神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8295字。

前回の後書きに書いた通り、今回は町で情報収集の回です。


情報収集と幻影置換

「さーて、町の様子はどうかなー?」

 

俺は最近人類に奪われたスカラザンという町に来ていた。戦闘部との訓練が始まってかれこれ一週間が経った。一週間経ったということは、輸送部のニグロスと考えた作戦を実行に移すかを決める時が来たということであり、ちょうど昨日実行された。

 

スターバスまでの全ての町で死印付きを全員殺し、魔物を全員撤退させる...そうして人類にスターバスまで侵攻してもらい、尚且つこっちの戦力も温存する、スターバス滅亡作戦のための重要な準備だ。このスカラザンも、その作戦によって人類に明け渡した町だ。

 

「不審に思われてないといいなぁ」

 

急にこんなことをしだして、不審がられていないかを確かめるために俺はここに来た。まぁ、本当は諜報部の奴らが動くことになってたが、魔物を温存するためにこんな作戦をしたのに、魔物に諜報活動をさせたら本末転倒だからーなどと言って諜報部の連中を丸め込んで俺が来たわけだ。

 

「……奪われたばっかだしやっぱ兵隊が多いなぁ...上手いこと話を聞けたらいいけど」

 

しばらく町の中を歩き回ってみたが、見かけた人のうち四人に三人は兵隊だった。どうやらこの町には結構な人数の死印付きがいたらしく、一般人はほとんどいなくなってしまったようだ。そのせいであまり活気はないな。陰鬱な雰囲気が漂っている。

 

「とりあえず聞き耳立てて盗み聞きするか。急に話しかけても怪しまれるし」

 

余所者の俺が話を聞こうとしたら、魔王代理だと思われることは絶対無いにしても、多少なりとも怪しまれるはずだ。あり得る可能性としては、火事場泥棒的なものに勘違いされるとかな。

 

勘違いを避けるために、まずは周りを一切気にせずに歩く。そして人の多そうなところまで移動して建物の壁際によると、そこでしゃがみ込んで持っていた鞄の中身をガサゴソと漁る。

 

これで、さもここで止まったのは全くの偶然で、盗み聞きなんてしてませんよーといった態度を示す...なんか、どっかで盗んできた鞄の中身を漁ってるように見えちゃいそうだな。逆に怪しい...怪しくない?まぁいっか。

 

「……お」

 

なんか兵隊さんが一人こっちに来た。どうやら町の人に聞き込みをしているようで、メモを取るため用の紙と炭らしきものを持っている...っと、あんまジロジロと見ちゃまずいな。荷物ガサゴソっと。

 

「えーっと、お二人さん。今スカラザンで何が起こったのか聞き取りをしていまして、ご協力願えませんかね」

 

「え、えぇ...きっと他の方からも聞かれた話しか出来ませんがいいですか...?」

 

「はい、もしかしたら他の人は気づかなかったことがあるかもしれないので、思い当たったことは全て話してもらえると」

 

「わかりました...あれは昨日のことでした。いつもと変わらない日常を送っていたら、突然魔物どもがザワザワと慌ただしく動いていて...」

 

「そうしたら急に、私たちのことを監視していた魔物が襲いかかってきて...みんなを、殺してしまって...!」

 

「なるほど、おおよそ他の皆さんと同じ話ですね...他に何か気になったことはありましたか?」

 

「気になったこと...なぜ私たちは見逃されたのかは気になりますが...」

 

「……どうも私には、魔物どもは殺す相手を限定していたように見えるんです」

 

「ほう?それはどうして?」

 

「ニック...私の息子も殺されてしまったのですが、私たちを襲った魔物は私を無視して息子だけ殺していきました。それも、息子は殺させまいと身を挺して庇おうとしたら、攻撃の手を止めたんですよ。次の瞬間には横に突き飛ばされて息子はズタズタに引き裂かれてしまっていたけれど...なぜか私は殺されませんでした」

 

「なるほど...他の人たちからも、似たような話は聞きました。皆同様に、なぜ私は見逃されたのだろうと口を揃えて言っていて...」

 

「兵隊さん、なぜ息子は死んで私だけ生き残ってしまったのでしょうか...」

 

「……わかりません。魔物のやることはまるで理解ができませんから...何か、他に気になったことはありませんか?なければ構いませんが...」

 

