今回もそこそこ激しめの戦いです。
「あらよっと...次!」
また三体の魔物を退けた俺は、また次の三人組を呼びつける。
「だ、代理様...流石にもうそろそろ休憩を取られた方が...」
「休憩?そんなの知らん知らん早く次来な!」
久しぶりにハイになっていることは自分でも理解している。正直結構疲労は溜まっている。ハイになっているからそれを感じにくいだけで、休憩は取るべきなのだろう。だけどここで一度足を止めてしまったら、俺は疲れに押しつぶされて今日はもう動けなくなってしまうだろう。
動けるうちは止まらずに動き続ける。限界が来たら実戦形式の訓練はやめて、スターバス滅亡の作戦を練ったりみんなの魔法の詳細を聞いてより良い戦法を立案する座学に移行すれば良い。それまでは実技を続けるのだ。
「……それでは、次に代理様が負けたら御休憩なさるというのはどうでしょう」
「そんなに休ませたいのか...まぁいい、それで行こう。んで、次に来るのはどいつだ?」
そう俺が言った瞬間、三方向から同時に魔物が飛び出してくる。
「ちゃーんと見てたぜ?」
さっきの会話中に、三人組の魔物たちがゆっくり散らばって他の魔物たちの中に紛れていくのを俺はちゃんと見ていた。ノールックで真横に剣を投げてそちらから来ていた魔物を一撃で倒しながら、俺は斜め前から来ていた魔物の方に一歩を踏み出す。
「そんで遅い雑!」
刀身の短い小型の剣を魔物が振ってくるが、力任せに振られた狙いの荒い剣なんか当たるわけがない。身をかがめてサッと剣を避けると、そのまま止まらずに魔物の腹めがけてタックルして突き飛ばす。
「最後...!」
直前に倒した魔物の対処をしている間に左後方から魔物が迫ってきているのを足音で察知していた俺は、勢いよく身体を捩って上半身を先行させながら回し蹴りを放つ。
蹴り方のおかげで、蹴りが向かうよりも前に魔物が視界の中に入る。魔物は...剣を縦に構えて俺の回し蹴りにぶつけようとしているな。このままだと俺の脚は自ら剣に刺さりに行ってしまう...
「ぬぅっ!」
軸足の左膝を折り曲げて膝立ちになり、剣に当たる直前に蹴りの高さを急激に下げる。それによって蹴りは剣を持つ魔物の手を打ち抜き、剣を弾き飛ばす。
「……足音っ⁉︎」
すぐにその場を飛び退くと、そこに剣が突き刺さる。その剣を握っていたのは、新たな三人組のうちの一人...ではなく、この魔物はたしか、最初に俺が剣を投げて倒したはずの魔物だ。ハッキリとは見てないが、横目で剣が当たったのはチラリと見ていたはずなんだけど...他の魔物が何も言ってないってことは流石にゾンビ行為ではないだろう。何かの魔法の仕業か。
「分身か残像か幻覚か...さてどれかな?」
魔物の放ってくる剣戟をバックステップで避けていく。不意打ちでもないのに手ぶらの状態で剣の間合いに入るのは危険だ。まずは剣の回収が最優先だろう。
「おうおう視線で狙いがバレバレだぜ?」
聖杖世界での生活によって培われた動体視力で魔物の目線や指の動きを視認し、高速思考で相手の行動を先読みして回避する。重い甲冑を着たまま剣での攻撃を避けるために己の身体能力をフル活用して事にあたる。
「ほら早く当てて...みなっ!」
足で剣の切っ先を踏み抜き、剣を跳ね上げさせる。魔物が攻撃してくるのを見ながら俺は跳ね上げた剣を掴み取り、魔物の剣と鍔迫り合いをする。
「ふんっ!!」
魔物の体重では甲冑の重量も合わさった俺の剣を押すことはできない。剣に体重をかけていってジリジリと剣を押し込んでいき、それと同時に空いている左手でバチンッと魔物の手を叩く。それによって剣を握る力が緩んだその一瞬を狙って俺は剣を真上へ弾き飛ばし...
「セイッ!」
魔物の身体に剣を叩き込む。刃が無いため切れることはないが、そこそこ重量のある金属の塊が腹に叩き込まれたためしばらく身動きは取れな...
