのかな?あの時は魔族探知の使い勝手がまだ分かってなかったし、いろんな場所にいる魔族の微弱な反応を拾っていたりしていたから気づかなくてもおかしくはない。まぁ、俺がここを離れた後に居着いた可能性もあるけど...

 

「……そういや川が枯れたって騒動、結局なんで起きたのか原因はわかっていなかったな...この池を作るために川の水が堰き止められてしまったからってのが理由だったのかな?これも魔族の仕業なのかな...」

 

あまりよくわからないが、川が堰き止められた結果この溜め池は作られている。何か意図があってこの池を魔族は作り出したのだろう。まぁ、単純に川を枯らしてフールの村の食糧事情を疲弊させようとした可能性はあるけどな。

 

「……あっ、そういえばフールにいたあの魔族、川が枯れたのは外の奴らのせいって断言していたけど...もしかして、この場所を調べられないようにするためか?」

 

自分が村長であるように認識改変して権力を持ち、この場所やその奥の洞穴の中にいる魔族のことがバレないように情報操作をする...十分あり得る話だ。

 

そもそもこの場所で魔族が何かをしたとしてもセンフリの戦争のようなことが起こせるわけでもないのだから、魔族が干渉しても人類にはあまり影響を及ぼすことはできない。せいぜい辺境の村が一つ消えるだけだ。となるとここには侵略目的ではなく人類から何かを隠すために干渉していたと考えるのが妥当...うん、そういう面から考えてもこの考察は正しそうだな。

 

「まさか、最初の村で起こったことがこんなに重要だったとはな...」

 

「……お、おい!お前そこで何をしている?」

 

うわっ、急に誰かに声をかけられた。お、俺は怪しいものではありませんよ〜

 

「お前...っ!あの時の魔族殺しの奴じゃないか!」

 

あっ、この人見覚えがある。この世界に来て初日のことだから記憶が曖昧だけど、ドンカラを襲おうとした人たちの内の一人...炎を使ってた男だ。能力を見たのはそいつ一人だけだから印象に残っている。

 

「久しぶりだな」

 

「なんでお前がここに...って、あいつ溺れてる⁉︎」

 

男は池に浮かんでいるニスを見て驚愕の表情を浮かべ、駆け寄ろうとした。

 

「あー気にしなくて良いぞ。そいつ魔族だし、もう死んでる」

 

「えっ⁉︎そ、そうなのか...?」

 

「ああ。ここには奴を追ってきたんだ。んで、あの洞穴にもう一人魔族がいるってんで今から突入するところ」

 

「あの洞穴に魔族が?ち、ちょうど今日の昼頃から何人かで調査しようとしていたんだが...そうか魔族が...」

 

「俺が行ってくるからあんたらは行かなくて良いぜ。戦闘になるだろうからな」

 

「……これまでも、お前一人で魔族と戦ってきた...のか?」

 

「毎回ってわけじゃないけどな。まぁほぼほぼ一人だったけど...頑張った甲斐あって、あそこにいる奴で最後だ」

 

……どうやら、驚きすぎて言葉が出ないらしい。男は口をぱくぱくとさせてなんとか言葉を捻り出そうとする。

 

「わ...わかった。任せて...構わないんだな?」

 

「おうともよ。どーんと任せてくれたまえ。あと、俺は魔族を殺したらそのまま消えるからその後のことは勝手にやってくれよな」

 

俺は一方的に男に色々告げてから池の方へと歩く。後ろにいる男に向けて右手を振りながら...って右手ないんだった。変に驚かせちまったな...

 

「よいしょっと」

 

ボチャンと池の中に飛び込み、底に足をつける。ふくらはぎぐらいまで水かさがあるようで、水を掻き分ける脚が重い。

 

「……遠目じゃわかんなかったけど、どうなってんだこれ?」

 

洞穴の入り口近くまで辿り着いた時、ようやく違和感に気がついた。なぜか洞穴の中がやけに明るかったのだ。水による光の乱反射ではこの明るさは説明できない。何が起こっているんだ?

 

「まぁ明かりをつけなくて良いのは助かるが...ちと怖いな」

 

訝しみながらも俺は洞穴の中に足を踏み入れる。洞穴の中も池のようになっていて、相も変わらず動きにくい。ほんとにこんなところに魔族がいるのか?魔族探知の反応からして、そう遠くはなさそうなんだけど...

