神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8297字。

二つ部署を巡ります。


作戦思案と戦闘部

「次は...ここか」

 

俺は輸送部の事務所の前に来ていた。統治部の一件があったため一応ここに来るまでの間に名簿を見返していたのだが、この部署はそこそこの人数死印付きがいることがわかった。

 

戦闘に参加するわけではないため死印付きを温存しろとまでは言えないが、既に結構な数死んでしまっているためこのままだと物資輸送に支障をきたす可能性があるので、現状を聞いて上手いこと業務改善案を出せたら良いなと思っている。

 

「よし、行くか」

 

そう呟いてドアノブに手をかけたその時だった。

 

「だ、代理様...⁉︎」

 

横から声が聞こえてきた。と思ったらドンッ!バタバタバタ...と物が落ちる音がし出して、驚いてそっちの方を見る。

 

「おいおい大丈夫か?」

 

どうやら、何かの箱を抱えていた魔物が俺にびっくりして転んでしまい、箱の中身が飛び出してしまったようだ。拾ってあげよう...

 

「ひ、ひゃい!失礼しましたーっ!!」

 

「お、おぅ...速いな」

 

魔物は俺の目にも留まらぬ速さで散らばった箱の中身を拾い集めると、そのままの勢いで輸送部の事務所の中へと入っていった。

 

「……今、扉すり抜けていったな...そういう能力なのかな」

 

ちょっと頭が追いつかないが、とりあえず俺も中に入るか...

 

「失礼しまーす」

 

扉を開けて事務所の中に入る。

 

「あのっ、部長!なんかさっき代理様が扉の前に...っている⁉︎」

 

中に入ってきた俺の存在に気づき、魔物はまた荷物を落としてしまった。そそっかしい子だな...

 

「ああもう何やってんのよサミュ...慌ただしくてすみませんね」

 

「大丈夫だ。落ち着いたら...貴方が部長だよな?来てくれると助かる」

 

「わかりました。この荷物を整理したら向かいますね」

 

そう言って部長は、サミュと呼ばれた魔物と一緒に荷物を持って奥の方へと消えていった。

 

「……どっちとも、なんの魔物なんだろ。モチーフがよくわからん...」

 

この世界の魔物ってよくわからないのが多いんだよな。何かの動物に似てるとか、何かの伝承上の生物に似てるとか、そういうのに当てはまらないような魔物が多い気がする。そのせいで形容しづらい...特徴的ではあるから他の魔物とは見分けられるけど、逆に言えばそれまでしかできなくて、具体的にどんな魔物なのかを説明することができない。

 

……これ、俺の語彙力とか知識量の問題じゃなくて、魔物全員にかけられている認識阻害系の魔法だったりするのかな?人間が魔物の姿を見ても、それを上手く言葉にできないようにして人に伝達することを防ぐ、そういう反ミームみたいな...ってか、魔物たちはお互いにどんな魔物なのかってわかってたりするのかな?魔物視点だと上手く説明できたりするのかな...

 

「お待たせしました。それで代理様、今日はどんな御用でしょうか?」

 

「今色々な部署を巡って話を聞いていてな。それでここに来たんだ」

 

「なるほど...それで、どんな話をすればよろしいですか?」

 

「その前にまずは名前を教えてくれ」

 

「ニグロスです」

 

「ニグロスさんね...それじゃあまず、輸送部の仕事を大雑把で良いから教えてくれ。俺の認識が合っているか擦り合わせをしたいんだ」

 

「えぇと、そうですね...輸送部では、各地から徴収した物資をこの城まで運んだり、逆に物資や戦闘員を各地に運んだり...とまぁ、おそらく代理様が思っているものそのままですね」

 

「なるほど...その輸送は馬車...じゃねぇわ。荷物乗せた荷車を誰かが引っ張るだとか、魔法を使って持ち上げるとかして輸送しているのか?」

 

動物がいないから当然馬車という概念も無いわけで、うまいこと具体例を挙げながら言い直しておく。

 

「その通りですね。たまに転移が出来る子が直接飛ばしたりすることもありますが」

 

「そっか転移もあったか。ってことはハサミツってここ所属?」

 

「ハサミツはうちの隊員ですね」

 

「やっぱりか。すみませんね、ちょくちょく借りていっちゃって」

 

