神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8393字。

久しぶりの戦闘だ...聖杖世界の経験があるのと能力が能力なので、しばらくはだいぶ無双してしまうかも。


村を想う心、捻じ曲げられた認識

「カリヤが止めるって...武器も無しにできるのか⁉︎」

 

農民たちを迎え撃とうとしたら、ユーリに止められた。

 

「俺の能力を忘れたか〜?」

 

「そうか物質生成能力...!いや、それで武器を作れたとしても、この人数差じゃ無理や!」

 

「まぁちとブランクはあるが...お前らが戦い慣れていないように、アイツらも戦い慣れてねぇはずだ。人に刃を向けるってことがどういうことか、ちゃーんと理解らせてやるよ」

 

ユーリとカミレの静止を振り切り、俺は農民たちのもとへと向かう。

 

「……脚がある状態で戦うのは久しぶりだな。頭と実際の動きのズレに注意しねぇと」

 

ぴょんぴょんと飛び跳ねたり、足を細かく動かしたりして、脚の動きを確認しながら農民に近づく。頭の動きに身体がちゃんとついてきてさえくれれば、あんな数だけの奴ら相手に負けるはずはないだろう。

 

「神様ー今から三分...いや、五分だけ能力無制限にしてくれやー」

 

『了解した』

 

よし、これで能力を使う準備もできた。一応長めにしておいたけど、正直使わないのが一番だ。

 

銃火器の中にはゴム弾だったりスタンガンだったりと、殺傷能力の低い武器がある。だが、あくまで低いだけ。完全に非殺傷ではないのだ。当たりどころが悪ければ死ぬし、後遺症が残ったりもする。それに、あまり無闇に銃を見せたく無い。この世界の技術を超えた物品だからな。見せたら面倒なことになるのは目に見えている。

 

だから、出来れば能力は使わないでおきたい。必要だったら即使うけど、上手いこと使わずにこの場を切り抜けたいところだ。

 

「……やぁやぁ、こんなところまで何しに来たんですかい?そんな物まで持って」

 

先んじて農民たちに声をかけた。

 

「お前...さっき入ろうとしてきた奴か」

 

おっと、顔を覚えられてたみたいだ。門前払いしてきたあの村人が情報共有でもしてたのか?

 

「質問に答えてくれませんかねぇ?そんなあからさまな武器持って何しに来たんだって聞いてんだよ」

 

「俺らはアイツらに用があんだ。関係ねぇならさっさと道開けな」

 

「それともなんだ?お前アイツらの仲間か?そうだよな旅人とかほざいてたらしいがわざわざ山登ってくる奴なんているわけねぇ。テメェもあのクソドンカラの一味か!」

 

「おぉ勝手に話が進んでいくなぁ...で?もし俺があの人らの仲間だったら、何されちまうってんだ?その怖〜い武器で襲われちまうのか?」

 

「ああ。痛い目見たくなければ退くんだな」

 

鋤を目の前に突きつけられる。

 

「……お前さ、こうやって鋤を突きつけているわけだけど、本気で俺を殺す気ある?」

 

「は?」

 

「ブルっちまって意味わかんないこと言い出したぜコイツ」

 

「俺の言ってることがわからないなら、尚更ダメだよテメェら」

 

掌底で鋤を下から上に叩きつける。先端部分を叩いたため勢いよく鋤が持ち上がり、それに引っ張られて農民は態勢を崩す。

 

「オラァッ!」

 

勢いよく腹を蹴り付け、後ろに尻餅をつかせる。そして鋤を持つ手を踏みつけ、ガッと鋤を奪い取る。

 

「ほーらビビっちまってんじゃん。人傷つける覚悟無いやつが略奪とか考えんなよ」

 

周りの五人は一歩後退りをしていた。ものの数秒で一人をのめしたことに驚きを隠せないらしい。正直俺も驚いてる。意外と身体がすんなり動いてくれてびっくりだ。

 

「て、テメェ...!」

 