「……そういえば、魔物たちがバタバタし始めた時に、何か言っていたような...」

 

「何か...?思い出せませんか?他の人からはそのような話は聞けていません。重要なことかもしれない」

 

「えーっと...そうだ、確か魔王様がご病気で...とか言っていたと思います!」

 

「魔王が...病気?その話は本当ですか?」

 

「まだちょっと記憶が曖昧ですが...そんなことを言っていましたね」

 

「魔王が病気...魔物どもが町を捨てて魔王城に戻るには十分な理由だな。町民を殺して回ったのは、魔王城へと戻る時間を稼ぐためと考えれば説明もつく...数人残したのは、皆殺しにするよりも数人残っていた方が俺たちの対応に時間がかかると踏んでのことか...?」

 

……なんか早速色々聞けちゃったな。とりあえず、作戦はうまくいったようだ。魔王についての噂もしっかり敵軍に流すことも出来ているし、全くの偶然だけど死印無しが生き残っていることに見当違いの理由をつけてくれたから、真の理由に気づくことは少なくともしばらくはないだろう。運が良いな。

 

「……他に何かありますか?」

 

「うーん...他には無いですね。ミライトさんは?」

 

「私も無いです」

 

「そうですか。貴重なお話をありがとうございます。役所の方に向かっていただければ、軍の方で支援物資を配布しておりますのでどうぞ後でお越しください」

 

「わかりました」

 

「私たちの仇、お願いします...」

 

兵隊さんは深々とお辞儀をする。そして...こっちの方に近づいてきた。やっぱ来ちゃうか...

 

「すみません、お話を伺ってもいいですかね」

 

「あー...自分ちょうどさっきここに来たばかりで、ここで起こったことは何も...」

 

元から住んでた人が近くにいる状況で、この町の住人だと偽ることは大きなリスクどころの話ではないので真実を言っておく。

 

「ほう...ではなぜここに?」

 

「さっきの話聞こえちゃったんですけど、実は自分がいた村でも同じような状況になっていまして...」

 

「……他の場所でも同じことが?その村はなんという村だ?」

 

「サイカです」

 

ここから東北東の方角にある村の名前を出す。その村でも同じことが起こっているというのは事実だから、サイカから来たという嘘は後々もバレることはないだろう。

 

「そこでは十人近くが魔物たちによって殺されてしまって...自分、人の血肉が辺り一面に広がっているあの場所に長居したくなくて逃げてきたんです。そうしたら、スカラザンの真上が昼になっていたのでそこなら安全なんだろうと思って...」

 

「それでここまで来たら、全く同じ状況だったと...」

 

よし、これで他の場所でも魔物たちは人を殺してから引き上げていることを知らせることができたな。

 

普通の生物がいないこの世界では、人間は馬車を使えない。物は全て人が自分の足で運ばなければならないため、人も物資も輸送に時間がかかる。あと二週間ちょいでスターバスに辿り着いてもらわなければならないため、ポンポンとテンポ良く先に進んでもらわなければいけない。だから魔物の不在を知らせて、戦闘に備える必要は無いと判断してもらう必要があるのだ。

 

「貴重な情報ありがとうございます...そうですね、今から役所の方に向かってもらえませんか?」

 

ん?なんで要望なんだ?さっきの人たちには、「どうぞ後でお越しください」と相手の意思に任せる言い方だったのに、俺に対しては今から来てほしいという願いになっている。何か怪しまれたか...?

 

「俺にも支援物資くれるんですか?」

 

「それもしますが...出来れば先ほどの話を軍全体で共有したくてですね、本人の口から説明してもらえれば...と」

 

「ああ、なるほど...わかりました」

 

「ではよろしくお願いします。私の後ろについて来てください」

 

兵隊さんの後ろについていく。

 

「よ、良かったんですか?ついていっちゃって...」

 

俺の耳元から小さな声が発せられた。

 

「ああ、問題ないよミセラ」

 

俺は翻訳能力の設定を弄り、俺の髪の中に紛れている小さな水滴...ミセラにしか聞こえず理解できないような声で話しかける。

 

ミセラがいるのは魔王城との通信を繋ぐためだ。俺が単身乗り込むことに心配した諜報部の奴ら(シャリヤを除く)が、ミセラを同行させなければ許可できないと言ってきたのも理由の一つではある。ミセラも死印付きではあるが、一部だけなら潰されても支障はないし、通信ができた方が便利だろうと俺もミセラの同行には納得している。

 

まぁ、こうやって翻訳能力を駆使しないと周りにバレてしまうのは面倒だがな...見つかってしまえば即アウトだ。髪の毛にくっついて内側に隠れてもらっているけれど、見つからないから心配だ...

