神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8103字。

ウルドラ回終了です。


死印排除と衝撃ドーム

「こればっかりは探し回るしかないか...」

 

俺はまだ始末出来ていない一人の町民を探し回っていた。源流世界での魔族探知のようなものはないため、ひたすら歩き回って探すしかない。一応頭の上のバツ印という目立つ目標があるため見落とすことはないだろうが、そこそこ広い町だ、どれだけ探し回っても入れ違いで見つからない可能性は大いにある。

 

「先に魔物を探した方が早いのか...?」

 

捕虜にされた魔物の居所は、普通に町民に聞けばわかる可能性はそれなりに高いだろう。そっちを先にやるのも良い手ではあるだろう。

 

「うーむ...よし、決めた。とりあえず位置だけ探っておくか」

 

適当にそこらの人に聞けばまぁわかるだろ。自分たちのことを襲ってきた奴らがどうなったのかなんてみんな気になるだろうし、どこにいるのか情報を持ってる奴もいるだろう。

 

「あのーちょっと良いですか?」

 

近くにいた気の強そうな男の人に話しかける。

 

「んお?俺に何か用か?ってかボロボロじゃねぇか大丈夫か?」

 

「ええ、それはまぁ...自分、別の町からここまで逃げてきたんですけど、ウルドラを魔物の手から取り戻したってのは本当だったんですね。さっきあっちの方で兵の人に聞いた時はびっくりしました」

 

「そうなのよ。急に兵の奴らがやってきたと思ったら瞬く間に魔物どもを殲滅しちまってよ。魔物の奴らも兵にはあまり攻撃しないもんで、そこそこ一方的だったな」

 

「へぇ、なんで魔物は兵を攻撃しなかったんですかね?」

 

「さぁ?魔物どもにもなんか事情があんじゃねぇの?にしても死者ゼロだったのは幸運だったな」

 

死者ゼロねぇ...さっきバタバタ死んじまったんだけどな。

 

「ところでこんな話も聞いたんですけど、魔物を何体か捕虜にしたらしいですね」

 

「らしいな」

 

「今頃は拷問を受けたり魔術の研究に使われてたりするんですかねぇ?」

 

「そこの向こうにある役所の地下を使って色々やってるらしいぜ。そんで、やることやったら俺らの前で処刑すんだと」

 

「なるほど処刑を...」

 

俺が手を下さなくてもどのみち死ぬことには変わりないのか。でもその前に情報を吐かれては困る。役所の地下に潜入する必要がありそうだな。

 

「処刑の前に一発殴らせて欲しいぜ...アイツら俺の可愛い息子傷つけやがったんだよそれくらいの権利はあると思うよな?」

 

「そ、そっすね...」

 

息子が傷付けられた...か。ってことは死印付きなんだろうな。さっき衰弱死させたうちの一人か...?

 

「その息子さんは今どこに...?」

 

「家だが、なぜそんなことを聞く?」

 

「さっきまで軍医のところで治療を受けていたもので、偶然その場に居合わせてたのかもなと思いまして」

 

家にいるってことは治療の必要があまりないほどの軽症だったのだろう。でも、軽傷だと偶然巻き込まれただけって可能性があるな...まぁ捕虜の魔物の居場所を探るのが目的だったし、本当だったらラッキー程度に考えておくか。年齢を聞けば名簿との照合も出来そうだけど、流石にそこまでは出来ないしこれ以上の追及はやめておこう。

 

「なるほどだからそんなボロボロだったのか...そういや逃げてきたつってたよな。もうこの町は安全だ。だからゆっくりしていけよ」

 

男はそう言って歩き去っていった。色々教えてくださりありがとうございますとお礼をしながらその背中に向けてお辞儀をしておく。

 

「……さて、尾行するか」

 

今の男の息子が本当に死印持ちなのかを確認しに行こう。あの男に着いていけば、いずれ家に辿り着くはずだ。

 

「問題はどうやって潜入して殺すかだよな...」

 

翻訳を切って周りに俺の発する声が理解できないようにしてから独り言を呟く。やはり思考を回すには独り言が一番だ。

 

「俺の能力じゃ潜入はほぼ無理...流石に記憶を切り裂くみたいなことは無理だし、出来ることはせいぜい一時的に意識を奪うくらいだ。見られちゃそれでお終い...」

 

