なんだかんだシャリヤについての話で一話終わります。
「……なに?ここ」
軍人と一緒に歩いていたら、おそらくシャリヤであろう魔物が現れた...とか思ってたら、なんか変な世界に迷い込んだ。地形は同じだけど、さっきまでいた軍人たちが一人もいない。
「なんか景色見てると心が不安定になる...歪んでるっつーかなんというか、言葉で説明できない気持ち悪さが...ってなに⁉︎」
急に周囲に魔物が出現した。変な世界に迷い込んだと思ったら魔物が出てくるって何事?とりあえず襲ってくるのなら衝撃の剣で応戦するだけだけど...
「……消えた?マジでなに?」
訳がわからなさすぎる...なんなんだよこの場所。シャリヤが何かしたのか?
「この場所って...」
「おっ、ミセラいるのか。一人じゃなくて良かった...んで、ここがどこか知ってるのか?」
「多分なんだけど...部長が作った空間かな」
「シャリヤが作った空間?どゆこと?」
「えっとね、私もちゃんとは理解できてないんだけど...ってカリヤ上!」
「なっ、あぶねっ!」
頭上に巨大な石?のようなものが出現したため、全力で地面を蹴って飛び退く...
「ま、また消えた...?なんなんだよほんと...」
せっかく頑張って避けたというのに、巨大な岩石は消滅した。俺を驚かせるのが目的なの?わからん...
「早くシャリヤ出てきて説明してくれよ...」
「呼んだかい?」
うわ本当に出てきた。
「えーっと、この空間はなんなんだ?シャリヤ」
「それは移動しながら説明するとしよう。ついて来い」
先に説明してほしいなぁと思いながら、俺はシャリヤの後ろについていく。
「んで、ここはなんなんだ?」
「この世界は俺の想像の世界だ。俺が想像すれば、どんなものでも生み出せる。生き物だろうがなんだろうがな。出来ることは生み出すことと生み出したものを消すことだけで、元からあるものを消したり壊したりはできないがな」
「へぇ、自身の作り出した世界の中ならなんでも作り出せるのか...んで、どうして俺はそんな妄想世界に迷い込んでんだ?」
「俺がこの世界に呼んだからだ。幻影置換といって、現実世界と同じ座標に位置しているもの同士を入れ替えることができる力もあってな。代理様を回収するために、まずはこの世界に代理様の偽物を作り、その後現実世界の本物と置換したというわけだ」
「なる...ほど?ということは、さっき魔物とか岩が現れては消えていたのは、現実世界に置換するために生み出し、実際に移動させた様子がそんなふうに見えた...ってことだな?」
「流石は代理様。理解が早いことで」
あってんのか...というかめちゃくちゃ強い魔法じゃない?そもそも妄想の世界を作り上げていることすら異次元なのに、その中で作り出したものを現実世界に座標の置換という形で引っ張って来れるんだろ?そして俺にやったように、逆に妄想世界に引き摺り込むこともできる...ということは、邪魔者を妄想世界に送り込んで排除することもできるよな?緊急回避としてこの世界に逃げ込むこともできるだろうし、普通に最強では?
「……なぁ、さっきの光景から察するに、現実世界に魔物を送り込んで軍人たちを混乱させている間に、巨大な岩石で偽物の俺を押し潰すってのをしたんだろうけど、妄想世界で作り出したものっていつまで残るんだ?」
「死んだ偽物の死体が消滅することで、偽りの死が露見することを恐れているのならばご安心を。現実世界に送り込んだものは一生消えないので」
「うーん物理の法則が乱れる...」
まぁ魔法で物質生成とか普通にできるから、妄想で作り出したものが消えないってのも問題はないんだけど...そんなことできちゃったらダメじゃないと思ってしまうな。実質的に妄想具現化能力みたいに使えるわけだから無限に食糧や資材を作れるわけで、そんなことをしたらこの世界の物の総量は増していくばかり。色々とまずいことが起こりそうな予感がひしひしと...
