神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8031字。

スターバス滅亡作戦第2話です。


滅亡作戦と全てを壊す振動

「さーて、俺は何をしていこうかねぇ」

 

門を破壊してスターバスの中に魔物を呼び込むことはできた。そこまでは事前に決まっていたことだが、ここから俺が何をして行くかは臨機応変に...としか考えていなかったため、何をするかは一切の未定だ。

 

「懸念材料だったギルドと役所の後方部隊の軍人は先に潰しちゃったから、あとはそこらの一般人を襲うだけなんだよなぁ...それだけなら魔物たちにもできるし...」

 

適当に暴れ回ってやるのもありだが、あまりにも出しゃばりすぎると魔物たちの出番を奪ってしまって反感を生むだろう。だから、ほぼほぼ魔物たちに任せてしまって、俺は撃ち漏らしを殺したり手がまわってなさそうな場所で暴れるのが正解かな。

 

「そんじゃっ、一旦壁の上登って戦況を眺めてみるか」

 

手を叩いて衝撃の剣を生み出し、地面を切り裂いてエネルギーを貯める。そうしてある程度の大きさを確保した後に壁に剣を突き刺し、そこに足をかける。壁に刺さっている方とは反対側の端を伸ばし、ぐるっとU字にカーブさせてまた壁に刺す。そこにもう片方の足を乗っけて、一段下の足も上の段に移す。そうしたら、下の段の剣を壁から引き抜いて動かし、少し上の方にまた突き刺す。

 

これを繰り返すことで、衝撃の剣を階段代わりにして壁を登って行く。ついでに壁に突き刺した時のエネルギーを回収できるから一石二鳥だな。

 

「よっと到着...戦況はどんな感じかなー」

 

壁の上まで到達できたので、どかっと座り込んで休憩しながら町を眺める。

 

「おぉ、だいぶ暴れ回ってんねぇ。どこからも悲鳴と破壊音が響いてきやがる」

 

人間どもには対抗手段が無いらしく、至る所で魔物たちに無惨に殺されているのが確認できた。ここには死印無しがいないとわかっているためか魔物たちも全力で暴れ回っており、どんどん建物が崩されていっていた。

 

「それでもフレンドリーファイアはあんま起こってないみたいだな。訓練のおかげかな?」

 

俺が訓練を始める前から、魔物たちはお互いの魔法を上手く活用して戦っており協調性が高かったように思えるが、そこからさらに動きが良くなってお互いを巻き込むことが一切無くなった。互いの間合いを完璧に把握し、誰かの攻撃をわざと回避させて別の奴がトドメを刺す、などといった誰かを囮にすることも積極的に行なっている。我先にと突っ込む奴がいないって、普通にすごくね?

 

「にしても...ちょっと過剰過ぎたか?三人一組だとちょい効率悪いな...」

 

魔物たちは三人一組になり、常に自身たちよりも少ない人数の人間を狙うように指示していた。誤っても返り討ちにならないようにという意味を込めての指示だったが、そもそも人間たちは反撃もできずに殺されているため、別に何人を相手しようが関係なかった。こうなるんだったら、まぁ最低でも二人一組にしてグループの数を増やし、一度に殺せる人数を多くした方が良さそうだった。このままだと時間がかかってしまう。

 

「まぁ勇者たちが到着するより前に終わらせられてたらなんでもいいんだけど...うん、俺を仮想敵にしての訓練はやりすぎだったか」

 

仲間と協力すれば衝撃の剣無しの俺を倒せる程度の実力を合格ラインとして一ヶ月訓練をしたら、月の後半にはもうほぼ俺は勝てなくなった。俺の戦闘時の癖を完璧に分析されたというのもあるが、一番の理由はたとえ相手が俺であったとしても本当に殺しに行くつもりで戦えるようになったことだろう。

 

自分らのトップである魔王代理でも殺しに行けるんだぞ?それほどの殺意を持った奴らにただの人間が抗えるはずもない。殺意に当てられて一瞬怯んだところを狙い、一瞬の迷いもなく首を刈り取っていく...俺でもそうなってしまうんだから、困ったものだ。俺は恐ろしいモンスターたちを生み出してしまった...

