神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8057字。

前回の続きです。


地面崩落と生き残り

「よし、次だ」

 

近くにいた魔物はあらかた始末できてしまったので、ひとまず近場にいる人間を狙うことにした俺はやや早足で近づいていく。

 

「く...この!」

 

人間は木で作った槍のようなものを突き出してきた。普段なら小さく横移動して回避しているところだが、少しでも衝撃エネルギーを吸収したいので衝撃の剣で受け止めて勢いを殺す。

 

そして衝撃の剣を振って槍を一度透過切断し、今度は透過させずに槍を叩く。透過切断によって耐久性が落ちていた槍は、叩かれたことによってヒビが入り真っ二つに折れる。

 

「なっ...!」

 

「今更驚いてるようじゃ遅いぜ?」

 

槍の破損に驚いている隙に間合いの内側に滑り込み、二度三度と衝撃の剣で斬り裂いて生命力を衝撃エネルギーへと変換貯蔵する。

 

「バ、バケモノが...!」

 

「お?声だけは威勢が良いじゃねぇか。だが、その足じゃあねぇ...」

 

人間たちは武器は持っているものの、戦闘の経験には乏しい。軍人だったわけではないようだからな。だから、仲間を殺されたことによる怒りこそあれど、こんな敵に勝てるはずがないという恐怖の方が上回ってしまう。その感情がダイレクトに足にきており、ジリジリと俺から距離を取ろうと足が後ろに動いていた。

 

「来ないならこっちから行くぜ?」

 

「ま、待ってくれ!殺さないでくれ頼む!」

 

「嫌だね。一瞬たりとも待ってやるもんか」

 

人間たちに向かって一歩踏み出す。それに呼応するように人間たちは一歩後退る。

 

「そもそも、先に攻撃してきたのはそっちなんだぜ?これはいわば正当防衛って奴だ。まぁ、法的には過剰防衛って言われるんだろうけどな」

 

そんなことを喋りながら歩き続けるが、どうにも距離を詰められない。ここから攻撃するしかないな...ってわけで、衝撃の剣を地面の中にまでぐぐぐーと伸ばしていく。透過切断で地面からエネルギーを吸い取りながら、ゆっくりと伸ばした剣を動かして...

 

「一気に斬る!」

 

斜め下から斜め一文字に衝撃の剣を振る。それによって長く伸ばされた衝撃の剣が地面から顔を出し、この位置から数メートルは離れた人間たちの体を透過切断していく。

 

「エネルギーさえあれば、いくらでも伸ばせるんでな。間合いを取ったところで無意味なんだぜ?」

 

透過切断によって逃げるための体力を奪われ動けなくなった人間たちのもとへと近づく。

 

「ま、待ってください...殺そうとしたことは謝りますから...あなたも死印付きなのでしょう?あなたも死にたくなんてないはず...だからあなたもこの場所d」

 

なんか喋っていたが、そんな命乞いなんて聞いてる暇ないのでさっさと透過切断して殺してしまう。

 

「俺が死印付きだからって懐柔できると思うなよ?」

 

次々と人間を透過切断し、生命力を衝撃エネルギーに変換していく。外傷のない、死因不明死体がどんどん量産されていく。

 

「俺が死ぬまでが仕事だ。死にたくないとか、そんな柔なこと言ってられるか...っと、次はどこだ?」

 

動けなくした人間の処理を終え、次の獲物を探す。

 

「……見える範囲にはいねぇな。ひとまずもっと奥の方まで行くか」

 

集落に近づこうとしたらすぐに戦闘になったため、実はまだそこまで集落には近づけていなかった。もしかしたらここから真反対の場所にこの森の出口があるのかもしれないし、逃げられる前に急いで向かわなければ。

 

「死印付きはいねーかー!」

 

走って集落の中央を突っ切りながら叫ぶ。隠れている奴が怯えて物音でも立ててくれないかと期待しての行動だが...流石にそんなヘマはしないか。

 

「……って、いたいた!」

 

逃げ遅れた風の魔物を一人見つけた。こちらに気づいた魔物は急いで走り出すと、森の方へと向かっていった。

 

「あっちが出口か...逃すかよ!」

 

地面に対して斜めに衝撃の剣を突き刺し、衝撃エネルギーを放出する。それによって地面にヒビが入っていき、逃げる魔物の足元まで伸びていって...