俺が力を使っている瞬間を一度でも見られてしまえば、少なくとも魔物側の陣営であることはバレてしまう。まぁ、それだけで俺が魔王だとバレることはないし、せいぜい人の姿をした魔物が現れたってなふうに思われるだけだろうけど、それでもこんな姿をしている敵がいると知れ渡ってしまうことは大問題だ。姿を見られることだけは回避しなければならない。

 

「姿さえ隠せれば...そっか、バレちゃいけないのは人間が魔王をやってることだけだから、それさえバレなければ人や魔物を殺すところを見られても別に問題ないのか」

 

尾行を続けながら考えを巡らせる。仮に俺が人や魔物を殺す姿を見られても、それが人間の姿にさえ見えなければ問題はない。正体不明の魔物の仕業として処理してくれれば、何も問題はない。

 

「となると...うん、ああすれば出来そうだな」

 

プランが決まった。あとは生き残りの町民の特定だけだ。

 

「……おっ、あそこが家か」

 

男は大通りに面した店で食材をいくつか購入してからとある建物へと入っていった。無言で入っていったけどおそらくあれが男の家なのだろう。ただいまという文化が無いのかな?

 

「上手いこと中見えないかな...おっ、見えた」

 

家の前を通りすがる瞬間に家の中に目をやると、さっきの男の姿とその横の椅子に座っていた子供の姿が見えた。その子供の頭の上にはバツ印...死印付きだ。

 

「運が良いねぇ...あとは色々仕込みしてから襲撃するだけだな」

 

死印付きの町民の居場所を把握した俺は、襲撃の準備をするためにすぐにその場を離れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備完了...行くぜ」

 

準備を終え、俺は人通りの無い建物の裏に身を潜めていた。そして俺がここにいると把握している人がいないであろうと判断できるまで待機したのち、俺は衝撃の剣を薄く伸ばして俺の周囲一メートルにドーム状に展開した。俺の視界がオレンジ色で包まれる。

 

「透過条件変更...!」

 

通常、衝撃の剣はオレンジ色をしている。しかし、衝撃の剣は光をも透過することができる。それによって光の反射を防ぎ、衝撃の剣を不可視にすることが可能なのだ。

 

「外から内へは透過。そして内から外へはシャットアウト...!」

 

しかし、それだと衝撃の剣が見えなくなるだけ。俺の姿は丸見えだ。そのため内から外へと向かう光は透過しないようにする。こうすることによって、俺は外の様子を観測することができるが、外からは衝撃の剣の内側の様子は観測できない。光が跳ね返って来ないため、外から見ると真っ黒に見えることだろう。

 

そこに何かがいることはわかるが、完全な闇なためそれが何かわからない。人間たちは正体不明の魔物だと思うことだろう。人間の仕業だと思う奴はまさか一人もいないだろうな。

 

「……流石に暗いな。エネルギー欠損のせいか...」

 

内から外への観測はできるが、本来の明るさよりもだいぶ暗い。衝撃の剣が光を透過するということは、剣と光子の衝突によって生まれる諸々のエネルギーを衝撃エネルギーとして吸収しているということ。その際に光エネルギーの一部も吸収されてしまい、結果的に明るさが落ちてしまっているのだろう。思わぬ副作用だったが、まぁ微々たる障害だ。この程度のことなんて気にせずにいこう。

 

「よし始めるか。まずは...!」

 

死印付きの町民が判明した後に町を散策しがてら設置していった、衝撃エネルギーを抱え込んだ能力の球。もう既に使われていない建物や、人気の少ない場所に設置されたそれらを...一斉に消す。

 

次の瞬間、球状の膜が消え去ったことにより抱えていた衝撃エネルギーが辺りに撒き散らされる。至る所で轟音が鳴り響き、建物が倒壊する音が聞こえる。

 

「……良い感じに混乱しているようだな」

 

人々のどよめきが聞こえ始める。そして、ドタバタと走り回る足音も聞こえてきた。今頃兵たちはてんやわんやだろう。

 

「よーし、襲撃開始だ」

 

俺はゆっくりと歩き出し、大通りに出る。騒ぎの中、突然現れた真っ黒な球体に視線が集まる。

 

「ま...魔物だぁっっ⁉︎」

 

誰かが叫び、それを皮切りに人々はパニックを起こす。俺という異物から距離を取ろうと一斉に動き出し、人の波ができる。

 

「ああもうそんな一斉に動いたら将棋倒しになっちまうぜ?くれぐれもそれで死人が出るとかはやめてくれよ...?」

 