腰がひけながらも農民の一人が鍬を振って攻撃してきた。

 

「距離感どうした?」

 

この距離じゃ絶対に当たらないとわかっているので避けることはしない。上から振り下ろされ、綺麗に空振った鍬は思い切り地面に突き刺さる。

 

「あそっか地面を耕そうとしてただけだったんだ...な!」

 

鍬を踏みつけさらに地面に食い込ませることでこれ以上の攻撃を防ぎ、そのまま胸のあたりにヤクザキックを叩き込む。

 

「さて、次やられたい奴だーれだ?」

 

俺はそう言いながら能力を起動する。ただし、銃は作らない。

 

この能力は、銃の付属品であればなんでも作り出せる。スナイパーライフルのスコープだけ作るとかもできるだろうし、銃弾だけ、マガジンだけ作るといったこともできるだろう。もっと細かく、ネジ一本とかでも作れるようになっているはずだ。

 

だから、例えば銃剣の部品である剣を作ることも可能なのだ。

 

「あらよっと」

 

短剣を生み出した俺は、それで先ほど奪った鋤の柄を切り先端の金属部分を取っ払った。そして短剣を消せば、ただの長い棒の出来上がりだ。

 

「棒術はあんまやってこなかったけど...まぁ、テメェら相手ならこれで十分だな」

 

へっぴり越しになっている槍持ちの農民の間合いにぬるっと入り込み、ただの棒と化した鋤の柄で股鳩尾喉元を順番に突く。

 

「あぐぅっ⁉︎」

 

一撃目の股への攻撃が一番効いてそうな悲痛な声を出しながら、農民は地面に倒れ込んだ。

 

「残り三人」

 

そう呟きながら、俺は棒を後ろに向けて勢いよく振り回した。棒はスパンッと農民の腕を叩き、持っていた鍬をはたき落とした。

 

「なぜバレた...⁉︎」

 

「足音には注意だぜ?」

 

足音のおかげで、近づいてきているのは手に取るようにわかっていた。まぁ腕に当たって武器を落とせたのはガチの偶然だがな。

 

「ほれっ」

 

脛の辺りにパパンッと棒を叩きつけ、痛みで農民が思わず屈んだところに膝を顔面に叩き込む。

 

「あと二人。二人ならまとめて襲ってこれるだろ。かかってきな」

 

まるで連携の取れていない農民らに声をかける。やっぱりコイツら、戦闘の経験なんててんでないようだな。

 

「ほら、せっかく六人いんのにタイマン×六じゃ勝てるもんも勝てねぇぜ?ちゃーんと二対一してこいよ」

 

「……こうなったら...!」

 

ダッ!と農民二人は走り出した。逃げ出した...かと思われたが、向かっている先はベースキャンプの方だ。

 

「俺から逃げて略奪しようって魂胆か?そりゃ無駄だぜ!」

 

棒を放り捨て、地面を蹴り一気に最高速へと加速する。

 

「この俺に速度勝負を仕掛けるだなんてな!!」

 

速度操作はない。けど、最速の走り方は知っている。俺が一番の速度を出すために必要な動き。それを再現し、全速力で駆け抜ける。

 

「つーかまーえ...たっ!!」

 

農具を持ちながら走る農民に速度負けするわけがない。しっかり追いつき、ガッチリと肩を掴んでそのまま前に押すことで地面に転ばせる。

 

「俺から逃げようなんて百年早いぜ?さっさとおねんねしておくん...だな!」

 

倒れ込んだ二人の脇腹に一回ずつ蹴りを叩き込み、戦闘不能にさせる。これでいっちょ上がり...