「なっ、消えた...?」
魔物の腹を確かに叩いてやったはずだが、魔物の姿がどこにもいない。今のが分身か何かだった...とは考えにくい。もし分身だとしたら本体がいなければおかしいが、それらしき奴はどこにもいないからな。だとすればあり得るのは幻覚か...?けど、それだったら実在しない魔物と戦っている俺の背中をいつでも攻撃できたはず。そんな不合理なことをするとは思えないな...
「透明化って線はないだろうし...他に何かありえる現象は...まさか」
剣を手放し、ダッと跳んで剣から離れる。すると...
「バレたか...」
剣の中からぬるりと魔物が出てくる。
「物の中に入り込む魔法...これで攻撃を回避したってわけだ。だいぶ面倒な力だな」
「物の中に入る...とは少し違うが、この力なら代理様も...!」
そう呟いた魔物の姿が消える。また何か物の中に入り込んだのか...と思い魔物が立っていた場所をよく見ると、だ。床に剣を持った魔物の姿がドット絵調で描かれていた。
「2Dとの行き来、次元移動能力か!」
床の中でこっちに向かって走ってきている魔物の姿を見ながら俺も走り出す。そして剣を拾い上げ、どうやって倒したものかと思考を巡らせる。
そもそも、2Dになっている魔物に対して攻撃できる手段はあるのか?床を破壊できれば、ひび割れがそのままダメージに繋がるみたいなことになりそうだけれど、この床耐久性高いんだよな。めっちゃ強く突き刺してやっと切っ先が刺さるかなってくらいの硬さだから、床を破壊するのは難しい。
となると3Dに戻ってきた瞬間に攻撃するしかないけど、剣で攻撃しても剣の表面に2Dになって入り込むことで回避されてしまう。おそらく拳や蹴りで攻撃しようとしても、甲冑の表面に移動されてしまうだろう。となると...ガントレットを外して生の拳で攻撃するしかないかな多分。流石に人体に入り込むなんてことは出来ないだろう。もし出来るだったら打つ手無しだからそうであることを祈るしかない。
「やるしかないよな...!」
ガントレットを取り外し、手をグーパーさせる。うん、軽い。魔物が出てきたら剣で牽制して、まずは魔物が持ってる剣を弾き飛ばす。そして拳の射程圏内に入った瞬間に殴り抜く!
「さぁ来い!!」
魔物が床の中から迫ってきて...ぬぅっと飛び出してくる。そして俺に向かって剣を振り下ろしてくる。
「セイッ!...んなっ⁉︎」
剣で魔物の剣を受け止めたのだが...次の瞬間、俺の持っていた剣が消滅してしまった。いや、違う。魔物の剣の中にドット調の剣が...魔法で取り込まれたのか!
「あぶねっ!」
身を捩り、なんとか魔物の剣を回避する。まさか剣を奪い取られてしまうだなんてな...素手でどうにかするしかないか。
「まずは剣を...んおっ⁉︎」
剣から剣が飛び出してきた⁉︎3D化で攻撃もできんのか...!クソッ、ギリギリ避けれたけど体勢が...!
「おぅらッ!」
飛び出してきた剣を真剣白刃取りのようにしてなんとか掴み取り、魔物が続けて放ってきた剣を掴み取った剣の鍔の部分でなんとか受け止める。
「っ、また消え...!」
剣を手放して後ろに離れる。その直後、俺の剣から魔物が飛び出してきて殴りかかってくる。自身の持っていた剣に入り込み、接している俺の剣を経由して飛び出してきたのだ。
だが、魔物も拳ということは、俺の拳の射程圏内でもある。ここがチャンス...ってなわけないよな!
俺は攻撃せずにもう一歩...いや、二歩後ろに下がる。そこに魔物の拳が空ぶると、床から魔物の剣がニュッと生えてきて魔物の手に収まり、そのまま横振りの一閃が放たれた。攻撃しようと踏み込んでいたら、そして二歩戻らなければ斬られていたことだろう。非常に頭が冴えている。今なら...!