「……ってかさ、魔物作れるんなら死印付きの温存云々の話無意味だったじゃん。なんであの時言ってくれなかったんだ?それとも出来ないのか?」
「御明察。作れるのは妄想の範囲内...つまり、俺が知っていることだけだ。それゆえに、魔物を完全に再現することはできない。せいぜい簡単な動きしか出来ない肉の人形にしかならないのさ。見た目だけは完璧だがね」
「そりゃ魔物の内部まで全て想像することは出来ないもんな...」
「だから代理様の偽物も、ガワだけは完璧だが中身はどうかはわからない。まぁ、岩石に押し潰されているから調べようはないだろうがね」
「それなら良かった...」
知ってることしか作れないとなると、食糧や資材の生産も難しそうだな。下手に作ろうものなら、食糧は一切消化されずに排出され、資材なら加工が思うようにいかないといったことになりかねない。
逆に言ってしまえば、知識さえあれば作れてしまうってことなんだよな...俺がこの魔法を使えたならば、もっとエグい使い方ができることだろう。単純に現代知識を持っているのもそうだし、速度探知のおかげで物の構造についての理解も深まっているからな。ちゃんと動く人を一人作ることも出来るかもしれない。
「……さて、ここが回収ポイントだ。現実世界ではハサミツが待機してくれている」
おお、このまま魔王城までずっと歩いていくのかと思っていたが、ハサミツが待機していたのか。あの場から離れるのと合流地点への移動を兼ねた歩きだったのね。
「助けてくれてありがとうなシャリヤ」
「礼には及ばない...そして、すまないのだが先にミセラだけ帰還させてもらう代理様は待っていてくれ」
「え?ハサミツなら複数人一緒でも飛べたはずだぞ?」
「ミセラには先に帰ってもらいたいんだ。それに、代理様には少し話がある」
「お、おぅ...じゃあミセラ、そういうことだから先に戻っていてくれ」
「はーい!部長お願いしまーす!」
俺の髪の中からミセラが飛び出す。すると現実世界との置換が起きてミセラが妄想世界から消滅する。
「……んで、話ってなんだ?」
「ここじゃ出来ない話だ。移動するぞ」
シャリヤがそう言うと...急に地面がぐらつき出した。
「な、なに...⁉︎」
「なにって、ただ飛ぶだけだ」
ガバッ!と地面から翼のようなものが生え、半径2メートルほどの地面が宙へと飛び立った...うわぁ、なにこれ...
「これも妄想の産物なの...?」
「想像さえ出来てしまえば作れてしまうからな。地面に羽を生やし飛ぶことなぞ容易い」
どんな妄想力だよ...そもそもこの地面の質量だとこんな細っちい翼で飛べるわけないんだけどなぁ。俺の体重も支えてるの普通におかしい...これ、指摘したら妄想が解けて地上に真っ逆さまってことになりかねないな。一応言わないでおこう。ってか、これ出来るんなら最初からやれよさっき歩かされたのはなんだったんだ。
「無理に本物に近いものを作るよりも、多少荒唐無稽でも想像しやすいものの方が作りやすいし、面白くそれでいて強いものを作れるのか...楽しそうな力だな」
「楽しいだけなら良かったんだけどな」
「なかなか不穏なことを言いやがる...ってかさ、さっきから思ってたんだけど...言っていいか?」
「なんだい?」
「お前、一人称私じゃなかったか?少なくとも、俺とは言ってなかった気がするんだが」
「ほう、そこに気づくとはね」
「それに俺、戦闘部の奴を連れてこいって言ったんだがなぜお前が来てるんだ?諜報部だろお前」
「そこは単純にうちのミセラがいたからってのと、話を聞く限り俺の方が戦闘部の輩よりも適任だと思ったからで別段不思議がられることではないんだが...まぁいい。後者はともかく、前者はこれから説明することに関わってくる」
「……はぁ、こんなに移動して、一体どんな話をされるのやら...」
「そろそろ着地だ。善処するが、衝撃に備えてくれ」
「備えろとか言われても普通無理だからな?」
まぁ自分は衝撃の剣があるから完璧に被害ゼロに出来るんだけどな...っと。着地の衝撃を完全に吸収しきり、無事に地上への帰還を達成する。なお、地面への衝突のせいで、俺らが乗っていた空飛ぶ地面は粉々に弾け飛びましたとさ...衝撃に備えろとは?無理じゃん。
「……んで、ここに連れてきた理由はなんだ?見たところ何もない平原にしか見えないが...」
というかだいぶ長く飛んできたけど、もう魔王城のすぐそばだよなここ。何もないことには変わりないけど...またここから歩くとか言わないよな?