 

「あいつらだったら勇者も倒せんじゃね?...倒されちゃ逆に困っちゃうんだけどな」

 

勇者は死印付きではない。だから倒しちゃいけないんだよな。まぁ、流石に冗談だけれど。勇者がどれだけ強いのかは知らないが、普通の魔物にやられるほどやわな奴ではないだろう。

 

一応、勇者御一行の五人のうち二人はスターバスでの戦いで死ぬことになっているから、一時的に勇者をのしてしまって、死印付きの二人を殺してしまうくらいならやってくれて構わないんだけどな。俺の仕事減るから、出来ればスターバス滅亡作戦が終わったら普通に帰還してもらいたいところではあるけど。

 

「……うーむ手持ち無沙汰。みんな頑張ってるおかげで、勇者が来ないと俺やることない...ってか今気がついたけど、俺って防衛は何度もやったことあるけど攻め入るのって初めて?」

 

聖杖世界では町を防衛する戦争を何度もやってきた。源流世界でも、魔族が絡んだ戦争を終わらせるために防衛側で戦争に参加した。けれど、今までどこかの町に攻め入る戦争は一度もして来なかった。強いて言うなら、魔王城に攻め込んだことはある。しかし、こうやって軍を率いて町を攻め落としに行く経験は初めてだ。

 

「だからちょっとぐだっちゃったのかな...まっ、もうそういう経験することも無いだろうしいっか...っと、暇つぶしになりそうなのみっけ」

 

壁の下を見ながら俺はそう呟き、そのまま身を投げた。

 

「よっ...と」

 

地面に激突する瞬間に衝撃の剣を展開し、落下による衝撃エネルギーを完全に吸収してしまう。スリルたっぷりの自由落下を楽しんだ俺は、そのまま立ち上がって門のほうに近づく。

 

「考えたなぁお前。案外門の近くにいた方が見逃されやすいんだよな」

 

俺は門の向こう側に出て行こうとしていた男に声をかける。

 

「え、お前いつの間にそこに...早く逃げるぞ!」

 

「おっ、そうだな。早く逃げた方がいいぜ。なぜなら...」

 

男に近づき、衝撃の剣でその身体を斬り裂く。

 

「俺も敵だからな」

 

一撃で男の生命エネルギーを奪い取り、すぐにスターバスの中に戻る。

 

「よし、それじゃあ俺は門の近くを調べて回るとするか」

 

あの男がしていたように、門の近くの建物に潜んでどさくさ紛れに逃げ出そうとしている奴がいるかもしれない。この辺りには魔物もいないことだし、俺がここらを見回ってやろう。

 

「みんな、人間を殺したい欲が強すぎて奥に奥にって移動していくもんだから、一番手前側が手薄になっちゃうんだよなぁ...もう少し上手い具合に分散してもらえないもんかねぇ?」

 

手前側は誰かしらがやってくれているだろう、自分らは奥側をやらなければという認識を全員が持った結果、かえって手前側をやる人が誰もいなくなってしまった。まぁ、あんな勢いで町の中に魔物たちは雪崩れ込んできたから、流石に誰かはやっているだろうと思うのもわかるけれど...こうやって実際に逃げおおせた人間がいるのだからもう少し頭使ってほしいな。

 

「大体のエリア分けとかもしておくべきだったか。もうちょい詰めれるところあったなぁ...そこで俺の出番なわけだけど」

 

俺みたいな遊撃部隊はこういう不測の事態に対応するためにいるんだしな。ちゃんと仕事しないと...部隊とは言ったが一人なんだけどなガハハ。

 

「避難誘導してる風を装って誘き出すか...おーい!誰か生きてる奴いるかー!」

 

門をくぐってスターバスの中に戻った俺は、近くの建物の中に向かって叫んだ。

 

「……ここにはいないか。それじゃあ次だな。おーい!生きてる奴いたら返事してくれー!」

 

叫びながら歩く。隠れてる奴も警戒しているだろうし、何度も何度も叫び続ける。何度も声を出し続けることで、叫んでいるのに魔物に襲われずにいられているってことはこの近くには魔物はいないんじゃないか、といったふうに思考を誘導して今なら出ても問題ないのではと思わせることができる。一回じゃダメでも、何度も叫び続ければ...

 

「は、はーい...ここいまーす」

 

「おっ、生存者いるな?」

 

微かではあったが声が聞こえた。多分この建物なはず...

