神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8276字。

カリヤくんこんな性格だっけ...という感じに作者自身もなってしまっている今日この頃。


性格変化と衰弱死

「体動かす方がなんか楽だな...」

 

俺は魔王の間の中で能力を使って遊んでいた。初殺人で負った精神的ダメージを紛らわせるため...ではなく、暇なのを解消しているだけだ。殺人による心のダメージはなんとほぼゼロ。心の傷を負わない自分に対する嘘だろという衝撃以外はノーダメで、何もすることがない退屈の方がよっぽど辛かった。ここ数日は人類側の動きもあんま無かったからな...

 

「魔王代理なんだから一人で残るとか迂闊な行動するなって怒られたけどさ...人の上に立って指示するとか無理なんだって」

 

前線に立って戦う方が俺には向いている。側から見れば人間にしか見えないのだから、諜報をすることもできる。魔王代理だからってそれをさせないのは勿体無いと思うのだが...

 

「もう抜け出してやろうかな...人間の俺なら魔術も扱えるだろうし、習得しに外に出るってのはアリだよな?そうだそうしよう」

 

『辞めておきなさい。みんなを困らせたいの?』

 

魔王の間の扉に手をかけた瞬間、マリスタに声をかけられた。

 

「つってもさ、やることなくて死にそうなんだよ。それともなんだ?俺と戦って暇つぶしでもしてくれるってのか?」

 

『どういう発想よ...大人しく座ってなさい。そろそろ報告が来る』

 

「へいへい、そうですかーっと」

 

スタスタと歩いて魔王の座に座る。しばらくすると、扉が開け放たれて諜報部副長のロザドが入ってきた。

 

「報告致します!南西の町ウルドラがカダーラより派遣された兵によって陥落!」

 

「ほう、既に占領した村を足がかりにして兵を集め、一気に攻め込んだわけか。それで?被害状況は?」

 

「攻め込んだ兵士に死印持ちがおらず、反撃が出来なかった模様です。死印付きの町の住人を襲おうとしたものの、兵に阻まれて何もすることもできなかったとか...」

 

「なるほどな...まぁ、そういうこともあるか」

 

兵士の中に死印付きがいないって、結構凄いことだよな...だって、その隊は戦争で死者を一人も出さなかったってことだろ?どれだけの強者が集まっているのやら...

 

「それと、もう一つ報告なのですが...死印付きの警備兵たちが勝ち目がないことを悟って投降したようで、ニンゲンどもの捕虜になっていると推察されます。決定付けられた死の恐怖に駆られての行動なのでしょうが...」

 

「ふむ、捕虜か...そいつら全員死印付きなんだろ?情報を喋られても面倒だ。さっさと始末するぞ」

 

「御意...とはいえ、どうやって始末しますか?占領下にあるウルドラに潜入するのは我々諜報部でも至難の業...死印付きの者では到底無理でしょう。死印無しの者に向かわせるしか...」

 

「なら、俺が行く」

 

席を降り、扉へ向かって歩く。

 

「……代理様⁉︎」

 

「俺なら多少は怪しまれるだろうが、町の中に入ることもできるだろう。魔物と、ついでに死印付きの人間も殺して来てやる。お前らは別の場所の諜報を続けてくれ」

 

「そんな、代理様直々に動く必要は...」

 

「なら、それより早く事態解決できる方法を提示してみろ。それが出来ないなら、俺を止めるんじゃない」

 

「……なら魔法でこの状況を...しかし、遠隔で殺せる者は...」

 

「無理そうだな。じゃあここを通せ。そして、探すべきはそのような魔法を扱う者ではなく転移のハサミツだ」

 

俺はそう告げて、部屋の外に出ようとする。

 

「お待ちください!必ず代案を...」

 

「煩いぞ」

 

俺はその手に握られていた衝撃の剣を振り抜き、ロザドを斬り裂いた。生命力と気力、魔力が衝撃に変換されて貯蔵される。

 

「な、にを...」

 

「なぁ、俺は魔王代理だ。なら、俺の言うことにちゃんと従ってくれよ。それが出来ないのなら、せめて魔王扱いせずにフランクに来やがれ。従わず反抗する癖に恐れ敬う...こりゃ飛んだ矛盾だろ?悪いとこ取りしてねぇで良いとこ取りしろってんだ」

 

倒れ伏すロザドにそう言い放って俺は魔王の間の外に出る。

 

「ハサミツを呼べ」

 

