新たな世界への旅立ちと、能力のチラ見せの回です。
能力の解説自体は次回になります。
魔王代理と衝撃の剣
「カリヤよ、お主の決めた能力と相性の良さそうな世界にしたいから先にどんな能力か教えてくれないかのう?」
「えーなんだよそれ先に言えよずっと神様待ちだったのに」
とっくに能力は決めていたからずっと神様のこと待ってたのに...それならそうと早めに言ってくれよ。
「すまなかったのう。それで、どんな能力じゃ?」
「あー...なぁ神様、どんな能力かを俺の頭の中を覗いて把握できたりしない?なんかちょっと口で説明するには難解な能力になっちゃったんだよね」
「仕方ないのう...どれどれ?」
頭の中で考えた能力をイメージする。
「ふむ...了解した。その通りに能力を作るとしよう。それで、この能力だと...この世界かのう」
「お、決まったか。どんな世界だ?」
「そこはさっきまでお主がいた世界よりも、お主の言う聖杖世界に近い。魔王や魔物、魔法があって人類と争っておる」
「おーこりゃまた良い世界だな」
「聖杖世界と違うのは、既に魔王軍が人類を支配しているところじゃな」
「……は?え?...あそっか、よくよく考えてみればそういう世界があっても不思議じゃないのか。なんかびっくりしちゃった...すまん続けてくれ」
人類を支配するなんて魔王軍許せんっと一瞬なってしまったが、まぁそういう世界があっても良いよな。もしかしたら人類の方が巨悪の可能性だってあるし、何も知らないのに口を出すのはダメだな、気をつけないと。
「その世界では、魔王が代替わりする際に魔王軍が一時的に王城に引き上げるタイミングで人類側が反旗を翻し、戻ってきた魔王軍によって鎮圧されるのを幾度となく繰り返しておる」
「何度負けても諦めない人類サイドは流石だけど、もうそのタイミングで人類が動いてくるってわかってるだろうに同じ過ちを繰り返す魔王軍は何やってんだ?よくそれで勝てるな...」
「まぁ実力差があるからのう。じゃが、これから起こる戦争ではこうはならん」
「人類が勝つってことか?」
「そうじゃな...そうなんじゃが...」
「あっ、もしかしてそれが今回の修正案件か?人類側の重要人物が魂の初期化で生まれなくなっちゃったから、俺がそこに混じって魔王を倒せってこと?聖杖世界みたいなことすりゃいいわけだな?」
「それの真逆じゃ」
「……真逆?どゆこと?」
「この世界で魂の初期化の影響を受けたのはただ一人...魔王だけじゃ。そもそも魔王が生まれなかったことで人類側は大勝利...結果として、本来死ぬはずだった人が死なず、本来なら死なない魔物が多く死んでしまった。お主には魔王となって戦争による生死を正史と同じようにして欲しいのじゃ」
……最後に韻踏んできたなとか、そんなことを考える余裕はなかった。
「俺に...魔王になれって?ってか魔王が魂の初期化ってどういうことだよ。魂の初期化は人間にしか影響しないはずだろ?」
「それは聖杖世界の魔族と同じじゃ。この世界の魔王並びに魔物は全員人間の魂が宿っている。そもそも、この世界は一人の神が創り出したもので、人間も魔物もルーツは同じ...じゃから人間の魂が使われておるのじゃ」
「……魔王が初期化の影響を受けた理由はわかった。そして、その世界での人間vs魔王の戦争がなぜ起こっているのかってのもなんとなくわかった。その世界を作った神がわざと競わせているってことなんだろ?そこは理解できたんだが...」
「どうしたんじゃ?」
「いや、さ。俺に魔王の代わりをしろってことはさ...人間を殺せってことだよな?そんなの無理だぞ?」
「そうは言ってものう...やってもらわないと困る」
「そうは言ってもってのは俺のセリフだ!人殺しとかできるかよ⁉︎」
「人を傷つけることはできるじゃろう?そして、魔族といった人の形をした生き物を殺すこともできる。ならば、人を殺すこともできよう」
「倫理観の問題なんだよ...人は殺したくないって言っているんだ」
「確かにお主は人を殺したことはない。相手が魔族だと分かっていても、姿が大切な者だと傷をつけることすら出来なくなってしまう精神性の持ち主じゃ。じゃが...お主も人は殺せる」
「んだと...?」