 

「いたいた。おーいあんたら、大丈夫か?」

 

そこにいたのは、数人の子供とその家族と思われる男が一人。併せて六人か。全員漏れなく死印付きだな。

 

「お、俺たちはなんとか...あんたは大丈夫なのか?」

 

「ああ、上手いこと魔物どもに会わずにここまで来れたぜ。今なら門のほうまで逃げれる。さぁ、今のうちに!」

 

「け、けど外に出るのは危険すぎる...このまま中で隠れてた方が...」

 

「何言ってんだ。あんなに叫んでたのに魔物どもは来なかったんだぜ?こんなチャンスを逃すわけにはいかないだろ。それに、物陰からチラッと見たんだが魔物の奴ら、建物を見境なく破壊し尽くしてたぜ。このまま中に隠れて建物の倒壊に巻き込まれるのが良いってんなら俺はいいが、どうする?」

 

「っ...わかった。行くぞみんな!」

 

「それじゃあ俺についてきてください。最短ルートで門まで急ぎますよ」

 

しめしめと思いながら俺は建物から出る。後ろに六人がついてきていることを確認してから、俺は門に向かって小走りで移動を始める。

 

「なぁ、他にも隠れてる奴がいないか知ってたりしないか?逃げるならバラバラに逃げるよりも一斉に逃げれた方がいいだろ?何か知らないか?」

 

「いや、隠れるのに必死で何も...一人俺の知り合いが近くの建物に入って行くところを隠れる直前に見たくらいか」

 

なるほど...少なくとも北側じゃそいつ以外に見てないってわけだ。んじゃああと探すのは南側か。

 

「……っと、ちょうどいいところに来てくれたな」

 

門の前あたりに差し掛かったところで、南側から何人か女の人たちが出てきた。俺らがこの人数で歩いているのを見て安全なのだと考えたのだろうな。

 

「大丈夫ですか?まだ人がいたりとかは...」

 

「いませんこれで全員です」

 

「そうですか。ならよかった...皆さんは先に行っててください。俺はここで魔物が来ないか見張ってますので」

 

「え、良いんですか...?」

 

「大丈夫ですから、先に逃げててください」

 

「わかり...ました。すぐあなたも来てくださいよ!」

 

「ええ、すぐに行きますよ」

 

人間たちが門をくぐるのを見届ける。そして、その後ろをこっそりとついて行く。

 

「え...お、おいお前大丈夫か!」

 

少し経つと、男が異変に気づく。先ほど俺が殺した男が倒れていることに気付いたのだ。生命力を奪われて死んだ男は、側から見ただけではただ倒れているだけにしか見えないだろう。知り合いらしいし、すぐにでも近寄って確かめるはずだ。

 

そして、その場にいる全員の注目が死んだ男の元に集まる。その隙にみんなの背後に近づき...衝撃の剣を真横に振り抜いた。

 

「ふぅ、一網打尽気持ちいいね」

 

その場にいた全員の身体を切り裂き、生命力を奪い去る。全員力無くその場に崩れ落ちる。

 

「……よし、パパッと探しに行くか」

 

門の内側に入り、今度は南側を捜索する。さっきの人たちはもう他に人はいないと言っていたけれど、あの人たちが把握してないだけでまだ隠れている奴らがいるかもしれないからな。

 

「おーい!誰かいないかー!」

 

建物に向かって叫ぶ。

 

「ニンゲ...と、代理様でしたか!」

 

少し先の曲がり角から魔物が頭を出してきた。こっち側まで戻ってくる奴らが出てきたってことは、進捗はだいぶ早めかな?

 

「どうだそっちは?上手く殺せてるか?」

 

「もちろんですとも!目についたニンゲンは全て根絶やしにしております!」

 

「そうかそうか...なら、仲間と一緒に門の周辺を捜索してくれないか?さっきから、ここら辺の建物に隠れて、魔物が西側に向かっていった隙をついて逃げ出そうとする輩が何人も出てきているんだ。門周辺の警備と、周辺の建物を調べて人間が隠れていないかの確認を、上手く分担してやっておいてくれ」

 

「了解しました!おーい、代理様からの御命令だ!みんな行くぞ!」

 

魔物たちがゾロゾロと門の方へと向かって行く。こんだけいれば、俺はここにいなくても問題ないだろうな...