 

「っ⁉︎浮いてる...?」

 

地面のヒビは魔物の進行方向の少し先まで伸びていき、小さな地割れを引き起こして魔物の足を絡めとるはずだった。しかし、魔物の足は地割れなんて起こってないかのように動いた。まるでそこに普通に地面があるかのように、空中を踏み締めて走っていっていたのだ。

 

「浮けるのならわざわざ地面を踏み締めるように走る意味はない。後ろを振り返ることはしてなかったから、地割れが来ることを予想することはできない。だからその瞬間だけ魔法を使ったってのは不自然...となると、だ」

 

俺は集落の方へと向き直る。

 

「あれは俺を外へと追い出すための幻覚か」

 

あの幻覚を追いかけて迷いの森へと入らせ、魔法を使って森の外へと追い出すつもりだったのだろう。追いかけて処理に時間かかっている間に集落に残っていた連中が逃げるとかいう展開が嫌だなと思って遠距離攻撃にしたのが功を奏したな。

 

……まぁ、普通に本当の魔物で、俺の想像もつかない魔法で攻撃を回避したっていう可能性はあるけれども、ミセラがこの場所に魔物と人間が隠れていたっていう報告はしてくれているはずだし、森の外に出ていったなら魔王軍の捜査網に引っかかることだろう。真実がどうであれ、集落から外に出ないでいれたことが何よりも重要だ。

 

「けど、外にはもういなさそうなんだよな...いるとすれば建物の中か」

 

いくつか建物はあるが、さてどこに隠れているのやら。外から見ただけじゃ見当もつかないな。

 

「ハズレ引いてトラップに引っかかったりとか、その間に逃げられたりとかされちゃ面倒なんだよな...」

 

俺はそう呟きながら上を見上げる。樹冠によって遮られてはいるものの、若干は空模様がうかがえる。

 

「まだ夕焼けってことは、人間も魔物もそこそこ同程度残ってるってことなんだよな...ん?そういや俺ってどっちなんだろうな?人間扱いで昼になるのか、それとも魔王代理だから夜になるのか...わからんな」

 

もし後者だとしたら...いや、前者でもそれはそれで面倒か。後者だった場合、もう魔物はいないのに夕焼け空を維持してしまい人数把握が狂ってしまう。前者だった場合も、俺とミセラで1対1になってしまうため全員殺しきったあとも夕焼けを維持してしまう。どっちみち空模様で大体の人数比を把握するのは無理そうだな...あんまり考えないようにしよう。

 

「とりあえず、ハズレを引くのは面倒だから...お、いいこと思いついた」

 

少し前に、衝撃波で吹っ飛ばした人間が建物に衝突して、その建物が崩落していたのを思い出した。もしも他の建物も同じくらいの耐久力なのだとしたら...

 

「よーし、やってやるか」

 

ますは衝撃の剣を目一杯伸ばして地面を斬りつける。このまま建物ごと斬りつけるのもアリではあるが、どこまで攻撃したか分かりづらく、上手いこと避けられてしまう可能性もあるし、なによりも同時に攻撃することができないから今回は却下だ。

 

こうやって地面を斬りつけて衝撃エネルギーを貯めながら地面の強度を下げていって...

 

「よし、ここまで貯めれば...!」

 

地面から衝撃の剣を引っこ抜き、扱いやすい長さへと戻す。そして、再度地面に突き刺す。

 

「衝撃...解放!」

 

地面に突き刺した切っ先から衝撃エネルギーを放出させる。放出された莫大なエネルギーは地震に似た現象を引き起こし、地面を揺らす。

 

この世界に地震はないため、耐震性や免震性などあるわけがない。元から耐久性のあまりない建物だ。震度3くらいのそこそこの揺れでも倒壊してくれるだろう。

 

そして、さらに追い討ちがかかる。

 

「よーしキタキタ!」

 

先に崩壊したのは地面だった。先程地面を透過切断したことによって、地面を構成していた物質が脆くなり、粉状にも近くなって振動しやすくなっていた。そこに衝撃エネルギーを流し込んだことによって、表面の粒子が空気中に飛び散り、また地中で元々空洞になっていた場所に粒子が入り込むことで地盤沈下が起きて集落全体が下に沈んだのだ。

 

震度3に匹敵する揺れと地盤沈下に、建物は耐え切れるわけがない。半ば当然のように建物全てが一斉に崩壊して潰れた。

 

「ゲホッゴホッ、土ぼこりやば過ぎ...」

 

巻き上げられた土が目に入ったり口の中に入ったりして俺もダメージを負ってしまうが、それ以上に奴らは痛手を負っただろう。まぁ、建物の中に隠れているっていう予想が本当に正しければの話ではあるが...

