神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8024字。

今回は二つほど部署を巡ります。


部署訪問と夜の輝き

「まーずーわー...俺自身疲れてるしここよな医療部!」

 

魔王城探検一発目は医療部だ。俺自身今体力とか気力とかを消耗しているからそれを治してもらいたいというのと、死印なしの魔物が傷ついてしまった時にどの程度の治療ができるのかを見定めにきたのだ。

 

「失礼しまーす」

 

部屋の中に入る。部屋の中にはベッドが乱雑に並べられており、医療器具のようなものは何一つなかった。奥の方には適当に並べた椅子に座って談笑している、種族がてんでバラバラの魔物たちが四人いた。

 

「ま、魔王代理様⁉︎」

 

「なぜこのような場所に...!」

 

「ちょっと視察兼回復をしてもらいたくてな。そっち行くから座ったままでいいぜ」

 

「いえいえそんな...!」

 

「良いから座ってろ命令だ」

 

スタスタと歩いて四人の元に近づく。

 

「医療部ってこの四人で回してんのか?」

 

「こ、この城の部署ではそうですね...」

 

「この城では...ってことは、外回り担当の奴らもいるってことか?」

 

「はい、より強い魔法を使える人たちは戦闘部や諜報部直属で配属されていたりします」

 

「なるほど、そりゃそっちの方が緊急性高い場合が多いだろうしな。城内部じゃ訓練くらいでしか怪我人出ないだろうし、そういう配置になるのも納得だな...あと、そんな怯えなくて大丈夫だからなマジで。今日俺はみんなのことを知りにきたんだ。そんなんじゃ落ち着いて話もできないだろ?難しいかもだけど、できるだけ普段通りのみんなを見せてくれ」

 

「わ、わかりました...」

 

「それでなんだけど、君たちはどれくらいの規模の治療ができるんだ?一人ずつ教えてくれ」

 

「えっと、僕は臓器の損傷を治せます」

 

「私が表面の傷を治せて」

 

「自分が失った血液の補充と、気力体力という形のないものの治療ができますね」

 

「なるほど...そこの君は?」

 

「自分は治療はできません。その人の傷の具合とか、体調を把握できるんでサポートに徹してます」

 

「オーケー四人で役割分担して治療するって感じか。んじゃあ君と君、俺を治療してくれ」

 

「……え?」

 

「さっき言っただろ?視察兼回復に来たって。ちょっと色々あって、外傷は無いんだが体力を消耗していてな...治してくれるか?」

 

「わ、わかりました!」

 

「まずは容体を診ますね...」

 

なんか目がいっぱいついている魔物が俺のデコに指を当てる。

 

「……本当だ。体力の消耗が激しい...しかも不自然な消耗の仕方をしているな...フォグ、出来るだけ強めに頼む」

 

「に、ニンゲンに魔法使ったことないからどうなるかわからないけど...大丈夫?」

 

「とりあえずやってくれ。出来なきゃ出来ないってことがわかる分進歩だからな」

 

「それならやりますが...文句を言われても困りますからね...!」

 

そう言って、ヘビに手足が生えた感じの魔物は俺の手を見ながら口を開いた。あー、これもしかして噛んで治療する感じ?嫌な予感が...

 

カプッと魔物は俺の手に噛み付く。そして、ほんの少しだけ刺さった牙から何かが入り込んでくるのがわかった。

 

「マ、ア゜ッッ!!」

 

思わず手を振ってしまい、魔物を弾き飛ばしてしまう。

 

「人間には効果無いどころか逆効果みたいだわこれ...激痛と痺れが凄いわ」

 

衝撃の剣を服の中から取り出して俺の手を透過切断する。その時俺、の中に入り込んでしまった人間にとっては毒っぽい何かをも切断することで、その毒っぽい何かを消滅させる。

 

「……ってかゴメン!弾き飛ばしちゃった大丈夫⁉︎」

 

「だ、大丈夫っすけど...そんなに痛かったっすか?」

 

「うん、これまでにあんま感じたことのない痛みだったわ...ほんっとにゴメン!」

 

「怪我してないから別に良いっすよ...そっちこそ大丈夫っすか?」

 

「今はもう平気だ。すぐに取り除いたからな。ってか、いつのまにか言葉遣いが砕けてるねぇ」

 

