勇者パーティーとの戦いです。
「勇者...⁉︎」
まずい。
まずいまずいまずい...!
顔を見られた...!
この戦場の中で、傷ひとつ負わずに無防備に歩いているところを見られた...!この状況は普通の人間じゃあり得ない。魔王軍関係者...良くて人間に化けた魔物だと思われるだろう。どちらにせよ、勇者に攻撃されるのは明白...!
これが勇者以外なら...せめて死印付きのやつだったならば、サクッと殺してそれで口封じ完了だったのに、勇者だから始末することも出来ない。
クソッ、どうする...!
「良かった。生き残っている人がいてくれた...」
おや...?疑われてない...?そんなことあり得るのか?どう考えても俺がここにいることは不自然なことなのに...
「ひ、ヒッ!」
僅かな可能性に賭けて、怯えた様子を装っておく。対象は勇者ではあるが、怯えているのは本当だから演技がバレないことを祈る...!
「そんなに怯えなくていい。私は勇者だ。既に周辺の魔物は掃討している。落ち着いてくれ」
「ほ...本当か...?」
「ああ。それに、君はおそらく...とにかく、ここから逃げるといい。向こうに向かえば、私の仲間がいるはずだ。保護してもらうといい」
「わかっ...いや、でも...」
「大丈夫だ。君は死なない。ここまで生き残っていることがその証拠だ。自分を信じて、あの崩れた門を乗り越えていけ」
「……ああ」
勇者に見送られながら崩れた門に向かう。わざとややぎごちない動きで瓦礫を乗り越え、転がり落ちるように壁の向こう側へ降りる。
「……あっぶねぇ...!死んだかと思った!」
「わ、私もヒヤヒヤしたよ...怖かったぁ...」
「ってそうだミセラ!全員に通達!勇者襲来!即座にスターバスから退避せよ!」
「そ、そうだね!すぐ伝える!」
俺はなんとか逃げ出せた。あとはどれだけ魔物たちが逃げ出せるかどうか...!
「……よ、よし。なんとか最悪な状況は抜け出せた。最後の仕事だ...!」
スターバス滅亡作戦の最終目的。勇者パーティーの中に混ざっている二人の死印付きの殺害。それを遂行しなければ終われない。
「なんで見逃されたのかは知らんけど、一旦離れてドームに閉じこもって襲いに行くか...」
とりあえず急いでここから離れないとな。勇者の仲間が来る前に...
「ほんっと、一人で勝手に飛んでくとか、いっつも通りだよね...!」
あっ、もう来ちゃったか...めっちゃゼェハァ言いながら勇者の仲間らしき奴らがこっちに向かって走ってきてるな。
「……え?」
一人、二人、三人、四人、五人...五人、だと?
勇者パーティーは勇者を含めて五人のはずだ。勇者は一人でスターバスに先行しているからここにはいない。だから、あそこにいるのは四人で無ければおかしい。
確かに、スターバスに駆けつけたのは勇者たち六人だ。けれどそれは、勇者パーティー五人と戦姫で六人...戦姫が既に死んでいるのだから、一人減っていなければならないはず...じゃあ、あのもう一人は誰だ?
「……しかも、死印付き...?」
その五人のうち、三人が死印付きだった。二人は勇者パーティーの死印付きだろうが、もう一人は誰なんだ?死印名簿で確認したいところだが、今ここで開くわけにはいけない。
……訳がわからんが、あいつらに保護されることになるのか...どうやって離れたものかなぁ...
「あれ?人いるよ人!」
死印付きの魔術師らしき奴が俺のことを指差しながら近寄ってきた。
「おい、あんた大丈夫か?」
同じく死印付きの大盾使いが心配してくる。
「ああ、なんとかな...」
「キミ、勇者くんどこ行ったか知らない?」
「おいサザミ、もっとこう、空気をだな...」
サザミと呼ばれた女と、そいつの肩を掴んで静止を促している男は死印無しだ。この四人が勇者パーティーのメンバーか...ほんと、もう一人の死印付きは何者なんだ?近くで見たら、なんか見覚えあるような気がしてきたけど誰かわからん...
「勇者なら、さっき会ったよ...魔物を一瞬で殲滅して、俺をここまで逃してくれた」
ひとまず、まずはこいつらから離れなければ。油断している今なら死印付き三人を殺すこともできるだろうけど、出来れば正体はまだ隠しておきたいからな...
