死印付きを捜索し戦闘する回です。
「まさか、こっちにこんな集落があるとは...」
俺は今、魔王城のある場所から東の方に来ていた。魔王城の南西側は今は人類の領域だが、北側や東側は完全に魔物のテリトリーだ。そこは人類が一度も踏み入れたことのない土地であり、魔物の集落が各地に大量にあるらしい。そして、魔王城から遠く離れた土地には争いを好まない魔物が、戦争地帯の喧騒から離れて穏やかに暮らしているそうだ。んで、俺はその集落に向かっているところだ。
「争いを好まないねぇ...まぁそういう奴らもいるわな。全員が全員戦えるわけでもないだろうし、魔王城近辺は危険だから軍に入っていない奴らはそりゃ離れるわ」
そんな魔物たちが集まる集落に向かっているのは、死印付きを探すためだ。死印付きは何も戦争で死ぬ奴らだけについているものではない。戦争期間中に死ぬ奴全員についている。たとえそれが戦争とは関係ない病死や事故死、寿命や他殺だったとしてもな。そのため、戦争に関わっていない集落でも死印付きは存在している。
そのため、急に頭上に現れたこの印はなんなんだ!と騒ぎが起こらないように、魔王軍の誰かが事情を説明したようだが、これが裏目に出た。魔王軍の奴らは魔王軍が全てであり、自分が死ぬと分かっていても受け入れて仕事に取り組むことができる。
だが、普通の魔物にそこまでの心意気はない。腐って何もしなくなる者が現れたり、死にたくないと全ての関わりを絶って閉じこもる者やその場から逃げ出す者も現れた。どうやら死因がなんなのかも話してしまったようで、回避できる死因だった奴らがなんとしてでも生きようとしてしまっているようだ。
けれどそれでは困るので、そういう魔物はシャリヤが探し出して交渉し、交渉に従わなければ粛清して解決していたようだ。しかし流石にシャリヤ一人では手が足りない。そこで、ちょうど統治部や戦闘部がスターバスまでの町から撤退していて人手が余っていたのもあり、人員を増やしての大々的な捜索が始まった。そこに混ぜてもらったため俺はここにいる。
「俺の担当は...ここか」
それぞれ持ち場が任されており、俺は目の前にある村とここから北東に少し言ったところにある村が担当だ。
「さてさて、まずは情報収集だな」
ここには閉じこもってる死印付きが一人いるって話だけど、その情報は結構前の戦争初期の頃のものだから今もそうとは限らない。まずは村人...村魔物?に話を聞いてどんな状況なのか聞かないとだな。
「……壁も柵もないからどこから入っていいものか迷うなこれ...」
聖杖世界も源流世界も、理由の差はあれどどの町も内と外とを区切る柵や壁があるのが当たり前だった。けれど、この世界は壁がないのが基本なんだよな。戦争に巻き込まれないこちら側ならともかく、普通に戦争してる方でも壁がないのはちょっと違和感だがなんで作らないんだろうな?魔王軍にとっても町を守りやすくなるから得だろうに...まぁやらない理由はきっとあるんだろうけど。
そんで、壁がないから門という物も当然存在しないわけで、どうやって集落の中に入り込めばいいのか毎回悩んじゃうんだよな。内と外との境界が曖昧なせいで謎の緊張をしてしまう...
「まぁ適当に入りゃ良いんだろうけどさ...っと、第一魔物発見」
農作業に取り組んでいる魔物を見つけた。畑には入らないように注意しながら近づき、声をかける。
「あのー、ちょっと話いいですかね?」
「はいはいなんでしょうか...え?」
魔物は俺のことを見て固まった。
「ニンゲ...ン?な、なぜここに...」
あー、だから固まってるのか。めっちゃ怯えてるじゃん...
「ば、婆さんや...!」
「いや、そんなに怯えないでいいんだぜ?危害なんて加えないんだから」
「ひぃ〜クワバラクワバラ...!」
「そんな俺のこと厄みたいに...一応言っておくけど、俺魔王代理な。魔王軍の奴らから聞いてない?」
「ま、魔王代理...?」
「そ、魔王代理。それで、話聞きたいんだけどいいかな?」
……まだ固まってるな。この状態でも質問投げかけたら答えてくれるかな...?