「構いませんよ。ハサミツも代理様のお役に立てて嬉しいと喜んでいましたから」

 

「それならよかった...ハサミツ以外に転移系の魔法を持っている奴っているのか?」

 

「ニンゲンや魔物を運べるのはあの子だけですね。物だけなら飛ばせる者は多いのですが、生物は飛ばせないことが多くて...」

 

「そうなのか...じゃあ結構珍しいんだなあいつの魔法って。そういやハサミツって物も転移できるのか?」

 

「手に抱えられるサイズのものなら可能ですが、あの子の転移はそこそこ体力を使ってしまうので物の移動にはあまり使いませんね...緊急で魔物を移動させないといけない時に重宝しています」

 

「なるほど...それじゃあ聞きたいんだが、最近死者が増えてるそうだな」

 

ハサミツの話題へと話がずれつつあるから、話を戻すためにも本題に入っていこう。

 

「そう...ですね。最近は輸送中に襲撃されてしまう事例が増えていまして...以前の戦争でも時間が経つに連れてこういう襲撃も同じように増えていたのですが、その時は返り討ちにしていました。ですが、どうやら死印付きではないニンゲンが襲撃に来ているらしく、反撃が出来ずに殺されてしまうようで...」

 

「あー...なるほどな。そのせいだったのか...」

 

「反撃ができず、自身が死印付きなこともあって諦めてしまうことも原因の一つですね...それでもニンゲンどもに物資を奪われないように破壊してから殺されるところは、使命を全う出来ていて評価できるのですが...」

 

「うーむ...実は、今から一ヶ月後にスターバスで大規模な戦闘を行うんだが、その時に双方大勢の死者を出すことが予定されているんだ。勇者が出張ってくるから、輸送部もある程度被害が出てしまうと予想できる...そこでだが、出来るだけ多くの死印付きを残しておくことで、その作戦を死印付きだけで実行して万が一の不慮の事故を無くそうと考えているんだ。そのためにも、このまま死者を出し続けることはあまり好ましくなくてな...何か改善案はあるか?」

 

「改善策ですか...一応既に、襲撃を受けても諦めずに逃げるように伝えてはいるのですがまぁあまり効果はなく...」

 

「自分は死ぬって死刑宣告受けてるからな...もう無理ってなったら最後まで足掻こうとせずに諦めちゃう気持ちはわからなくはない。けどもう少し頑張ってほしい...」

 

「誰か精神干渉魔法を使える子を呼んで、自分が死印付きだという認識を無くしてしまうとかはアリですかね?」

 

「全然アリだな。記憶改竄と、自分の頭の上に見える印が生き残る奴に見える印だっていうふうに認識改変をすれば、死に物狂いで逃げてくれるだろう...ってこれだとダメか。自分の頭の上に印が見えないようにする感じじゃないと、普通に反撃して襲撃者殺しちゃうか」

 

危ない危ない。印の認識を反転させるんじゃ、襲撃者が死印付きじゃなかった時ヤバいことになってたな。自分は死印付きではないっていう認識に改変する方が簡単だし不慮の事故も起こりにくそうだな。

 

「とりあえずこれは一つの案として残しておくか...他に何か案はあるか?俺としては、出来るだけ死印付きを温存して逃走力に長けた死印無しが頑張るっていう雑な作戦しか出せないから、現場を知ってるニグロスに案を出してもらいたいんだよな」

 

「確かにその作戦は危険ですね...ですが私の案も死印付きの努力に依存しているので、良い作戦とは言えないんですよね...他に案を出すとすれば...」

 

ニグロスはしばらく考え込み...口を開く。

 

「……なら、もはや運ばないというのもアリかもですね」

 

「運ばない?どういうことだ?」

 

「物は全て転移で移動させてしまうんですよ。物質転移は当人たちによれば案外簡単なそうで、遠距離まで飛ばせる者は多いですから物資の輸送は最悪転移で対応できるはずです。町に一体ずつ配置しておけば、町から町へと少しずつ転移させていって物資を行き渡らせていくことも可能なはず...」

 

「なるほど。じゃあ魔物はどうする?ハサミツの転移じゃ全員の魔物の転移は無理なんだろ?魔物を入れた箱を物質転移で転移させる...みたいな裏技ができる感じでも無さそうだし、どうするんだ?」

 