「そうだな...じゃあまず、代理様。俺のことを見て何か気づくことはないか?」
「何そのちょびっとだけイメチェンしたところに気づいてほしい彼女さんムーブ...気づくもなにも、霧に埋もれたみたいな風になってるせいで何もわからないんだが」
「それはそうなんだが...具体的に、頭の上を見て気づくことはないか?」
「頭の上って...えっ、ちょっと待てお前そうだったの?」
よーくシャリヤの頭の上を見ると、霧のせいで霞んではいるがバツ印のようなものが見えた。シャリヤって死印付きだったのか...?よっぽどよく注意して見ないと気付けないレベルだが、確かにそこに死印はあった。もしかしたら、誰にも気づかれてないんじゃないか...?
「お前...死ぬんか?」
「ああ、俺は死印付きだ。俺はこの戦争の最中に死ぬ。だが、シャリヤは死なない」
「ん?どういう意味だ...っ⁉︎」
先程まで何も無かった平原に、大量の岩が現れた。岩は地面に突き刺さっており、規則正しく並べられていた。
「今作り出したようには見えない...見えない膜のようなものが普段は覆いかぶさっていてそれを取っ払ったかのような...というかこれって、ぼ、墓標みたいな...」
俺にはその岩たちが墓石のように見えた。けれど、一体誰の?
「その通り。これは墓だ。俺のな」
「シャリヤの?いっぱいあるからこれから死ぬため用ってわけでもないだろうし...もしかして、お前もう何度か死んでる...とか?」
「正解!シャリヤという存在は既に何十回と死んでいる。これはその墓だ」
「今のお前は、シャリヤの魔法である妄想世界と幻影置換によって作り出されたシャリヤ...だから一人称が違った、ということだな?」
「ああ。前に会った後一回死んでしまってな。だから一人称が変わってしまっている...といっても、俺に代理様と出会った記憶はないんだがな」
「……記憶は引き継げない...とか?」
「いいやそんなことはない。だが、次のシャリヤを作る際に情報が抜け落ちてしまったようだ。想像できることしか再現できないからな。このような欠損も多々ある。この身体だって、何十と繰り返す人体妄想の中で欠落してしまったせいでこうなってしまったのだからな」
「えっ、その不定形って元々そうだったわけじゃないのか?」
「ああそのはずだ。まぁ、元の姿がなんであったかは覚えていないんだがな。想像もできないからこの姿になっているのだから覚えていないのは当然とも言えるが」
……えーっとだ。ここまで察しよく行きすぎたせいで次々と整理する間も無く新情報が飛び込んできてしまったから、一旦ここらで話をまとめておこう。
まず、最初のオリジナルのシャリヤは既に死亡している。だがシャリヤは、自らの魔法を使って妄想世界に新たなシャリヤを生み出すと、それを現実世界の自身と置換することでシャリヤという存在を存続させた。
妄想で作り出したものは消えないと言っていたが、おそらく時間経過で自然消滅したりすることはないという意味なのだろう。作り出されたシャリヤは、そのままシャリヤとして生きていく。当然、魔法を持っているものとして生み出されたため妄想世界も幻影置換も使えるわけだ。ゆえに、また死ぬ際に次のシャリヤが作り出される。
そうして何度も死と妄想転生を繰り返していったのだろう。こうやって大量に墓が作られるほどにな。だが、そうして妄想転生を繰り返すうちに少しずつ情報は抜け落ちていった。当然だ。人体一つを丸々作り出すことは難しい。自身の身体であっても、その全てを理解することはほぼほぼ不可能に近い。身体は原型をなくしてぼやけていき霧に包まれ、記憶の継承も完璧には出来なくなっていき...いつかは終わりを迎えるのだ。
けれど、それは今すぐではないのだろう。今シャリヤの上についている死印は、あくまでその個体が死ぬということを表しているに過ぎない。また次のシャリヤが受け継ぐだけだ。妄想世界や幻影置換など、魔法についての記憶の継承に失敗したその時がシャリヤの死なのだろうな。よく思い出してみれば、死印名簿にシャリヤの名前はなかった。ちゃんとした死はまだ先ってことの証拠だな。