「……他の生存者はいるか?」
正体不明の死印付きが俺に聞いてきた。怪しまれてる...のか?よくわからんが、返答には気をつけて...
「見てないからハッキリとは言えないけど...多分、あの様子じゃ...」
「そうか...見たところ傷ひとつないが、魔物とは出会わなかったのか?」
「運がいいことにな...」
「……ふむ。ならば、お前はあいつらの言っていた、印を持っていない...狙われない人間の可能性があるな」
……え?今のって、まさか死印付きのことじゃ...
「そ、それってどういう...」
「詳細は省くが、魔王軍から離反した魔物に聞いた。死印とかいう、俺たち人間には見えない印が付いている奴しか殺せないってな。多分、お前にはその印が無いから襲われなかったのだろう」
な、なるほど...こいつ、あの迷いの森の中にあった集落出身の生き残りか...!魔王軍の反逆者らがこいつに死印付きのことを漏らし、どういう因果かこいつが勇者パーティーに加わったがために勇者たちに死印付きの存在がバレたってわけね...クソがっ!
……っと、危ない。相手目線じゃ俺がそんなこと知ってるわけないんだから、少しでも驚くふりをしないと...こういう時、どんな感情を出せばいいんだ?
「俺が...魔物に襲われない...?」
「ああ。だから、このまま一人でいても問題ないだろう。俺たちは中の魔物を仕留めに行く...まぁ、俺らの出番は残ってないかもしれないがな」
そう言って男は崩れた門を登っていった。
「ああもう一人で行かないの!」
「すみませんね騒がしくて...ですが、あなた一人に構っていられないのも本当です。あなたは安全ですから、万が一にも巻き込まれないように離れていてください」
続々と勇者パーティーの奴らが崩れた門を乗り越えてスターバスの中へと入って行く。そうして、俺一人が残された。
「……クソッ、死印付きのこと漏らしやがって...!」
人間側に死印付きの存在がバレてしまったのは大きな痛手だ。自分は殺されないとわかってる人間が思い切った行動に出てきてこっちの計算が狂ってしまうなどといったことが頻繁に起こるようになるだろう。それで死印無しの奴らが死んだしまいには...考えたくもない。
「多分、あの男は自分が死印付きだって知ってるはず。他の五人がどう把握してるかによって話はだいぶ変わってくるぞ...!」
他の五人は魔物に直接確認を取れていないだろうから、自身が死印付きなのかそうでないかは知り得ないはず。けれども、魔物と戦闘をする過程でなんとなくわかってしまうことも事実。もし勇者が自身が死印付きでないと理解していて、誰かを庇うとかいう行動に出たり、魔物に殺されないとわかっているからと無茶な攻撃に出たりしてきたら...考えたくもないな。
「……うん、やっぱりあいつは生き残りで間違いないな。そもそもなんであいつが勇者パーティーに混じってんだよ...わざわざ伝えに来たってのか?」
死印名簿を確認して確定を取る。やはりあいつはあの集落に居なかった生き残りだ。だから微妙に顔に見覚えがあったんだな。
「なんにせよ、ここで見つけられたのはある意味幸運...か。三人まとめて殺すしかねぇな」
色々と想定外なことは起こったが、あいつらから離れることはなんか成功している。今からドームに閉じこもって勇者たちに襲い掛かれば、正体を隠しながら殺しに行くこともできるはず...!
「勇者鬼強いってのが垣間見えてはいるけど、やるしかない...行くか!」
衝撃の剣をドーム状に展開し、その中に入る。そして外から入る光は透過させ、内側から出ようとする光は受け止めるように衝撃の剣を設定し、外の視界を確保しながら中にいる俺の姿を隠す。
「ここから行くとバレるから、まずはぐるっと外側を回って...!」
地を駆け抜けてぐるっとスターバスの崩れた外壁の外側を回って東側へと移動する。死印付きがいるのはまだ西側だろうけど、直で行くとあいつどうなった?となるから無関係を装うために東側から乗り込むことにしたのだ。
「よし、ここら辺まで来れば十分なはず...!」
衝撃エネルギーの噴射で飛び跳ねた俺は軽々とスターバスの外壁を飛び越えて町の中へ入る。
「っ、もうここにも魔物の死体が...ここまで勇者は来てるのか」
だいぶ東側に来たはずだが、魔物の死体がこんなに...勇者の奴、殺戮の速さが尋常じゃないぞ。逃げ切れた魔物の数、相当少ないだろうな...