 

「……おっ、外に逃げ出した奴いるじゃん。やっぱ中に隠れてたんだな」

 

森の中なせいで風が一切吹かずなかなか土ぼこりが晴れなかったので、真上に向かって軽く衝撃波を放出して視界をクリアにすると、倒壊した建物の近くで息を荒げながら這いつくばっている魔物たちが何体か見えた。怪我をしている奴もいれば、一切の無傷の奴もいる。無傷の奴は、揺れ出した時点で外に出ていたのかな?なかなか感のいい奴め。

 

「それじゃあ一人ずつ始末するとしますか...ってヤバっ、街灯消えた⁉︎」

 

地盤沈下した後でも明かりはついていたのに、なぜ急に...って、そうか、街灯を灯していた奴が死んでしまったのか。

 

「面倒な...流石に夜目は鍛えてないんだが?」

 

衝撃の剣で身を守れるから攻撃される心配はしなくていいが、この闇に紛れて逃げられてしまう可能性があることが問題だ。この世界は夜でも明るいから暗さへの耐性は魔物たちも条件は同じだろうけど、それでも適当な方向に逃げられてしまえばもう追えなくなってしまう。

 

「あ、でも地盤沈下のおかげで木が倒れて真上が開けたな。これならギリいけるか...?」

 

木が倒れたことで集落の真上を覆っていた樹冠が消え、夜空が見えるようになっていた...夜空ってことは、もうあんまり人間はいないってことかな?建物の倒壊に巻き込まれて大勢死んだのかな...魔物との肉体強度の差が如実に表れているな。

 

「よし、逃げられる前に...!」

 

建物が崩れて出来た瓦礫の上を走り、無傷で倒壊から逃れていた魔物に近づく。傷を負っている魔物は今すぐに逃げることが困難だろうから後回しだ。逃げる余力が残っていそうな奴を優先して狙うことにする。

 

「反応が...遅い!」

 

魔物が俺から距離を取ろうと動き出す前に接近しきってしまい、衝撃の剣をその首めがけて勢いよく振り抜く。

 

しかし...

 

「んなっ⁉︎」

 

俺はたしかに真横に腕を振って首を狙ったはずだが、なぜか衝撃の剣は擦りもしなかった。魔物の首に当たる直前に、衝撃の剣がぐにゃりと曲がってしまい当たらなかったのだ。

 

歪んでしまった衝撃の剣を戻して、今度は心臓めがけて突きを放つ...がしかし、またしても衝撃の剣が曲がってしまい魔物には擦りもしない。

 

「チイッ...!」

 

どうやら自分には攻撃が効かないのだと確信したようで、魔物は口を大きく開けて牙を見せつけ、そのまま至近距離にある俺の首筋に咬みつこうとしてきた。咄嗟に俺はその顎を下から殴り飛ばし、魔物が怯んだところに腹目がけて蹴りを叩き込んで後ろへと突き飛ばしてやる。

 

「……物理は効くんだな。そんで、今のもダメなのか...」

 

今のパンチに蹴り、そのどちらにも衝撃の剣の針が仕込まれており、攻撃を叩き込むと同時に衝撃エネルギーを流し込んでお陀仏にしてやるつもりだった。しかし、針は魔物に近づくにつれて逸されてしまった。なんなら、蹴りの時にはズボンや靴の中に編み込んでいた衝撃の剣の糸も全部魔物から離れるように逸らされていた。

 

「こりゃ、魔法を逸らす魔法って考えて良さそうだな...まぁ、それならやりようはいくらでもあるな」

 

俺の力は衝撃の変換貯蔵。貯蔵した衝撃エネルギーは自然的なものになり、勇者の魔法無効でも打ち消すことはできない...はずだ。となると、貯蔵された衝撃エネルギーそれ自体はあの魔物の魔法でも逸らすことはできないだろう。手榴弾のように投げ込んで、逸らされる前に爆発させて衝撃波で押し潰してしまうなどすれば倒せるだろうな。

 

「……つーか、なんでそんな強い能力持ってる奴が魔王軍から逃げ出すんだよ...残っててくれよなーまったく」

 

そんなことを言いながら俺は、先ほど蹴り飛ばした魔物のもとへ近づく。その最中、懐に手を伸ばしてあるものを取り出す。

 