 

「……そーいや、最初のお前だけ軽傷だったな」

 

最初に俺が倒し、鋤を奪い取った農民がいつのまにか立ち上がっており、仲間が落としていた槍を手にして近づいてきていた。

 

「いやはや、仲間のために立ち上がるだなんて凄いなぁ...」

 

「成し遂げられなきゃ俺らはいずれ飢え死にだ!やらなきゃ死ぬってんならやるしかねぇだろうが!」

 

「他の方法を模索するなり、なんで餓死しそうになっているかの原因究明もせずに略奪に走るのがそもそもの間違いだ。少しは上の人間の言うことに疑問を持てよ」

 

「テメェに俺らの何がわかる!余所者が口を出すな!俺らの境遇を知ってから物を言いやがれ!」

 

「知るかよ。ただでさえ人のことなんて何もわからないってのに、自分で考えず流されてばっかの大馬鹿のことがわかるかってんだ」

 

「テメェ...!痛い目見るだけじゃ済まねぇぞ!!」

 

「おっ、お前だけは覚悟決まってんな。だが、さっきのを見て思い知っただろ?俺には勝てねぇよ。それともなんだ?なにか、起死回生の一手でもあるってのか?」

 

「あるよ!!テメェを丸焼きにしてやらァ!!」

 

農民の上に巨大な火の玉が生成された。

 

これがあの農民の力か。完全に戦闘向き、村じゃ火おこしくらいにしか使えなかっただろうな。それにしても、相当な熱量だ。どの程度の速度で放たれるのかわからないが、ただ避けようとしただけじゃ丸焼きは避けられないだろう。

 

「はぁ...今更覚悟決まっても、もう遅いんだがな」

 

普通の方法じゃ回避できないので、こちらも能力を使うことにする。この状況で出し渋るのは死に直結するし、仕方がない。

 

俺は二つの魔力銃を生み出す。それぞれ別の魔法陣が描かれている。この二つで、この状況は解決できるはずだ。

 

「これでテメェはお終いだ!!」

 

農民が巨大火球を放とうとする。その瞬間に、俺は農民の足元に向けて右手で持つ魔力銃を撃ち込んだ。

 

「なっ、風が...⁉︎」

 

魔法弾の着弾点から真上に暴風が吹き荒れる。農民はその風に煽られ、バランスを...

 

「こんな風ごときで!俺は倒れん!!」

 

なんとか体勢を立て直した農民は、風によって散りそうになった巨大火球を再度まとめ上げ、こちらに向けて放とうとする。

 

「そりゃ倒れないだろうよ」

 

俺は左手で持つ魔力銃を動かし、巨大火球に照準を合わせて引き金を引いた。

 

「その風はあくまで下準備に過ぎないからな」

 

魔力銃から放たれたのは、膨大な量の水だった。水は農民が生み出した巨大火球を冷却し、その火の勢いを落としていく。

 

そして、冷却の際に放出される高温の水蒸気は、先程撃った暴風の魔法によって上へと吹き飛ばされていく。これで、あの農民も傷つかない。

 

「お、俺の力が...!」

 

やがて、農民の能力が打ち止めとなり、水が火球の勢いを完全に押し流し消滅させた。

 

「お前はこれで終わりだ。さっさと諦めるんだな」

 

「……ま、まだだ!まだ俺には武器が...!」

 

「はぁ...もう能力使っちゃってるし、使っても使わなくても変わらないか。サクッと終わらせよう」

 

ゴム弾を放つ拳銃をその手に生成する。そして、農民の脚に狙いをつけて...

 

「ぁ゛、ガァァッッッ!!??」

 

放たれたゴム弾が農民の脚に命中する。今まで感じたことのないであろう痛みが農民を襲い、絶叫をあげてのたうち回る。

 

「そうそう死にはしねぇが、死ぬほど痛いだろ。もう一発撃たれてもいいって覚悟がないなら、大人しく降参でもするんだな」

 

俺がそう言うと、農民はものすごい勢いで首を横に振った。これでもまだ諦めねぇのか...

 

「……仕方ねぇ。もう一発...」

 

「お、おい待て待て待て!なぜもう一発撃とうとするんだ降参しているだろ⁉︎」

 

「降参だぁ?お前さっき首を横に...あっ」

 

そういえば、インドとかパキスタンとか、首を横に振るのが肯定を表す文化もあったっけか...この世界もそうなのか?