 

「一旦どれだけ死んでんのか確認しておくか」

 

死印名簿を開き、スターバスの住民がどれだけ死亡したのかを確認する。

 

「もう既にだいぶ死んでるみたいだな...もう生きてる方が少ねぇじゃねぇか」

 

パラパラとめくってみるが、見るからにバツ印が付けられている割合が高い。もちろんページにもよるが、これもう7割近くは終わってんじゃねぇか...?

 

「よし、やることは決まりだな」

 

ここまで魔物たちが暴れ回っていて、けれどもまだ3割近く生き残っているということは、人間らは門の近くにいた奴らのように建物の中に隠れている可能性が高い。外に出ているのに魔物たちに見つからないってのは流石に不自然だからな。地下室とかもあるかもだし、見つけ出して殺すのは難しかろう。だから、俺が動く必要がある。

 

「とりあえず何をやるにしてもエネルギーを貯めないとな...」

 

衝撃の剣を伸ばした矢鱈滅多に地面を切り裂く。切断によって本来生まれるはずだった破壊が透過切断によって衝撃エネルギーへと変換され、衝撃の剣の中に貯め込まれていく。

 

「より効率良くするには、スターバスの中央に行かないとか」

 

地面を切りながらスターバスの中央へと向かう。人間の死体がそこかしこに転がっているのを横目に見ながら、一ミリも感傷的にならずに歩き続ける。

 

「聖杖世界の頃の俺なら死体転がってるの見たら怒ってたんだろうなぁ」

 

聖杖世界での記憶で一番嫌なものとして残っているのが、カリス襲撃による大量虐殺だった。空に住民を転移させて、空から突き落とすという残虐非道の行いに、思わず狂化が暴発してしまうほど怒った覚えがある。しかし、今見ている光景では怒りは湧いて来ない。俺がこれを先導したと自分で理解ができているからだろうか。それとも、完全に仕事だと割り切ってしまえているってことか?

 

「まっ、いちいち悲しんでちゃキリないよな。にしても、魔物の死体ほぼ無いな。訓練の成果が目に見えてわかって嬉しいね」

 

それだけ一方的な戦いなのだろう。本来の歴史でも、勇者たちが到着するまでは魔物たちに死者はほとんど居なかったようだしな。まさか、死印付きの魔物だけでもここまでの戦果を出せるとはな...もう少し手こずるかとも思っていたのだが、予想をいい意味で裏切ってくれたな。

 

「……よし、ここら辺でいいだろ。エネルギーも十分に貯まってるし...ミセラ、全員に伝達したい。頼めるか?」

 

ミセラを通じて魔王軍全体に命令を下す。まぁ、魔物全員にミセラを分割して渡すだなんてことは当然出来ないので、遠隔で意思を伝えることができる魔物たちを集めた部隊にミセラの一部を渡すことで、ミセラを経由して魔王軍全体に一斉伝達を出来る様になっているのだ。

 

「はーい、何を伝えるの?」

 

「今から俺は、地面を丸ごと揺らす。建物の倒壊や地盤の崩壊が予想されるから、建物の中を捜索している魔物は一旦外に出て、全員衝撃に備えてほしい...ってことを伝えてくれ」

 

「わかった!」

 

「……伝達は終わったか?じゃあ、始めるぜ」

 

地面から衝撃の剣を引き抜き、扱いやすいサイズに形を戻す。そして、人間と魔物が共生していたあの集落でやった時と同じように、衝撃の剣を地面に深々と突き刺した。

 

「さぁ、揺れろ!」

 

突き刺した衝撃の剣の先端に穴が開き、そこから内蔵されていた衝撃エネルギーが溢れ出す。その結果、何かにしがみついていなければ立っていられないほどの揺れが発生する。

 

透過切断によって脆くなっていた地面はボロボロに崩れて地盤崩壊を引き起こし、建物は揺れに耐えきれず崩壊する。衝撃波による破壊が同心円状にどんどん伝播していく。

 

そしてその揺れはやがてスターバスを覆う壁まで到達し...地面そのものが揺れることを想定していなかったのか、壁はあっさりと崩れ去った。

 

「ありゃりゃ。それは予想外...耐震性能がなってないな」

 

さっき壁の上に登るために衝撃の剣を突き刺したところだけが崩れるならまだわかるが、全体が崩れたからそもそもの耐震性がゼロだったのだろう。流石に脆過ぎやしないか?