「そもそも移動なんて必要ないと思うんですよ。いや、これだと語弊がありますね...正確に言えば、全員引き上げてしまえばいい、ですかね?」

 

「え?全員引き上げる...?」

 

「これは諜報部や統治部、戦闘部にも協力してもらう必要があるのですが...聞いていただけますか?前代未聞すぎて、それで正しいのかどうか、そもそも成立するのかどうかはわかりませんが...」

 

「いいぞ。言うだけならタダだからバンバン言ってくれ」

 

「それでしたら...少し待っていてください」

 

そう言ってニグロスは一旦どこかへとはけていき...何か紙のようなものを持って戻ってきた。そしてニグロスはそれを広げる。これは...地図?

 

「先ほど、一ヶ月後にスターバスで戦闘があると言いましたよね?」

 

「ああ。あとさっき言い忘れてたが、一回人類側に奪われてから数日後に大規模戦闘って流れになる予定だ」

 

「……でしたら、尚更やらなければならないかもですね...見てください。この地図の青色の部分が魔王軍の支配領域で、赤がニンゲンの支配領域です」

 

どうやらこの世界全体を記した地図のようだが、今の所は青色が大多数を占めていた。赤色は左下の端にある王城から円形に広がっており、王城を中心に少しずつ支配領域を広げていることが見て取れる。

 

……ってか、魔王城は世界の中央のやや右あたりにあるんだな。端と端に位置してるわけではないんだな...まぁ、支配者側の拠点である魔王城が世界の端にあるのはちょっと変か。治世をするには中央に位置していた方がいいよな。

 

「スターバスはここです。ちょうど魔王城と現在の支配領域の端との中間に位置しているのがわかりますか?」

 

「そうだな」

 

「今から一ヶ月後...一度奪われることを考慮して三週間後としますが、おそらくニンゲンどもはスターバスまで辿り着けません」

 

「……なんだと?」

 

「諜報部から流れてくる情報から、ニンゲンどもの動きはそれなりに遅いことが予想されます。ここ一週間で奪われた領域の広さ、そして死印無しのニンゲンがいるせいでほぼ戦うことなく奪われた町があってこれなのを考えれば、三週間でスターバスにたどり着くことは困難かと」

 

「な、なるほど...でもなんでだ?本来の歴史なら、ちゃんとスターバスまで辿り着いていたはずなのに...」

 

「……戦姫が既に死んでいるからでは?」

 

「あっ...そういやそうだった!」

 

スターバスのことを死印名簿で読んだ時、戦姫がいないから勇者到着が遅れるかも...とか考えていたが、そもそも戦姫がいないことで人類の進軍そのものが遅れるのか...!そこまで考えが及んでいなかった...!

 

「戦姫がいないから戦力ダウンしてるし、暗殺されたことで人類も警戒する...攻めに慎重になるのも当然か!」

 

「ええ、ですからわざと撤退させるのです」

 

「それは...スターバスまでの間にある町から魔物を撤退させるってことだよな?」

 

「はい。その町にいる死印付きのニンゲンを始末して、すぐに総員撤退させればこちらの被害を無くしながら目的を達成できます」

 

「ふむ...そいつは妙案だな。だけど、幾つか問題はあると思う」

 

「問題...ですか?」

 

「一つは、急にそんなことをし出したら明らかに不自然であること。罠である可能性を考えて、逆に動きが鈍ってしまうかもしれない。魔物が撤退した町はそのまま占拠するだろうけど、そこから先の動きに支障が出る可能性がある」

 

「なるほど。でしたらこういう話を警備兵の口からそれとなくニンゲンどもに流してもらいましょう。魔王様が危篤だとか、怪我をなされただとか...そういう事態があって招集がかかったとなれば、全ての警備兵が帰還することは不思議ではありませんから不信感は持たれないはずです」

 

「実際、魔王再臨の時は最小限の魔物を残して全員魔王城に集まるんだもんな...なるほど確かに、そのカバーストーリーは全然ありだろう。だけど、不自然なことはもう一つある。それは、それまで一切手を出して来なかった警備兵が急に特定の人間だけ殺してから撤退することだ」

 

「それは...流石に回避のしようがありませんね。ですが以前にも特定のニンゲンだけが殺されるところなんて見られているはずですから、今更遅いと思いますよ」

 