俺がそう言うと、蛇の魔物はパッとその口を手で塞いだ。手足があるから口塞げるのか...蛇だから凄い違和感だな。

 

「別に良いぞ。だからそんな絶望したような顔すんなって...」

 

「けど、不敬では...」

 

「不敬とかそんなんないって。俺人間だよ?まぁ人間相手に仲良くするってのもそれはそれで難しいのかもしれんが、魔王代理とかそんなん考えずに友達感覚で接してくれ。その方がこっちもやりやすいからね」

 

「ぜ、善処します...」

 

「他の三人もね」

 

「と、友達感覚...?」

 

「できるかしら...」

 

「というか、それなりにまずいこと判明しちゃったんよなぁ...怪我を治せるかはまだわからないとして、体力の回復が出来ないのはそれなりに致命的なんだよな。誰か、ほかに似たような魔法を使える奴を知ってるか?他の部署に行ってる中に居たりしない?」

 

「いない...と思う」

 

「そもそも僕たち魔物は、ニンゲンよりも疲労をしにくいので疲労回復能力は必要とされないんですよ。それが影響しているのか、そういう魔法を持って生まれてくる個体自体がそれなりに珍しくて...」

 

「なるほどな...となると、疲労回復は自然回復しかないってわけだ。今後は気をつけないとな...」

 

まぁ、この疲労は大体が自分自身を衝撃の剣で切ったことが原因だから、それさえしなければここまで消耗することは無いんだけどな...

 

「んじゃあ今日は邪魔して悪かったな。怪我人はあんま出てきてほしくないが、担ぎ込まれてきたらみんな頑張って治療してやってくれ。じゃあな」

 

そう言って俺は医療部の部屋から出ようとする。

 

その時だった。

 

「悪い!訓練中に事故ってコイツ怪我しちまった!治してやってくれ!」

 

と、血を流した魔物を背中から生えた腕で抱えた魔物が、扉を乱暴に開け放って中に入ってきた。言った側から担ぎ込まれてきたよ...

 

とりあえず、このゴタゴタにあまり巻き込まれたくないのと、医療部の仕事の邪魔をしないためにも、俺はするっと魔物の横を通り抜けて部屋の外へと出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次は...武装鋳造部か」

 

次に訪れたのは、魔物たちの防具や武器を作り出す部署だ。金属加工に適した魔法を持つ魔物や、戦闘中に使うのは難しいタイプの物質生成ができる魔物が所属しているらしい。

 

「死印なしにも良い装備を作ってもらえるように交渉しないとな...」

 

ここに来た目的はそれだ。死印なしの魔物にもちゃんと良い装備を持たせて、スターバス滅亡作戦で活躍してもらわなければならないからな。そのためにも、今よりも性能の良いものを作ってくれなければ...

 

「失礼しまーす...ってアツゥイ!!」

 

部屋が暑い!暑いってか熱い!鋳造だからある程度熱いのは覚悟してたけどまさかここまでとは...!

 

「普通の人間じゃ熱中症すぐなっちまうぞこれ...魔物たちはよくこの温度耐えれんな」

 

やっぱ体の作りが違うんだろうな...と思いながら俺は服の繊維の中から衝撃の剣を取り出す。

 

「熱エネルギーを吸収すれば...!」

 

衝撃の剣で熱エネルギーを衝撃エネルギーに変換し、俺の身に降りかかる熱を遮断する。

 

「よし...視察開始だな」

 

これまでずっと部屋の前でてんやわんやしていただけだったが、これでようやく中に入れるな。

 

「お〜...ダメだ、見てもあんまよくわからん」

 

「悪いが、扉は閉めてもらえると助かるぞ代理殿?」

 

「んお?ああ、すまない」

 

作業をしている魔物に言われて、扉を閉める。

 

「これで良いか?」

 

「……異様に涼しいな。ニンゲンには到底耐えきれない温度だと思っていたが...何をしている?」

 

扉を閉めるように言ってきた魔物は、続けてそう言った。

 

「流石に暑すぎたから熱を切っているんだが、マズかったか?」

 

「そうだな、温度低下はマズい。話があるのなら、外で伺いましょう代理殿」

 

「わかった」

 