「ちょうどいい機会だからな。対勇者の仮想敵になってくれや」

 

取り出したのは二本の短剣。異能の力を打ち消す勇者と戦うためにサルボル率いる鋳造部に作ってもらった珠玉の武器だ。

 

「いやー、やっぱ双剣は手に馴染む...」

 

聖杖世界の頃を想起しながら軽く素振りをする。それと同時に衝撃の剣はその大部分を服の繊維に編み込んでいき、残りは素肌の見えている場所に張り巡らせて不意の攻撃からも身を守れるようにしておく。

 

「それじゃあ...行くぜェ!」

 

魔物に接近し、右手の短剣を振り下ろす。魔物は間一髪のところで右に回避するが、その直後に手首のスナップだけで投げられた短剣を避けることができず、魔物の左肩付近に深々と突き刺さる。

 

俺はすぐさま左手に持っていた短剣を右手に持ち替え、逆手にして魔物の喉元めがけて突き刺そうとする。

 

「っ!」

 

それを魔物は腕でパンッと払い除けると、肩に刺さっていた短剣を引き抜いて攻撃してくる。その攻撃を逆手で持った短剣で受け止め、フリーの左手で魔物の右肘を叩いて関節を逆に曲げ、短剣を手放させる。魔物が悶えながら後ろに後退りするのを見届けながら、右手の短剣をクッと動かして真上に短剣を弾き、落ちてきたのを左手で掴み取る。

 

「両腕封じた...攻め切る!」

 

背を向けて逃げ出そうとする魔物を追いかけながら短剣を投擲してその背中に突き刺す。

 

「これで終わり!」

 

探検が刺さって地面に倒れ込んだ魔物に飛びかかり、もう片方の短剣を背中に深々と突き刺した。

 

「ハ、ハハ...」

 

魔物は、かすかに笑っていた。

 

次の瞬間、服の中に編み込んでいた衝撃の剣が外に溢れ出し、そのまま弾き出される。

 

「こいつ...自ら囮を...!」

 

パッと顔を上げると、四方から傷ついた魔物たちが飛び出してきていた。この魔物が俺を引きつけて魔法を起動し、俺の衝撃の剣の守りを剥ぎ取ったところを狙う作戦か...自ら囮になるだなんてな。マジで魔王軍に欲しい人材だったぜ。

 

「っ...まだ死なない...⁉︎」

 

短剣で魔物の身体を引き裂き続けるも、魔物は魔法を途切れさせまいと懸命に意識を保ち続けていた。このままじゃ、衝撃の剣で魔物の攻撃を防げない...

 

「ならば!」

 

衝撃の剣の一部を爆発させて衝撃波を放出し、俺自身の背中を叩いて吹っ飛ばされる。

 

「っ、アンラッキー...!」

 

吹き飛ばされる方向が思っていた方向から少しずれてしまい、魔物が来ている方向に飛んでしまった...けど、もうあの魔物の魔法圏内からは脱した。あそこにある衝撃の剣を呼び戻すのは間に合わないから...!

 

タンッ!タタンッ!

 

何度か手を叩いて衝撃エネルギーを生み出し、衝撃の剣を再生成する。そして生み出された小さな球体に自らの運動エネルギーの一部を吸い取らせて急減速し、魔物の攻撃を空振りさせる。

 

「ふん...ぬ!」

 

ザザッと滑るように地面に着地し、そのまま持っていた衝撃の剣を小さな針状に変えて目の前の魔物に突き刺す。身体の中まで深々と突き刺してから膜を消滅させ、衝撃エネルギーを体内で爆発させる。

 

「よし...後三人!」

 

そう叫んで魔物たちを威嚇しながら、遠くの衝撃の剣を手元に引き戻し服の中に編み込んでいく。

 

「次は近いお前から...!」

 

俺を追って走ってきていた魔物を狙いにつけ、短剣を構える。そして背中側から衝撃の剣を触手のように何本か伸ばしておく。聖杖世界の魔法、触手・水の再現だ。両手が短剣で埋まっている今、衝撃の剣を最大限に活用するならこれが一番良いだろう。制御はちょっとムズイがな。

 

「わざわざ近づいてくるだなんて、愚の骨頂...っ⁉︎」

 

上から何かが降ってきたと思ったら、魔物を撃ち抜いた⁉︎これって...森に上から侵入しようとした時に飛んでくる光線か?まさか、地盤沈下で木を薙ぎ倒してしまったから、この場所にも撃てるようになってしまった...?いやでも、それならなんで魔物に当たって...誤射?