「えっとだな、この村に死印付きいるよな?頭の上にバツ印が付いてるやつ。そいつとこにいるか知ってるか?」
「……そ、それを知って何をするつもりなのですか...?」
「過程はどうであれ、最終的には死んでもらうことになるだろうな」
「死...あの愚か者を殺してくださるのですか⁉︎」
え?なんか思ってた反応と違う。めっっちゃ目キラキラさせてるんだけど何事?
「お、愚か者とは...?」
「あの者はこの村のクズだ!引きこもったかと思えば夜な夜な食糧庫を漁って無駄に飯を食い潰す...追い出そうとすれば魔法で抵抗するしもう手がつけられん!」
「おぉうもの凄い憎んでらっしゃる...聞く限り、かなりヤバい奴そうだな」
「そうなんですよ全くあのバカ孫は...」
あっ、孫なのね。んで孫に対してそこまで言うってことは相当頭にきてるわけだ。
「死にたくないという気持ちはわかるが、だからといって村の共有物に対して手を出すのは御法度だ。もう面倒は見切れん。殺すのなら殺してくださいそれが彼奴のためだ」
「じゃあサクッと殺しに行ってくるわ。場所を教えてくれるか?」
「もちろんですとも」
すんなりと協力を得られてよかったぜ。あとは殺すだけだけど...外に追い出されそうになっても魔法で抵抗できるってことはそこそこ強い魔法を持ってるってことなのだろう。失敗することはないだろうが、あまりてこずらせないでほしいな。
「おーい!魔王代理様が来てくださったぞー!うちのバカ孫を排除してくれるようだ!」
魔物に連れられて村の奥の方まで移動する最中、出会った魔物全員に魔王代理が来てくれたと喧伝された。ちょっと小っ恥ずかしい...
「ぞ、ぞろぞろ着いてきた...」
「バカ孫はこの家の奥の部屋に閉じこもっています。この家は彼奴以外住んでおりませんので、破壊してしまって構いません。存分に戦ってください」
「おう、それじゃまずみんなは散ろうな?ここにいちゃ危ないぜ?」
「わかりました。では、私たちは遠くから見守っておりますので...」
魔物たちはバラバラに散っていき、少し離れた建物の影からこちらを覗いてきた。出来ればもっと遠くに離れて欲しいんだけど...まぁいっか。
「とりあえず中入るか...」
まずは家の中に入る。奥の部屋にいるって言ってたよな...この部屋かな?
「おーお、頭の上にバツ印が付いてる魔物いるよなー?魔王代理なんですけどもー!」
……反応無しか。
「問答無用で入らせてもらうぜー!」
扉の取っ手に手を触れる。
次の瞬間、扉から爆炎が噴き出した。
「……やなトラップだな。衝撃の剣があってよかったぜ」
これが話に出てた魔法の抵抗か...だいぶ殺傷力高いな。
「入るぜ〜」
もう一度取っ手に触れて...また爆炎に飲み込まれる。
「これ何度でも発動すんのか...一回こっきりじゃないんだな」
きっと、中にいる魔物は俺が中に入って来れないもんだと思い込んでほくそ笑んでるんだろうなぁ...
「じゃっ、入るぜ」
衝撃の剣を扉に突き刺す。扉に触れたのが引き金となり爆炎が噴き出すが、そのエネルギーは衝撃の剣に吸収され、そのまま扉に流れ込み扉は粉々に弾け飛んで部屋の中に散乱する。
「おっ、いるじゃねぇか。いるなら返事してくれよ」
部屋の中にいた魔物に向かって声をかける。祖父の魔物とは見た目が違うが、魔物って種族の遺伝とかどうなってるんだろうな...
