神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8096字。

今回はそこそこ戦闘します。


迷宮森林とあり得ぬ共存

「シャリヤが言ってた場所ってこの辺だよな?」

 

俺は魔王城の北西方面に来ていた。基本的に人間の領域は南西側に固まっており、魔物の領域は東や北東に固まっている。そのため、北西の端の方は誰の集落もなく、手付かずの自然が残っている場所なのである。

 

そんな何もない場所にわざわざ足を運んだのは、シャリヤがそこを調査して欲しいと頼んできたからだ。なんでも、一つ前のシャリヤが死んだのが北西方角を調べている最中であったからだそうだ。そこに、シャリヤを死に至らしめられる何者かがいることは間違いない。シャリヤでも死ぬのだから、他の魔物には頼めない。そこで俺の出番というわけだ。

 

「そうだよ」

 

「だよなミセラ。けど、何も見つからない...どこを回ってもそれらしい奴は居なかったから、ここに絶対いるはずなんだけど...」

 

前のシャリヤは次の自分への記憶の引き継ぎに一部失敗しており、死ぬ直前の記憶が曖昧になってしまっている。そのため、シャリヤの記憶に残っている疑わしい場所は数ヶ所もあった。けれど、ここ以外は全て捜索済み。残るはここだけだ。

 

しかし、この鬱蒼とした森の中をいくら進んでも何も現れなかった。人や魔物の気配も一切無く、何も成果を得られない。

 

「記憶の欠損で目的地が消えてたらノーヒントになるんだよな...頼むからここで合っててくれよ?」

 

そう呟きながら森の中を進んでいく。何か少しでも手がかりが手に入ればそれでいい。というか手がかりあってくれ、ここまで頑張ったんだからその労力に見合ってなくていいから何か成果をくれ。くたびれ儲けだけじゃ嫌だぞ。

 

「ってかもう迷ってるんだよな...どこを既に調べたのかすらわからん。流石に同じところをぐるぐる回ってるとかはないだろうけど、このままだと永遠に終わらなさそう...」

 

鬱蒼とした森は視界を遮り方向感覚を奪ってくる。少し進んでは調査のために辺りをキョロキョロと見渡してしまうため、余計に方向が分かりにくくなってしまう。夕焼け空を見上げて方角を探ろうとしても、生い茂った木の葉によって完全に遮られてしまっている。こんな状況では探し物もままならない。どこか探索漏れがあるのではないかという疑惑を払拭できないから、探索を切り上げるのもダメだ。

 

「……こうなったら、やるしかないな」

 

衝撃エネルギーを足裏から放出し、真上に跳躍する。衝撃の剣で盾を作って生い茂る木の葉を押し退け、樹冠を突き抜ける。こうすれば、真上から森を見渡せる。今俺がどの辺にいるのかもわかる...

 

「は?」

 

上から見てわかったことは、意外と森が小さかったこと。そして、俺が森に入った場所からあまり動いていないということだ。

 

「森の中の空間が歪んでる...?ってなんだ⁉︎」

 

森の中から何かが飛び出してきた。何かの魔法か魔術か...よくわからないが、俺を狙ったものだということは確実だ。

 

「チッ...」

 

衝撃の剣を使って飛んでくる攻撃を凌ぎ、そのまま森の中へと落下する。木の下に潜ると、攻撃は止んだ。

 

「……状況がなんとなく掴めてきたぜ」

 

おそらく、この森は特別な力がかけられており、無限に迷わされるのだろう。知らず知らずのうちに同じ場所を堂々巡りになってしまい、最初に入ってきた場所からほとんど動くことができない。そして、空から行こうとすれば攻撃が飛んでくる。どちらも、何かを隠すためにかけられた魔法、ないしは魔術だと考えられる。

 

「つまり、ここに何かがあるのは確実ってわけだ。これが壮大な罠じゃなければな」

 

「もし本当にそうだったとして、どうやってこの森を抜けるの?」

 

「うーん...とりあえず、まずは帰れるのかの確認だな。一度戻ってみよう」

 

空から降りてくるまでの間に方角は確認済みだ。こっちに向かって歩けば、外に出られるはず...