「魔族も人の魂を宿しておったから、考えようによっては人間じゃ。聖杖世界でも源流世界でもお主は魔族を一瞬の迷いもなく殺せておる。それと普通の人間を殺すこと...何が違う?」
「……それは...」
「おそらくじゃが、お主は使命ならば人でも殺せる」
「そんなわけ...」
「どうしても人を殺したくないのならば、お主の認識に手を加えて殺すべき人間を魔物のような姿に見せることもできるが、どうじゃ?」
「……はぁ...」
俺は頭を抱えた。俺になんてことを神様はさせようとしているんだ...ったく、魔族も人間も変わらないから殺せるだろうだなんて神様目線やめてくれよ。
「他の世界に変えるってのは出来ないのか?」
「変えることもできるが、できればやめてほしいのう。この世界は今までと違い、既に起きた正史との乖離を修復するのではなく、これから起こる正史との乖離を防ぐことができる。今を逃すと乖離の規模がデカくなりすぎて修復不可能になってしまうから、今やるしかないんじゃ」
「……覚悟を決めるしか、ないってことか?」
神様は無言で頷いた。
「……わかった...よ。やるしかないんだろ?それじゃあやってやるよ仕方ねぇなァ!」
「怒らせてしまってすまない。じゃが、お主なら必ず成し遂げてくれると信じておる」
「御託はいい。さっさと他の連絡事項を伝えな」
「そうじゃな...お主には先ほど伝えられた能力とは別の能力も与えようと思っておる。それは、標的の識別じゃ。間違った者を殺してしまったり、殺し損ねがいたら困るからのう」
「魔族探知みたいなもんだな、了解」
「その能力は、お主の配下となる魔物全員に共有させることになっておる。これからお主を送り込む世界の神と連携をとっておるから、これで魔物が勝手に殺してはいけない人を殺す、なんてことにはならないはずじゃ」
「……ん?なんかサラッと重要なこと言わなかった?向こうの世界の神と連携を取ってるって何?」
「そのままの意味じゃ。向こうの神も、自身の作った世界が改変されることは防ぎたい...じゃからワシらに協力してくれることになったのじゃ。ただお主を送り込んだところで、お主を魔王扱いして従う者など居らぬじゃろう。そういうところをサポートしてくれることになっておる」
「なるほどね...そりゃありがたい。面倒なことをスキップ出来るからな」
魔物たちが俺に従わないってのが一番面倒だからな。そこに手間を取らせることなく使命に集中できるのは良いことだ。使命が使命なだけに、他のことにかまけてられるほどのメンタルの余裕ないだろうしな...
「他は?もう終わりか?」
「そうじゃな...残りは後でもいいかのう。向こうの神に聞いた方が良いこともあるやもしれぬし...じゃあさっそく、能力を付与させて向こうに送り込むとするか」
神様の手の上に光の球が生み出され、それが俺の体内へと入り込んでいく。
「転移位置は、魔王城。魔物たちが魔王再臨の儀式をしておるからその儀式に割り込んで転移させることになっておる。それじゃあ...行くぞ」
足元の地面が消滅し、落下し始める。
新たな世界...それは、俺が人殺しになる舞台だ。
気がつくと、周囲は光に満ちていた。どうやら、足元に描かれている巨大な魔法陣が光っているようだ。これが魔王再臨の儀式とやらの魔法陣だろうか。
しばらくすると、魔法陣から放たれる光が収まっていく。段々と周囲の様子がわかるようになっていき...大量の、それも多岐にわたる種類の魔物たちが前方に大勢いることがわかった。
一瞬、反射的に攻撃しに行きそうになったがグッと堪える。今回は魔物は仲間だ。殺す対象ではない...ああいや、よく見たらなんか頭の上にバツ印がついている魔物がいるな。あれがこれから起こる戦争で死ぬべき魔物ってこと...か?
「今こそ!我らが魔王様が再臨され...へ?ニンゲン?」
神官のような格好をした一つ目の魔物が、俺の方を見て困惑しているようだった。そりゃそうだよな。魔王が出てくるはずなのに人間が出てきたんだから、驚かないわけない。
「な、なぜニンゲンがここに⁉︎」
「どこから入ってきた⁉︎」
「魔王様は⁉︎」
ザワザワと魔物たちが騒ぎ出す。
「まさか儀式が失敗した?」
「アイツのせいだ!」
「殺せ!殺せ!」
「魔王様を返せー!!」
はぁ、黙ってりゃどんどん変な方向に進んでいきやがって...
