神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8313字。

二つ目の村で死印付き探しです。


隠匿魔物と逃亡者

「次はここか...」

 

摩擦熱を増幅させる魔法を使う魔物を殺した俺は、次の担当である村にやってきていた。

 

「さーて、逃亡者を探すとしますか」

 

この村にはもともと死印付きはいなかったが、他の集落から逃げてきた奴がここに潜伏している...らしい。どうやら、魔王軍はどの集落も一応遠巻きに監視はしていたらしく、監視員がこの村に死印付きが入ってくるのを確認していたようだ。そして、外に出ていったところは確認できていないため、この村に潜伏していることは確実らしい。

 

「死印付きの発見に貢献したからまだ良いけど、戦争に関わりたくないつって魔王城から離れて暮らしてる集落を監視してるって、なんか村の魔物たちに知られたらだいぶまずいようなことをしてるよな...」

 

「仕方ないよ。魔王軍にとって一番怖いのはニンゲンの攻撃じゃなくて背中から攻撃されることなんだから」

 

「いやそうなんだけど、その気がないのに疑われてるだなんて知ったら誰だって嫌だろ?ミセラ。だからちょっともにょる...」

 

「もにょる...ってなに?」

 

「ありゃま翻訳できんかったか。少し引っかかる的な言い回しだ。つっても人間目線の感情だからあんま気にしてくれなくていいぞ」

 

そんなことを言いながら村の入り口に向かって進んでいく。今回の村は湖の岬に位置しているため、ちゃんと入り口が定まっているのだ。入りやすいねぇ...

 

「ってか、わざわざ村の中に逃げてくれて助かるぜ。適当な森の中とかに入られちゃ追跡できないからな...」

 

監視しているのは集落の出入りだけ。森の中や山の中など、監視の行き届いていない場所に逃げ込まれていれば発見することは困難だ。山狩りでもしなきゃいけなくなるが、人員の確保が問題だから実現は難しいだろう。

 

シャリヤが探し回っていたのはそういう監視網に引っ掛からなかった魔物だったが、ほとんど見つけることは叶わなかったようだし、今後の課題だろうな。どうやって見つけるか考えないとだな...ってなわけで、こうやって村の中にいることが確定していると楽だから嬉しいな。

 

「……なんか、めっちゃ見られてる...?」

 

岬を歩いていると、村の中にいる魔物がこっちに気づきめっっちゃ見てきた。やっぱ人間がいるってなると警戒するよな...

 

「おーい!俺は人間だけどまおっ⁉︎」

 

魔王代理だぞーとこの位置から呼びかけて警戒を解こうとしようとしたら、なんか武器向けられたんだが?弓矢か...有効射程内ではあるか。

 

『そこを動くなニンゲン』

 

うおっ、頭の中に声が...あの弓矢持ってる奴の魔法か?こっちから呼びかけることは...無理そうだな。一方向のテレパスか。

 

『その印...可哀想ではあるが、ニンゲンは受け入れられん。即刻去るがいい!』

 

「この印を見て可哀想ねぇ...人間に対してそう思えるのは魔物の中じゃ結構珍しいな。それでも受け入れてはもらえないみたいだけど」

 

「あれ?おかしいよ?」

 

「ん?どうしたミセラ」

 

「死印についての説明って、死印付きがいる集落にしかしてないって聞いたよ?だからこの村の人がカリヤの死印を見て可哀想だなんて言えるはずがないんだけど...」

 

「村に逃げてきた奴が言ったんじゃないのか?」

 

「あそっか」

 

「そーそーってなわけで...問答無用でそっち行くぜ〜」

 

静止命令を無視して俺は村に近づく。

 

『と、止まれ!さもなきゃ射る!』

 

「やってみな。そうすりゃ、俺が何者かわかるだろ」

 

そのまま歩き続けると、本当に矢が飛んできた。けれど、一目見て俺に当てる気はないと悟る。矢は俺の頭の横を拳一個分逸れて飛んでいき、後方に突き刺さる。

 

『ビビらない...⁉︎おい!次は無い!当てるぞ!』

 

無視して歩くとまた矢が飛んできた。今度はちゃんと俺に当たる軌道だな。致命傷にならないように肩の辺りを狙っているところを見るに、どうやら殺すつもりはなさそうだけど...まぁ、みすみす喰らうつもりはない。

 

『なっ...⁉︎』

 

衝撃の剣で矢を受け止めたのを見て、魔物は驚愕の表情を浮かべる。

 