……と、こんなところかな。今推測できることはこれくらいだろう。いやはや、まさかシャリヤがそんな存在だったとは思ってなかった...ミセラを先に帰したのは、この話を聞かれたく無かったからか。まぁ、聞かれたくない気持ちはなんとなくわかるな。
「……うん。大体わかった。けど、なんで俺にこんなこと打ち明けたんだ?」
「歴代魔王様全員にこの話はしている。絶対の上司に隠し事はできないからな。代理であろうとも例外じゃない。だから話したにすぎない。あとは、情報の欠落という事象があるからこの魔法は完璧ではない。あまり俺のことを頼りにしすぎないでくれという忠告が半分ってところだ」
「ほう...ところで、シャリヤってどの代から魔王軍にいるんだ?歴代魔王の名前とか知らないから魔王何代目なのかで答えてほしいんだが」
「初代からだが?」
「おぉうめちゃ古参だな...というか今何代目?」
「19くらいだったと記憶している。記憶の欠落のせいでハッキリとしたことは言えないがな」
「なるほど、ガチの古参だった...敬った方がいいか?」
「よしてくれ...俺自身はつい数日前に生まれたばっかで赤ん坊のようなものだからな」
「数日前って、俺と会ってすぐに死んじゃったんだな」
「ちょうど寿命が近かったからだな。妄想の精度が落ちてきて寿命も短くなっちまったというのもあるが...そろそろシャリヤという存在も終わりなんだろうな。この次の戦争が終わる頃にはもうシャリヤはこの世から消えていることだろう」
「それだけ限界が近いということか...なら、あんま無理すんなよ。暇な時に前もって作っておくとかしてちゃんとコピーしてくれ。ミスって早々に消えられちゃ俺も困るし次の魔王も困っちまう」
『私としてはさっさと消えてくれって感じなのだけれどね』
「うわっ、マリスタだ。妄想世界にも入れるのか...」
もはやなんでもありだよなコイツ。まぁ神だからってのはあるけども、いつでもどこでも出てきやがる...俺にはプライバシーはないのか?
「これはこれはマリスタじゃないか。随分と酷い物言いで俺悲しいぜ」
『あんたがいつまでも生き残って魂を保持し続けるもんだから次の魔物が生まれないのよわかる?』
「さぁ?前の俺ならわかったんだろうけど生憎今の俺にはわからないね」
『それ前のあんたも言ってたのよいい加減にしてくれる⁉︎』
「やだね。俺は最後のその時まで生き続けるさ」
……なんか目の前で言い争いが勃発し始めた...というかシャリヤの奴、他のみんなと違ってマリスタのこと様付けしないんだな。古参勢だからか...?神をおちょくるとかよくやるぜ。
『……ちょっと仮谷くんこいつ斬りなさい。その力なら魂ごと切り裂けるはずよ』
「断る」
『即答⁉︎』
「今こいつに死なれちゃ困るし、この死印もこの個体に対してのものなんだから殺しちゃったら任務失敗になんだよ。つーか、前に異世界人の俺に対しては直接干渉出来ないとか言ってたよな?その言い方だとこの世界の奴らに対しては干渉できるんだろ?そんなにしたいならやれよ妨害してやるけど」
『いやー私が直接手を下すのはちょっと...ねぇ?』
「なんだよそれ世間体を気にしてるから出来ないってか?というかそもそもあんたが死印付き全員殺してしまえば俺何もしなくていいじゃん。なんでわざわざ他の世界の神に協力を求めたのさ」
『そりゃ世間体は気にするさ。信仰が無くなったら何も出来なくなってしまうし。それに、創造物の自主性に任せて競わせて観察するという目的にも反するし...』
「手を加えたくないのなら魔王軍全滅も甘んじて受け入れるべきだと思うんだが...ダブスタじゃね?」
『魔王軍が全滅する方が困るからいいんですー!というかそもそも、あんたのとこの神がやらかしてこんな騒動になってるんだからそこの神が責任を取るのも当然でしょ!もうこの話終わり!帰る!』
あっ、言うだけ言って帰っていった。
「そりゃあ魂の初期化はあの神様とそこそこ近しい神がやらかした事だけども、だからって俺に全部押し付けられてもなぁ...」
「代理様凄いな。あのマリスタを怒らせて帰らせるだなんて」
「そこまで凄くは...一応あるのか。神に喧嘩売るとか罰当たりにも程がある」
よくよく考えるとかなりまずいことをしてしまったのでは...?まぁそれでちょっかいかけに現れることが無くなるんならいいけど、必要な時に来ないとかは勘弁願いたいな...