門番にそう伝えて俺は歩き続ける。

 

『……貴方、性格変わった?』

 

「そうか?」

 

『魔物とはいえ仲間。それを斬るとか、貴方には無理そうに見えるのだけれど』

 

「前ならそうだったな。けど、今じゃ目的のためならなんでも斬れる...そんな気がする。多分、魔王の精神性に引っ張られてるんだろうな」

 

魔王に寄生されてから、言動が多少荒っぽくなって攻撃に残虐性が出てきていることは自覚している。今回はその傾向が顕著に出ているのだろう。一時的な衰弱によって肉体を乗っ取ることが出来なくなったから、まずは精神を消耗させて抵抗しにくくさせようという魂胆なのだろう。

 

「変なことしちまう前に、早くやるべきことをやらねばならない。そのためにも、邪魔する奴は味方でもなんでも斬る。もちろん、死印無しは殺さないけどな」

 

さっさとやるべきことを終わらせてこの世界を出る。それが精神衛生上一番良い選択だろう。この心が殺人の実感を覚えて完全に壊れてしまう前に、そして壊れた精神を魔王が容易く乗っ取ってしまうその前に、全て終わらせるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「転移ありがとうハサミツ。また呼ばれたら来てくれ」

 

「御意」

 

転移によってハサミツの姿が消える。転移ができる奴が味方にいると本当に楽だな...聖杖世界が懐かしく感じる。ゼロ時間転移とは違うけど、次元転移によって行ったことある場所なら大体すぐに移動できたからな。それに比べて源流世界は大変だった。ずっと馬車か徒歩だったからな...ファストトラベルが無い異世界とかやってらんねぇわ。

 

『サラッとまた私をパシリにしようとしていない?』

 

「仕方ないだろお前がいないと帰れないんだから。徒歩で歩いて魔王城に戻るとか無理だぜ?」

 

『私、そんなに暇じゃないのだけれど』

 

「いや暇だろ...んじゃなきゃ呼んでないのに何度も現れてくんのおかしいだろ。あと、目立つから姿は隠してくれ。神を引き連れる一般人なんているわけねぇからな」

 

『しょうがないなぁ...上から見ているから、何かあったら呼びなさい』

 

後光と共にマリスタが消える。よし、これで一人だ。

 

「指定通り北東から。少し薄汚れた服を着て、手荷物はボロボロの鞄のみ。そして痩せこけていて目にクマがあるどう見ても衰弱した容姿...カバーシナリオは万全だな」

 

これからウルドラに潜入するにあたって、普通の格好では怪しまれると思い変装をすることにした。北東...魔王城があり、未だに魔王軍に占領されている町がある方角からボロボロの人がやってくれば、占領された町から命からがら逃げてきた町人というふうに見てくれることだろう。

 

手荷物や服は、武具を製作する部門の魔物たちがボロボロに見える物を一から仕立ててくれた。それを衝撃の剣で斬ることで、衝撃への変換によりさらに傷やくたびれ感を与えて自然なボロボロ具合に仕上げた。

 

容姿も同じだ。衝撃の剣で自らを斬ることによって生命エネルギーを一部変換し、痩せこけた身体や疲労感を作り出したのだ。こんな能力の使い方、能力を考えた当初は思いつきもしなかったが、案外その時になればアイデアが湧いてくるものだな。

 

「よし、行くか」

 

ゆっくりとウルドラに向けて歩みを進める。出来るだけゆっくり、もう歩き疲れたといったような速度で歩いていく。まぁ実際、衝撃の剣で作り出した疲労のせいで結構歩くので精一杯なんだがな。

 

「はぁ...ふぅ...これ、変換したエネルギーを元に戻す機能付けときゃ良かったな...」

 

そんなことする必要ないだろと思って付けなかったのだが、このままだと到着してもしばらくの間休憩に時間を使うしかないからタイムロスになってしまう。衝撃に変換した生命エネルギーを元に戻せたらすぐに回復して動けたのに...失敗だったな。

 

「まぁしゃーない...後悔先に立たずだ」

 

今は歩き続けるしかない。とは言っても、この丘を越えればウルドラの町はすぐだ。転移の瞬間を見られるわけにはいかないため、町からの視界を遮れる丘の手前側に転移することになったが、町を囲う壁のようなものはないためこんな小さな丘でも町からの視界は遮られる。壁があったらもっと離れた場所に出ざるを得なかったが、壁がないおかげで近くに転移できて助かった。