 

「……しばらく歩いても出られないとなると、この森は出ることも許されないってわけか...じゃあ、なんとかして攻略法を探さないとだな」

 

とりあえずの目的地は、俺が空にいた時に攻撃が飛んできた場所だ。あそこには何かがある。ただの魔法の射出点だったとしても、手がかりは得られるであろう。今は少しでも情報が欲しいし、何も目的を持たずに彷徨うよりかは目的地を決めて動いた方が迷いにくくなるだろう。

 

「まず、どうして迷わされるかの確認だな。間違った道を進むと最初に戻されてしまう感じなのか、リングワンダリングが起こって俺が勝手に円状に歩いてしまっているのか調べるか」

 

衝撃の剣を取り出して地面に先端を突き刺す。そしてほんの一瞬だけ衝撃エネルギーを放出し、地面をボコッと隆起させる。

 

「これを目印にしながら歩けば、どうして迷うのか見当もつくはず...ん?」

 

地面に落としていた視線を上げると、前方に隆起した地面が見えた。草が生い茂っているせいできちんとは見えないが、確かに地面が隆起している。それも、俺の足元の地面と全く同じ形でだ。

 

「これは...空間自体がループしてる?」

 

後ろを振り向くと、草木の奥に隆起した地面が見えた。よく見ると、生えている植物の位置関係もまるっきりここら一帯と同じになっているようだ。

 

これは推測だが、ある一定の大きさの空間が一つのブロックとなっており、端と端が繋がっているのだろう。数メートル四方の空間を、俺は永遠と歩き続けていたわけだ。

 

「となると、横も当然...あれ?」

 

右を見ると、隆起した地面があった。しかし、左側を見ても隆起した地面は無かった。そして、パッと見でも生えている草木の配置が異なることがわかる。

 

「端と端が繋がってるんじゃなくて、不正解の方向に行くと戻される感じなのか。おっ、たしかに後ろ側に見える景色と前側の見えてる景色一緒だわ。前後が繋がってるのなら、見えてる土の向きが変わってないとおかしいもんな」

 

そう言いながら俺は、唯一見えている景色の違う左側へと歩き出す。生い茂る草木をかき分けて進むと...

 

「おっ、新しい景色だ」

 

どうやらループを抜け出せたみたいだ。四方向のうち、景色がループしていない方向を見つけてそっちの方向に進めばいいだけっていう簡単な奴だったな。

 

「この感じならわざわざ地面に印を付けずとも見分けられそうだな...ルール変わって無ければの話だが」

 

まずは後ろを振り返る。こういう迷路の森は、来た道を戻ることが正解ってことが良くあるからな...

 

「……おっ、ここはさっきと変わんないのか。そりゃありがたい...って、ん?」

 

再度振り返って正面に向き直ると、隆起した地面が前方の草木の向こう側に見えた。

 

「……これ、全部最初のあの場所に繋がってるパターン?」

 

左を見ると、またさっきと同じ光景だ。右を見ると、まだ見ていない景色が広がっている。

 

「ちょいと雑過ぎないか?こんなの、ちょいと目立つものを最初に作ってやればヌルゲーになっちまうじゃん」

 

右に進む。するとまた前方に隆起した地面を見つける。右を見て左を見て...

 

「どっちも隆起してるってことは後ろか...うん、そうみたいだ。さっそく来たな、道戻るが正解のパターン」

 

どうやらさっき後ろを見た時に隆起した地面が見えたのは、そっちが不正解の方向でありループしてしまうからだったようだ。ただ単に空間が正常に繋がっているから見えたってわけじゃなかったんだな。

 

「楽しくねーただの単純作業じゃんか」

 

そう言いながら俺は歩き続ける。左、前、前、左、後ろ、前、右、右、前、後ろ、左...とひたすら隆起した地面を目印として進み続ける。

 

「これ、本来の空間で考えると最初にいた場所からあんまり動いてないんだよな。このまま進んで大丈夫なのかな...」

 

「あっ、でもなんか見えてきたよ?」

 

「ん?あれは...」

 

真正面の草木の向こう側がやけに明るかった。空は夕焼けだが樹冠によって日光はほぼ遮られているはず。ここまで明るいのは自然光だとおかしいだろう。暗さに目が慣れてしまったせいでやけに明るく見えてしまっている可能性もあるが、あれはどちらかというと人工的な光のような...

