今回も部署巡りですね。
「失礼しまーす」
統治部の部屋の中に足を踏み入れる。魔物意外と少ないな...まぁ大人数が現場に行っているから少ないのは当然か。
「む...っ⁉︎代理様⁉︎」
「座ったまんまでいいぞ。俺がそっち行く」
びっくりしたような顔でドカッと立ち上がった部長らしき魔物を、手で静止させながらそっちに近づく。
「椅子借りるぜ〜」
適当な椅子を引っ張ってきて座る。
「き、急にどうなさいましたか代理様...?用があるのならば、お呼びしてくだされば...」
「今日は視察に来たんだ。仕事止めちまって申し訳ないが、統治部についていろいろと教えてもらえると助かる」
「それは良いのですが...お話しできることはそこまでありませんよ?」
「別に良いよそれで。こっちの質問に答えてくれるだけで良いから」
「は、はぁ...」
「まず、統治部ってこの場所では何をしているんだ?」
「えぇと、ここでは諜報部やうちの通信魔法を持っている隊員から伝達された各地の町や村の情報を纏めて、どのように支配していくかを決定するのが主な仕事ですね」
「具体的には?」
「えと、食糧事情の管理や問題事の解決がまずありまして、その他にも他の町との人や物の行き来を監視して不穏な動きがあれば止めるだとか、ニンゲンの負担がかかりすぎないギリギリの物資徴収量を決めるといったこともうちの管轄ですね」
「へーそんなことまでしているんだな。ってか、案外人類の扱いって良いんだな。もっと扱い悪いと思ってたわ」
「そんな滅相もない...無理な統治は多くの反感を生み、逃げ出してしまったりストライキを起こしたりなどされて結果的に物資が徴収出来なくなる恐れがありますから、苦にならない程度の量を少しずつ取っていくのが正解なんですよ」
「まぁ、そりゃそうだな」
「そのためにも、まずはニンゲンたちの生活を安定させて反乱を起こそうという気を削ぎ、このままの生活でも良いと思わせるのが良いんです」
「確かに長期的な支配をするには、この生活が当然であって、下手に反抗すればその生活が脅かされるだとかそういったことすら思い浮かばないくらい、その生活が当たり前のものだと思ってくれた方がいいもんな。まぁ、得えして人間ってのは支配者に対して反逆したいと思っちまうもんだから、そう上手くはいかないんだけどね」
「そうですね。何度改良を施しても魔王様がいなくなった瞬間に反抗しだすんですから、もう嫌になりますよ...代理様、ニンゲン目線で何か良い案ありませんか?」
「んー...こればっかりは何やっても結果は変わんないと思うなぁ...正直言って、今のやり方は結構最善に近いと思うぞ?」
やれることはやり切ってると思うんだよな。支配されている事実だけで人は抗おうとしてしまうだろうし、これより良い待遇をしたとしても逆にもっと上を目指そうとしてつけあがってくるだろうから現状維持が一番に思える。
「そうですか...なら仕方ないですね」
「んじゃあ次の質問だ。統治部って、警備にあたっている奴らとは別なんだよな?」
「ですね。そちらは戦闘部の管轄です」
「じゃあ統治部は役所で色々やってる...って認識でいいんだな?」
「それであってます」
「そいつらの配置ってどうなってる?警備の奴らと同じで全員死印付きにしているのか?」
「それはしてないですね...なにしろ、うちの部署には死印付きがいないもので」
「そうなのか?一人も?」
「いたにはいたんですがもう死にましたね」
「あっ、そういう...じゃあ今も死印無しの魔物が統治しているのか?」
「ですね」
「それは...大丈夫なのか?万が一でも死ぬようなことがあったらだいぶ不味いんだが...」
「それは大丈夫だと思いますよ。統治部に所属しているのは統治に長けた魔法を持っている者か、即座に戦線離脱できる魔法を持っている者のみ。前者は洗脳魔法で場をかき乱している最中に逃げ出せ、後者は転移や透明化で逃げ出せるようになっています。戦死する恐れはないかと」
「なるほど...一抹の不安は残るが、死印付きがいないんじゃ仕方ないか。くれぐれも死なないよう、自分の命を最優先に行動するように伝達しておいてくれ」
俺はそう伝えてから立ち上がる。
「ハッ!直ちに伝えます!」
「頼んだぜ」
深々と頭を下げる気配を背中に受けながら俺は統治部を後にする。
「よし、次は...近いしあそこ行ってみるか」