「さっきも言ったが、俺は魔王代理だ。なぜ俺が来たかわかるな?」
俺がそう言うと、魔物は一歩後退り俺から距離を取る。
「……その様子だときちんと理解しているようだな。お前に取れる手は二つに一つ。大人しく投降するか、逃げるか反抗するなりして俺に殺されるか...どっちがお望みかな?」
「っ...ニンゲン風情が舐めやがって...!」
「そんな人間風情にお前はどんな選択をするのかな。まさか、大人しく引き下がるなんてことは...」
「するわけねぇだろ!どうせどっちに転んでも殺されるんだろ...!ならテメェを殺して逃げる方が良い!」
「ならさっさと逃げろよ。壁ぶち抜くくらい魔物なら出来るだろ?」
魔物は動かない。怯えて動けない...というわけではないだろう。
「何考えてるか丸わかりだが...まぁ、大人しく乗ってやろうじゃないか」
部屋の中に足を踏み入れる。
次の瞬間、扉に触れた時のように床から爆炎が噴き出した。
「触れた瞬間に発動する罠...この部屋全体に仕掛けられてるみたいだが、俺には通用しないぜ」
衝撃の剣の守りは鉄壁だ。熱エネルギーくらいなら全身に張り巡らせた細い糸の状態でも吸収して無害化できる。たとえ別の魔法が飛んできたとしても、糸を束ねて壁にしてしまえばいいだけだからすぐに防御できる。まぁ反射神経が仕事をしてくれればの話だが、速いものは見慣れてるから何が来ても対応できるだろう。
「ほら、全部無駄だ。諦めてその首を差し出すといい」
「断る...!」
魔物はそう言いながら俺の方に手を向け、指パッチンのような動作をした。すると弾いた指先から炎が飛び出し俺の身体を包み込む。
「罠だけじゃなく能動的起動もできるのか。なかなか使える魔法じゃないか、なぁ?」
「効かないだと...妙な魔術使いやがって...!」
「魔術じゃねぇよ。んで魔法でもない。ただの借り物の能力さ」
一歩、また一歩と魔物に近づく。一歩踏み締める度に爆炎が噴き出すが、俺を傷つけることは叶わない。
「お前の力、魔王軍で是非活かしてもらいたいものだが...どうだ?」
「たとえ軍に入れば今殺されずに済むとしても断るね。あんな危険な戦いに身を投じるとか馬鹿げてる...!」
「あ?お前には聞いてねぇよ口閉じてろ」
なっ...と魔物が驚きの表情を浮かべるのを見ながら、俺は耳元から聞こえてくる声に集中する。
「たとえ死印付きだったとしても、今から新人を入れることには反対だって」
「オーケーありがとうミセラ」
今日もミセラが連絡用に付いてきてくれている。もしも死印付きが魔王軍に引き抜けそうな人材であったり、軍に入るから殺さないでくれとか言い出してきたらどうすればいいか戦闘部の人に聞いてほしいとミセラに頼んだのだが、どうやら戦闘部の判断はNOみたいだな。確かに、今からじゃ遅すぎる。どれだけ強かったとしても連携が取れず周りをも危険に晒してしまうかもしれないし、それなら引き抜かない方が良いな。
「この魔法が消えるのは少々惜しいが、死んでもらおうか」
衝撃の剣を振りかぶる。
「クソっ...!」
魔物は近くにあった袋のようなものを掴み取った。そしてそれを勢いよく振り回し俺の頭にぶつけようとしてくる。
「なんの袋か知らんが...だいぶ重そうだな」
頭狙いで振られた袋を衝撃の剣で受け止める。吸収したエネルギーの量的に、中は結構密に詰まっていてそこそこ重そうだな。
「……ん?いったい何を...」
魔物は袋が受け止められたのを見て一瞬驚いたものの、すぐに動き出して自らの爪で袋を切り裂いた。破れた袋から中身がぶちまけられる。これは...粉?小麦粉的な何かか...って、まずくね?
「これなら...!」
俺は慌てて立ち止まったが、魔物はドンっと足で床を強く叩いた。
次の瞬間、床から爆炎が噴き出す。家屋の中という閉鎖空間内で粉状のものが舞っており、そこに炎...もう、何が起こるかは明白だろう。
みんな大好き粉塵爆発が起こり、魔物の魔法の火力を悠に超えた爆炎が部屋の中を包み込み...家屋が耐えきれず内側から爆散した。
「〜〜〜っっ!!」
俺は壊れた壁から外に一目散に駆け抜ける。上から落ちてくる屋根の建材とかそんなものは衝撃の剣で守れるから一切気にせず走る。
「すぅ〜〜はぁーーー...危ねぇ!」
爆炎自体は何も問題はない。熱は全て衝撃の剣で吸い取れるからな。問題なのは、粉塵爆発による酸素の消費だ。こういう無敵の守りを持つ能力者相手には酸素を奪えってのは基本中の基本だからな...粉が見えた時点でこうなることがわかってたから、爆発する直前に極限まで息吸い込み酸素を取り込んでから走ったわけだ。
「壊していいって前もって聞いてて良かったぜ...んで、魔物はどこだ...っと」
さっきまで建物のあった方を見る。魔物も粉塵爆発に巻き込まれたはずだけど...