 

「……集落、だと?」

 

草木の間から向こう側を除くと、そこには家らしき建物がいくつか並んでいた。自然光が入らないためか、街灯が設置されていた。原理不明だが街灯の中で炎が揺らめいており、これが先ほど漏れ出ていた光の正体なのだろう。

 

そして、集落といったからには当然そこには住んでいる奴がいる。だが、その光景はあり得ないものだった。

 

「魔物と人間が同居してる...嘘だろ?」

 

ここから見える範囲内でも魔物や人間は合わせて十人は超えている。本来ならあり得ないことだ。けれど、それを成立させているであろう事柄が一つあった。

 

「全員死印付き...だから共存出来てるのか?」

 

とりあえず死印名簿を開いて、目に見える奴が誰なのか照合していく。

 

「……うわ、どいつもこいつも発見出来なかったが奴らじゃんか。こんなところに隠れ住んでいたのか」

 

目に見える分だけでも、シャリヤが探しても見つけ出せなかった人間や魔物しかいなかった。シャリヤが言っていた、魔王軍の脱走者も中に含まれていた。

 

……しかし、なぜ共同生活が成り立っているのだろう。魔物側は死印付きだけど死にたく無いという思いがあり、同情をして死印付きの人間だけど殺さないという選択も出来るだろう。

 

だが、人間側はどうだ?そもそも死印が見えていないから自分が死ぬことすら知らないはず。だから、死印に関係なく戦争に巻き込まれるのを嫌がって村や町から逃げてきた奴らなのだろう。そんな時に魔物に出会ったら、殺されると感じて攻撃するのが普通だろう。魔物の言うことを信じるのは考えづらいし、逃げるか立ち向かうかの二択で共同生活を営むだなんてことありえないはず...

 

「……まさか、これか?」

 

死印付きの人間について調べていたら、どいつも死因が一緒であることがわかった。それは餓死。だが、魔物によって管理された村や町で餓死が起こるとは考えにくい。人間側が占領したことによって作物が育たなくなったとしても、流石に餓死まではいかないと思う。十分な蓄えもそれなりにあるだろうしな。

 

「となると、こいつらは逃げた先で餓死するってことに...まぁ、あり得る話だな」

 

逃げ出したは良いものの、食糧が尽きて餓死...容易に想像できる展開だ。作物の種を持って逃げたとしても、こんな北西の場所じゃ魔物も人間も影響力が及ばないせいで数人立ち入っただけで瞬く間に空は昼になり、作物は育たなく...

 

「……そうか、だから魔物がここに居れるのか!」

 

昼になってしまえば、この大きさの樹冠でも陽の光を完全に遮ることは難しいだろう。しかし、魔物がそこに立ち入ってしまえば?人間と魔物の影響力がせめぎ合い、空は夕焼けへと変わる...作物が育つ!

 

そのことを提示してから、死印付きの存在を話して敵意がないことを伝えれば人間たちもひとまず魔物との共同生活を許容するだろう。

 

「上手いこと考えるもんだなぁ。魔物たち、それが分かっててここに来たんだろうし」

 

人間たちが餓死をする時間は、本来ならもっと前のはずだった。それなのにまだ生きているということは、人間たちを生かすために魔物たちが動いたということだろう。魔物たちも死印名簿の閲覧は出来るから、それで調べてここに行き着いたのだ。

 

「森を迷宮にしたり、空から来た奴を返り討ちにする攻撃は魔物が提供したのかな...なんか、絶対に逃さないという意志を感じるな」

 

人間はわざわざこんなところまで来ない。よって、仕掛けられた罠は全て魔物を対象にしたものだろう。魔物が来たら、迷宮の森で出られないようにして餓死を狙い、木を登って抜け出そうとしたらなら自動攻撃で撃ち抜いて殺してしまう。おそらく前のシャリヤも、そのコンボのせいで死んでしまったのだろう。

 

「謎は解けた。あとは...全員殺すだけだ」

 

草木を掻き分け、集落に近づく。あくまで偶然迷い込んだ死印付きの人間であることを装い...

 

「なっ⁉︎」

 

集落に近づくと、様子が一変した。建物の配置は変わっていないが、人間も魔物も居場所が変わっている。人間は各々異なる武器を持って構えており、魔物は今まさにこちらに負けて走り出していた。

 

クソッ、自動攻撃が作動した時点で侵入に気付かれてることなんて明白...待ち構えているのは当然か!

 

「ひ、人...⁉︎」

 

しかし、人間たちは俺のことを見て驚き、武器を下ろした。そりゃそうだ。こんなところに人が来るわけがなく、魔物が出てくるとばかり思っていたはずだ。人が出てくれば、驚くのも無理はない。だが...