その足のまま次の部署に向かう。
「炊き上げの部署ってことは、毎日運ばれてくる料理はそこで作られてるんだよな?実際に行くのは初めてだな」
次に向かうのは魔王城での食事の全てを担当し、各地へ配布する食糧も作っているという仕事量どうなってるんだと言いたくなる炊事部だ。毎日のように魔王の間まで運ばれてくる食事もそこのものなのだが、これがまた美味しくてだな...魔物の料理だろ?と思ってたら、どうやら人間の料理もマスターしているらしく、俺専用にわざわざ人間向きの味付けで作っていると聞いた時は驚いた覚えがある。
「食堂どんな感じなんだろ...」
炊事部の事務所に行くには食堂を通る必要がある。そこにいる魔物全員を驚かせてしまうだろうけど、まぁ仕方ないね。
「ついでに人間向きじゃない、魔物の料理も食べてみようかな...あーでも待てよ?さっきの治療みたいなことなったら嫌だな...一応やめておこう」
変な好奇心出すのはやめておこう。食べて体に合わなくてすぐぶっ倒れて治療もできず死亡ってなるのが怖いからな。
「……あそこか。扉ついてないから良い匂いが流れてくる...」
角を曲がった先に食堂を見つけた。美味しそうな香ばしい匂いがここまで届いている...今さっき食べないと決意したばかりなのに揺らぎそうだ。
「扉ないのは...行き来のしやすさのためか」
大量の魔物が行き来するのだから扉があっては邪魔になるからな。食堂に至るまでの道が既に広いし、そこから中に入る動線をわざわざ狭くする理由はないだろう。
「よし行くか...」
食堂に向かって歩き始める。
「よっす」
向かいからバケツのようなものに入った何かを口に運びながら歩いてくる魔物がいたので軽く挨拶をする。
「ま、まま魔王代理⁉︎」
「それなんて料理?」
バケツの中を覗き込みながら聞いてみる。
「む、ムガンジャです...」
……なんて言った?ムガンジャ?知らない固有名詞すぎる...俺の知っているものの中に代替できる名前が無くて、適当な言葉に置き換えられたのかな。翻訳能力さん、時々やっつけ仕事になるのやめてほしい。
「た、食べます...?」
「いや、後で自分で頼むよ。急に話しかけて悪かったな」
後ろに向かって手を軽く振りながら食堂の中に入る。先ほどのムガンジャなる謎の固形物がどんな食べ物なのか気になるところではあるが、まずは炊事部の奴らと話すのが優先だな。
「うわぁ、いろんな魔物がいるなぁ...そんで、めっちゃ目立ってんな俺」
食堂の中には多種多様な魔物たちがいるが、当然だがその中に人間は誰一人としていない。そんな中俺が急に現れれば、注目されるのは避けられない...ってのはわかってたけど、流石に見られすぎてて気になるな。
「あー、みんなそのまま食べてて良いぞ。用があるのは事務所の方だから」
壁のように立ち並ぶ魔物たちの間をうまくすり抜けながら奥へ奥へと進んでいく。
「よいしょっと...ここか。っと、ナイスタイミング」
ちょうど炊事部の事務所の前にたどり着いたタイミングで、扉が開いて中からフヨフヨと浮遊している雲のような魔物が出てきた。多分、騒ぎを聞きつけて出迎えに来たのだろう。
「ま、魔王代理様...なんの御用でしょうか?まさか、料理がお気に召さなかったとか...?」
「そんなまさか。びっくりするほど美味しかったぜ」
「ではなぜこんなところまで...?」
「今、いろんな部署に出向いて話を聞いているところなんだ。だから中で話せたらと思うんだが、今忙しいか?無理なら後でまた来るが」
「いえいえ!今はそこまで忙しくないので対応できます代理様を待たせることはございません!」
「えっ、この密集具合で忙しくないのか...?」
「多いときはもっといますよ。壁や天井に貼り付いて食べるようなことにはなってませんから」
「嘘だろそんなことになるのか...」
「ささ、中へどうぞ代理様」
「ああわかった」
魔物の後ろをついて行き扉をくぐる。くぐった先のすぐ左に、調理場と魔物の言語で書かれた看板がかけられた扉があった。その横を通り過ぎて直進し、炊事部の事務所へと続く道を歩く。
「何もない場所ですが...おかけください」
「君は座ら...って、そもそも座れないのか」
俺だけ座っているのも申し訳ないと一瞬思ったが、そもそも浮遊しているから椅子が要らなかったっていうね。
「ってか、椅子少ないな。そういう魔物が多いのか?」