 

「最後の魔族...か。どんな能力なんだろうな」

 

これから相手するのは、いまだに何も情報がない魔族だ。唯一ある情報は、ニスにお婆様と呼ばれていたことから高齢の女性であることのみ...この環境だし、あまり機敏な動きはしてこないだろう。身体強化系の能力を持っていなければ...の話だが。

 

「ニスが使ってた能力の中にあったのかな...?あったら嬉しいけど...変な先入観を持つ方がダメか。いつものように、初見の敵と戦う感覚で戦うべきだな」

 

思考を口に出して整理しながら俺は進み続ける。妙に明るい洞穴の中で緩い坂道を登り、水をかき分けながら進む...ん?

 

「なんで水の高さが変わってねぇんだ?坂登ったろ俺」

 

坂を登ったはずなのに、ふくらはぎまで水かさがあった。どう考えても自然ではない。妙に明るいのといい、なんかいろんな異変が起きてるな...

 

「うわ、今度はなんだ?鉱石...?」

 

明るい洞穴の中で、その光を反射して一際輝いているものが壁から露出していた。見た限り、何かしらの鉱石や宝石の類のようだった。それも、一つ二つだなんてレベルではない。奥に進むにつれてどんどんその数は増えて行き、宝石で壁が埋め尽くされていた。

 

「……魔族の能力...なのか?」

 

何の能力かはわからないが、この異常な光景は魔族の能力の仕業と見てまず間違い無いだろう。周辺環境を捻じ曲げる...みたいな感じか?

 

「逆に混乱するなこれ。考えないでおこう...」

 

バシャバシャと水音が洞穴内に響き渡る。誰かが近づいてきていることは魔族も気づいているだろう。いつ攻撃されても良いように思考の世界から戻って意識を前方に向ける。

 

「……そろそろか」

 

前方向からの反響音がだんだん強くなってきた。終点が近い証拠だ。そして、魔族の反応からしてもそこに魔族はいる。

 

左手に拳銃を作り出し、ゆっくり前に進む。そして魔族が拒絶反応を起こさないかな〜というあわよくばくらいの期待感で水に浸かっている脚から魔力を放出しておく。

 

「……バレバレか」

 

この角を曲がったら魔族がいる。ゆっくり顔を出して様子を伺おう...と思っていたら、宝石で埋め尽くされた壁が綺麗に光を反射しており、この位置からでも魔族を視認することができた。事前の推察通り、老齢の女性の魔族だな...そして、その魔族と目が合っていた。

 

「出てきなさい。私は危害を加えない」

 

魔族は反射する壁越しに俺の目を見ながらそう言い放った。

 

「……ああ、出てやるよ」

 

けど、俺はバリバリ危害を加えるぜ?

 

バッと角を飛び出し、魔族に銃口を向けて引き金を引いた。火薬の爆ぜる音が洞穴内に響き渡る。

 

排出された薬莢が水にポチャンと音を立てながら落ち、波紋を放射状に立たせる。

 

その二つの音の間に、もう二つ別の音が挟まった。

 

一つは、天井の宝石が急に落下して銃弾に当たった音。もう一つは、銃弾と宝石が一緒になって魔族の足元に落ちた際の水の音だ。

 

「チッ...!」

 

銃弾は正体不明の能力で防がれてしまったが、その間に魔力が水の中を駆け巡っている。魔力を流し込んで能力を封じてしまえば俺の勝ち...!

 

「……そうカッカするんじゃない。まずは話をしようじゃないか」

 

っ⁉︎流した魔力が魔族の目の前に集まっていく...⁉︎

 

「ほう、これが噂に聞く毒とやらか。普段は見えないが、固めると紫色を示す...面白い」

 

「面白がってる場合かな!」

 

魔力銃を作り出し、魔族に光弾を放つ。

 

「……だから、話をしようと言っているではないか」

 

しかし、光弾は当たらない。宝石が落ちてきたり、足元の水が弾丸のように飛んでいったり、さっき集められた魔力の塊が飛んだりと、とにかく色々なものが光弾に衝突して軌道を逸らされたり打ち消されてしまった。

 

「ふむ...まずは、おとなしくしてもらうところからか。すまないが、前言を一時撤回する」

 

魔族がそう言った瞬間だった。

 

「……っっ⁉︎」

 

急に息苦しくなり、左手で喉を押さえる。

 

「な、にを...!」

 

「なに、この場の二酸化炭素を一時的に君の元に集めただけだ。脅すようで悪いが、もう一度言う。話をしよう」

 

「っ...わか、った...よ」

 

魔力銃を消し、先ほど作り出して外に放出した魔力も消滅させる。

 

「よろしい。では、話を始めようか」

 