『魔、術...?けど、こんなもの見たことがない。元となった魔法はなんだ...?』

 

「魔術でも魔法でもねぇよ」

 

足裏で衝撃の剣の一部を爆発させることで驚異的な推進力を得た俺は、魔物の真横に着地しながら呟く。

 

「一つ言ってやるとするなら、俺はただの人間じゃなくて魔王代理だ。だから敵対しないでもらえると助かるってことだな」

 

「は...?ニンゲンが魔王...代理?」

 

「ありゃ、そこから聞いてないのか。まぁでも、風の噂で魔王がちゃんと再臨出来なかったってのは流石に聞いたことがあるだろ?その時に代わりに呼び出されたのが俺で、マリスタに頼まれて今回の戦争での魔王代理をやってるってわけ。マリスタに説明してもらえれば話は早いんだけど...出てこないか」

 

シャリヤの妄想世界の中でマリスタを怒らせてしまってから、マリスタは一度も俺の前に現れたことはない。こういう、説明をしてほしい場面で出てきてくれないの普通に困るな...

 

「まぁさっきの力を見て、普通の人間ではないことはわかっただろ?」

 

「それは...そうだが...」

 

「……あっ、そうだ。これ見たらもう少し警戒解いてくれるだろ。ミセラー出てきて」

 

「はいはーい」

 

ミセラが俺の髪の中から顔を出す。

 

「やっほー!」

 

「ま、魔物を連れてる...となると、まさか本当に...?いやでも、ならなぜこの印が...」

 

魔物は目を閉じ俯きながら、しばらくぶつぶつと呟いていた。そして...顔を上げる。

 

「……そ、それでここには如何御用で...?」

 

「ここに死印付き...俺の頭の上にあるようなバツ印を持った魔物が来てないか?そいつに用があるんだが」

 

「は、はて、そんな奴来たかな...」

 

「いや、入り口で見張ってるあんたが見てないわけないだろ。来たか、来てないかで答えろ」

 

「っ...ち、ちょっと上の者に話を通してきます!ここで待っててください!」

 

「は?ちょっ、どこに...行っちまったか。上の者に話通すってなんだよ...お前に聞いてるんじゃんか」

 

程よく逃げられてしまったな。にしても、さっきの反応的に...

 

「死印付き、ここに匿われてるみたいだな。どうやって炙り出したものか...」

 

「え、匿われてるって本当?死印の意味すら知らなかったのに、匿ったりなんてするかなぁ?」

 

「するよ。少なくとも、俺だったら匿わせることができる。死印の意味を曲解して伝えればね」

 

「どういうこと?」

 

「死印のことを、この戦争中に死ぬ印ではなく、魔王軍に追われる立場であることを示す烙印とでも説明すればいい。死印について何も知らない奴なら最初に聞いたことが真実であると思い込ませられるし、戦争や魔王軍から距離を置いている集落に逃げてきた理由としてはそれっぽいだろ?」

 

「たしかに...こういう集落に住んでるのは、魔物でありながら魔王軍に与さない中立主義。それっぽい説明で魔王軍に不当に追われているように装えば守ってくれると思うよ」

 

「だから俺に対して死印付きの居場所を教えなかったんだ。魔王代理と名乗ってしまったからな。今頃、魔王直々に殺しに来たって騒ぎになって、どうやって隠そうかと躍起になってるところだろう。死印の意味が曲解されて伝わってることがあらかじめわかってたなら、魔王代理だなんて言わずに済んだんだけどなぁ...」

 

「でも流石にただのニンゲンは入れてもらえないでしょ。いくら中立でニンゲンと争う気はないとはいえ、ニンゲンは同胞の魔物を戦争で殺している。こちらから攻撃することはしないにしても、わざわざ受け入れて匿うなんてことはしないと思うな」

 

「それもそうか...ともかくだ。おそらく村の連中は俺らから死印付きのことをなんとかして隠そうとしてくるだろう。嘘でもついて本当の居場所を言わないなんてことはデフォだろうな。その嘘を見抜いて、なんとかして死印付きを見つけるぞ」

 

「大丈夫?この村にはもういないよって言って門前払いされるかもよ?」

 

「多分大丈夫だろう。いないとは言われるかもだが、中には入れるはずだ。さっきのあいつ、俺の頭の上の死印を見ただろ?多分、ミセラの上にあるちっさい奴も見えたはずだ」

 

まぁ、ミセラの死印は小さいから見えなかったかもだけどな。今みたいな極小サイズだと死印も一緒に小さくなるんだよな...