「皆様にお配りする料理に万が一にも異物が混入することがないよう、食堂担当の炊事部は私めのように実体が希薄な者が多く在籍しているもので、椅子が必要ないのですよ」
「じゃあこの椅子の主は?」
「調理担当ではない者のものですね。他の椅子もそれか、たまに来る統治部の方を出迎える用のものが幾つか置かれているのでそれですね」
「なるほど。食糧事情がどうとか言ってたがここと協力してたのか...んじゃあ、これからいくつか質問をしていく。畏まらなくていいから、友達と話すような感じで気軽に話してくれ」
「わかりました」
「まず、そもそも料理の材料ってどこから手に入れているんだ?魔王代理のくせして基本のことすら何一つ知らないんだ。教えてくれ」
「そうなんですか...考えてみれば、マリスタ様に巻き込まれて魔王様の代理役をやることになっただけで、元はただのニンゲン...なんですもんね」
ただの人間ってわけじゃないし、マリスタのせいでやることになったわけじゃないからちょっと話が違うけど...まぁいっか。巻き込まれただけで元はただの人間って認識は、魔王代理への恐怖を薄めてくれるからな。
「そうなんだよ。戦う力だけ与えられて、部下のこととかどんなふうに魔王軍が動いていたのかとかそういった情報は何一つくれないんだぜ?酷い話だよな」
……なんか、嫌な予感がするな。先に釘を刺しておくか。
「来なくて良いからなマリスタ。話が面倒になるし、実際にそうなんだから反論しに来んな」
「……今、なんと言いました?」
「いや、独り言だから気にしないでくれ」
翻訳能力の設定を弄ってマリスタだけに聞こえるような声で釘を刺した。その効果があったのか、はたまたそもそも俺のことを今見ていなかったのかはわからないが、マリスタは現れなかった。
「それで、どうやって食材を手に入れているんだ?」
「そ、そうでしたね」
目の前の魔物は俺がなんと言ったかわからなかったために不思議そうな顔をしていたが、俺が話を戻すと魔物は身体を細く伸ばして誰かの机の上に置かれていた資料を掴み取って話し始めた。
「食材のうち半分は地下の栽培場で作られていますね。残り半分は支配している村や町から徴収したり、山から自生しているものを収穫するなどしています」
そういやこの世界、生物が人間と魔物だけで普通の動物がいないから、肉とか魚が無いんだよな...人間側の社会では殺した魔物の肉を食べるとかはあるのかもしれないが、魔物側は人間を取って食うことはないため一切食卓に出てこない。
それゆえに出てくるのは穀物と野菜や果物だけ...なはずなのに明らかに肉っぽいものが出てくる時あるんだよな。大豆ミートみたいなことしているのかな?ちゃんとおいしいのもあって、多分世のヴィーガンにとってこの世界は天国だろうなと思う。
「……ん?地下って採掘場なのでは?」
「深層はそうですが、すでに掘削の終わった浅い階層は栽培場になっているんですよ」
「そうなのか。栽培もこの部署が?」
「ですね。食糧に関することなら輸送以外は大体うちでやっているので」
「凄いな...人手は足りているのか?」
「足りてますよ。重要な部署だからと多く回されてますから」
「まぁあれだけの大人数の食糧を賄うんだから、それだけ人員は回されるよな...それで次の質問なんだが、さっき支配している村や町から徴収してるって言ってたよな?今後はどんどん町を奪われていくわけだけど、それで食糧が足りなくなる...ってことにはならないのか?」
「多分...大丈夫だと思います。貯蓄もありますし、今回は戦死する仲間の数もわかっていますから計画的に消費することもできますし」
「なるほどそれは確かに。あっ、じゃあこれ伝えた方がいいか...今から一ヶ月後にスターバスにて大規模な戦闘をすることになっているんだが、そこで大勢の戦闘員が死亡する。それを考慮して計画を立ててくれると嬉しいかな」
「一ヶ月後...わかりました」
「あと今さっき思い浮かんだ疑問なんだが、町を奪われたらそこにある畑も奪われちゃうんだよな?取り返した後が面倒になるかもしれないけど、撤退する時に畑を荒らしておいて人類側の物資にさせないようにしたりはしないのか?」
第一次世界大戦でロシア軍が行った、撤退する際にその地域を破壊することで敵軍に施設や物資を活用されないようにする作戦は、今の魔王軍も参考にすべきだと思うのだがどうだろう?