魔物に連れられて外に出る。中の様子が見れないのは残念だが、どうせ見てもわからなかったしな。話は外でもできるしいいか。

 

「……うわっ、めっちゃエネルギー溜まってるこれどうやって放出しよう...」

 

「どうした?」

 

「いやちょっとこっちの話だから気にしないでくれ...」

 

「そうか。なら代理殿、用件をどうぞ」

 

この魔物、魔王代理の俺に怯えてないな。毅然と対応している...もうちょいフランクに来て欲しいけど、職人気質っぽいしそういう付き合い方もアリだな。

 

「本当は視察をしたかったんだが、この温度だと無理なんだよなってなわけで、視察代わりに鋳造部のことを色々と教えてもらいたい。何を扱っているのか、どうやって武装を作っているのか、そういった諸々の話をして欲しい」

 

「なるほど...ならば、武装鋳造部の長であるこのサルボルが何なりとお答えしましょう」

 

あっ、部長だったのかこの魔物...ほんと俺こういうこと何も知らないよな。どんな奴が部署を率いているのかとか普通知ってるべきことなのに、一切知らないってどうなっているんだ...それだけ、俺が魔物たちに目を向けてなかったってことなのかな。そういやさっきの医療部の魔物たちの名前も聞いてなかったし...今度行った時聞いておこう。

 

「じゃあ、まずはどんな物を作っているのか教えてもらおうかな。原材料がどこで取れるのかも教えてほしい」

 

材料がどこで取れるのかが分かれば、そこは最後の方まで人類側に取られないように対策することができるからな。物質生成の魔法で材料を作ることもできるだろうけど、資材は取れれば取れるだけいいからな。

 

「ここでは防具を中心に鋳造生成を行なっている。ニンゲンとは違い、我らは様々な種族の集合体。それ故に適する防具も個体ごとに異なるため、日々防具の製作に尽力している」

 

「なるほど、いろんな種類を作んなきゃいけないのは大変そうだな...」

 

本当に多種多様な魔物がいるから、それぞれの種族に合わせたものを作る必要があるのか。一つの原型をもとに量産ってわけにはいかないのはモノづくりをする上でかなりの障壁だろう。

 

「武器は作ってないのか?」

 

「少量であるが作っている。牙や爪などの自前の武器を持っていたり、魔法で攻撃したり武器を作ってしまったりできる輩が多いから受注数は少ないが、その代わりに時間をかけて作っているゆえ、それらが無い者にはここで作った最高品質の武器を支給出来ている」

 

そっか防具は全員必要だけれど、武器は必要無いやつも多いのか。魔法もあるし、一点集中させて品質を上げられる程度の数しか求められないんだろうな。

 

「なるほど...じゃあ原材料は?魔法で生み出していたりするのか?」

 

「我らが作る武装の材料となる特殊金属は、製法に魔法は関与しているが物自体は普通の金属だ。過去の戦争でニンゲンどもから得た装備を溶かして固めた鋳塊の在庫や、各地の鉱山や魔王城地下の採掘場で得た金属を使い特殊金属を生成している」

 

えっ、この地下って採掘場になってんの?初耳なんだが...それで特殊金属ってなに?普通の金属じゃないんだな。

 

「……もしかして、特殊金属の生成とかそれを武装の形に変形させるのに、温度がめちゃくちゃ重要だったりする?」

 

温度が下がるのをやけに気にしていたけど、それに関係していたりするのだろうか?

 

「その通りだ」

 

「やっぱりそうなんだな...というかそもそも特殊金属とは?普通の金属とはどう違う?」

 

「特殊金属とは、とある魔法がかけられた金属のことを言う。そしてその魔法をかけられた装備は、仮に装備を手にした魔物が倒されてニンゲンの元に我らの作った装備が渡ったとしても、手出しできないようになっている」

 

「手出しできない...とは?」

 

「特殊金属は生成直後に膨大な熱を溜め込む。その温度を保っている間は変形可能だが、一度温度が下がればその形で固着し、二度と変形しなくなる。これが一つ目の魔法の効果だ」

 

なるほど、だから温度が重要なわけね。もし俺が加減を間違えて周囲の温度を一気に冷ましてしまっていたら、生成した特殊金属が全て固まってしまい色々と問題が出ていたことだろう。高炉を止めたらヤバいとはよく聞くが、完全に変形不可となるとそれよりもヤバい状況かもしれないな。

 

……けど待てよ?確かに変形不可にすることで、こっちがやっているように奪った装備を溶かして材料にするってのは防げるだろう。でも、それだと魔物を倒して得た装備をそのまま使えば良い話じゃね?防具は人間用じゃないから形が合わなくて使えないってことになりそうだけど、武器の方なら普通にそのまま使えてしまいそうだよな...