 

「そいつが件の魔王代理だ!殺して構わない!」

 

魔物はそうはいかない。魔王軍から脱走してきた奴は俺のことを知っている。あっちからしてみれば、俺は死印付きの殺害を命じている諸悪の根源...殺さない理由がない。

 

人間たちも魔物の声を聞いてハッとなり、すぐに武器を構え直す。しかし、戦闘慣れしているようには思えない。隙だらけだ。足裏からの衝撃爆発で急加速して近づけば殺すことは容易だろう。けれども、まずは近づいてきている魔物を処理することを優先...!

 

「逃げるのではなく向かってくるなんて...舐められたもんだな!」

 

服の中に編み込んだ衝撃の剣を取り出し、飛びかかってきた魔物をすれ違いざまに斬りつける。生命力をごそっと衝撃エネルギーに変換しながら奪い取り、魔物の息の根を止める。

 

「ほら、次来なよ」

 

こちらに向かって走ってくる魔物に狙いを定め...ながら真横から放たれた矢を衝撃の剣の壁で受け止める。人間も油断ならないな。隙あらば攻撃してくる。

 

「でも、矢は俺には効かないんでね」

 

視界内に入ってさえいれば、矢の軌道は読める。当たらない矢は最初から避けないし、当たる奴はしっかり受け止めて対処していく。

 

「はい、二人目」

 

地を這うようにして走ってくる魔物の動きを読み切り、魔物の爪が俺の身体を引き裂く前に衝撃の剣を喉元に突き刺す。衝撃エネルギーが体内で放出され、四方八方に爆発する。

 

「さて、次はどいつを...っ⁉︎」

 

俺の顔の真横を、何かが通り抜けた。速すぎて見えなかったそれの正体を探るために、俺は何かが飛んできた方向を見る。

 

「外したか...!」

 

そこには、何かを投球したかのようなポーズをした人間がいた。左手には少し大きめの石が幾つか握り込まれており、人間はそのうちの一つを右手で掴み取ると投球モーションに入り始める。

 

「なるほど投石...剛腕のガスタのと似たような魔術か」

 

筋力の超強化により物体を豪速球で投げることができる魔術。しかし、ガスタの魔法とは違いこの魔術は狙いが荒いようだな。ガスタなら百発百中、外すことなどあり得ない。魔術にした際の劣化部分なのだろう。

 

「初撃を外したのは痛かったな。命取りだ」

 

人間は二度目の投石をしてくるが、大雑把に衝撃の剣で壁を広げることで身を守る。広めに壁を作ったため、投石を受け止めるのと同時に、放たれた矢なども受け止めることができた。そのおかげで、先ほど消費した衝撃エネルギーがそこそこ溜まりつつある。

 

「ほれっ、受け止めてみな!」

 

壁を引っ込めた俺は、衝撃の剣の一部を切り離して球体を作り出す。そしてそれを人間に向けて投擲する。

 

「はい、バーン!」

 

投げられたそれを人間が掴み取ろうとした瞬間、溜め込まれた衝撃エネルギーが思考性を持って放たれた。人間は真後ろに勢いよく吹き飛ばされ、少し先にあった家屋に背中から突っ込む。どうやら家屋は耐久性に難があるらしく、壁がぶち抜かれ、それをきっかけとして家屋が倒壊する。あの様子だと背骨は折れているだろうし、家屋の倒壊に巻き込まれたわけだから即死していなくとも直に死ぬだろう。

 

「魔王代理を舐めるなよ?こんだけ雁首揃えてりゃ勝てるだなんて甘い考えは捨てて、さっさとその首を差し出すこったな」

 

俺はそう言いながら、一番近くにいた魔物の方に向かって歩く。優先して殺すべきなのは魔物の方だ。人間はいくつもの種類の魔術を使える点で厄介だが、一つ一つの出力は弱い傾向にある。ならば、一点集中の魔物の魔法で逆転されてしまうだなんて可能性を潰すために先に潰す方が得策だ。

 

そして何より、人間は逃しても問題ないというのがある。この場から人間が逃げたとしても、魔物が全滅することで天気は昼になり作物は育たなくなる。いずれ食糧を求めて元の集落に戻っていき、魔物の監視網に捉えられることだろう。だから逃げられてしまっても構わないのだ。