 

「そっか、壊れちゃうかぁ...まぁ壊れてしまったものは仕方ない。切り替えていこう」

 

そう俺は呟きながら死印名簿を開く。これでどれだけ死んだかなーっと。

 

「……ふむふむ。こりゃ一気に減ったな」

 

さっきまでそこそこいた生き残りが、もうほとんど消え去っていた。ページを何度もめくっても、バツ印の描かれた似顔絵でいっぱいだ。十何ページとめくってようやく生き残りがいるくらい...あっ、死んだ。たとえ即死を免れたとしても、建物に押し潰されて圧死したり、隠れる場所がなくなって魔物に襲われるなどしてすぐに死ぬことになる。こうやって死印名簿をめくっている間にも、リアルタイムで死人が出ているのだろう。

 

「……あっ、地震のせいで何人か魔物も死んじゃってる...まぁ、こればっかりは運だから仕方ないな。備えろって俺言ったし、責任は取らねぇぞ」

 

どうせ死印付きだし、死んでしまったところでそこまでの痛手ではない。最後に自害させる手間が省けたから喜ばしい...とまでは言わないけど、まぁ手っ取り早くはある。

 

「さて、壁が倒壊したから、生き残りはどこからでも外に出れるようになった。魔物たちに、壁際で人間が逃げ出さないように見張っていろ、見つけたら殺せと伝達してくれ」

 

「はーい」

 

よし、これで死印付きを全員殺すのは時間の問題だろう。俺が何もせずとも、魔物たちは暴れて勝手に人間の死体の山が積み重なって行く。あと、俺にできることは...

 

「軽い見回りと、勇者が来るまで待機か...」

 

そう呟いて、俺はパタリと死印名簿を閉じる。

 

……ゆえに気づけなかった。少しずつ、一人、また一人と魔物の似顔絵にバツ印が付けられていっていることに。

 

「適当に西の方まで行くか〜」

 

呑気に西側へと歩く。倒壊した建物の方から、「た、助け...」と声が聞こえてくることもあったが、俺はちゃんと聞き逃さずに声の主に近寄り、衝撃の剣で瓦礫ごと透過切断してその命を絶ってやった。

 

そして衝撃の剣を服の繊維に絡ませるようにしてしまいながら歩みを再開し、西の門の辺りにたどり着く...そこまでしてようやく気がついた。

 

暴れているはずの魔物が、どこにもいないことに。

 

「は...?どこ行った...?」

 

さっき壁際に寄れという指示は出したが、それはこの門の辺りも当然含まれている。ここに魔物がいないのはどう考えてもおかしい。

 

「あまりにも静かすぎる...シャリヤの妄想世界に飛ばされたってわけでも無さそうだし、一体何が...っ⁉︎」

 

死体があった。よく見なければそうだとわからないほどに粉々にされた魔物の死体があちらこちらに散らばっていた。てっきり散らばっている血は殺された人間のものだと思っていたが、まさか魔物の血だったのか...?

 

と、その時だった。斜め後方の方から何かが爆ぜるような轟音が聞こえた。不可解な現象が続いたため、俺は原因を探るためにすぐさま音の発生源に目を向ける。

 

そこには、後ろを見ながら焦った様子で逃げる魔物がいた。後先を考えない全力疾走をしており、もう息も絶え絶えだった。一体何から逃げている?そもそも、仲間はどうした?グループの残り二人は一体どこにいるんだ?

 

……などといった疑問を思い浮かべているうちに、魔物の首が飛んだ。魔物自身何が起こったかわかっておらず、目をパチクリと何度か瞬きをさせていた。身体もしばらくは走り続けていた。

 

けれど、しばらくして自身の首が切断された事実に気付いたようで、まるで過冷却を起こした水が急に凍り出すかのように切断面から血が噴き出した。走り続けていた身体もドサリと地面に倒れ込む。

 

「ふぅ、この辺りの魔物は全員仕留められた...かな」

 

道の向こうから、男が歩いてきた。そいつは異様に刀身の長い剣を携えており、この戦場の中を我が物顔で歩いていた。

 

「おや?生存者...?」

 

そいつは紛れもなく、この世界の勇者であった。

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