「静まれ」
カツンッと一歩前に移動しながら俺は声を出した。それを見た魔物たちは、本能的な恐怖を感じたのか一瞬ビクッと体が跳ねた。
「あ...相手は一人だ!やっちまえ!」
「静まれと言っている」
もう一歩前に足を踏み出しながら...俺は己の魂の中にいる魔王を呼び出す。俺が自身の体の制御を一瞬緩めれば、魔王は嬉々として乗っ取ろうとしてくる。だが、今の魔王は疲弊しており、俺を乗っ取るほどの力はない。俺の体内に魔力がないのも相まって、すぐに俺の元に制御権が戻ってくる。
しかし、一瞬でも体を明け渡したのは事実。魔王の放つ魔の気配が周りに漏れ出たことだろう。
「っ...⁉︎」
「今のは...」
魔物たちが魔王の気配に反応していた。この世界の魔王とは違うものの、やはり感じるものはあるのだろう。一応それなりにリスクもある方法だったから、結果が出てくれないと困るところだったぜ...
「紛れもない魔の気配...まさか、魔王...様?」
「いかにも。俺は人の身ではあるが、その身に魔王を宿した存在。今代の魔王の代理を成すものだ」
「魔王様の...代理?」
『その辺は私が説明しようっ!!』
うわっ、なんか急に城の天井が光り出した⁉︎
「な、なんじゃありゃあ...ロリ神?」
天井の方を見ると、後光に照らされた神々しい少女が浮遊していた。
『ロリとはなんだロリとは!それは貴様がそう見えてるだけであるぞ不敬極まりない!』
えーっと...もしかして、アレがこの世界の神様とやらか?
「ま、マリスタ様⁉︎我らのもとに...顕現して下さった!!」
へーマリスタって名前なのね。んで、その存在は結構広く知られているようだな。こうやって顕現してくることもあると...
『説明するぞ〜皆のものよく聞け〜』
なんか、軽い神様だな。でもこいつ、自分で創り出した存在同士を争わせてるんだよな...
『この者は別世界からやってきた魔王の代理をする人間だ。とある事情で本物の魔王が生まれなくなっちゃったから、これから起こる戦争が終わるまで代わりにみんなのことを導いてくれるよ』
「な、なるほど...」
うわ、なにこれあの子が話す内容が頭の中にスッと入ってくる。これ、洗脳じみた効果だったりするのかな。あの子の言うことは正しくて疑う余地がないというふうに思い込まされているような感覚がする。
「で、ですがマリスタ様。なぜ代理がニンゲンなのですか?我らの中の誰かに力を与えて代理とする方法もあるのでは...」
『それしても良いけど、それだとすぐ負けてみんな死ぬよ。その未来を、この人間が変えてくれる。まぁ魔王側が負けることには変わりないけどね』
「そ、そんな⁉︎代理を立てるなら戦争に勝てる者にしてくださればよろしいでしょう⁉︎」
『それはちょっとこっちにも事情があって無理。でも、この人間が居れば魔王側の犠牲者は最小限で、人類側は大損害。確かに魔王が討ち取られて負けるけれども、また新しい魔王を再臨すればすぐにひっくり返せる程度になるから、実質勝ちみたいなもんだよね』
そういや、人類側が勝利するってことは魔王が死ぬってことだ。つまり、この世界での最後の使命は、俺が討ち取られることってことになるのか...それと同時にこの世界からも離脱できるし、効率が良いな。
『だけどここで一つ制限!今までの戦争では自由に殺し殺されをやってきたと思うけど、色々イレギュラーがあるから今回ばかりは誰が死ぬか決めさせてもらうよ〜皆の衆頭上に注目!』
魔物たちが自分の頭の上を見たり、誰かの頭の上を見る。
『バツ印がついている人は残念ながら死ぬことが確定しちゃってます!彼の頭の上にも映っているように、人類の方も同じのがついてるから、死ぬにしても何人か殺っちゃってから輪廻転生の輪に行くようにね〜』
うわホントだ気づいてなかったけど俺の頭の上にも印付いているんだな。魔王の代役として死ぬ必要があるからか。
『誰を殺すのか、しっかり名簿にまとめておいたからちゃんと目を通しておいてね〜それじゃあ後のことは任せた!しっかり彼の指示に従うように!仮谷くんも、何かあったら私のこと呼ぶんだぞ〜いつでも顕現してやるからな〜』
そう言い残してマリスタは消えていった。
「……ってわけだ。何か、疑問はあるか?」
威厳が出ているかわからないが、それっぽい雰囲気を醸し出しながら声を出す。舐められちゃ困るからな...気を抜かないようにしないと。
「……マリスタ様が仰られたことに、疑問はない。だが...」
「本当にお前が、魔王様の代わりを成せるのか?」
おっ、なんか力自慢っぽい鬼がこっちに近づいてきた。
「ああ。それだけの力は持っていると自負している」
「そうか...ならばその力、試させてもらおう。トースリ殿!」
「ハッ!」
鬼に呼ばれて前に出てきたのは...ケンタウロスっぽい魔物だった。
「いかがなさいましたか、クレスト将軍殿」
将軍...ってことは、この鬼が軍を率いているわけだ。強そうだねぇ...