 

「……へぇ、聞く耳持たずか。なら仕方ない...な!」

 

魔物は逃げずに立ち向かってきた。愚かだなぁ...と思いながら俺は、魔物の突進を衝撃の剣の壁で受け止めることで運動エネルギーを全て吸収し、壁から針を出現させて魔物に衝撃エネルギーを流し込む。今度は魔物の体は爆散せず心臓だけが破裂し、血を噴き出しながら事切れる。

 

「ふぅ、意外とエネルギー減るの早いな。気をつけねぇと」

 

死んだ魔物の身体を何回か切り付け、衝撃エネルギーを蓄える。このまま攻撃のたびに放出を繰り返していたら、いつか限界が来てしまうからな。少しでも補給しなければ。

 

……だが、その光景を見た魔物たちは激怒した。そりゃ当然だろう。側から見ても死んでいるとわかっているのに攻撃をしているのだからな。仲間の死体を嬲られていると思い、怒るのは不思議ではない。

 

「お、来るか。そりゃありがたい」

 

怒った魔物たちがまとめて一斉に襲いかかってくる。さーて、どう調理してやろうか...!

 

「まずは...!」

 

多対一を避けるために後ろに下がって時間を稼ごう。衝撃の剣があるとはいえ、流石に一度に全員を相手取るのは難しいからな...

 

そう思って足を動かそうとしたその時だった。

 

「は?あぶねっ⁉︎」

 

俺の足はなぜか前に動いており、そして俺がそうすることを読んでいたかのように魔物たちは攻撃を仕掛けてきた。なんとか衝撃の剣を滑り込ませて、攻撃を全て受け止めることはできたが...

 

「クソっ何が起きた...?」

 

足裏で衝撃エネルギーを放出して真後ろに向かって跳躍し、魔物たちから距離を取る。

 

「勝手に足が前に動いた...なんかの魔法か?」

 

俺が前に出るとわかっていなければ、あのタイミングで攻撃はして来ない。俺が動いていなかったら、あそこで攻撃しても俺には届かないからな。確信を持って攻撃してきたということは、俺にそうさせることができる魔法があるということだろう。

 

「面白え。こういう能力バトルは大好物だよ...だが、今はお前らを殺すことが優先だ」

 

そう言いながら俺は右手に衝撃の銃を作り出す。そしてそれを、こちらに向かって走ってきている魔物たちに向け...

 

「む、左手?」

 

なぜか左手を魔物達の方に向けている自分に気がつく。たしかに右手の銃を魔物たちに突きつけようとしたはず...

 

「ああ、そういうことか」

 

俺が受けていた魔法は、行動の反転だ。後ろに下がろうとすれば前に足が動き、右手を上げようとすれば左手が上がる...そんな、特に変哲もなく面白味のない能力だったな。

 

「なら、これで終わりだ」

 

衝撃の銃を分解し、左手付近で再構築する。先程の回避行動や、攻撃を受け止める時の衝撃の剣の操作は魔法の影響を受けていなかったから、おそらく反転できるのは肉体的な動きだけなのだろう。ならば、既に上げている左手で衝撃の銃を撃ってしまえばいい。

 

「まぁ、引き金を引く動きにも干渉してくるだろうから...これで良いか」

 

衝撃の銃を撃つ時、必ずしも引き金を引く必要はない。弾丸に衝撃エネルギーを放って前に弾き飛ばしさえすればいいのだから、能力の操作で引き金を引いた時の挙動を人力でやってしまえばそれで良いのだ。

 

そうして衝撃エネルギーが溜め込まれた弾丸が発射される。やや上向きに放たれた弾丸は、魔物たちの真上にさしかかったタイミングで崩壊し、真下に衝撃波を爆弾のように叩き込む。魔物の体は衝撃波によって硬い地面に押し付けられ、耐えきれなかったのかぐちゃっと潰れた。

 

「よし、次だ」

 

俺は次の獲物に狙いを定め、歩き出すのだった。




この集落での戦闘は次回で終わると思います。
エネルギー消費に気をつけないといけないという弱点はあれど、基本的に普通の人間や魔物には勝てないんで、どうしても一方的なものになってしまうのが悩みものです...

p.s.死印名簿を死印図鑑と誤植していたため直しました...魔法図鑑に引っ張られてしまったんでしょうね、以後気をつけます。
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