 

「よ、し...やっと着いた...」

 

演技ではないガチの息切れを起こしながら、ウルドラにたどり着く。

 

「お、おい君!大丈夫か!」

 

よし、周囲を見張っている兵士に見つけてもらえたな。いかに怪しまれずに中に入るか...ここからが勝負だ。

 

「そんなボロボロで...何があった?」

 

「カダーラが人の手に落ちたと知った魔物たちがこれまで以上の圧政を敷いてきて...もう生きてはいけないと思い、カダーラに向けて逃げ出してきたのですが、もう体力が...」

 

「そんなことが...安心しろ。このウルドラもカダーラと同様に我らの支配下にある。ここまで来ればもう危険はない」

 

「そ、それは本当か...良かった...」

 

よし、良い感じに演技できたかな。

 

俺はウルドラが人類の手に落ちたことの報告を受けてからすぐにここまで転移してきた。ほぼタイムラグはないだろう。よって、普通の情報伝達ではまだそのことは広まっていないと予想できる。そこでカダーラが本来の目的地だったと主張することで、ウルドラが人類の手に落ちたことを知らなかったといったふうに見せることができるわけだ。知っていたら怪しいからな...じゃあいつ出発したんだよって話になるし。

 

「ほら、あそこの十字路を右に曲がったところに医療班がいる。そこで癒してもらうと良い」

 

「ありがとうございます...」

 

ヨタヨタと歩いてウルドラの中に入る。潜入成功だ。

 

「ひとまず、言われた通りに行ってみるか」

 

兵士の中には死印付きはいなかったらしい。それなのに医療班が陣取っているということは、怪我をした人がいるということ。つまり、魔物たちが襲おうとした死印付きの町の住人がいる可能性が高いというわけだ。まぁ、それを守ろうとした兵士も混じってはいるだろうし、もしも居たところでその場で殺せるかは別問題だが、とりあえず行ってみるに越したことはない。

 

「……まだ清掃終わってないのか」

 

歩いていると、血溜まりや肉片、魔物の死体が転がっているところを何箇所か見つけた。いろんな種類の魔物がいたことが見た感じでわかる。ちょっとグロいな...だが、こいつらは皆死印付き。死ぬ定めにあった魔物だ。だから特に何も思わない。それよりも重要なのは、死を拒んで捕虜になった魔物の方だ。

 

「探し出して殺さないと...」

 

魔王が人間だ...みたいなことを喋られる前に殺してしまう必要がある。そのための衝撃エネルギーは既に溜めてあるから、見つけたら即極小の針のようなものを地面に這わせて魔物の足に突き刺せば、次の瞬間には内側から爆ぜて殺すことができる。

 

急に死んだら怪しまれそうだけど、人間ならともかく、魔物ならそういうことが起きても不思議じゃないと思ってくれるんじゃないかな。なんらかのセーフティで情報を喋ろうとしたら遠隔で殺されるようになっているだとか、自爆して攻撃してきたみたいなふうに思ってくれると嬉しい。

 

ちなみに、エネルギー溜めは今もやっている。足裏に衝撃の剣を這わせることにより、俺の足に返ってくる反作用を吸収しているのだ。これをすることにより、足に疲労が溜まることも防いでいる。今のこの体力じゃ、これが意外と重要なんだよな...

 

「……っと、あそこか」

 

医療班がいる場所を見つけた。おー、ちゃんと死印付きの負傷者が何人かいるな。

 

「ここからは...狙えそうだけどやめておくか」

 

この距離から極小サイズの針を差し込んで衝撃を流し込み、内側から弾けさせることは出来そうだが、まぁ急にそんなことになれば不自然極まりないからやめておく。そんなこと考えてたらいつまで経っても殺せないだろとは思うが...他にもやりようはあるから、この方法ではやらないってだけだ。

 

「とりあえず近づいて...」

 

よろよろと歩きながら医療班のいる場所に近づく。

 

「む?君は...」

 

医療班のうちの一人がこっちに気づいて近づいてきた。

 

「ボロボロじゃないか。怪我はないか?ひとまずこっちに来るといい肩を貸そう」

 

矢継ぎ早に言葉を浴びせられ、答える間も無く肩を貸してもらいそのまま足跡の野戦病院らしきテントの下に連れて来られる。

 

「ふむ、見たところ外傷は特になし...だが衰弱が酷いな。魔物の魔法の影響か...?」

 

「あ、あの。俺はここの住人じゃなくて...」

 

「なに?ならなぜこんなにもボロボロなんだ?」

 

「他の町から遠路はるばる逃げてきたところで...」

 

「なるほど。つまり、この衰弱は逃亡による心理的疲労と長時間の歩行による肉体的疲労、栄養失調などなどが原因というわけだな。それならここで出来ることはほぼない。ひとまず横になって安静にしていると良い。支給の食料をいくつか貰ってこよう」

 

早い早いよ喋るのが...行動も早いな、あの軍医もうどっか行っちまったよ...とりあえずここに横になっていれば良いんだな?