 

「軍の中に入り込めれば、それなりに情報を得ることもできる。上手いこと話を進めれば、即刻次の町へと進んでくれるかもしれないしな」

 

「な、なるほど...」

 

「それと、さっき聞いた話は伝達しておいてくれ。ちゃんと作戦はうまく行っていることを伝えるんだ」

 

「あいあいさー!」

 

「……小声でも耳元で叫ぶのはやめておこうな?」

 

小さいおかげで出せる声の大きさに限界はあるとはいえ、流石に耳元で叫ばれると少し...な。それに、周りの人にミセラの声が聞こえてしまったら面倒なことになる。人間の言葉じゃなくて魔物の言葉で話させているから内容は誰にもわからないだろうけど、魔物の言語であるが故に少しでも聞こえてしまった時点でアウトだからな。声は小さめであればあるほど良い。

 

「ここです。上司を呼んできますので、しばらく待っていてください」

 

そう言って兵隊さんは先に役所らしき施設へと入っていった。

 

「ふぅ...軍の実動部隊との謁見か...よくよく考えると、軍の上層部に顔を見られるのはまずいのでは?」

 

「どうするー?逃げるー?」

 

「今逃げたらなおさら怪しまれるからなぁ...仕方ない。最初から断ってててもあの兵には顔見られてるし、どうせ見られてるんだからここは逆に目立ってしまおう。その上でただの人間だと思ってくれれば勝ちだ」

 

「罠じゃないといいけど...」

 

「大丈夫だって。いざとなったら全員昏倒させて逃げるから。死にはしない」

 

「お待たせしました。中へお入りください」

 

ミセラと喋っていると、扉が少し開けられて兵隊さんに呼ばれた。

 

さーて、敵の懐の中に潜り込むとしますか...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と、こんな感じですね」

 

役所の中の応接室的な場所で、俺は軍の実動部隊のトップらしき人に先ほど話したことをペラペラと説明する。まぁこいつは今ここにいる奴らの中でのトップってだけで、もっと上の奴らはいるんだろうな。なんか見た目はそこまで強そうには見えないし...魔術があるから断定はできないけど。

 

「なるほど...それは面白い話を聞いた。ここだけでなく、他の町でも魔物どもは人を殺してから去っているとはな」

 

「一体なぜ急にそのようなことを...」

 

「さぁな、魔物どものやることは複雑怪奇だ。何人か残しておくことの理由も、先の説明で正しいかはわからん。それに、いくら魔王が病気になったからといって即座に全員が帰還するか?そもそも魔王が病気になること自体初耳だ」

 

……流石に人から聞いた話をすぐに鵜呑みにはしないか。そこそこ普通の感性ではあるが、そこをきちんと疑ってかかられると困るな。

 

魔物は何をするかわからないという認識のおかげで、深読みさせて見当違いな予測をさせることができるが、何をするかわからなさすぎるせいで一つの方向に勘違いしたまま突き進むこともない。本当はこうではないか...などと何度も再考されてしまう。いずれ、罠である可能性に気づいてしまうかも...

 

「……考えても無駄かな?にしても困ったな。魔物どもが全員撤退してしまったのなら、魔術の解析が出来ないじゃないか...」

 

「そうですね。新たな戦力の確保ができないまま、全戦力同士の衝突になる恐れも...」

 

あそっか。魔物が殺されないってことは、魔術の研究が為されないってことでもあるのか。それで本来よりも戦力ダウンして...ってことあるかな?そこら辺再検討の余地ありだな...

 

「魔物どもが戻ってくる前に出来るだけ進軍しておきたいですが、物資の兼ね合いもあります。一体どこまで進めるのやら...」

 

「ひとまず目先の目標はスターバスだが、まずはどこまで魔物がいなくなっているのかを調べるところからだな。魔王病気が真実ならば全ての町から消えていそうなものだが、実際に確認せねばな。これからは部隊を三つに分けることとしよう。一方向の通信魔術を使える者と強者を集め、先行させる。どいつを行かせるかはお前に一任する」

 

「了解しました」

 

兵隊さんが人事を一任されて部屋の外に出る。ってか、あの人だいぶ上の位だったんだな...