「マリスタ様の仰られることに間違いはない。だが、確認はしておきたい。この者が魔王様の代理たりえる力の持ち主か、模擬戦にて調べてもらいたい」
「承知!」
おっと俺の意見は聞かずに勝手に決めやがったな?まぁ、能力の試運転がてら力を見せつけられると思えば別に良いか。
「トースリ殿は軍で私に次ぐ力の持ち主であり、訓練中の模擬戦では負け無しの強者。トースリ殿に勝てたならば...その力を認め、いかなる指示にも従いましょう。皆の衆!それで良いな!」
鬼のクレストはこの場にいる魔物たちに呼びかけた。クレストがそう言うなら...と魔物たちは頷いていた。異論無しってわけだ。
「いいぜ。それで認めてもらえるってんなら乗ってやるさ。場所は?」
「この場でよろしいかと。幾重にも折り重なった防御結界があるゆえ、一番被害は出ないでしょう」
「わかった。なら、さっそく...」
『ちょっとちょっと何面白いこと勝手に始めようとしているのさ〜』
うわまた出てきた。いつでも顕現してやるとか言ってたが、自分から出てくんなよ。
『そいつの力には私も興味あるからね〜観戦させてもらうよ』
「……邪魔が入ったが、始めようぜ」
『むむ〜無視された...それはそれで面白いね』
ああもう気が散る...集中しろ。腑抜けた姿は見せられない。
「では...行くぞ」
トースリは前足でカツンと床を叩くと、床に真っ黒な穴が開いてそこから槍のようなものが飛び出した。ケンタウロスなのに弓矢じゃないんだ...と、槍を掴むトースリの姿を見て思ってしまう。
「ああ、いつでもかかってきな」
俺は軽く二、三回手を叩いた。そして、ゆっくりと叩いた手を開くと、そこにはオレンジ色の小さな球体が生まれていた。それをゆっくり引き伸ばすように手を広げていき...
「衝撃の剣、完成」
この手に、オレンジ色のレイピアのような剣が完成する。
「っ...!」
その剣を構えた瞬間、トースリがものすごい速さで迫ってきた。そして、俺の頭めがけて槍で突いてくる。これを避けられずに死ぬようなら魔王の代理になどなれない...そう言いたげな攻撃だ。
「随分と速いが...」
槍の先端にレイピアの刀身を当てた。その瞬間、槍やトースリの動きが完全に静止した。
「まだ遅い」
トースリの槍をレイピアで下から押し上げ、そのままトースリの上半身を蹴りつける。
「ぬぅ...っ!今、何が...」
「次、行くぜ」
オレンジ色のレイピアが形を変える。体積が増し、ショートソードくらいの長さの剣へと姿を変える。
「ハァッ!!」
オレンジの剣を振る。トースリはそれを槍で受け止めようとするが...