魔族がそう言うと、息苦しさが一気に解消された。

 

「まず、カリヤくん...でよかったかい?」

 

「なぜ、俺の名前を...?」

 

「それは後で説明しよう。私の名はワドだ。別に覚えなくても良いが、今この場くらいまでは記憶に留めておいてくれ」

 

なんだこいつ...底が見えなくて気味が悪いな。

 

「……で?話ってなんだよ。こっちはする話一つもねぇぜ?」

 

「あるじゃないか共通の話題が。私の大切な仲間たちを殺してくれたっていう話がね」

 

「……恨まないでくれよ?こっちも仕事で魔族殺してんだ。それにお前ら、本来は存在しないはずの生物だ。それを殺したからって恨まれるのは御免だぜ」

 

「恨み...か。その感情はあるが、別にそれを発散しようとして君と話をしようとしたわけではない」

 

何が目的なのかまるでわからないな...一応警戒はしておかないとな。

 

「そうだな...まずは、おめでとうとでも言っておこうか」

 

「……は?おめでとうだと?」

 

「君の活躍によって、私以外の魔族は全員死んだ。この世界は守られたわけだ。人類vs魔族の勝者を称賛するのは当然だろう?」

 

ダメだこいつのことがよくわからない。なんなんだこいつ...本当に魔族か?

 

「……ってか、なんで魔族が全員死んだって知ってんだよ。俺の名前を知ってんのもそうだし...魔族の方はサギリが伝えたとしても、サギリは俺の名前を知らない。そこから情報が伝わることはない...なぜ知っている?」

 

「それは私の力が関係している。さっきから君が気にしている、この光景もそのせいさ」

 

「お前...ワドの能力か。結局なんなんだ?」

 

「単純に言えば、何かを引き寄せる力さ。対象は物だけでなく、情報といった形のないものも含まれる。例えば、旅をしている君の話し声もね」

 

何かを引き寄せる能力...水かさが坂を登っても変わらなかったのは、ワドの能力で引き寄せられていたからか。宝石や光、魔力も同じ理由だろう。そういやさっき二酸化炭素を集めたとかも言ってたな。結構便利だし、普通に戦闘にも使える良い力だな。

 

「といっても、こうやって光や水、宝石が集まってきているのは私の意図には反するんだがね。使おうとしなくても勝手に集まってくるのはなかなか面倒なんだ...だがきちんと扱えば、遠くの情報を仕入れることもできる。これが面白くてねぇ...君なんて特にね」

 

「俺ぇ?」

 

「君独り言多いからさ。いろんな話聞けて面白かったよ。別の世界から来た、魔族を殺す旅をする男...口調も特徴的だったから探りやすかった」

 

「そりゃまぁそこらの人とは口調違うだろうけどさぁ...」

 

「それに、言葉が違うのも興味深い。我々はこの身に備わる特異な技を力と呼んでいるが、君は能力と呼称している。文化の違いというものなのだろうか...」

 

「あーもう俺のことはいいんだよ。さっさと話を戻してくれ」

 

「おっとすまない。久しぶりの話し相手で興が乗ってしまった...君も苛ついていることだし、さっさと本題に入ろう。今からする話は、君の疑問を解消するための話だ」

 

「……なぜそんな話をする?必要ないだろ」

 

「そうだな...君に私たちのことを知ってもらいたい、それで理由は十分だろう?」

 

「十分じゃねぇけど...まぁいい。別に覚えるつもりはねぇからな」

 

「なら、一方的に話すとしよう。まずは全ての始まり...最初の魔族である私の誕生だ。最初に生まれたからなのか、私は成し遂げるべき使命と、それを遂行するためにこれから生まれてくる仲間の人数を知った。それ以降に生まれた魔族は使命しか刷り込まれていないようだな」

 

へぇ、ワドが最初に生まれた魔族だったんだ。誰が最初にーとかそんなこと考えたことなかったな。

 

「使命である人類の抹殺...バラバラに動いていては失敗するのは明白だった。だから私は自らの力を使い、生まれた魔族をあの村に引き寄せ、これから生まれる魔族の魂を引き寄せて子供に宿した。それが、あの村の成り立ちだ」

 

あーそういえば魔族があの村に集結していて、ちゃんと血が繋がった家族関係であることを不思議に感じたこともあったっけ。そういうことだったんだな...