「その必要はないかと」
「なぜだ?」
「私たちがニンゲンたちに作らせている作物は、陽の光の下では生育しないものなんです。ニンゲンたちが領地を奪い返せばそこは昼となり、作物は生育を止める。生産が行われなければ次第に食糧が尽きて行き、別の町を奪い返すことでしか食糧を得れなくなる。疲弊した状態で出陣してきたところで、こっちはすぐに返り討ちにできる...と、そういう悪循環を起こすわけですね」
「陽の光...ってことは、もしかして鋳造部の特殊金属と同じような魔法がかけられてるとか?」
「そうですね。同系統の魔法が既に組み込まれていまして、いちいち種一つずつに魔法をかけずとも子へと形質が受け継がれていくんですよ」
「遺伝すんのか。そいつは便利だな」
にしても、領地を取り返すことで食糧難になるって凄い仕組みだな...占領具合で昼夜が切り替わるこの世界の摂理を最大限に活用しててビックリする。そんなん思いつかないぞ...
「……やべ、何聞こうとしてたのか忘れちった...そういえばなんだが、みんなが食べているようなものって俺が食べたら何か問題あるか?人には毒とか...」
「毒ではないですが...魔物はひたすら味の濃いものを好む傾向にあるので、多分ニンゲンの口には合わないかと...材料も味付けも尖ったものが多いので、そういう意味では体に毒かもしれませんね」
「そうか...うん、これ以上は聞くことないかな。手間取らせてしまって悪かったね」
「いえいえ。仕事ご苦労様です本当に...」
「これからも良い料理期待してるぜ」
俺はそう告げて炊事部の事務所を後にした。
「……あっ、また名前聞き忘れた。無意識のうちに興味関心から外しちゃってんのかな...」
相手が自発的に名前を言ってくれないと名前を覚えられないのはまずいな...次はちゃんと名前を聞こう、そう思いながら俺は次の部署へと向かった。
「失礼しまーす」
次の部署...諜報部の事務所に入る。
「……あっ、カリヤだー!」
入って早々そんな声が聞こえたかと思えば、少し離れたところにあるデスクから何かが俺の足元に落ちてきた。水玉...ってことは。
「おぉミセラか。数時間ぶりだな」
多分この水玉はバラバラになったミセラの一部だろう。召集がかかって諜報部の方に戻っていっていたけど、そこからどこかの町へと、身体の一部をここに残して出向いていったのだろう。
「さっきぶりー!何しに来たのー?」
「諜報部に聞き取り調査と、ちょっとした頼み事があってな」
「そっかーじゃあ部長呼んでくるねー」
すすすーっと床の上を這ってミニミセラが奥へと消えていく。
「部長か...会うの初めてだな」
副部長のロザドには何回か会ったが、部長には会ったことないんだよな。どんな奴なんだろう楽しみだ。
「ミセラに呼ばれて来てみれば、これはこれは代理様じゃあないですか」
うお...なんか、飄々とした感じの...霧?輪郭がぼやけていてどんな魔物なのかよくわからないが、こいつが諜報部の部長なのだろう。
「もしかしてあの件ですかねぇ?」
「あの件...?」
「どうやらうちのロザドがやらかして代理様の逆鱗に触れたそうで...すみませんね、アイツ臨機応変ってのが苦手で頭が固いんすよ。なんでその頭を解きほぐしてやる感じで、ムカついたらいつでも切ってやってください」
「お、おう...別にその件で来たわけじゃないから気にしなくて良いぞ」