 

「だけど、奴らの死印の認識だと魔王代理についてるってのはおかしいだろ?魔王代理が魔王軍に追われる身とかそんなことなるわけないからな。その矛盾のおかげで、死印付きの魔物に対して少し不信感を抱いているはずだ。まぁ誤った認識のまま、俺らのことも匿ってやるぜってな感じになる可能性もなくはないが」

 

……っと、そんなことを話していたらさっきの魔物が戻ってきた。

 

「確かにそのような印を持った魔物は少し前に来ましたが、今はもうこの村を去っているという話を聞いてきました。ですので、他の場所を探した方がよろしいかと...」

 

めっちゃ嘘つくじゃん。死印付きはこの村に入るところは見られたが外に出るところは発見されていない。よって、この村の中にいることは確定なのだ。

 

「へぇ...実はこの辺で資源収集をしていた魔物の情報があるんだが、死印付きがここに入るところは見たがここから出て行くところは見てないらしいんだわ」

 

「え...?」

 

「この村唯一の出入り口はここだろ?もしここから出ていったのなら、どの方角に逃げていったのか教えてもらいたいものだねぇ」

 

「こ、ここからは出てないんですよ。湖を泳いで別の場所に向かっていったようで...私はずっとここにいたので聞いた話ですがね」

 

なるほど、そうきたか...けど、この村から出ていないってのは別にこの出入り口に限定されてなくて、湖の方向を含めた全方位を指してるんだよな。監視は目視ではなく魔法でされていたから死角は無い。けどそう指摘しようとすれば、さっきの俺の説明が矛盾を起こす。偶然見たっていう程だから全方位の監視が出来てるとは言い出せない。だからここは...

 

「ほう、じゃあ何かしら痕跡が残ってるかもな。他を探すよりも先にその湖の方に行ってみよう。ってなわけで中に入らせてもらうぜ」

 

「えっ...あ、私はここに居続けなければならないので、どうぞご自由にお調べください...」

 

一瞬止めようとしてきたけど、ここで止めようとすればかえって怪しまれると悟ったのか中に入るのを許可してくれた。さーて、調べますか。

 

「それで、これからどうするの?湖のほうに行くの?」

 

「んいや、しばらくは聞き込みだな。湖の方に逃げたといっても、ここは岬。泳いで逃げる方向は三方向あるからそれを聞き出す」

 

「え?でも外には出てないんじゃ?」

 

「だからこそだ。湖を泳いで逃げただなんて事実はないんだから、奴らは必ず嘘をつく。矛盾を指摘できればそれでいいし、矛盾がなくとも無理矢理作り出せばいい」

 

「それは...どういうこと?」

 

ミセラの疑問に答える前に、俺は適当な魔物に声をかけた。

 

「やぁ、話は聞いてると思うから質問をさせてくれ。この村に来た、俺と同じバツ印を持つ魔物はどこに逃げた?」

 

「え、えぇと...あっちです」

 

魔物は村の入り口とは反対方向を指した。

 

「協力感謝する」

 

そう言って俺は指さされた方向へと歩いていく。そうしてしばらく道を歩いたところで一旦脇道を通って別の通りに出て、最初に目に入った魔物に声をかける。

 

「やぁ、質問いいかな。この村に来た、こんな印を持ってる魔物がどこに逃げていったか知ってるか?」

 

「は、はい。たしか、あっちの方向に行ったかと...」

 

指差した方向は、さっきの魔物が差した方向と同じだった。なるほど、ちゃんとこういうふうに誤魔化せと指示は通ってるみたいだな。じゃあ...

 

「あれおかしいな。さっき別の魔物に聞いた時は、あっちに逃げたって聞いたんだけど...」

 

そう言いながら俺は、魔物が指差した方向とは別方向を指す。当然嘘だが、これにどんな反応するかな?