そう呟きながら俺は死印付きのいる家に向かって歩く。この群衆が道を埋め尽くしている間は、とても家から出ることなんてできないだろう。既に出かけていたとかじゃなければ、俺が辿り着く頃にはまだ家の中にいるはずだ。

 

「いたぞ!!」

 

後ろの方から声が聞こえた。おそらく、兵の奴らが群衆の波をかきわけてなんとかここまで来たのだろう。

 

「総員かかれ!」

 

背後から襲いかかってくる...が、全て無視だ。そのまま歩き続ける。

 

「なっ...びくともしない⁉︎」

 

衝撃の剣のドームに触れた瞬間、全ての威力は衝撃エネルギーに変換されて吸収される。ゆえに、どんな攻撃も無意味だ。俺の進行を止めることはできない。

 

「どんな魔法だよ...!」

 

「魔術だ!ありったけぶつけろ!!」

 

そんな声が聞こえてくるが、そんなことには目もくれずに歩き続ける。何が来ても吸収するだけだからな。目を瞑っていても余裕だ。まぁ、この透過設定だと光を使った攻撃は素通りなんだけどな。多少は威力減衰できるだろうけど、攻撃を喰らってしまうことには変わりないからそれだけ軽快だ。

 

「反撃して来ない...?」

 

「クソッ、何が目的なんだ...!」

 

「わからんが動きを止めるぞ!進行方向に集まれ!物量で止める!!」

 

おっ?ゾロゾロと前に集まってきたな。直接フィジカルで止めようってか?

 

「無駄だぜ。触れた瞬間にお前らの運動エネルギーは吸収される。俺の歩みは止められない」

 

人数を集めて直接押して止めようとしたようだが、衝撃の剣に触れると一瞬でかかっていた力が消えるため無意味だ。兵たちは衝撃の剣に逆に押されて後ろに倒れる。

 

「くっ...力が吸い取られる...!」

 

踏み潰した奴らから生命力を奪っておき、身動きを封じる。何をしてきても無意味とはいえ、少しうざったいからな。

 

「何やっても止められない...!総員!住民の避難を最優先!急げ!」

 

次々と兵が集まってきたが、先行して戦った奴らがなすすべもなくやられたのを見て方針転向したようだ。懸命な判断だ...助かるけどちょっと困るな。標的以外が早く逃げてくれるのは嬉しいが、死印付きの避難も早まるのはやめてほしい。

 

「……急ぐか」

 

だいぶ人の波もはけてきた。そろそろ急いだ方が良さそうだ。先ほどの撹乱のために消費したエネルギーもさっきの兵の攻撃で補給できたことだし、衝撃の剣の展開半径を二メートルに広げる。これで走る空間的余裕ができた。

 

こっからは全速力で...!

 

「こいつ急に速く...⁉︎」

 

衝撃の剣のドームを動かしながら全速力で走り、死印付きのいる家まで向かう。進行方向に立ち塞がる邪魔な兵は、ドームから触手のように衝撃の剣を伸ばすことで先に弾き飛ばしておく。もはや透過させて生命力を奪う必要はない。普通に横からぶち当てて俺の真正面から弾くだけで止め、最小限の減速で対処していく。

 

「あった!」

 

標的の家を発見した。そしてちょうど避難しようとしていたところだったようで、男に手を引かれて家から出た瞬間を目撃する。

 

「悪いな、けど死んでくれ!」

 

そのまま標的に近づき、まずは男を衝撃の剣で真横に弾き飛ばして標的から遠ざける。庇われてしまったら困るからな。確実に殺すために遠ざける。それに...奴も至近距離で自分の子供が弾け飛ぶのを見たくはないだろう。

 

「爆ぜろ...衝撃解放!」

 

衝撃の剣を伸ばして標的の腹に突き刺す。そして先端の膜を消滅させ、溜め込んでいた衝撃エネルギーを解放する。

 

ぐちゃパンッ!

 

俺の目の前で子供が内側から弾け飛んだ。周囲に子供の血肉が飛散し、地面や建物の壁を汚す。

 

「次だ」

 

何が起こったのか状況が飲み込めていなさそうな男の顔を横目に見ながら、俺は次の目的地の方へと顔をやる。そしてすぐさま走り出した。

 

「あとは魔物だけ...!」

 

目的地は役所。ここからは結構近いところにある。走れば一分もかからずに...!