「そうですか。じゃあどんな御用で?」
「今いろんな部署を回って聞き取り調査をしていてな。ここにはそれで来たんだ」
「なるほど...でしたら代理様、運が良かったですねぇ。私、普段は外にいるものでここにはいないんですよ。今ならなんでもお答えできますぜ」
「そうかありがとう。つってもそんなに質問することもないんだが...ってか名前聞いてなかったな。なんて名だ?」
「シャリヤと言う。こんな不鮮明なナリしてるんで、名前だけでも記憶の隅っこに残しといてください」
……なんか、これまで会ってきた奴らとは一味も二味も違う奴だな...魔王に対する恐れがないというか、あまりにも飄々としすぎている。ちょっと新鮮だな...多分ちゃんと姿が見えてたら、絶対糸目だよこいつ。
「じゃあシャリヤ。まずなんだが、今現場で実際に諜報活動をしてるのった全員死印付きか?」
「自分が出てるんで全員じゃないっすねぇ」
「……それ以外は?」
「ほぼほぼ...九割九分だな。それがなにか?」
「一ヶ月後、スターバスで大規模な戦闘を行うことになっているんだが、その戦闘は死印付きを主戦力にしたいんだ。だから、出来るだけ死印付きの人員を減らしたくなくてだな...」
「……なるほど?つまり言いたいのは、今出向いている死印付きの諜報部隊を引き下げて人員確保をしたいということだな?」
「その通りだ。同じようなことを戦闘部の方にも伝えようと思っているんだが、諜報部にもお願いしたくてな。出来るだけ死印無しに仕事をさせ、命を最優先にして動いてもらうことって出来るか?」
「可能だ...と言いたいところだが、実は死印無しがうちの部署にはあまり居なくてな...確実に逃げ切れると信頼のおける奴なら死印付きでも出動させてかまわないか?」
「いないのなら仕方ない。許可しよう」
「よし、ならばミセラ。今の話を全員に伝達だ。そして今から俺が言う奴は調査続行。その次は代わりに入る隊員だ。一語一句の伝達ミスもするんじゃないぞ」
「あいあいさー!」
ミセラって...こう言うと色々と語弊があるが便利だよな。分割した一個体が知覚したことは全てに共有されるから、隊員に一欠片ずつ持たせれば全員に即座に連絡を取ることができるんだろ?何気に一番重要なポストじゃないかなこれ...死印付きなのがもったいないくらいだ。
「……他に何かあるかい?代理様?」
ミセラに一通り伝達内容を伝え終えたシャリヤは俺の方に向き直ってそう言った。
「うーむ...正直諜報部って具体的にどんなことして情報を探ってんのかよくわかってないんだよな。だから質問することもあんましできんっていう」
「無計画にも程があるんじゃあないかい代理様?」
「言うね...そこまで砕けるんだったら、俺のことは代理様じゃなくカリヤと呼んでくれ。ミセラがやってるようにな」
「あれま良かったのか。てっきりミセラにだけ許している呼び名だとばかり」
「なんかね、カリヤはもっとフランクに接して欲しいんだって。だから名前で呼んであげたら泣いて喜ぶと思うよ?」
「おやそんなことで面白い光景が見れるのか。ならやり得だねぇ。そう思うだろ?カリヤ」
「……今の流れを目の前で聞いてて泣く奴いるか?」
こいつ俺のこと舐め腐ってやがるな?けどそれはそれで新鮮...と思えるほどMでもないので、諜報部訪問はちょっとした苛立ちと共に終わったのだった。
おそらく次回は二つの部署を巡り、魔王城探検は終わりになると思います。