 

「……ってか、魂を引き寄せることもできるのか...」

 

「私に引き寄せられないものはない。その気ならば、並行世界を引き寄せてこの源流世界と統合することも可能だ」

 

「な、なんでもありかよ...」

 

……こいつを殺すとか無理じゃね?殺すビジョンが思いつかないし、なんならこっちが瞬殺されそうな気がする。

 

「……何を怯えている。私は危害を加える気はないと言ったはずだ。それは私が死ぬまで変わらない」

 

「なんだ?じゃあ無抵抗に殺されてくれるってか?」

 

「ああ、その通りだ」

 

……マジ?

 

「君を殺すことは容易だ。だが、君を殺したところで魔族の使命は達成されない。私ももう歳だ。一人では世界を終わらせる前に寿命で死んでしまうからな」

 

「だから...諦めるって?」

 

「完全に諦めたわけではない。これ以降魔族が生まれてくることはないが、それを人々は知り得ない。疑心暗鬼になって殺しあってくれる可能性はごく僅かだがあるからな。同胞たちが各地でそういう疑心の芽を作ってくれたから、私たちの死後に使命を達成できる可能性は残されている」

 

……確かにその可能性はある。けど、俺の使命は魔族を全員排除することまで。それ以降どうなるかまで関与する必要はない。まぁ多分、いつか魔族がもういないことに自然に気づいて、魔族のいない元の生活に戻っていくことだろう。

 

「それに、私も一つ火種を残したんでね。その火がすぐに消えるのか、それとも燃え盛る炎に成長して世界を包むのかは...君次第だ」

 

「……よくわからないが、もう話はお終いか?いかにももう話し終えたみたいな顔してんだからそうなんだろ?」

 

「ああそうさね。もう殺してくれても構わない...が、少しだけ待っていてくれ」

 

そう言いながらワドは手を前に伸ばした。すると、俺の背後から何かがかっ飛んできてその手に収まる。能力使うとそんなこともできるのか...どこから飛んできたんよってかあれ何?

 

「……葉巻?」

 

「火、あるかい?」

 

「しゃーねぇなぁ」

 

多分あの葉巻を吸い終わるまで、いくら攻撃しようともワドの能力で防がれてしまうだろう。大人しく火をつけにいくことにした。

 

「ほれ」

 

ワドに近づき、魔力銃の先端から炎をライターのように点火して葉巻に火をつけてやる。

 

「本当はその力についても色々と聞きたいところだが...面倒臭がられそうだからやめておこう。吸い終わるまで待っていてくれ」

 

「……さっきお前寿命で死ぬだろうとか抜かしてたが、死ぬのそれのせいじゃね?」

 

「それはあり得ない。有害物質は先に力を使って抽出して除外しているからな」

 

「そこまでして吸いたい理由がわからん...」

 

「なんだ経験無しか。どうだい吸ってみるか?」

 

「遠慮するよ...というか早く吸い切ってくれ」

 

「それは随分と無茶な発言だな。数十分はかかるぞ」

 

「おいおい嘘だろ...そんなに待たなきゃいけないのか?俺は嫌だぞ」

 

「……仕方なしか。最後の最後まで楽しみたかったのだが、吸わせてくれただけでも感謝すべきか」

 

ワドは葉巻を口に咥えたまま両手を横に広げた。

 

「ほら、どこにでも撃つといい」

 

「じゃあ遠慮なく...サヨナラだ、魔族ワド」

 

拳銃を作り出した俺は、左手で照準を定め...頭に三発ほど鉛玉を撃ち込んだ。

 

「魔族の気配が消えた...これで全員討伐完了か」

 

魔族の気配が途切れたことで、ワドの死亡を確認する。

 

「まさか、最後の一人がこんなにあっさり終わるとはな...ちょっと味気ない気もするが、まぁいいか」

 

これにてこの世界での仕事は終わりだな。もうやることもないし、さっさとこの世界から離脱するか。

 

「えーっと、世界から出るには死ぬしかないんだったよな...うわー死ぬことはちょっと慣れつつあるけど、自分でそれをするってのはいざやるってなると足がすくむな...」

 

しかもこれ、気分が落ち込んでいるからするわけでもなく、前向きな気持ちでの自殺ってのが物凄いチグハグ感...