 

「到着!」

 

役所の前に到着した俺は、ドームの一部を切り離して球体を作りそれを前方に向けて投擲した。

 

「爆ぜな!」

 

衝撃解放により球体に込められていた衝撃エネルギーが周囲に拡散し、役所の扉とその周辺の壁をぶち抜いた。こうでもしないと、ドームを展開したまま中に入れないからな。

 

「おっ、もう避難済みか?そいつは好都合」

 

誰もいないカウンターを乗り越え、職員用のバックヤードへの入り口を衝撃解放でまたもやぶち抜く。

 

「地下の入り口は...ここか」

 

轟音を響かせながら扉と壁を破壊して地下へと向かう階段を降りる。この先に捕虜となった魔物がいるらしいが...

 

「まぁ流石に待ち伏せしているか」

 

階段を降りきったところに何人もの兵士が待ち構えていた。

 

「ここは通さん!」

 

「奪還はさせないぜ!」

 

そりゃ普通は考えるよな。この魔物は捕虜の魔物を解放しに来たんじゃないか...って。けど事実は正反対。俺は殺しに来たんだ。

 

「邪魔出来ると思ってんなら、そいつはお笑いだぜ?」

 

兵たちが攻撃してくるが、全て衝撃として吸収される。そして衝撃の剣の切断によって意識が絶たれ、バタバタと倒れていく。

 

「切られたくなけりゃそこを退くんだな...まぁ、意味通じてねぇだろうけど」

 

翻訳を切っているため、俺がなんて言っているかはアイツらには理解できない。それでも声を出しているのは、理解できない言語を突きつけることで正体不明の魔物という印象を強めるためだ。こうやって不気味で強力な魔物の印象を強く残せば、当然人類は警戒する。それで少しでも慎重になってくれれば、こちらの意図しない死も減ってくれるだろう。

 

「これで...最後だ」

 

最後の一人も気絶させ、これで邪魔者はもういなくなった。これまで通り壁をぶち抜き、魔物たちが捕らえられている部屋の中へと入っていく。

 

「よ、ようやく助けが...来、た?」

 

足と手を床に埋められて身動きの取れない魔物たちが、こっちを見てキョトンとした顔をしていた。助けが来たと思ったのに、真っ黒い謎の球体が来たのだからそりゃびっくりするよな。

 

「新人...?と、とにかく助けてくれ!頼む!」

 

「助けて...か」

 

魔物に対してのみ翻訳をオンにする。

 

「そ、その声は...!」

 

「お前ら、死印付きの自覚あんのか?」

 

そう言いながら、まずは一人、衝撃の剣を突き刺して内側から弾け飛ばす。

 

「ちゃんと死んでもらわなきゃ困るんだよ。生きたいって気持ちもわかるが、それが使命なんだ。それなのに降伏して捕虜に成り下がる?ふざけてんのかよ」

 

もう一人突き刺し、その頭を爆ぜさせる。

 

「お前で最後だが...最後に聞いておくぞ」

 

「な、ななななんでしょう...」

 

「お前ら、人間に何も情報を喋ってはねぇよな?」

 

「そ、それはもちろん...!話すはずなどありません!!」

 

「そうか。そこは及第点だな」

 

「ですから、お慈悲を...!」

 

「慈悲ねぇ...」

 

ブスリと衝撃の剣を魔物の頭に突き刺す。

 

「唯一かけられる慈悲は、一瞬で殺してやることだけだ」

 

全身が弾け飛び、魔物は絶命する。

 

「これだけボロボロにしちまえば、魔術の研究をされることもないだろ」

 

全員の始末の完了を今一度確認し、外に出る。これにてこの町ウルドラでの仕事は終わりだ。

 

「あー疲れた...制御すんの結構疲れるな」

 

衝撃の剣の操作を常にしていなければならないため、相当疲労してしまった。ドーム状に展開するのは防御としては最強だけれど、あまりにも長時間展開し続けることは難しそうだな。

 

やってることとしては聖杖世界での触手・水とか九尾に近いんだけど、速度操作とかいう最高の空間探知能力がない状態でそれに近いことをしているのだからそりゃ疲れるわな。視界の外にあるものを操作しないといけないのは普通に難しい。

 

まぁ、そういう経験ができたってのは良いことか。能力を複数個に分けると制御が困難になるってこともわかったし、もう少しいい運用方法を考えてみよう。

 

「……さて、どうやってこの包囲を抜けようか」

 

地上階に戻ってきて、役所から出るとそこには大量の兵士が待ち構えていた。意地でも逃さないつもりだろう。

 