「まぁそれはそうなんだが、その事実に確信を持たれちゃうと困るんだよな...どうする?自分が魔物に襲われないことに気づいた勇者が、身を挺して誰かを庇って守ろうとしてきたら。魔物たちは特定の個人しか狙わないことがバレたら、勇者に限らずそういう面倒なことをしてくる輩は絶対に出てくるんだよ」

 

「たしかにそれは避けたいですね...」

 

「けどまぁ、いつかはバレることだししょうがないところではあるから、そこは許容してしまってもいいかもなぁ。うん、採用!」

 

「本当ですか⁉︎」

 

「ああ。けど、他の部署の協力が必要だし、魔王がなんたらの噂を流すのにも時間は必要だ。スターバスにたどり着けないという見込みが本当に正しいのかを確かめるためにも、一週間くらい様子を見よう。一週間経って、こりゃ間に合わないなとなったら作戦決行だ。それでいいか?」

 

「はい、それで良いと思います」

 

「撤退が完了すれば、輸送をすることもほとんどなくなる。そうなれば死印付きの温存もできるし、警備兵の死因付きの温存もできる...他にも色々と利点あるから一石二鳥どころの騒ぎじゃないな」

 

「あっ、そういえば元を辿ればそんな話でしたね...忘れてました」

 

「その話を忘れるくらいの熱弁、物凄い役に立った。本当にありがとうニグロス」

 

「いえいえそんな...」

 

「というかもはや軍師みたいな役職についた方がいいんじゃないか?適性あると思うぞ?」

 

「私はここが適任ですので...現場を知らない私がとやかく言うなんておこがましいことですし」

 

「そういうもんかな...何はともあれありがとうな。俺から聞きたいことももう無いんで、そろそろ失礼させてもらうよ。時間取らせて悪かったね」

 

「構いませんよ。私にできることならいつでも力を貸しますので」

 

「それじゃあ他の部署にさっきの話を伝達してもらえると助かる。戦闘部はこのあと俺が行くから別にいい...と思ったが、俺が行くと怯えられてそれどころじゃなくなるかもな...悪いな前言撤回。関係ある部署全部に伝達頼む。できるか?」

 

「お任せください」

 

深々と頭を下げて礼をするニグロスを横目に見ながら、俺は輸送部を後にした。これまでで一番の実益があったな...と思いながら、最後の戦闘部へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで最後か...」

 

そう呟きながら、俺は戦闘部の修練場の中へと入っていった。ここで将軍であるクレストが部下の訓練をしているらしいので、乗り込んで死印無しの訓練について直接交渉だ。

 

「訓練中失礼するぜ〜」

 

訓練中の魔物の視線が俺に集中する。

 

「だ、代理殿...⁉︎」

 

「なぜこんなところに...!」

 

「クレストはいるかー?」

 

「ハッ、ここにおります」

 

クレストが奥の方から駆け足気味に向かってくる。

 

「如何御用でしょう」

 

「悪いが少し話がある。来てくれないか?」

 

「承知。皆の衆!私はしばらくこの場を離れる。訓練に励むように!」

 

了解!!と魔物たちは大声で答えた。

 

「んじゃあこっちに来てくれ。表で話そう」

 

クレストと共に修練場の外に出る。

 

「話...とは?」

 

「死印付きの魔物の件だ。単刀直入に言うとだな、死印付きの奴らにも死因無しの奴らと同じような訓練を受けてやってほしいんだ」

 

先ほどざっと辺りを見渡してみたが、訓練中の死印付きの魔物の姿はほとんど無く、訓練をしている魔物を修練場の端で見ているだけだった。見たのは一瞬だが、前々から聞いていた噂からも察するに、ちゃんとした訓練を受けさせてもらえていなさそうだった。

 

「……その訳を聞きたい」

 

「これから一ヶ月後、スターバスにて大規模な戦闘を行う。それは町の住人を全員皆殺しにするものだが、最後に勇者が出張ってきて戦闘員の大多数が殺されてしまうんだ。そして、戦姫がいなかったり本来ならこの戦いで死ぬはずの魔物が配置転向によって既に死んでいたりなどといった理由によって、この戦いでどれだけの魔物が死ぬかは予想できない。そのため、死印無しが死んでしまう事故を防ぐためにも、死因付きだけで戦闘員を構成したいんだ」

 