「おっ、結構ピンピンしてんな。流石は魔物、耐久力が人間と違ぇや」
魔物は俺に追撃することはせずに、全速力で村の外に向かって走っていた。四足歩行の利点を活かして結構な速度で走っているけど...この力があれば追いつけるな。
衝撃の剣でドームを作り、後方の膜に穴を開けて溜め込まれた衝撃エネルギーを噴射する。それによる反作用で勢いよく射出され、魔物の逃走方向へ先回りするようにして地面に激突する。
「よっと...逃さねぇぜ」
「っ、マジかよ...!」
そう呟きながら魔物は指を鳴らして爆炎を飛ばしてくる。それを衝撃の剣で受け止めながら魔物に一歩近づいて...
「おおっと」
足元から爆炎が飛び出す。防ぐことはできたけど...なぜ爆炎は出てきたんだ?
今俺が立っている場所にはまだ魔物は立ち入っていないはずだ。魔法の罠を設置する時間はなかったはず。となると、建物に罠として能力が張られていたわけじゃないのか?単純に、何かに触れると炎が起こる力...ってことになるけど...
「能動とか罠とかそういう括りがあるわけじゃないのかな?となると、わざわざ指パッチンというワンアクションを挟む理由は...摩擦か?」
物と物が擦れる時に生じる摩擦熱。それを増幅させる魔法だとすれば...ひとまずこれまで見てきた現象は説明できる。
扉に触れたり、床を踏んだり、指パッチンをしたりなどと、炎が起こる時には必ず何かに触れる動作があった。粉塵爆発を起こした時にも地面を強く踏みつけるという動作があったし、わざわざあんな動作を取ったのだからノーモーションで魔法の起動はできないと予想ができる。
おそらくは、ある一定以上の速さや強さで物同士が擦れた時に生じる摩擦熱しか増幅できないのだろう。そういう制約がなければ、俺の皮膚と服が擦れる摩擦熱を増幅させるだけで攻撃ができるからな。それをしてこないってことは、ある種の制約があることは確実だろう。
「摩擦熱の増幅ねぇ...んじゃあサーマルの下位互換か」
聖杖世界の魔族サーマルは、さまざまなエネルギーを増幅できた。熱エネルギーだけでなく運動エネルギーや電気エネルギーも増幅でき、魔力や魔素も増幅していた。熱エネルギーしか増幅できないこいつは下位互換としか言えないな。まぁ、それでも十分強いんだがな。
「は...?下位互換...だと?」
「ん?」
「どこのどいつだか知らねぇが...劣ってると言われんのは気に入らねぇなァ...!」
「引きこもり野郎が何言ってんだか...」
俺はその場から動かずに衝撃の剣を手元に集める。集めた衝撃の剣を変形させ、形をイメージ通りに整えながらゆっくりと腕を上げ...照準を定める。
作り出したのはオレンジ色をした拳銃のようなもの。銃本体と装填されている弾丸一発はくっついておらず分離している。衝撃の剣に溜め込まれたエネルギーを二つに分かち、弾丸と銃を作り出した形だ。
「そう思われたくなければ、俺を殺してみることだな」
そう言いながら俺は銃の引き金を引く。すると、撃鉄が本物の銃弾で言うところの雷管部分を叩く。尖った撃鉄は雷管部分に刺さると、蓄えていた衝撃エネルギーの一部を銃弾に流し込んだ。
次の瞬間、弾丸は前へと弾き飛ばされて魔物に向かって飛んでいく。衝撃解放によって擬似的に銃弾の発射を再現したのだ。飛んで行った銃弾は空気抵抗を衝撃吸収によって無効化するため速度減衰を起こさない。弾丸はそのまま真っ直ぐ魔物を狙い突き進む。
「遅い!当たるわけねぇだろ!」
真っ直ぐは飛ぶものの、弾速は遅かった。衝撃エネルギーの一部解放だけでは十分な速度は叩き出せない。普通の人間ならともかく、魔物の動体視力ならば発射を見てから回避することは容易だろう。
しかし、弾速が遅いことは回避されるデメリットもあるが、こっちにも相応のメリットがある。それは...