 

「……神様にもああ言った手前、怖気ついてちゃダメだな。これで次の世界に行けるんだ。楽しみだって気持ちでいよう」

 

そう呟きながら俺は自身のこめかみに銃を突きつける。

 

「ふぅ...行くか。さらば、源流世界」

 

俺はゆっくり、引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、ん...⁉︎」

 

放たれた弾丸は天井の宝石に命中した。

 

俺の右腕が勝手に動き出し左手を弾いたため、弾丸は俺の頭ではなく天井を撃ち抜いたのだ。

 

「ふむ、あの女...余を無理矢理引き出すとはな」

 

「っ⁉︎」

 

俺の口が勝手に動いた...⁉︎

 

「魔王...!!」

 

ワドの奴、俺の中にいた魔王を表層に引き摺り出したのか...!そのせいで、俺と魔王の意識が同時に出てきてやがる!奴が言ってた火種ってのはこのことか...!

 

「褒美に、貴様らの悲願とやらを叶えてやるのもやぶさかではないな。あの世で喜ぶが良い。ワド、貴様だけは魔族と認めてやろう」

 

「クソっ、勝手に俺の口で喋んな!」

 

「ふむ...ならば、まずは貴様から始末するとしよう。余に体を明け渡し、貴様は底に沈むがいい」

 

「ハッ、どうやってだ?」

 

魔王のせいで体のほとんどは動かせないが、唯一左腕だけは俺の支配下にあった。聖杖世界の時とほとんど同じだが、あの時と違うのは右手を失っていること。俺がこの左手を支配している限り、たとえ魔王が能力を使えるようになっていたとしても銃を持って撃つことは叶わない。

 

「それに...勝負はついている」

 

俺がそう呟いた瞬間だった。天井...先ほど弾丸が命中した辺りが光り出したのだ。

 

「まさか、こんな使い方になるとはな」

 

「なっ...魔力銃⁉︎」

 

魔王が俺の左手に握られている魔力銃を見て驚愕する。

 

放たれた弾丸は、銃弾ではなく魔法弾だった。一発銃弾を頭に撃ち込んだところで即死できるかわからなかったため、より確実に、そして痛みを感じる間も無く死ねるように魔法弾を使っていたのだ。それが功を奏した。

 

発動した魔法は...純粋なる破壊。

 

「魔王さんよぉ...一緒に死のうや」

 

魔法弾が起動して、天井の宝石が破壊される。

 

それが引き起こすのは、洞穴の落盤。

 

大量の宝石と土砂が俺と魔王に降り注ぎ...そこで俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの状況でよく戻ってこれたのう...」

 

「だな。俺もヒヤヒヤしたぜ」

 

無事に死ぬことができ、源流世界から神様のいる空間に帰還した俺は、ほっと一息ついていた。

 

「まさかまた乗っ取られかけるとは...どうせなら俺の身体から外に出して欲しかったぜ。魔力のない世界じゃ直ぐに消滅していただろうし、その方が早く解決してたのになぁ」

 

「まぁ仕方あるまい。それを望むのは高望みというものじゃ」

 

「それもそうだな...んで、魔王はどうなった?まだ俺の中にいるのか?」

 

「そうじゃな。じゃが、無理矢理表に出された反動なのか、魔王はお主の魂の奥底に移動しておるな。しばらくの間は表に出てくることはないじゃろう」

 

「そっか...喜んで良いもんなのかなぁ?」

 

魔王が魂の奥底に移動したってことは、ますます俺の中に潜り込んだってことだろ?そんなことされたら魔王を追い出すのが難しくなっちゃうじゃん困るんだけど。

 

「……まぁいいや。神様、次の世界がどんなのか教えてくれ。その間に次に持ってく能力を考えておくから」

 

「わかった。じゃがその前に、お主に与えた銃の力を取り出...せないのう困った」

 

「あーもしかしてあれか?速度操作と同じでまた魔王がガッチリホールドしちゃってるわけ?」

 

「どうやらそのようじゃのう...ワシにはどうすることもできん」

 

「しゃーないな。んじゃっ、次の世界について教えてくれ」

 

「まぁそう急くな。今次の世界を選定するから待っておれ。その間に貰う能力について考えんじゃな」

 

「りょーかい」

 

俺の世界を渡る旅は続く。さて、次はどんな能力にしようか...




これにて第一章 創造の銃は完結です!
執筆当初は、魔族の村襲撃イベントと魔王乗っ取りイベントしか決定事項が無かったのですが、ライブ感で書き続けたら少しずつストーリーと前後関係のつながりが出来てきて、最終的には矛盾無しでそこそこ無双するシナリオが出来たかなと思います。

さて、次回からは第二章 衝撃の剣に移ります。
そして、新学期の始まりとストックの減少など諸々の理由で一週間お休みします。
次回投稿は10月10日です。
どんなストーリー、能力になるかは...次回をお楽しみにってことで、第二章もよろしくお願いします。
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