魔物の一閃を紙一重のところで躱した瞬間に前に踏み込む。剣をもう一度振る時間も、剣を捨てて殴る時間も無い。剣を振るために足を踏み込んでいるからすぐに足を動かすこともできない。となると、至近距離の俺の攻撃を避ける手段は二つに一つ。
「ビンゴ...!」
魔物は床か自らの剣に逃げ込むしかない。そして、魔物が選択したのは後者だったが、それは魔物の負け筋だった。
魔物の姿が消えた瞬間、床を見て魔物が逃げ込んだのが剣の中であることを確認した俺は即座に剣を真下から殴り抜いた。剣は勢いよく跳ね上がり、宙を舞う。
「何もない空中じゃ、逃げ込めるのはその剣だけ。もう地上には下ろさせないぜ?」
剣が宙を舞って落ちてくるのをブーツを脱いで待っていた俺は、剣を真上に蹴り上げてまた宙へと放る。
「絵さえ見ていれば、どこから魔物が出てくるかは一目瞭然。そして、ほんの僅か...1秒にも満たないけれど、次元移動にはクールタイムが必要なんだろ?さらに、移動直後は一瞬硬直もしてそうだ。この状況...じゃ!出たら終わりだぜ?」
剣を床に落とさないことで、床への二次元移動を封じる。めっちゃ痛いが素足で蹴り上げているおかげで俺の足経由で逃げられることもない。あとは飛び出してきたところを攻撃するだけだ。
「おらよもう一回!」
宙を舞う剣の表面で魔物は右往左往しているのが見える。流石にそろそろ出てくる...よな!
魔物は空中で剣から飛び出してくると、剣を掴み取りそのまま落下しながら剣を振り下ろしてきた。
「これで終い...へ?」
縦振りを横に避けて顔面を殴り抜こうとしたのだが、空中で魔物の身体がブレたため動くことなく普通に空振りした。訳がわからず一瞬止まってしまったが、予定通りその顔面に拳を叩き込んだ。軽くだけどな。
「し、死亡判定...ってかどした?」
どうして急にふらついたんだろう...と思い、魔物の様子を伺う。
「……もしかして、酔ってる?」
次元移動を繰り返したからなのか、それとも中に入っていた状態で剣がグルグルと何度も宙を舞ったからなのかはわからないが、極度の酔いによって視界が歪み、俺の位置を見誤って剣が外れたようだ。ちょっとこの終わり方は想像してなかったが...まぁいいか。
「とりあえず勝ちは勝ち...だ。誰かこいつを端に寄せてやれ」
取り外していたガントレットやブーツを取り付け、自分の剣を拾い上げながら魔物たちに言う。極度の酔いによって自分で動けそうにはなかったため、他の魔物におぶってもらい端に寄ってもらう。
「よし、次来な」
俺がそう言い放つと、だ。
「お、おいどうするよ...」
「代理様本当に人間なのか...?」
「そろそろ本当に休ませた方が...」
「あんな甲冑着てんのに何連戦するつもりなんだよ魔法も魔術も使ってないんだろ?」
「バケモノよりもバケモノしてるよ...」
……なんか、散々な言われようだな。そんじょそこらの人間とは違うってのは流石に自認してるが、そこまで言われるほどバケモノではないと思うんだが...
「おいお前ら、お前らの速さならいけるだろ代理様を休ませてやれ」
「わ、わかった。行ってくる」
そう言って出てきたのは...そういや組み分けしてるときにこんな奴らがいるの見たな。めっちゃ印象に残ってるよ...この棒人間みたいな魔物三人組。うご○モでよく見たアレがそのまま現実に現れた感じだ。マジで、生命ってなんなんだろうって思えてくる。どういう生物なの?こいつら。
「……かかってきな」
「それじゃあ遠慮なく...!」
三人の身体...というか線がブレる。ものすごい速さで動いたことで残像が残ったのだ。棒人間たちは他の魔物たちがやってきたように俺を三方向から取り囲むように陣取ると、また高速移動して残像を残しながら俺に近づいてくる。
「虚仮威しだな!」
俺は目の前にいた棒人間の姿がブレた瞬間、膝を畳みながら上体を勢いよく逸らし、正座しながら背中を床につけたヨガのポーズに近い体勢になる。これにより、前方から来た奴も後ろから来た奴らも同時に視界に入れることができた。
「ほれ三人抜き!」
攻撃のために高速移動を解いた棒人間たちにそれぞれ攻撃していく。前方のは片足で蹴り上げ、後ろの二人は両手でそれぞれの足を掴んで引き寄せることで転倒させ頭を強く床に打ち付けさせる。
「いっちょ上がり」
棒人間たちの能力はおそらく、直線的な高速移動。それも、移動中は硬直して自由に動くことはできないって感じだな。だから次の行動に移るには一度止まる必要がある。残った残像があまりにも直線的すぎたからそんな予想を立ててみたが、多分当たってるだろう。