「……まぁいっか別に。直接粛清されるようなことはないし」
「ならいいが...っと、遅くなってしまったが、これで俺の話は終わりだ代理様。長々と話して悪かったな」
「別にそんな長く無かったから別にいいぞ。あっ、あと俺のことはカリヤでいいぜ。代理様とか堅苦しいのは苦手なんだ」
「そうか。じゃあこれからはカリヤと呼ばせてもらう」
……性格がだいぶ変わっているからすんなり呼んでもらえたな。ありがたいぜ...
「それじゃあカリヤ。これから現実世界に置換する」
「りょーかい頼むぜ」
シャリヤが手を上に向けると、一瞬視界が揺らいだ。
気がつくと、辺りの景色は心が不安定になるような歪んだものではなく、普通のいつも通りの景色に戻っていた。妄想世界から現実世界に戻ってきたのだろう。
「ふぅ、ようやく戻ってきた...せっかくだし一緒に歩いて帰ろうぜ〜シャリヤ」
「ああ、わかった」
シャリヤと共に魔王城に向けて歩く。歩いて十分くらいだろうか...散歩にはちょうどいいな。
「……なぁシャリヤ。妄想世界に誰もいない時って、あの空間どうなってるんだ?」
「常にそのままだ。俺が世界の想像を止めれば消えるだろうが、あの世界を消したら俺自身も消えてしまうのではないかと心配で消したことはない」
「寝てる間も想像してるのか?」
「そもそももう俺は寝ない。寝なくても問題ない身体にしてしまった方が早いからな」
「はえ〜便利だな」
寝てる間にも速度探知を使えるようになった聖杖世界の俺とは別の進化をしてるんだな...
「……どうした?なんか考え込んでるみたいだけど」
歩いていると、シャリヤが少し首を傾げているのが横目に見えた。
「何か、話さなければならないことがあったような気が...したんだが記憶の引き継ぎ失敗で忘れてしまったようだ」
「えっ、マジかよ重要なことじゃないのか?頑張って思い出してみてよ」
「うーむ...確か死印付きが関係していたはずなんだが...ん?まだ曇りがかっているが、少しずつ記憶がハッキリしてきたな。前の俺が死ぬ直前に発見したことを報告するんだった」
「報告...?どんなだ?」
「前の俺は...多分、一人でとあることを調査していたんだ。それは、いつまで経っても見つからない死印付きの捜索だ。現在、ほとんどの死印付きの居場所が特定されているが、数人居場所がわからない者もいる...ニンゲンも魔物もな」
「人間はともかく...魔物も?」
「ニンゲンが見つからないのはまだ良いとして、問題は魔物だ。中には魔王軍に所属していたはずの者もおり、同様に行方をくらませている」
「脱走された...ってことか」
「それで前の俺は魔法を使いながら捜索していたのだが...死んだ。それも、記憶の継承が完璧ではないのを考えるとその死は急な出来事だったのだろう。死の直前の記憶が無いからなぜ死んだのか断定することはできないが...」
シャリヤは一呼吸置いて、こう言い放った。
「おそらく俺は、逃げ出した魔物に殺された。裏切り者に気をつけろ」
シャリヤ周りの情報を盛りすぎた気がしないでもない今日この頃...
しばらくは所在不明の死印付きを探しに行く話になると思います。