「別に、当たらなくても良いんだわ」
魔物が回避したために空を切った弾丸が、空中で弾け飛んだ。内側から蓄えられていた衝撃エネルギーが一気に解放され、魔物の身体を真横から叩く。
「がはっ...!!」
放たれた衝撃波によって吹き飛ばされた魔物は地面を転がる。それを見ながら俺は、衝撃の剣の一部を切り離して弾丸にして装填し、照準を魔物に向けて引き金を引く。
「っ...!」
魔物は苦痛な表情を浮かべながら急いでその場から飛びのこうとする...
「遅いぜ」
が、今度は魔物が動く前に銃弾を弾けさせる。その際、衝撃の剣の膜を前方から消失させることで衝撃波の拡散方向を絞ることで、出来る限りエネルギー損失を減らしより強い力で魔物の身体を叩く。
「ほらほら、さっきまでの威勢はどこいった?」
衝撃波で弾き飛ばしたことで、少し魔物との距離が離れてしまったため歩いて近づく。足で地面を踏み締めるたびに爆炎が吹き荒れるが、まぁ衝撃の剣の前では無意味だ。それどころか、銃弾の発射で消費した衝撃エネルギーを回収できるから利敵まであるな。
「来ないなら...終わりだ」
這いつくばって動かない魔物に対して、切り離した衝撃の剣の一部を放り投げる。投げられたそれは魔物の背中にコツンと当たると、まるで手榴弾かのように炸裂して衝撃エネルギーを撒き散らす。
真下に向けて放出された衝撃エネルギーは、魔物の身体を伝って地面に流れ込み地面を大きくへこませた。
そんな事象を起こすほどのエネルギーを喰らって魔物が耐え切れるはずもなく、背中から腹にかけて肉が弾け飛んだ。四肢は残っているものの、胴体の中心部分だけ綺麗に弾けて穴が空いている状態だ。
「く...ソ...」
うめき声と共にしばらくピクピクと体を震わせていた魔物だったが、少しすると動かなくなった。頭の上にあった死印も消失し、死んだことがよく見なくともわかる。
「……よし、一旦村に戻って報告するか」
魔物を殺した俺は報告のために村の方に向けて歩き出す。
「なんか、無駄に手こずった気がすんな...魔法の解析をしようとしなきゃもっと早くいけたのかな?絶対そうだわ」
戦う相手の力を解析しながら戦う癖、普通の戦闘なら別に良いけど力量差があってサクッと殺せる状況だとかえって邪魔になるな。すんなり殺せば良いものを、ついつい小手調べ感覚で攻撃して相手の出方を伺おうとしちゃうんだよな。悪い癖だ...
「そーいや、あの魔物の死因ってなんだったんだろうな...ちょいと調べてみるか」
死印名簿を取り出してさっきの魔物の死印を調べる。あんなに抵抗したわけだから、努力次第で回避できる死因なんだろうけど...おっ、あった。
「……飢え死に?そーいや、夜な夜な食糧庫を漁ってるとか言ってたな...でも、もしそうだとすると本来の歴史だとあまりご飯を食べれてなかったってことだよな?ある種の虐待でもあったのか...?」
もう少し資料を読んでみる。
「あっ、それっぽい理由あったな。魔法を使ったり激しく動いたりするとカロリーを消費する特殊体質ねぇ...だから引きこもって少しでもカロリーを減らさないようにしてたのか」
……おかしくね?そんな体質があるってことは過ごしていくうちになんとなく理解できるだろう。それを踏まえた食事をしていれば飢え死になんて起こさないはず...もしかして、口減らしされたのか?
生きていくためには多くの食事が必要になるが、そんな量を常に用意できるとは限らない。このままいけば村全体で食糧難になる。だから食事を与えずに飢え死にさせた...あり得なくはないな。
「一気にきな臭くなったなあの村...けど、死印付きではあるから殺さないとはいけなかったんだよなぁ...とりあえずあの村ヤバそうだから統治部辺りに報告しておくか。ミセラ頼む」
「はーい」
一応報告はしておく。俺目線で倫理観ヤバくねと思っただけだから、魔物目線でアリなら別に何もしなくていいし、ダメなら統治部がなんとかしてくれるだろう。
……一気にあの村に行きたくなくなったが、きちんと殺したことの報告はしなければならないので、重い足を動かして歩くのだった...
死印付きであることには理由があり、たとえそれが同情せざるを得ない理由だとしても、死印付きだから殺さないといけないんですよね。
まぁ今のカリヤくんは仕事だからと完全に割り切っているから葛藤はしないでしょうが...