 

「……そういえば、後方部隊が到着する頃か...ならば、我々はもう先に進んでも良いかもしれないな」

 

ん?なんかこっち見てきたんだけどなに?怖いんだけど...

 

「そこのあんた、サイカから来たのだろう?我々と共にサイカまで向かわないか?」

 

「えっ、なぜ...?」

 

「サイカが魔物の手から離れたのであれば、即刻我々軍の管轄におくべきだ。あんたにはサイカまでの道案内をしてもらいたい」

 

「道案内...その必要あります?というか、俺はあそこの血の匂いが嫌だからここまで逃げてきたわけで...」

 

「そんなものここも同じだろう?」

 

「だから俺は支援物資を受け取ったら別の町に行こうと考えていて...」

 

「どこも状況は一緒だ。移動したところで何も変わらない」

 

おいおいそれは流石に嘘だろ...と言いかけたけど、これ口出ししたらダメな奴か。俺はサイカからここに来ただけ。他の町のことなんて知るはずがない。この人の言うことを否定したら、なぜ行ってもないのに知っているんだということになりかねない...軍の上層部であるという説得力もある。普通の人なら信じるのが普通...!

 

けど、道案内とか普通させるか?ってか必要ある?ただ村の方角に向けて歩くだけじゃん別に山とか川とかで通れない道があるわけでもないし...えっ、もしかして疑われてるの?よくわかんないよこいつ何考えてんの⁉︎

 

「わ、わかりました...案内しますよ...」

 

「協力感謝するよ。それでは早速準備を始める。時間が来たら声をかけるから、役所の付近で待っていてくれ」

 

そう言って男は部屋を出ていってしまった。チクショウなし崩し的に決められてしまった...

 

仕方がないので役所の外に出る。さて、どうしたものか...

 

「だ、大丈夫なの...?」

 

「だいぶキツイよミセラ...サイカに行くのはまずい」

 

「サイカの人と会っちゃったら、この人誰?ってなっちゃうもんね」

 

「そうなんだよな...遠い町の名前を出すと不自然だから一番近いところにしたが、裏目に出たよ...」

 

サイカまで同行することになってしまったが、着いてしまってはいけない...かといって今から逃げ出すことも出来ない...

 

「こうなったら...アレをやるしかないか」

 

「アレ...?」

 

「移動中に魔物に襲わせて、俺が死んだことにする」

 

「な、なるほど...?」

 

「輸送部のハサミツなら転移が出来るから呼んできてくれ。そして、戦闘部の幹部クラスを送り込んで欲しい。死印付きだと嬉しいが、その場にいる死印無しの兵士を殺さない加減ができ、かつ圧倒的な力で場を混乱させて俺を攫っていけるような奴じゃないとダメだから、該当者がいなかったら死印無しでもいい。本当にヤバかったら俺が本気出すだけだから...この辺りの伝達を頼む」

 

「わ、わかった!」

 

おそらく、この場を切り抜ける方法はこれしかないだろう。死んだだとか行方不明になったとかいう扱いになれば、軍も本気で捜索したりはしないはずだ。それに、俺が殺されたと思わせることは思わぬ副産物を産む...と思う。

 

魔物に襲われなかったはずの男が殺されたとなれば、魔物は特定の人間しか殺さないという予想が意味をなさなくなる。死印付きは殺せないという真実が、ただの魔物の気分で生死が別れているに過ぎないというものにすり替わる。殺されない人間がいるという事実の露見が少しでも遅くなるだろう...かなり妙案なのでは?

 

「よ、よし。案外なんとかなりそうだぞ...ん?」

 

ほっと一息ついていたら、なにやらザッザッと大勢の人間が歩く足音が聞こえてきた。こっちに向かってきてるようだけど...