 

「もう一つは、強い陽光を浴びると即座に風化する効果だ。これにより、たとえ奪われたとしても陽の光を浴びた瞬間にボロボロに朽ち果てることとなる」

 

「はーなるほど。魔王軍の支配領域は夜。だから普段使いには影響無く、人間の手に落ちて持ち帰られた時に壊れるようになっているのか...ん?でもそれだと、町での戦闘に敗北して、そこが人類側の支配領域になったらどうする?昼になっちゃって装備が壊れたら、残された魔物たちはなすすべもなく殺されてしまうぞ」

 

「それでいい。撤退の判断材料になり、無闇な突撃を防いで即座に離脱することができるからな。防具が壊れることで身軽になり、逃亡の手助けにもなるだろう」

 

「おぉ...凄いな感心した。強い陽光が条件ってことは、戦力拮抗状態の夕暮れ時では壊れないってことだろ?もう覆られない戦力差になったことを意味する昼にしか壊れないってのは、それだけで撤退の合図になる...」

 

装備が壊れることを逆に利用する発想は俺にはなかった。魔物たちは凄いことを考えるなぁ...

 

「……あ、一つ聞きたいんだが、魔王軍の装備は全てその特殊金属で作っているのか?」

 

「そうだ」

 

「そっか...じゃあ、これからは普通の金属で作った装備も作ってくれないか?それも数多めでな」

 

「……なぜだ?」

 

「これから一ヶ月後、スターバスという町で大規模な戦闘が始まる。その戦いは、既に人間側が会得した重要な軍事拠点を壊滅させるためのものだ。つまり、その戦闘では陽の光のもとで戦うこととなる」

 

「つまり、特殊金属の装備では戦う前に壊れてしまうから普通の金属で作れ...ということだな?」

 

「その通りだ。そして今大量に作っておくことで、魔王軍が敗北した後の戦闘で使える装備を残しておける。そっちも昼間の戦闘になるから、普通の装備が必要なんだよ」

 

「ふむ...我らは常に勝つことを前提にして武装を生成していた。だが、此度は敗北が規定事項...承知した。作業の合間を縫って作業にあたり、まずは一月後の大規模戦闘には間に合わせよう」

 

「ありがとう。もう一つ追加でなんだが、死印付きの魔物にもちゃんとした装備を支給させてほしい。スターバスでの作戦は死印付きが主力になるし、このままだと人員不足になる恐れがあるからなるべく良い装備を与えてやりたいんだ」

 

「良い装備を作る、という点は我らにもできるが支給云々は管轄外だ。我らに口を出す権利はないゆえ、別の部署に話を通すと良いだろう」

 

「わかった。じゃあ、そういうことで頼むよサルボル」

 

「……今思い出したのだが、代理殿の武装を作るという話が部署内で上がっている。何か希望はあるか?」

 

「俺のか...別に要らないかな」

 

「ほう、その心は?」

 

「まず、武器は自前の能力があるから問題ない。防具も能力で代用が効くし、そもそも鎧とかつけても動きにくくなるだけだからな。回避の方が得意だから、装備無しで身軽の方がありがたい」

 

ってかこれまで鎧なんて一回もつけたことないんだよな。聖杖世界じゃ速度操作の回避が基本だったし、源流世界でもその時の癖が残っていて身軽さを優先していたからな。使ったことある防具といえば左腕に装着する盾くらいだが、それも行動に支障が出ないくらいのサイズだった。多分俺には、防具で攻撃を受け止めるよりも自力回避の方が向いているんだろうな。

 

「それに、俺ちょくちょく町に潜入することがあるんだが、軍人でもないのに防具でガチガチに守られた人間が外からやってきたら流石に怪しいだろ?手ぶらの方が怪しまれずに済む。それも理由の一つだな」