 

「オーケー理解した。降参してたんだな...じゃあとりあえず、一つ頼まれてくれねぇか?」

 

銃を消しながら農民に頼み事をする。

 

「頼み...だと?」

 

「ああ。もし引き受けてくれるのなら、お前ら六人の怪我を治してやる。結果次第にはなるが、食糧問題も解決するだろう。どうだ?聞いてみないか?」

 

「……食糧が手に入るのなら、聞いてやらないこともない」

 

「まず、ドンカラの連中と俺を村の中に入れてくれ。そして、村長に会わせろ」

 

「村長に...?なぜだ?」

 

「村長は魔族だ」

 

「……は?」

 

「信じる信じないはどっちでもいい。けど、もし少しでも俺の言ったことが気になったのなら、俺らと村長が対面している時に奴の服を捲り上げるなりなんなりして腹や胸を露出させてやれ。そうすれば、真実がわかるはずだ」

 

とにかく次々と言葉を浴びせることで、なぜ俺が村長を魔族だと思っているのかという理由を問う隙を与えずに話を進めていく。

 

「……わかったよ。どうせ俺らに選択肢は無いんだ。もう抵抗はしないし、要求を飲む。だから怪我を治してやってくれ」

 

「わかった。まずはお前からだ」

 

回復の魔法陣が刻まれた魔力銃を生み出し、農民を撃つ。

 

「……びっくりした。ああ言っておいて攻撃されたのかと思った」

 

「驚かせて悪いな」

 

回復したのを確認した俺は、他の農民たちにも回復弾を撃ち込んで傷を治してやる。

 

そうして動けるようになった六人の農民を連れて、俺はベースキャンプへと戻った。

 

「おーっすカミレ、ユーリ。ぶちのめして連れてきたぜ〜ってどうした?二人とも」

 

なんか怯えられてる?ばったばったと倒していっちゃったから怖がらせちゃったのかな?

 

「こ...怖いわ!なんでそんなに強いん⁉︎」

 

「俺強いって言ってただろ?」

 

「流石にここまでとは思っていなかったよ...」

 

「もうあんちゃんには逆らえまへんわ...」

 

「そんなにか?あっ、あとコイツらとちょっと交渉しててな。村長と会わせてくれるらしい」

 

「えっそうなん⁉︎」

 

「そんな交渉までするなんて...恐ろしい奴だなカリヤは」

 

そこまで言われるのか...強い奴がゴロゴロといた聖杖世界とは本当に違うな。

 

「掛け合ってはみるが、会って話ができるとは限らないからな」

 

「いやーそこは努力してもらいたいな」

 

農民たちにそれとなく圧をかける。

 

「それじゃあ、ドンカラの人らを何人か連れて村に突入するぞ。それで全て解決するはずだ」

 

「は、はぁ...」

 

何が何だかまだよくわかっていないようだが、二人は少し大きめのテントの方に入っていった。上の人に確認を取りにでもいったのだろうか?とりあえず、話は進んでくれそうだな...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんま、あんちゃん何者なん?ただの旅人があんな強いわけあらへんやろ」

 

フールへと馬車で向かう途中、カミレにそんなことを聞かれた。

 

「本当にただの旅人だぜ?」

 

世界を渡り歩く...だけどな。そういや、この世界は『世界』の概念があるのかな?聖杖世界じゃ他の世界が存在するなんて考える人が誰一人としていなかったからな...この世界はどうなんだろう。さっき文化の違いのせいで困ったことになったからな...そういった違いは早めに知っておきたいところだ。

 

「ホンマかいな...というかあんちゃん、マルチやったんか?」

 

「マルチ...?」

 

なに?マルチ商法のこと?いやまぁそんなわけないだろうけど...