 

「うわっ、なんだあの死印付きの数」

 

歩いてきていたのは、大量の物資らしきものを運んでいる兵士たちだった。先ほど話に出ていた後方部隊とやらなのだろうが...ざっとみた感じ9割近い兵の頭の上に死印が付いていた。

 

「……なるほど、そういうことか...!」

 

スターバス滅亡作戦では、住民だけでなく駐在していた軍人も犠牲になっている。だが、これまで死印付きの軍人はほとんど見かけていなかった。ちょくちょく入ってきていた町奪還報告でも、死印付きがおらず反撃できなかった...といった内容が多かったしな。それに、役所の中で見かけた人の中にも死印付きはいなかった。だから、どこにスターバスで死ぬ奴がいるんだ...?と不思議に思っていた。

 

その答えがこれだ。死印付きなのは物資を運ぶ後方部隊。思い返してみれば、スターバス滅亡作戦は町を奪われてから一週間近く経ってから行われている。それだけの時間があれば、軍は次の町へと進軍していることだろう。おそらく、本隊が先に進んだことによりスターバスには後方部隊しか居なくなったタイミングで攻撃を仕掛けたのだ。

 

後方部隊は潰せたが、勇者たちによって魔王軍側の戦闘員が殺され戦力は減少。対して人類側は物資補給に問題は生じたものの戦力は依然変わりない。この差が戦争の勝敗を分けたのだろう。

 

「後方の補給部隊とはいえ、軍人は軍人。そんなに弱いわけではないだろうけど、非戦闘員だから魔物の戦死がほぼ無かったのか...これは思わぬ情報を得れたな」

 

ここにいなければ知り得なかった情報だろう。いくら諜報部隊が優秀だといえども、奪還された人類の領土の奥深くにはあまり踏み込めないから後方部隊についての情報は得られない。俺が来て正解だったな。

 

「後方部隊が到着したか」

 

っとびっくりしたぁ...さっき話した軍の上官が近づいてきていたのか。

 

「ここはあいつらに任せて、我々は先に進む。道案内は頼んだぞ」

 

「は、はい...」

 

……敵に囲まれたこの状況から俺を助け出してくれる魔物ってのは一体どんな奴なのやら...頼むぜ、マジで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮谷幸希と、それを守る護衛を先頭にして、人類軍の戦闘部隊は歩みを進めていた。

 

軍の布陣は完璧。魔術を活用して見えない敵をも索敵し、常に安全を確保しながらサイカへと進んでいく。

 

そこに、虚空から姿を現した魔物が一人。

 

「っ、魔物発見!」

 

有象無象の中から誰かが一人、そう叫んだ。

 

「はぁ、代理様はなぜこんな危険な状況に陥っているのやら...」

 

魔物は人間には理解のできない魔物の言語でそう呟いた。

 

「なんだあの魔物...霧?」

 

その魔物は、霧のような何かで覆われていた。輪郭がぼやけており、どのような魔物なのか誰にも見当がつかない。霧の奥に本体がいるのか、それとも霧そのものなのか...それすらもわからない。

 

「しかし、うちの代わりに動いた結果こうなったとなれば、諜報部もそれなりに責任はありますからねぇ...しっかり救助してあげますよ。うちのミセラもいるわけだし」

 

そう言って、諜報部部長のシャリヤは不定形の指のようなものを人類軍の方に向け...

 

「幻影置換」

 

自らの魔法を起動させた。

 

次の瞬間、軍人の周りに魔物が出現した。

 

「なっ...⁉︎」

 

軍人たちは一斉に武器を構え、襲い掛かる魔物を返り討ちにしていく。急に出現してきたというのに対応が早い。相当な実力わ持った集団なのだろう。

 

しかし、魔物の出現によって軍人たちの注意は外に向けられた。内側にいる、仮谷幸希から意識が外れてしまっていた。

 

「よく見ているといい。護衛対象が死ぬ瞬間を」

 

仮谷幸希の頭上に、巨大な岩石のようなものが出現した。それは重力に引かれて落下し...仮谷幸希の身体を押しつぶした。

 

「く、クソ...やられた!」

 

仮谷幸希の死と、湧いて出てきて襲いかかってくる魔物のせいで軍人たちは混乱していた。

 

「任務完了...代理様を迎えに行くとするか」

 

そう言ってシャリヤは、この世界から姿を消した。




実はシャリヤめっちゃ強いっていうね。
何が起こったのかは次回説明しますが、とりあえず言っておくこととしてはカリヤくんは死んでいないってことくらいですかね。
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