 

ってか、こういう衰弱には何も出来ないってことは、別に回復系の魔術が使える人が集まってるってわけじゃないんだな。それか、傷の治療は出来るけど気力や生命力といったものまでは治せないってところか。

 

そんなことを考えながら横になり、辺りをキョロキョロと見回す。現在進行形で傷を治療してもらっている人や、手当が終わって横になっている人が十数人いるな。いずれも消毒をしたり包帯を巻いたりといった治療をされているのを見る限り、傷を治せる魔術は使えないみたいだな。

 

……なるほど、観察していてわかったが、横になっている人たちには死印が付いているが、現在治療中の人には付いていない。そして、そっちの人たちの傷は横になっている人のよりも浅そうだ。つまり、そちらは町民を守ろうとして軽い傷を負っただけの兵士で、傷が軽かったから後回しにされて今治療中ということなのだろう。

 

「……いけるか」

 

体に巻き付けていた衝撃の剣を動かし、地面の中に突入させる。そのまま地面の中を潜航し、横になっている町民の背中をゆっくり斬りつける。

 

斬られた町民はそのことには気づかない。斬られたことによって本来発生する痛みや傷を全て衝撃エネルギーとして変換してしまうからだ。町民にはなんの痕跡も残らない。

 

「ウッ...」

 

痕跡の残らないその攻撃は町民を死に誘う。生命力が一気に抜き取られ、衰弱する。

 

「……っ⁉︎おいお前大丈夫か⁉︎」

 

別の軍医が町民の異変に気づき、近づいて肩を叩いた。あぁ、ダメじゃないかそんなことしちゃ。

 

「づ...あがぁっっ!!!」

 

軍医が肩を叩いたことにより、町民の肩の骨が砕けた。衝撃の剣の切断によって、俺のカバンや服がボロボロになったように彼の骨や内臓はボロボロになっている。肩を叩いたりはもちろん、もう寝返りを打ったり軽く咳き込んだだけでも骨がイカれていたことだろう。

 

多少不自然ではあるが、少なくとも突然弾け飛ぶよりかは自然な出来事だし、治療がこの程度の規模ならば、医療ミスや菌などによる容体の急変、見抜くことのできなかった魔物の魔法による影響などを疑う方が自然だろう。まさかちょうど今来たばかりの俺を疑うことはあるまい。

 

「一体何が...」

 

「ッッッ...!!」

 

痛みに悶えて声を上げたため、町民の肋骨が砕けたようだ。こうなればもう彼は助からないだろう。よし、次だ。ここから少し先、今苦しんでいる町民の一つ隣にいる奴の背中を斬り裂く。

 

「あそこも急変だと⁉︎」

 

よしよし上手いこと混乱させられているな。傷ついた兵士の治療をしていた他の軍医たちもこっちに集まってきた。この流れで他の町民の奴らの背中も斬りつけていく。

 

「クソッ、何が...!」

 

「魔物の仕業か...?」

 

おっと、そうだな。魔物の仕業に見せかけるならばあの兵士たちにもやっておく必要があるか。上手いこと狙って浅く斬り裂けば...!

 

「くっ...急に体が...!」

 

傷ついた兵士たちがバタバタと倒れていく。生命力だけを抜き取ったため死にはしないが、これでさらに撹乱することができたはず。残る問題は...

 

「おい、これはどういう状況だ?」

 

食料を抱えた軍医が戻ってきた。こいつはそこそこ頭が回りそうだし、俺が来た途端にこうなりだしたことに違和感を持つかもしれない。こいつの気づき次第では、次にすべきことが変わってくる...!