 

「なんや知らんのか?複数の能力持っとるすごい人らのことや」

 

複数能力持ち?ちょっと神様、そんな人いるなら先に言ってくれよ。

 

『……うわ、そうじゃったのか...』

 

どうしたんだよ神様?何かに気づいたみたいな雰囲気出してるけど。

 

『元々、数十年に一人出るか出ないかという確率で、マルチと呼ばれる複数個の能力をその身に宿した者が生まれることはこの世界でも常識じゃったんじゃ。じゃが、どうもそんなマルチが今世界各地に大量発生しているようでの...』

 

……もしかして、魂の初期化が影響してたりする?

 

『おそらくな。魂初期化後の変質によって、マルチとしての魂の形を持つ者が大量に生まれてしまったのじゃろう。魔族とは違ったベクトルでの変化というわけじゃな...じゃが、マルチはこの世界に元々存在しているもの。魔族と違って狩る必要はないのは幸いじゃな』

 

なぁ、そのマルチってやつさ、魔族の中にもいる可能性あるか?

 

『……可能性はあるのう』

 

んじゃあ魔族の能力が判明したからといってすぐに安心はできないわけだ。相手がマルチだというのを常に想定していないといけないな...っとと、そんなこと考えてないでカミレとの会話に戻らないと。神との会話に集中しすぎたら周りから見られた時に不審に思われるのを忘れるなよ俺。

 

「……じゃあ、俺もそのマルチなのかもな」

 

「自分でも知らんかったん?」

 

「いや、その概念を知らなかっただけだ」

 

「そうだったのか...本当にびっくりしたよ。何か変な武器を生み出すし、水みたいなのを射出し出すし...最初は物質生成能力で水も生み出したのかなと思ったけど、治療もしていたから間違いなくマルチだね」

 

うーんと、一応銃火器生成能力の範疇だから違うっちゃ違うけど、訂正するのも面倒だしいいか。

 

「そんな力持ってたらそりゃ一人で戦えるわ。まったく、心配して損したわ」

 

「そこまで言うか...?心配くらいはしてくれていいだろ」

 

「そもそも、あの武器はなんなん?あんなの見たことあらへんよ」

 

「それは企業秘密ってことで」

 

「どこの企業やねん」

 

「そこまでにしておこうよカミレ。そもそも、あんまり深く力について聞くのも良くないんだしさ」

 

「……そうやな。今じゃ能力は個人情報の一つやし、マルチなら尚更か。話したくなったらいつでも話してくれやー」

 

「聞きたい欲満々じゃんか...ほら、んなもんさっさと忘れて早く村まで行ってくれ」

 

「ゆうてもうすぐ着くけどなーそれよりもこれ本当にそのまま突っ切ってええんか?」

 

「いいんだ。問題が起きたら村の奴らがなんとかしてくれる手筈になっている」

 

そのまま馬車で村の中に突入する。村人が何事かと家屋から出てきて、ワラワラと寄ってくるが構わずに進み続ける。既に農民から村長がいる場所は聞いているから、そこに向かって一直線に突き進んでいく。

 

「ここでええんやったよな?」

 

目的地である村長の屋敷に辿り着き、全員馬車を降りる。

 

その瞬間、村人たちが侵入者である俺らを取り囲もうとするが、農民ら六人が間に割って入り守ってくれる。農民たちのことを裏切り者と罵る村人の声が響いたが、農民らは一歩も引かない。心強いなあの人ら。

 

「すぅー...おーい村長!!隠れてねぇで出てきやがれ!!話をしようじゃねぇか!!」

 

大声を出し村長に出てこいと要求をする。

 

しばらくすると、屋敷のドアが開いて村長...いや、魔族が出てきた。影武者を出してその場を切り抜けようとしてくるんじゃないかとか色々考えてたけど、普通に出てきてくれたな。

 

「おやおや、こんな大所帯でどんな用ですか?ドンカラの皆さん...不法侵入ですよ」

 

そんなことを言いながら俺らの前に出てきた村長に対し、カミレが思いっきり聞こえるように舌打ちをかましていた。そんなに嫌いなのかコイツのこと...