前から言ってることだが、こうしたら勝てただろうに...ということをしてこないのは、それが実行不可能だからだ。今回の場合は、超高速移動中にそのまま攻撃することだな。そういったことからも、魔法の特定はできる。まぁ、わざわざ三方向に散らばらずに直で攻撃しにきていたら、俺が魔法の正体を知るよりも前に攻撃できていただろうけど...まぁ超反射神経で、攻撃のために止まった瞬間を殴るだけか。
「よーし次来な」
「おいおい瞬殺かよ...」
「ただ速いだけじゃ無理なのか...」
そりゃまぁ、過去には光速をも超えた男ですから...それは能力ありきだけれど、素の動体視力もあの頃の経験でだいぶ人間離れしたものになっているからな。多少速いだけじゃ簡単に見切れてしまう。
「ならやっぱり魔法で攻めるしかない。それも絡め手の方が良さそうだ」
「さっきの平面移動もそうだし、少し前の軌道変更の線もそこそこいい線いってたもんな」
おお、なんか作戦会議が始まった...けどこれもいいか。一人の人間を倒すために仲間が集い、知略をめぐらせる...これも魔物たちのいい経験になるだろう。
「それなら...こいつらが適任だな。行ってこい!」
魔物たちに指名され、次の三人組が前に出てくる。今度の魔物たちは...ああこいつらか。似たような魔物がいなかったから、それっぽくカテゴライズした浮遊する道具の魔物たちだ。鏡に剣に七色に光る宝石...三種の神器っぽいから纏めたが、もしかしてそこそこ相性が良かったりするのだろうか。
「じゃあ来な」
俺がそう言うと、周囲に鏡のような物がばら撒かれた。鏡の魔物の魔法だろう。そして七色に光る宝石から光線が放たれ、鏡に命中して反射する。
「はいはいいつもの奴読めてるぜ!」
今度は流石に見た目と魔法の使い手は一致しているだろう。となれば、まず狙うのは鏡から。剣がどんな魔法を使ってくるかは知らないが、まずは厄介な反射から叩く!
鏡の位置を一瞥してその全てを把握、光線の発射角度と鏡の角度や位置から光線の突き抜ける位置を割り出して回避しながら鏡の魔物に向かって駆け抜ける。
「……流石に守ってるか」
鏡の魔物に向かって攻撃しようとしたが、進行方向に剣の魔物が立ち塞がり、これ以上は進ませまいとその場で素振りを繰り返す。それを見た俺は立ち止まり、まずは後ろを確認する。光線は飛んできていないか...そして、明らかな隙を見せたというのに攻撃もして来ないと。結構あからさまに隙を見せたつもりなんだが...慎重なだけか、そんなことをせずとも俺を倒せると思っているのか...魔法がわかっていないのもあって、ちょっと不気味だな剣の魔物。
「とりあえず攻めて...いや待てよっ⁉︎」
前へと移動しようとしたのをすんでのところで止め、俺は剣を投擲した。次の瞬間、投擲した剣は何かに弾かれたかのような挙動で弾き飛ばされた。剣の魔物は動いていないというのに、だ。
今の挙動...目に見えるような現象ではないが、見覚えがあった。それは、聖杖世界における魔法...色彩に染まる剣の一種。『色彩剣装 光彩・金』という、未来に斬撃を飛ばす魔法と似ているのだ。先程威嚇のように素振りをしていたのは、その場に斬撃を設置していたのだろう。
斬撃が設置された場所に足を踏み入れたらオートで発動するのか、それとも剣の魔物が任意で発動する必要があるのかはわからないが、どこに設置されているかなんてことは目で見ただけじゃわからない。不可視の最恐の罠だ。
「チッ...」
これじゃ鏡の魔物に攻撃するのは難しい。剣のもそうだ。近づくことすらままならない。となると、とりあえず狙うべきは光線を飛ばしてくる宝玉の魔物からだな。
「っと危ねぇ...」
背後から光線が迫ってきていることを周囲に浮いている鏡で確認した俺は、真横に飛んで光線を回避する。
「つーか、見覚えある攻撃ばっか...!」
鏡は跳弾鏡射、光線は閃光、斬撃は色彩剣装と聖杖世界で使ったことのある攻撃に全て似ている。そのおかげでなんとか対応することができるけど...敵に回すと厄介な力だなオイ。
「ただ、俺のと違って威力減衰するのか...」
跳弾鏡射は何度反射しようとも魔法の威力は落ちなかったが、この鏡は反射するごとに光線が細くなっている。光線自体にも射程距離はあるのだろうが、反射前と反射後で見るからに威力が落ちているのだ。そのおかげで、この場全てが光線で埋め尽くされるだなんてことになっていないのだろう。
「それなら避けれる...!」
反射する光線を回避しながら床を駆け巡り、近くにあった鏡を殴り破る。
「よし、壊せば消えるな。計算しろ俺...!」
宙に浮いている宝玉に攻撃する手段はない。そもそもあそこまで辿り着けないからな。剣もさっき弾き飛ばされてしまったし、俺には攻撃できない。だから...