「とにかく、まずは死印付きを...」
西側にいるであろう死印付きを殺しに行くために、町の中を駆け抜け...
「っ⁉︎」
曲がり角を曲がったところでばったり勇者と鉢合わせしてしまった。そして勇者が視界に入った瞬間、即座に武器が構えられてものすごい速度で突進してくる。
「ヤバっ...!」
衝撃の剣をドームから触手のように伸ばして勇者を迎え撃つ。死なない程度にほんの少しだけ生命力を奪って、しばらく行動を封じることができれば...
しかし、勇者は恐ろしいほどの反射神経で衝撃の剣を回避してそのまま接近してくる。早過ぎだろこいつ速度操作でも使ってんのか⁉︎
「緊急回避...!」
衝撃開放で後方にわざと吹き飛ばされ、勇者の放った斬撃を回避する。
「一旦寝てろ...!」
距離を取ったのにすぐさま距離を詰めてこようとする勇者を止めるため、前方に向かって衝撃波の塊を放つ。空気を揺らし、爆音を鳴らして勇者の耳を壊す。
「づ...耳が...!」
「そのまま脳まで揺れろ!」
こちらから距離を詰め、再度衝撃波を放つ。衝撃波は空気を伝播して勇者の脳を揺らし、軽い脳震盪を引き起こす。
「ハッ、意外と脆いな勇者!じゃあな!」
脳が揺れたため膝をついて頭を抱える勇者を透過切断し、体力を奪って一時的に動きを封じておく。
「戦姫と一緒で、攻撃一辺倒だな勇者...いや待てよ?もしや自分が死印付きだってわかってるから防御を捨ててるんじゃ...おぉ怖い怖い」
勇者を退けることができたため、西に向かって再度走り出す。少し衝撃エネルギーを消費してしまったため、地面や周囲の建物を透過切断しながら死印付きを探す。
「……っと、見つけたぜ」
五人揃っているところを発見した。キョロキョロと武器も構えずに辺りを見渡しているのを見るに、周辺の魔物が全て勇者によって殺されていて戦う必要がないから、とりあえず先に行った勇者を探している...といったところだろう。
油断だらけだ。今なら一撃で...
「仕留める!!」
五人に見つからないように建物の裏を回り込み、背後を取る。移動の音を衝撃吸収で消しながら、正確に狙える射程圏内まで近づき...触手状の衝撃の剣を伸ばす!
「っ、敵襲!散開!」
死印付きではない男がこちらを見ることなく叫び、その声に反応して全員がその場から横に飛び退いた。そのため衝撃の剣は空を切る。
なぜ気づかれた?空気を切る音も衝撃吸収で消してしまっている。目視以外で避けれるとなれば、気配を読むくらいしか方法はないけれど...何かの魔術か?
「伏せろ!」
避けられた直後に伸ばした衝撃の剣を横に振り回して胴体を透過切断しようとしたが、またしても男の指示によって避けられてしまう。またノールックだったな...攻撃される未来の予知とかか?
「不意打ち失敗か...こいつはなかなか面倒そうだな」
どうせ居場所は割れているので、大人しく姿を現してやる。直接対面しても勝てるだろうしな。近づいた方が避ける暇を与えることもないしね。
「あの姿...!」
「ウルドラで現れたっていう魔物か!」
おっと、情報出回っているのか。けどそれでいい。魔物っていう認識になっているおかげで、まさか中身が人間であるとバレることは万に一つもないだろうからな。
「どうする?こいつには攻撃が効かないって話だけど...」
「なんとかしてあのバリアのようなものを突破するか、勇者の力に任せるか...やるなら後者だな」
「じゃあ交代交代でうまく引きつけながら勇者のいるところまで下がるよ!」
おいおい、そんな大きな声で作戦会議するとか正気か?通信系の魔術とか使えばいいのに...って、そうか。俺が魔物だと思ってるからあんなぺちゃくちゃ喋ってるのね。いやまぁ確かに大抵の魔物は人間の言語を理解できないけど、諜報部の奴らとか統治部の奴らはほとんど理解できるし、戦闘部の中でも精鋭の奴らは聞き取りは出来るから、どっちみち目の前で作戦会議すんのは得策じゃないんだけどな...