 

「不法侵入を問いてくるのなら、こっちは略奪の件について詰問するぜ?」

 

「む?誰だお前知らない顔だな...まぁ良い。略奪なぞ知らん。なんの話だ?」

 

「こいつらに指示を出してドンカラのベースキャンプを襲わせ略奪をさせただろ」

 

「知らんな。俺はそんな指示を出した覚えはないし、そんなことが起こっていたことも今初めて知った」

 

「村長が俺たちに指示してきたんでしょう⁉︎それは無いですよ⁉︎」

 

農民の一人が口を出した。

 

「知らんものは知らん」

 

「知らないってんなら、監督不行き届きでお前を問い詰めるだけだ。村人の暴走を止められなかった責任を取ってもらうぜ?」

 

「……どうせ、お前らのうちの一人が記憶操作の力でも使って、そのように勘違いさせられているだけだろう?そもそも略奪の事実なんて無かったのだ。また、お前らドンカラの都合の良いように認識を捻じ曲げ、私たちの村から搾取しようとしているだけなのだ!そうだろう⁉︎」

 

村長が声を張り上げた。その声に呼応するように、辺りに集まっていた村人たちも、ドンカラを許すなだとか村を守るんだだとか言って騒ぎ出す。

 

その瞬間だった。この混乱に乗じて農民の一人がバッと飛び出して村長に掴みかかった。

 

「なっ、貴様何を...⁉︎」

 

「正体を現せ...!」

 

村長は農民を振り解いた。だが、農民は自身の能力を発動させていた。生み出された火球が村長の服を焼き尽くし、腹部を露出させる。

 

「まずっ...⁉︎」

 

「よくやってくれた!最高だ!!」

 

「腹に...第三の目(サード・アイ)⁉︎あんた魔族やったんか!」

 

第三の目(サード・アイ)とは、魔族が持つ人間とは異なる身体特徴だ。特有のコブと、それによって引っ張られひきつれを起こした肉、その形が目のように見えることからその名がついている。その第三の目が村長の腹にあったため、この場にいる全員が魔族だと認識した。

 

「クソ!まさかバレるだなんて...!」

 

魔族はそう言いながら手を顔の辺りに持っていった。能力の発動条件なのかもしれない。そう思った俺は神様に能力発動の許可を取り、即座に銃を作り出した。

 

そして魔族に照準を合わせる。が、その時魔族は、手を自らの顔の前から退かした。まるで、付けていた仮面をとるかのような動きだった。

 

次の瞬間、周り全ての人間の姿が魔族のものと全く同じに見え出した。

 

「幻覚能力か...!」

 

記憶を操作して認識を変えたとかなんとか言っておきながらお前がその能力を持ってるんじゃねぇかと思いながら、魔族に照準を定め続ける。魔族は幻覚を発動させてからすぐに走り出して周囲の村人の中に紛れ込もうとしていたけれど、魔族を見分ける能力は誰が本物なのかを見事に特定していた。完全に無駄な足掻きだった。

 

パンッ...!

 

渇いた発砲音が辺りに響く。放たれた銃弾は吸い込まれるように真っ直ぐ魔族のもとまで飛んでいき、その足を貫いた。

 

「アガッッッッ!!??」

 

「まずは1キルか...」

 

地面に倒れ込んだ魔族に近づき、その頭に照準を合わせる。

 

「これで、終わりだ」

 

またも、渇いた銃声が周囲に響いた。

 

幻覚が解け、正常な認識が戻ってくる。

 

なんとも醜く小柄な男の魔族が、頭と足から血を流して倒れている...そんな光景を、この場にいる全員が見たのだった。




カリヤくん普通の人相手にこんな攻撃できたっけ?と思った人がもしかしたらいるかもしれませんが、一応答えを出しておくと、魔王が魂に寄生しているせいでほんの少しだけ精神が引っ張られているから、本来よりも少し攻撃が荒っぽくなっているって感じですね。
前作で、フレアとミレアにちゃんと攻撃できたのも同じ理由からです。

本来のカリヤくんなら、たとえゴム弾でも一般人相手には使わなかっただろうな...
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