「自滅してもらうぜ!」
二秒後に光線が着弾するであろう鏡を横から殴り飛ばし破壊する。それにより光線は鏡に当たらず直進し...斜め上を向いている鏡に命中する。この入射角ならば...反射角はほぼ真上だ。
真上に向かって光線は飛んでいく。その延長線上には宝玉の魔物がおり...鏡の魔物が近くにある鏡を動かして反射させようとするも時すでに遅し。光線は宝玉の魔物を包み込み、ダメージを与える。何度か反射した後だから死にはしないだろう。だが、攻撃が直撃したため死亡判定だ。
「あと二人...!」
次の標的はどこだと振り返る...と目の前に剣の魔物がいて、今まさにその鋭い刃を振り下ろさんとしていた。
「くっ...!」
なりふり構わず前に全力で跳び、転がりながら着地して立ち上がると同時に剣の魔物の方へ体を向ける。
「あいつの移動先には要注意...っ、クソ消しやがった!」
剣の魔物の刀身が通った場所全てに斬撃が設置されていると想定して、周囲に浮いている鏡との位置関係で斬撃の位置を覚えようとしたのだが、鏡を全て消されてしまった。これじゃ何も目印無しで覚える羽目に...そんなの無理!
「しかもどこかに追い込もうとしてくるし...!」
剣での攻撃をなんとか回避していくが、どことなく誘導されているような気がしないでもない。このまま斬撃が設置されている場所に追い込まれてジ・エンドってのは勘弁...そうなる前に先に倒す!
後ろに下がりながらガントレットを外していく。唯一斬撃が無いとわかっているのは、今俺が立っている場所のみ。そこから一歩下がり、魔物が一回剣を降った瞬間にガントレットを投げれば、設置された斬撃はガントレットを弾き飛ばして消える。すかさず攻撃を叩き込めば行ける可能性はある。斬撃が設置された場所に触れたら自動的に発動するという憶測を前提とした作戦だけれど、やるしかない...!
「今っ!」
魔物が剣を振った瞬間、ガントレットを持つ右手を振りかぶって...
「な、に...⁉︎」
右手が動かなくなった。振り返るとそこには大量の鏡が浮いており、俺の手を包み込むように展開されていた。攻撃の反射ではなく、物理的に動きを封じるために魔法を使ってきやがった...!
「これは...負けだな」
なすすべもなく剣の魔物に甲冑を切り裂かれる。手加減してくれたのか表面に軽く傷がついただけだったが、本当の戦いだったら甲冑の隙間から刃を通されて首を切られていただろうな。
「はぁ...負けたよ。みんな強すぎ」
鏡の拘束を解いてもらい、俺は兜を取り外す。汗やべぇ...べっちょべちょで気持ち悪い。
「アドレナリン切れたし張ってた気も抜けちゃったし、今日はもう戦えねぇや...少し休憩だ。終わったら座学するから、俺と戦ってどう思ったかとか人の戦い方を見て自分にも活かせそうなのがなかったかとか色々考えておけ。後で共有する...」
俺は床に身を投げ出し大の字になる。数時間はまともに動けねぇな...と思いながら瞬きをしようとすると、瞼がガッチリ固まってしまいそのまま眠りについてしまうのだった...
訓練終了です...座学の描写はせずに、次回はどこかの町に出向く回になると思います。