「さて、勇者のところに行っても無意味ではあるけど...一応潰してはおくか」
背中側から衝撃エネルギーを放出し、前方に莫大な推進力を得る。すれ違いざまに、全員に対してギリギリ避けることができる程度の攻撃を放っておく。そして五人を追い越したところで衝撃吸収によって急停止をかけ、五人の方へ振り向く。
「早すぎでしょ...!」
「あ、危ねぇ...ちょっとズレてたら死んでたぞ」
「どうやら、俺だけでなく五人とも標的だったようだな...」
良し、これで五人とも死印付きであるかのように思わせることができたな。死印付きの三人に限らず攻めて攻めて攻めまくって、最後の時まで誤解してもらおう。
「そして、どうやら俺らのことは逃してくれないらしい」
「それなら...ここで倒すまで!」
そう言いながら、たしかサザミと呼ばれていた死印無しの女が飛び出してきた。素手なのに随分と強気だな...と思っていたら、地面に黒い穴のようなものが開いてそこから槍のようなものが飛び出してきた。女はそれを掴み取り、常人にとっては目にも止まらぬ速度で槍を突き出してくる。
俺はハッキリとそれを視認していたが、避けることはしない。槍が衝撃の剣のドームに突き刺さると、全ての運動エネルギーが吸収されて威力が消し飛んだからだ。
「っ...効かないか!」
「だからどいつもこいつも先走るなっての!」
死印付きである魔術師の女が前に出てくる。さてどんな魔術を使ってくるのやら...と意識を集中させようとしたら、コソコソと隠れながら魔術師の女とは反対側から近づいてくる男がいるのを見つけた。わざと叫んで注意を引きつけ、その隙に近づこうって魂胆か...悪いがその手は通じないぜ。
「まずは一人...!」
回り込んでくる奴に注意を払いながら魔術師の女に向かって衝撃の剣を伸ばす。女は炎や氷などよくある魔術らしい魔術を放って攻撃してくるが、全て衝撃の剣で受け止めて衝撃エネルギーとして吸収する。そしてそのまま伸ばし続け、女が即席で貼った魔術の壁をすり抜けさせて女の腹に突き刺し...
「ぬぅっ!」
「チッ!」
大盾使いが盾をぶん投げて女に当て、無理矢理突き飛ばすことで衝撃の剣を回避させた。判断早いな...魔術の壁が貫かれることを予測してないと間に合わないはずなのに。
「っと、追撃はさせてくれねぇか!」
回り込んできた男が真横から攻撃を仕掛けてきた。その手には湾曲した短剣、いわゆるククリナイフのようなものが握られており、衝撃の剣のドームに斬りかかる。
「ならその武器貰うぜ!」
わざとドームにククリナイフがギリギリ通る程度の隙間を開け、そこにナイフを差し込ませる。そしてドームでガッチリと挟み込み、その直後に跳躍することで男の手からククリナイフを奪い取る。
「こんな危ないモンは捨てちゃおうねぇ〜」
衝撃解放でククリナイフにエネルギーを与え、遠くへと吹き飛ばす。
「この魔物...なかなか頭がキレるじゃねぇか」
「褒め言葉は感謝しておく。けどお前は邪魔だから寝とけ!」
空中から触手状の衝撃の剣を幾つも伸ばし、男を攻撃する。死印付きではないから、そこそこに体力を奪って戦闘不能になってもらおう。
「くっ...はっ!」
「こいつちょこまかと...」
やはりこの男は攻撃を予測する魔術を使っているようだ。そうでなければ、フェイントを織り交ぜた四方八方からの攻撃を完全に避け切ることなんて出来やしない。
「けど、時間の問題だ。このまま攻めれば...!」
他の奴らからの攻撃は全て衝撃吸収で防げる。死印付きを優先して殺したいところだが、攻撃を予測できるこいつがいる限りそれも困難だから、全員を一旦無視してこいつから先に仕留めることにする。攻撃だけに集中...!
「ほらほら避けろよ避けてみせろ!」
着地し、すぐさま男に近づいて衝撃の剣を振るう。その身一つで避け切っているのは流石だが、お前の後ろは瓦礫の山...