「……そのためには死印付きにもある程度の実力が無ければ困る...ゆえに訓練を受けさせろ、ということか」

 

「ああ。この戦争に負けた後のことを考えて死印無しの訓練を集中させるってのもわかるが、それで死因付きを全員殺すという目的を成せなければ無意味だ。だから頼みたい」

 

「ふむ...言い分はわかるが、私たちは強い。スターバスの戦闘に参加しても構わないはずだ」

 

「勇者が相手でもか?こっちとしてはお前ら一人でも死なれちゃ困るんだ。死印無しが一人も出なければその可能性はゼロに抑えることができる。どれだけ可能性が低くとも、その可能性がほんの少しでもあるならば、そしてそれが行動によって回避できることならば回避すべきだろう?」

 

「だが、今残っている死因付きでは戦力が心許ない。訓練をしたところで、それを覆せるとは思えない」

 

「それは俺が出るから問題無しだ」

 

「……自身も死印付きであるから勇者と戦うことになっても問題ないと、そう言いたいわけですか?」

 

「どっちみち最後には戦うんだぜ?今戦っても問題ないだろ。それに、勇者パーティの中の二人も殺しの対象だからな。死印無しじゃ勇者パーティを相手取るのはキツイ。俺が戦うのは必然だ」

 

「……これまでも何度か、静止を払い除けて現地で活動したと聞き及んでいる。だから、何を言っても意見を変える気は無いことは承知している...が、しかし...」

 

「まぁ俺は死なないさ。この力があれば、勇者以外には負けない。やろうと思えば勇者にも勝てるだろうし、生還することなんて容易いもんさ」

 

戦ったことはまだないから、あくまで予想ではあるけどな...でも、生還することはおそらく何が起こっても達成できるだろう。勇者の武器以外での攻撃は全て衝撃吸収で防げ、空へとぶっ飛んで緊急離脱もできるからな。死にはしないだろう。

 

「そんなに心配なら、ちゃんと死印付きの魔物を訓練してやって、俺の出番が無いくらいの働きをさせてやれば良いんだ。俺を止めるよりもそっちの方が簡単だと思うぜ?」

 

「……承知」

 

俺を説得するのは無理だとわかったようだな。ようやく認めてくれた。

 

「ですが、こちらに死印付きの訓練をするほどのリソースはありません。場所は古い訓練場を使えば良いとしても、教官がおらず...」

 

「なら俺がやるわ」

 

「……訓練は危険がつきものです。それで怪我でもなされたらどうするつもりですか?」

 

「あー...怪我の治療はできないからなぁ」

 

魔法による怪我の治療はできない。他の場所にいる医療部の魔法なら出来るのかもしれないが、少なくとも魔王城に常駐している者の魔法では人間の治療はできないため、下手に訓練に参加して怪我を負ったら困るのは確かだな。

 

「でも、怪我は衝撃の剣でほぼ防げるからな。そこは問題無いはずだ。それに対人間の戦闘訓練だからより実戦に近い練習ができる。短期間で実力を伸ばすならこれ以上無い方法だぜ」

 

「それは...そうだな」

 

「ああでも、それなら鎧とか武器を持ってた方が良いよな。装備も人類の兵が付けてるやつを付けた方がより実践的になるし、衝撃の剣じゃ訓練にならないし...」

 

だけど一つ問題があるんだよな。それは、人間用の鎧がないことだ。武器は適当な剣を借りれば良いけど、鎧は魔物用しかないから着れないっていう...

 

「……なぁ、鋳造部から、人間から奪った装備を溶かしてうんたらって話を聞いたんだが、溶かさずに残してある奴ってあったりするか?」

 

「私には分かりかねますな」

 

「そうか...となると色々準備が必要だな。この後鋳造部に確認を取りに行くとして...訓練は明日から始めようと思う。その通りに伝えておいてくれ」

 

「承知」

 

「それと、輸送部のニグロスから後で連絡くると思うからその対応もしておいてくれ」

 

「承知」

 

「色々と手間取らせて悪かったな。もう戻って良いぞ」

 

「ハッ!」

 

クレストは修練場の中へと戻っていった。それを見届けてから、俺は鋳造部の方へと足を向けるのだった。




次回は久しぶりの戦闘...ですが訓練なんで、そこまで激しい戦いにはならないと思います。
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