 

「……それは、持っていかなければ良いだけの話では?」

 

「あー確かにそうだな...あっ、じゃあ取り回しの良くて懐に隠しやすい短剣を二本ほど作っておいてくれないか?勇者対策で能力とか魔法関係ない普通の武器が必要なのを忘れていたよ」

 

対勇者用の武器のことをすっかり忘れてしまっていた。勇者の武器に付与される力、特殊な力を打ち消す効果で俺の衝撃の剣を消される可能性がある。消された場合、衝撃エネルギーの再チャージにかなりの時間がかかるから、それの時間稼ぎように普通の武器が必要なのだ。

 

「了解した。必ずご希望に添える武器を作って見せましょう」

 

「よろしく頼むぜ」

 

サルボルが扉を開けて部屋の中へと戻っていく。

 

「代理殿の勅命だ!三班はこれから言う作業にあたれ!」

 

と、扉が閉まる前にそんな声が聞こえてきた。これから大変だろうなぁ...ちょっと申し訳ない。

 

「……さて、次に行く前に、ちょっと外行くか」

 

次の部署のところに向かいたいところだが、さっきの熱のせいでかなり衝撃エネルギーが溜まってしまった。不意に能力を解除してしまって溜め込まれた衝撃エネルギーが解放→自分爆散となるのが怖いので、外に放出しに行く。

 

「ふぅ...星空が綺麗だな」

 

外に出た俺は衝撃の剣を取り出しながら空を見上げる。星一つなかった聖杖世界の夜とは違い、この法術世界の夜空は普通に星でいっぱいだ。そして空を埋め尽くす星たちは一つ一つがかなりの輝きを放出しており、電灯が無くても昼間くらい明るかったりする。

 

「夜が明るいってあんま慣れねぇな...なんとなくだが、マリスタの思想を感じるぜ」

 

夜も明るいのは、この世界の夜の象徴である魔物たちが悪ってわけじゃないというのを示しているような、そんな気がする。魔王軍は人類を支配しているものの、それは支配者争いに勝ったからであって、別に独裁を敷いているわけではない。支配下にあるときは無闇な殺生はせず、人類の反乱に対応してこれを鎮圧するだけ。そこに善悪は無く、支配者であるという役割からの行動であって必ずしも悪ではないのだ。

 

敵対関係であることすら、マリスタが作り上げたもの。この世界をより良いものにするために、互いに競い合わせて成長を促す駒だ。戦争がどっちの勝利に転んでも、二つの種族が生き残っていればそれだけで世界の未来は明るい。だから昼も夕暮れも夜も明るいのだろう。

 

「……なんか、魔物を指揮する側に立ったおかげで新たな視点を手に入れられたな。魔物は絶対悪ではない...か。聖杖世界の魔王も、見方によっては...?」

 

自身を生み出した存在の復活を望むのは、そいつ自身にとっては最優先でなすべきことだ。そして、それを阻止しようとする人間は悪だと見るだろう。世界の異物であった源流世界の魔族は完全なる悪として見てもいいかもしれないが、聖杖世界の魔物や魔族、魔王は一概に悪であるとは言えないだろう。もちろん、人間側から見たら人類を脅かす悪なことには間違いないし、世界の摂理としては人類の勝利が自然だからその世界にとっては悪役ではあるだろう。

 

「……けど俺に寄生してんのは完全なる悪だわ許すまじ」

 

そう言いながら俺は衝撃の剣を斜め上の空に向ける。その方向に何もないことを確認し、魔王に対する怒りを込めて...!

 

「衝撃解放!」

 

溜め込まれていた余分な衝撃エネルギーを空気中に解放する。本当は続けて魔王絶対潰す!とでも言いたかったが、魔物たちがそれを聞いたら物凄い勘違いをしてしまうだろうと思いグッと我慢した俺は偉い。

 

「ふぅ...スッキリスッキリ」

 

ちょうどいい量になった衝撃の剣を細い糸状に変形させ、服の中に編み込んでいく。

 

「えーっと次に行くのは...ここから近いし、統治部にしようか」

 

次に向かうのは統治部...各地の領地の統治を担当している部署だ。死印付きの魔物の扱いについて打診しに行くとしよう。




設定開示タイムは次回も続きます。
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