 

「なぁ、あんたが見たことは本当に正しいのか?いや、そもそも自分の目で見たのか?誰かに聞いた話を勘違いしちゃったとか、そんなことはないか?」

 

「そ、そうでしたそうでした!あっちに逃げたって話を聞きました!方角間違えてしまってすみません!」

 

「……あぁ、悪いさっきの俺の勘違いだわ。俺が聞いたのも向こう側に逃げていったって話だった。一回脇道に逸れたせいで方向感覚が狂っていたみたいだ」

 

「……え?」

 

「じゃあお前は誰からあっちの方角に逃げたって話を聞いたんだろうなぁ?さっき俺が聞いた話と別の話をお前は聞いたってことだろ?どっちが正しいのか、情報元を探って見極めないとだなぁ?」

 

「え、えと、あの...」

 

「あんたは誰から魔物が逃げた方向を聞いた?...いや、違うな。誰から、俺にあの方向に逃げたという嘘の情報を教えろと命令された?」

 

「っ...」

 

「早めに答えた方がいいぜ?さもなきゃ...」

 

衝撃の剣を取り出し、魔物に見せつける。そして、その先は何も言わない。無言の圧力を押し付ける。

 

「そ、村長です村長!ほら言いましたよだから切らないで!」

 

「はっ、最初から切る気ないさ。情報ありがとな〜」

 

そう言いながら俺はその場を離れる。まぁさっきの門番してた魔物が上の者に話を〜って言ってたから、村長クラスが絡んでそうだとは最初から思ってたけどな。ちゃんと言質を取れたから良しだ。

 

「さーて、カチコミに行きますか」

 

村長のいる場所は適当にそこらにいた魔物から聞き出した。さっそく村長のいる役所に乗り込もう。

 

「おーい、村長はいるかー!」

 

役所の中に乗り込み大声で村長を呼ぶ。

 

「こ、これはこれは...魔王代理様であっていますかな?」

 

村長が階段の上から秘書らしき魔物を連れながら降りてきた。

 

「ああそうだぜ。そんで要件だが、この村に来ていたバツ印を持った魔物、どこにいるか知ってるか?」

 

「いえ。もうこの村にはおりませんゆえ、私には分かりませぬな...」

 

「……もう一度聞くぜ?死印付きの魔物はどこだ?」

 

「で、ですから、先ほど申し上げた通り...っ⁉︎」

 

衝撃の剣を取り出して村長に見せつける。

 

「本当はどこにいるか知ってるんだろ?この村の中に死印付きを匿ってることは調べがついているんだ。早く話した方が身のためだぜ?」

 

「そ、そんな脅しには屈しない。たとえ切られたとしても、言いませんぞ...!」

 

「言わないって言ったな?つまり、知ってるけど言いたくないってわけだ。これでマジで知らない可能性は消えたな」

 

衝撃の剣の刃を村長の首元に近づける。

 

「なぁ、なぜ匿う?そんなことをしても意味なんてないはずだが」

 

「ま、魔王軍の暴虐を許すわけにはいかない...!」

 

「は?暴虐たぁ随分な誤解だな。これは、神マリスタの意向なんだぜ?」

 

「な...マリスタ様の...?」

 

「お前らは一つ勘違いをしている。それは、この頭の上にある印の意味だ。どうやら、魔王軍に追われることを意味しているなどといった誤った情報を吹き込まれたようだが、真実はこうだ。この印は、此度の戦争で命を落とす者を表す印。神マリスタか決めた、正式なものだ。決して俺たち魔王軍が勝手に決めたものではない」

 

「なん...ですと...⁉︎」

 

「だから、早く身柄を明け渡してやくれませんかね。本来なら死ななければならない魔物が生きながらえようとしていることは自然の摂理に反しているんだ。だから殺す。お前らが止めるべきことではない」

 

「で、ですが...それでも生きたいと思うのが生き物ってものです!その欲求は、たとえマリスタ様でも止めることは...!」

 

「へぇ、意外と強情だね...なら、これ以上は脅しをかけるしかねぇな」

 

俺は衝撃の剣を持つ手を勢いよく動かし...村長ではなくそばに立っていた秘書を切り裂いた。

 

「なっ...⁉︎」

 

「脅しにはより強い恐怖が必要だ。拒否し続けた場合、これから自分がどうなってしまうのか...それをハッキリと見せつけてやらねばならん」

 

秘書は力無くバタンと床に倒れ込んだ。その光景を見た村長は腰を抜かしてビクビクと震える。

 

「こ、殺した...⁉︎」

 

「いいや、死んでねぇよ。ちょいとばかり気絶してもらっただけだ。お前らは此度の戦争中に死ぬことは無いからな」

 

俺はそう言いながら衝撃の剣を村長に向ける。

 

「この剣は生命力や気力といったものだけを狙って斬ることもできる。つまり、殺さずに一生痛みつけられるってわけだ。あいつは気絶させてやったが、気絶させずに斬り続けることもできる...さぁ、どうする?」

 

「ひ、ひぃぃっ!」

 