うーむ...全員気絶させることも出来るだろうけど、この疲労だ。能力の制御を誤って生命力を取り過ぎてしまったり、膜が破れて衝撃エネルギーが意図せず放出されてしまうなどといったことが起こって死人が出る可能性は十分にある。

 

戦うのは得策ではないな。もうあとは離脱するだけだし...無理矢理脱出するか。

 

「まずはジャンプして...」

 

ジャンプして足元にも衝撃の剣を展開する。完全に衝撃の剣に包まれて、ウォーターバルーンに入ったような感じだ。

 

「衝撃解放で...ぶっ飛べ!」

 

ドームの一部を分離して真下に配置し、上向きに衝撃解放をする。放たれた衝撃エネルギーは衝撃の剣のドームを吹っ飛ばし、真上に高く打ち上げられる。

 

「次は横!」

 

同様の方法で真横に吹き飛び、物凄い速度でウルドラから離れていく。これやってることほぼブレ○イのウィンドボムだな...まぁそれを参考にしたから似てて当然なんだが、アレと違うのは俺自身にはダメージは一切ないことだ。

 

「おおぉおぉおぉ〜〜〜」

 

衝撃の剣のドームに背中を預けながら空を飛ぶ。光の透過によって俺の目には衝撃の剣は映っていないため、気分としてはこの身一つで飛んでいるような感覚だ。まぁ背中には確かにドームの感触はあるのだが。

 

「着地...っと」

 

ウルドラから遥か遠くの平原に着地する。その衝撃はそのままドームに吸収されるため、中の俺にも地面にも被害は無し。地面に激突した瞬間に完全静止した感じだ。

 

「ふぅ...あー疲れた」

 

衝撃の剣のドームをほぐして自らの服の繊維に絡ませていく。衝撃エネルギーを溜め込んでいる間は能力の解除ができないため、こうやって保存する必要があるのだ。たとえ急に襲われたとしても、咄嗟に能力を展開できる利点もある。疲れてるし衝撃を放出し尽くして能力解除することもありだけど、また溜め込むのも面倒だしな...寝てる間も出しっぱにすることはできるから特に理由がなければこのままだな。

 

「おーいマリスター。見てるならこーい」

 

『はいはーい呼んだ?』

 

空からマリスタが降りてくる。

 

「仕事完了だ。ハサミツを呼んできてくれ」

 

『りょーかい。ってかさっきの凄かったね。まさかあんな方法で脱出するだなんて思わなかったよ』

 

「無駄話は戻ってからだ早くしろロリ神。この状況を見られたらどうする...」

 

神様と話しているところなんて見られたらマズすぎる。マズいつっても具体的にどうマズいのかは俺にもわからないが、どんな反応をされるのかが読めないってのが一番怖い。一つわかっているのは、確実に俺の行動が制限されるということだ。

 

『あー...ゴメン、もう遅かったみたい』

 

マリスタが俺の背後を指差していた。

 

『けど、まだ運が良かったね』

 

振り返ってみると、そこにはマリスタの神々しさに当てられて腰を抜かしている男がいた。その頭の上にはバツ印...死印付きだ。

 

「普通の人間なら面倒だったが、確かに運が良かったな。不幸中の幸いだ」

 

衝撃の剣を右手に生み出し、事態が飲み込めていない男の胸に深々と突き刺す。

 

「実験だ。心臓だけ...爆ぜな」

 

衝撃エネルギーを解放して、男の心臓だけを揺さぶり破裂させる。心破裂により、男は瞬く間に絶命する。

 

「うん、肉片が飛び散らないしこの殺し方良いな。心破裂は病気として普通に起こり得るし、急性発症だと認定してくれれば俺の犯行だとバレない...暗殺するときはこれからこの方法でいくか」

 

『……貴方、よくそんなポンポンと人を殺せるね。ちょっとドン引きだわ』

 

「何言ってんだよ人類vs魔物の戦争を仕組んだ張本人が...ほら、早くハサミツを呼んでこい」

 

『はいよー』

 

マリスタが消える。死体の真横で待ってるのもなぁ...と思った俺は、すぐにその場を離れてハサミツが転移してくるのを待つのだった。




カリヤくんは軽々とこの能力を使いこなしていますけど、本来は制御するのめちゃムズなんですよね。
まぁ、速度探知無しで雷装魔力の生成ができるんだから、視界の外でもそりゃ普通に動かせるよねぇ...って感じです。
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