「もう避けれまい!」
衝撃の剣が男の胴体を貫き、生命力を奪い取る。死にはしないが、しばらくは動けないだろう。剣を引き抜くと、男は力無くその場に倒れ込む。
「さて、次はお前だ...魔術師!」
死印付きの女を次の標的に設定し、足裏から衝撃波を放出して急加速して近づく。
「お前がバカスカ魔術撃ってくるおかげでエネルギーは万全だぜ!」
今度は大盾使いに守られないよう、衝撃の剣を伸ばすのではなく直接刺しに行く。まずは一人目...
「っと、邪魔しに来たか」
サザミが間に割り込んできた。今度は両手に剣を持っている。穴から武器が出てくるの、トースリの使ってた魔術に似ているな...まぁ、取るに足らない存在だ。さっさと眠らせてしまおう。
「お前にも感謝してるぜ。あいつの魔術と一緒に衝撃エネルギーの糧になってくれたからな」
地面に衝撃エネルギーを流し込み地震を起こして転倒させ、その隙をついて斬ってやろう。
そう考えて行動に移そうとしたその時だった。サザミは両手の剣をこちらに向かって投擲してきたのだ。当然、衝撃の剣のドームで防がれるわけだが...
「なんだこれ...振動してる?」
剣は微細ながら振動していた。その振動は空気を振動させ、微かな音を響かせる。
そのことに気を取られていると、サザミはこちらに向かって走ってきており、跳び上がると突き刺した二本の剣にドロップキックをかましてきて...
「ア゛ァ...ッ!」
ドーム内に爆音が響いた。剣自体の振動とドロップキックの衝撃を併せて爆音を流し込みやがった...外の音は透過させて取り込み、内側の音は外に漏らさないように封じていたせいで、ドーム内で爆音が反響して鼓膜を叩いてくる。
「く、そが...!」
音の透過を止め、衝撃エネルギーとして全て吸収してしまう。周囲の音を聞き取れなくなるが仕方がない。やらなきゃ俺の耳がぶっ壊れる。
「まさか、弱点その1を見破られるなんてな...なかなか勘がいいじゃねぇか」
透過する設定になっている、光や音で攻撃されると俺は防ぐことができない。一撃目は絶対に避けれないし、それ以降守ろうとすればその分周囲の様子を探る手段が減っていく。ドーム状に展開する時の明確な弱点だな。
「けど、これでもう平気だ」
サザミが何か叫んでいるようだが、全く聞こえないので無視して透過切断する。これで死印無しの排除は終わった。あとは死印付きの三人を殺すだけ...ってあれ?一人消えてる...あの集落の生き残りだけ消えてるな。どさくさ紛れに逃げた...?それとも勇者を呼びに行ったのかな。
「しゃーねぇ。二人をさっさとやっちまうか」
サザミに邪魔されてできなかった、魔術師の女への接近を再開する。わざとゆっくりと歩いて...
「よし、来たな」
大盾使いが間に立ち塞がってきて、盾を構えてこちらの攻撃を受け止める姿勢を取る。そして後ろにいる魔術師の女が魔術をカーブさせながら放ち俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。
「それじゃあまず、一人目だ」
飛んでくる魔術を受け止めて衝撃エネルギーに変換しながら、触手状の衝撃の剣を一本真っ直ぐ伸ばす。
それを見た大盾使いは盾を握る力を強め、攻撃に備える...が、衝撃の剣は盾を透過し、そのまま男の腹に突き刺さる。盾をすり抜けたことに男は驚愕するが、すぐさま衝撃エネルギーが流し込まれてなすすべもなく爆散する。
「もう一人」
男が爆散して、絶望していた女の首筋に衝撃の剣を突き刺し、またしても爆散させる。
「これであと一人...っと、探しに行く手間が省けたな」
音の吸収を止めたら、背後から足音がした。後ろを振り向くと、そこには勇者ともう一人の標的。
「……絶対に、許さない!」
「ハッ、テメェの許しなんざいらねぇよ」
勇者との二戦目が、始まる。
勇者は多分カリヤくんが本気を出して殺しにいけば一応殺せる程度の強さではあると思います。
ですが、死印付きではないため本気の攻撃が出来ないので、次回はどんな戦いになるのやら...