「ああでも、このまま喋ってくれないままだとイラついてきちゃうかもな。そうしたら、手元が狂って誤って殺してしまうかもしれん。そうなったらすまんな。まぁ、お前結構高齢っぽいし遅かれ早かれ戦争後には死んでるだろうから別にいいか」

 

ジリジリと村長に近づき、バッと首元に衝撃の剣をあてがう。

 

「言え。さもなければ斬る。3、2、1...」

 

「私の家の地下室ですすみませんでした許してくださいぃっ!!!」

 

「へぇ...じゃあ、そこに案内してもらおうか」

 

手を動かし、軽く尊重の首筋を斬って生命力をほんの少し奪ってから、村長の手を掴んで無理矢理立たせる。わざわざ斬ったのは力関係を示すためだ。本気で斬るつもりであったことを示しながら、逆らったら次は本当に殺されるという畏怖の感情を植え付け絶対に反抗出来ないようにしたのだ。

 

「は、はは、はい...」

 

村長の案内に従って死印付きが匿われている村長の家に向かう。

 

「こ、ここです。ここの地下室に...」

 

「ほう...地下室の入り口はどこだ?見当たらないが」

 

地下室の入り口があるらしい部屋の中を見渡してみたものの、床にそれらしき継ぎ目はなかった。巧妙に隠されているようだ。

 

「内側から鍵がかけられているので、中の者に開けるよう飯を渡す時の合図をしますね」

 

村長はそう言うと、部屋の中央の床をトンッ、トトントンッ!と叩いた。

 

……しかし、死印付きは出て来なかった。

 

「あれ、おかしいですね...」

 

「出てこない?...ん?なんだこの音...」

 

下から何か激しい音が聞こえてきた。この音...破壊音?

 

「まさか...⁉︎」

 

衝撃の剣を取り出して床に突き刺し、地下室への扉を無理矢理ぶち破る。そして中を確認すると、地下室の壁に大きな穴が開いており、土が掘られて横穴が出来上がっていた。穴掘って逃げようとしてやがる...!

 

「テメェ合図で逃そうとしたな!」

 

さっきのは食事の合図なんかじゃなく、危険を伝えて逃げるように促す合図だったのだ。そのことに気づいた俺はすぐさま村長を切り裂いて消費した衝撃エネルギーを貯めると、地下室へと飛び降りる。

 

「クソッ、この期に及んで舐め腐りやがって...!逃すかよ!」

 

横穴を急いで駆け上がる。今まさに土が掘られている真っ最中なようで、穴の奥の方から土が飛んでくるが気にせず走り続ける。

 

「見つけた!逃げんな!」

 

そこそこの高さを登ったところでようやく死印付きを発見した。ちゃんと頭の上にバツ印はある。実はここにいる奴は偽物で、死印付きは別の場所にいるって可能性も考えてたから少し安心だ。

 

すぐさま衝撃の剣を伸ばして仕留めにかか...

 

「なっ⁉︎」

 

魔物が土を掘った瞬間、そこから大量の水が雪崩れ込んできた。まさか、湖に繋がったのか⁉︎

 

「くっ...!」

 

俺は瞬時に衝撃の剣をドーム状に展開して、雪崩れ込んでくる水の奔流から身を守る...と、その時だった。水流に押されて死印付きが衝撃の剣のドームに追突してきたのだ。

 

「やるなら今...!」

 

ドームから針を飛び出させ、死印付きの背中に突き刺す。次の瞬間、内側に大量の衝撃エネルギーを流し込まれた死印付きが爆発四散し、そのまま流されていった。

 

「あとは脱出するだけ...!」

 

水流に身を任せて地下室まで戻り、衝撃エネルギーの噴出で推進力を得て上に開いている外への入り口に向かって飛び出す。

 

「危ねぇ...急にいろんなこと起き過ぎて頭が追いつかん...」

 

地下室へ通じる穴の方へ振り返る。どうやら、湖よりも高い場所に家があるおかげで、穴から水が噴き出てくるだなんてことは起こらなさそうだ。盆地じゃなくて良かったぜ...

 

「ひ、ひとまず仕事完了...ってことでいいんだよなミセラ...いるよな?流されちゃったりしてないよな?」

 

「いるよー!」

 

「良かった...んじゃあ、担当終わったし一旦戻るか。衝撃エネルギー溜めて外出て...いざ出発!」

 

ドームに包まれた状態で衝撃エネルギーを噴出して空を飛び、魔王城へと戻るのだった...




後半めっちゃ展開早くなってしまった...まぁ、そういうこともあるよね仕方ないね。
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