 

「わかりません!急に患者たちが苦しみ出して...!」

 

「触れただけでも骨が砕けました!おそらく魔物の魔法のせいだと...!」

 

「皆下がれ。俺が診る」

 

えっ、こいつもしかしてここの責任者だったりする?一番実力ある感じなのか?ちょっと...困るな。

 

「ふむ、衰弱が酷いな。それに、骨が脆くなっていると...病気でこうなることは起こり得ないな。十中八九魔法によるものだろう。症状が出たのはいつだ?」

 

「一、二分ほど前にあの者が最初に苦しみ出し、そこから連続的に何人も...という感じです」

 

「なるほど...兵の奴らが倒れたのは町民よりも後か?」

 

「その通りです」

 

「見たところ、兵の奴らの方が症状は浅いな...傷の深さによって症状に違いがある、ということか?」

 

よし、狙い通り!兵士の奴らも軽く衰弱させたことで、こいつらに傷をつけた魔物の能力のせいで衰弱が起きた、といったように見せかけることに成功したな。兵士が町民を庇って攻撃を受けようとすれば、魔物たちは死印無しを殺すわけにはいかないので攻撃の手を緩め、結果的に傷は浅くなる。町民との傷の深さの差に合わせて衰弱度合いを変えれば、原因を誤認させることが可能なのだ。

 

「にしても、衰弱か...こいつの症状と似ているな」

 

やっぱりそこに行き着くか...けど、流石に俺がやったという思考には達しないはずだ。俺に外傷は無かったと先にこいつ自身が確認しているため、傷という共通点を既に見つけているこいつには関連性を見出すことはできないはず。まぁヤバくなったら俺や周りの軍医ごと衝撃の剣で切り裂いて、道中で知らない間に魔物の魔法を受けていた俺がここに来たことで起こったパンデミック...といったシナリオにしてしまえばいいけど、どうなることやら...

 

「こいつも魔法の影響を...?いや、こいつの場合はただの旅での衰弱だ。偶然の一致か...とりあえずお前はこれでも食っとけ」

 

「あっ、はい」

 

軍医から食料を投げ渡された。しめしめ、騙されてやんのと思いながら俺はそれに口をつける...あんま美味しくない。魔王城で食う飯の方が何倍も美味しかったな...そっか、支配者側だし良い食材が集まって来んのか。それに軍の支給品だからレーションみたいなもんだし、味がアレでも仕方ないか。

 

「……流石に衰弱が酷すぎる。町民はもう助からないと見て良いだろう。リソースを全て兵士に割け。栄養価の高い食事を用意するんだ。それで奴らは助かる」

 

お、もう切り捨てたか。懸命な判断だな。

 

「町民はそこらに捨て置いて病床を開けるんだ今すぐに。何かあったら俺が責任を取る...そこのお前も、もう動けるだろう協力してくれ。兵士に寝場所を開けて欲しい」

 

えっ、俺に言ってる?まぁ動けなくはないからな...しゃーない従っておくか。

 

「仕方ない...って、うおっとと」

 

起き上がって立ちあがろうとしたら、思ったよりも勢いが出てしまった。ってか先ほどまでの疲れはどこに...?

 

「さっきのを食べたから...?」

 

「ほら突っ立ってないで退いてくれ。あと、町民をぞんざいに扱ったことは他言無用で頼む」

 

「あっ、ちょっ、あんま背中押すな...!」

 

テントの外に押し出される。もう、なんか色々と行動が早すぎる奴だったな...

 

「えーっと?さっき食べた奴は何かしらの魔術が込められていて、即座に栄養補給ができる完全食...とかだったのかな?ようわからんが、まぁいっか」

 

まだこの世界の魔法や魔術のことを知らないから、そんな力が本当にあるのかとかを考えることには意味はない。そういうものだと飲み込んで進むのが得策だろう。

 

「……良し、とりあえず町民は...あと一人か。んで、あと捕虜の魔物ね」

 

神様から与えられた力を使って名簿を取り出す。この名簿を見れば、死因付きの人や魔物がどこの誰なのかが一目瞭然だ。そして、先ほど衰弱死させた町民の数と照合すると、一人だけ町民の生き残りがいることがわかった。

 

次はそいつの始末だ。そしてその次は捕虜となった魔物たちの始末。このウルドラでの仕事は始まったばかりだ。




衝撃の剣は色々できるように見えて、意外と手数が少なかったりするので創造の銃よりも攻撃レパートリーが少なくなってしまうんですよね...最近スランプ気味なのですが、頑張って乗り越えて良い戦闘シーンを書けるようにしてみせます。
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