「なっ...⁉︎」
剣は槍をすり抜けた。そして、トースリの身体すらもすり抜けてそのまま振り抜かれる。
「力が...!」
トースリは片膝をついた。剣で斬られたことにより、生命力や魔力、気力といったものが吸い取られてしまったからだ。
「次だ」
「っ!」
俺が次の斬撃を繰り出そうとした瞬間、トースリは真後ろへと跳躍してオレンジの剣の攻撃を回避する。そして着地と同時に槍が消滅し、代わりに地面の穴から弓矢が召喚された。
「おっ、やっぱ弓使うのか」
トースリはパカラパカラと走りながらこちらに向けて矢を放ってくる。
「残念だけど、俺に矢は効かない」
さらに大きさを増したオレンジの剣で矢に触れると、矢はエネルギーを失って真下へと自由落下する。矢の軌道を見切り、切るのではなく触れるだけで防御は完成する。そして、一本落とすたびに少しずつ剣のサイズは大きくなっていく。
「ならば...!」
トースリは変わらず走り続けていくが...その足音が微妙に重いものへと変化していた。気がつくと、空中に穴が開いておりそこには剣の切っ先のようなものが見えていた。
「うわーめっちゃ見覚えある攻撃...けど、無駄だ」
全方向から同時に剣が飛んでくる。普通ならこんな攻撃、凌ぐことはできない。
「剣以外にも出来るんでな」
俺の手に握られていたオレンジの剣が流動し、周囲を包むドーム状の壁のように展開する。そこに射出された剣が衝突し...そのエネルギーが吸収されて威力が無に帰す。
「試運転あらかた済んだな...残るは最後の機能だけか。それじゃあ、それの実演と共にこの模擬戦を終わらせることにしよう」
オレンジ色の物体が流動し、俺の手元に戻る。そして槍のような形へと変形した。
前足を大きく上げてこちら側に方向転換するトースリを横目に見ながら、槍を地面に突き刺す。
「解放」
次の瞬間、地面が揺れる。前足を上げていて後ろ足だけで立っていたトースリはその揺れに耐えることができず、ゴロンと横に倒れる。
「次は空気に...」
地面から槍を抜き、穂先を転んでいるトースリの方に向ける。
「解放」
空気に槍を刺していると解釈することで、貯められたエネルギーを放出する。空気が振動し、塊のようになってトースリに向けて飛んでいく。
「む...ぐぅッッ!!」
トースリが後ろへと吹き飛んでいき、壁に叩きつけられる。
『おーそこまで!』
天井付近で浮いているマリスタがキャッキャと喜びながら模擬戦の終了を告げた。
『力の差は歴然、これで魔王代理の資格はあると認めてくれたかな?』
「力の差は歴然...か。少し手加減されていたような気もするけどね」
「む...気づかれてしまったか」
壁に叩きつけられていたトースリが立ち上がる。随分とまぁピンピンとしていた。
「やろうと思えば攻撃できたタイミングで攻撃してこない。攻撃も俺が対応できる程度の速度だったしな。模擬戦とはいえ、流石に手を抜きすぎだ」
「だが、それでもあの速度の攻撃は普通のニンゲンには捌けない。手を抜いていたことを見抜いていたことも併せて、実力は十分。さらには正体不明の特殊な力...」
トースリとクレストが俺の近くまで寄ってきて、跪いた。
「我らは貴方様に従います。ぜひその力で、我らを導きマリスタ様の思惑通りに此度の戦争を終結させて...」
「跪くな、面を上げろ」
俺がそう言うと、二人はバッと我先にと頭を上げた。そんな勢いでやって首痛めないのか...?
「そんなに畏まらなくていい。お前らが敬い従うのは魔王であって俺じゃない。俺はただの代理なんだから、もっとフランクでいい」
そう言い放つと、二人はポカンとした顔をして互いに顔を見合わせた。俺も最初は威厳のある感じで行こうと思っていたが、こうやって平伏されると忌避感のようなものが内から湧いてきたからその方向で行くのは辞めにした。
「気軽にカリヤとでも呼んでくれ。他の奴らも、気軽に話しかけてこい。その方が俺の仕事もしやすい」
『くふふ、ただの人間にしては面白いね。これから楽しみだ』
マリスタがどこかへと消えていく。
残されたのは、気軽に接してこいと言われて困惑している大勢の魔物たちと、魔王代理になった俺。
こうして、新たな世界での魔王生活が始まったのだった。
カリヤくんの能力の引き出しは基本的に過去の経験から来ているので、今回の能力である衝撃の剣も元ネタがあります。
一つは聖杖世界のアライブが持っていた変形できる武器の魔道具。
もう一つが源流世界のアーテルの能力である精神切断の剣。
これらの要素を抽出し、新たな要素を組み合わせたのが衝撃の剣になります。
まぁ実際は順序が逆で、衝撃の剣の能力をカリヤくんが思いつくために上記のものを登場させたんですけどね。
詳しい能力の説明は次回しますが、今回の描写から予想してみるのも楽しい...のかも?