 

「お、オイ!なんでアイツに当てた⁉︎」

 

残っていた二人の魔物のうち、片方がもう片方に向かって怒鳴った。

 

「だ、だって...」

 

「だってじゃねぇ!次はちゃんと当てやがれ!」

 

なるほど奥にいる怒鳴られてる方が光線を制御してる奴なのか。なら、先に排除する...!

 

「だって!こうでもしないと殺されることは避けられないじゃないか!」

 

もう一度光線が飛んできた。光線は、怒鳴っていた方の魔物を撃ち抜き、絶命させた。

 

「ま、魔王代理様...じゃ、邪魔者は消しましたよ...」

 

仲間を撃ち殺した魔物はそう言いながらこっちに近づいてくる。

 

「貴方様に危害をなそうとした愚かどもは全員始末しました...ですから、私だけでも見逃してください...もう魔王軍から逃げ出さないので、軍に戻らせてください...」

 

「へぇ...」

 

俺は手に持っていた短剣を下ろした。

 

「なるほど、お前軍に戻りたいのか。それで、その意思を示すために、もう反逆なんて考えないと示すために、仲間を殺したと」

 

「ええ、ええ!全ては魔王代理様のために...!」

 

「なるほど...そいつは随分な志だな。だが...」

 

背中から触手のように伸ばした衝撃の剣を魔物の喉元に突き刺す。

 

「仲間を裏切った奴は信用ならん。二度も裏切った奴なら尚更な」

 

魔王軍から裏切ってこの集落に与し、そして今仲間を裏切って魔王軍に戻ろうとした...この二回の裏切りを知って、統率が重要な魔王軍に入れる奴なんているだろうか。おそらくいないだろう。

 

「まぁ、どいつであろうともう魔王軍には入れねぇけどな」

 

と、衝撃エネルギーを流し込まれた魔物が爆散するのを見ながら俺は呟いた。

 

「さて...もう生存者はいないかな?」

 

物音ひとつしなくなった、崩壊した集落の中で一人立ち尽くす。まずは耳を澄ませて...うん、やっぱり物音は無いな。呼吸音も聞こえないし、もう誰もいなさそうだな。

 

「んじゃあ死印名簿で確認するか...」

 

死印名簿を開いて確認を取る。

 

「死んだ奴には写真にバツ印がついてくれるから...」

 

シャリヤ調べの魔王軍未確認者には写真の上に自分で印を付けているため、印の付いてる写真にバツ印が印字されていればちゃんと殺せたということだ。バツ印が付いていなければ、この集落にいなかったか、殺し漏らして今もここに潜伏しているか逃げ出してるかの三択になるな。

 

「出来ればゼロであって欲しいけど...」

 

地震で建物を倒壊させて殺した奴が多すぎてちゃんと死んだことを確認できてない奴の方が多いから、その辺ちょっと怖いんだよな...と思いながら確認を進めていく。

 

「……うわ、あと1人残ってやがる」

 

所在不明の魔物は全て殺せていることが判明した。しかし、一人だけ、所在不明の人間が残っていることがわかった。

 

「どこのどいつだよこいつ...クソッ、全力捜索できる余力もうないってのに...」

 

俺も今の戦闘でだいぶヘロヘロだし、魔王軍もそろそろスターバス殲滅作戦が控えているため所在不明の人間捜索にリソースを割くことができない。一旦後回しにしておくしかないな...いつか絶対殺さなきゃいけないのに、後回しにしなきゃいけないのだいぶストレスだな...

 

「まぁ、それ以外の奴をここで一網打尽に出来たってのは普通に大きいよな。一箇所に集まっててくれて助かったぜ」

 

よし、ぷらぷらっと歩き回ってみたけどもう生存者はいなさそうだな。魔王城に戻るとしよう。

 

「この森ももう抜け出せる...よな、安心した」

 

集落の住民が死んだことでかけられた魔法が効力を無くし、普通の森へと戻っていた。本当はちょっと歩けば抜け出せる程度の大きさの森だったんだな...

 

「よし、ミセラ。ハサミツに連絡頼む」

 

「はいはーい!」

 

こうして俺は魔王城に帰還した。

 

スターバス殲滅作戦まで...もう時間はあまりない。




前転の初期の頃のカリヤくんに、将来君はここまで動けるようになりますよと伝えたくなるくらいの成長度合いになっているように思えてきた今日この頃。
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