はてさて、カリヤくんはどうなったのやら...
「……っ、ここ、は...」
目が覚める。
「死んで...ない?」
体を起こそうとして、失敗する。身体の動きが鈍いのもあるが、左腕が動かない...?
「……お、目が覚めたか」
「……何が、どうなって...」
目が覚めた俺の顔を、勇者が覗き込んできた。
そうして、ようやく思い出す。勇者の武器が衝撃エネルギーを流し込まれたことで爆散し、その破片が俺に突き刺さって意識を失った。衝撃ドームも爆発して俺の身体を揺さぶったし、正体も割れたしで完全に死んだと思っていたのだが...なぜ死んでいない?まさか、こいつが俺のことを治したとでも...?
「何が起こったか、よくわからないといった顔をしているね。生憎だが、こちらも混乱していて詳しいことはわからないんだ」
思わず口から漏れ出てしまった言葉を聞いて、勇者はそう言った。勇者も何が起こったか理解してないって、どういうこと...?ますます状況が理解できない。
「え、えっと...俺はどうしてこんな状況に?」
「まず、これから話す説明は私たちの認識の範囲内のことだということを念頭に置いてもらいたい。もしかしたら違うかもしれないし、バッチリの真実であるかもしれない。少なくとも動揺は避けられないだろうが...聞いてほしい」
勇者は一呼吸置いて、話し始めた。
「君は、魔物に操られていたんだ。スライムが君の頭の中に入り込み、私たちを襲うように仕組まれていたのさ」
「スライ、ム...っ⁉︎」
ミセラは...ミセラはどこだ⁉︎髪の中に隠れているミセラはどこ⁉︎
まさか...髪の中に隠れていたミセラが見つかって、それによって勘違いが起こって魔物に操られていただなんて話になっているのか...?
そうだ。もし人間の姿をしていたとしても、自分達のことを襲ってきたやつになんて治療を施すわけがない。それをするのは、治した奴が考えなしかつよっぽどのお人好しであるか、俺が完全に無害な人間であると確信を持てた場合でしかあり得ない。この場合、後者によって俺が人間であると証明されて、治療されたということか...!
「詳しく...教えてくれないか?」
「詳しくと言われてもだな...君のことを治そうとしていたら、スライムが出てきたんだ。君が気絶したことで、表に出ざるを得なかったのだろう」
……俺のことを調べていたら見つかったんじゃなくて、ミセラが自分から出てきた...?ダメだ。理解が追いつかない。
神様...マリスタの方じゃなくて、俺の神様。いるだろ?応答してくれ。
『この世界に来てからの通信は初めてじゃな』
そうだな。早速で悪いんだが、俺が倒れてからの一部始終を見ていたりしないか?コッソリ教えて欲しいんだが...
『了解した。手短にすまそう』
「っ゛...!」
頭の中に情報が流し込まれる。これが...起こった事実...!
「……な...人間...?」
勇者は、もはや事故のような形ではあったが仮谷幸希を倒した。だが、勇者目線では魔物を倒したという認識でしか無かったため、衝撃ドームが爆発した際の衝撃波を受け切り、目を開いた時の視界をしばらく現実のものとは思えなかった。なぜ、人間が?と頭の中は疑問符で埋め尽くされていた。
「おーい勇者くーん。倒したのかーい?」
勇者がここに来る前に回復魔術をかけていたために復活したサザミがこの場に近づいてきた。
「あ、ああ。倒したんだが...」
「歯切れが悪いね。何かあったのかい?...っと、これはこれは、一体どういう状況かな?」
「わからない。魔物だと思っていたアイツを斬りつけたら、爆発して中から人間が出てきたんだけど...本当に人間なのか?人間の姿を模した、魔物とか...?」
「まっ、その可能性が高いよねぇただの人間があんなこと出来るとは思えないし、あんな魔術があるって聞いたことないし。けど、この人ってさっき見た気がするんだけど」
「そうなんだよな...この人はこの惨劇の中でただ一人の生き残りだ。アルトの言う、死印付きではないから襲われなかったのだと思っていたけれど、魔王軍側の魔物だったから襲われなかったということだったのか...?」
勇者とサザミは仮谷幸希と戦闘前に出会っている。それも、混乱を招いている理由の一つだった。
「……とりあえずここは私がなんとかしておく。サザミはカムラを治してやってくれ」
「はいりょーかい」
サザミは地に倒れ伏しているカムラの元に向かう。
「ごめんねぇ私が幻覚でアルトに見えるように細工してたんだー」
サザミはそう言いながらカムラに回復魔術をかけ、生命力を回復させる。
「し、死んだらどうする...直前で攻撃をやめてくれなきゃ、俺死んでたからな...?」
「攻撃をやめた...?倒れていたのにかい?」
「一度攻撃をしようとして、奴は動きを止めたんだ。そのあと普通に斬られたけど、二度目の方には殺意はなかった...実際、こうして生きているしな」
「幻覚に気がついたということかな...面白いねぇ」
「面白がってる場合か。そんなことよりもだ。勇者、結局そいつはなんなんだ?」
「どこからどう見ても人間にしか見えない。こうして武器で触れてみても、何も起こらないから何か魔術がかけられているわけでも無さそうだ」
「魔物が変身しているだとか、幻覚を見せているわけではないというわけか。だとすれば、あの力の源はなんだ...?」
「俺含め全員状況が飲み込めていないのはわかるが、このまま放置ってわけにはいかないよな?こいつ、かなりの重症だぞ」
カムラが仮谷幸希を指差してそう言った。衝撃エネルギーを過剰に流し込まれた勇者の剣が内側から吹き飛び、その破片が仮谷幸希の全身の至る所に突き刺さっていた。血がどくどくと出ており、このまま放置すれば数分で死に至るだろう。
「もしもこいつが本当に人間で、ただ操られていただけなら治す必要がある。けれど、こいつが人間の形をした魔物ならばこのまま放置でいいと思う。どうする〜勇者くん」
「……私は、どちらだったとしてもひとまず治すでいいと思う」
「ほう、その心は?」
「今ここで、ハッキリとどちらか判別することはできない。だから、回復はするけどぐるぐる巻きにして拘束はさせてもらう。目が覚めた時に、暴れ出したなら敵。そうでないなら、魔物に利用されただけの被害者だ」
「お人好しだねぇ、そもそもこいつがアルトの言ってた死印付きである可能性もあるのに。今回は魔物に利用されてたから見逃されてただけで、ここで助けたとしても後で殺されるかもよ。そうなったら、骨折り損だ」
「それ、何か関係あるか?この世に死ぬべき人間なんて一人もいない。たとえマリスタ様が決めたことでも、全員救えるだけ救ってみせる。ギリギリまでは足掻いてみせるさ」
「……ほんと、お人好しだねぇ。こいつ、うちのハスクとメルメを殺した奴だよ。それでも救うのか?」
「ああ。ひとまず、敵か守るべき人なのかわからないうちは、な。サザミ、魔術で縄でも作ってくれ。出来る限り治した後に縛るぞ」
「はいはーい作っておくよ」
サザミは魔術を使って地面に穴を開け、そこから鞭のようなものを取り出した。これをロープ代わりに使おうというのだろう。
それを横目に見ながら、勇者は倒れている仮谷幸希に向かって手を伸ばし...
その時だった。
「なっ...魔物⁉︎」
仮谷幸希の髪の毛の中から、スライムが飛び出した。
「今の話を聞いて、私、理解したよ」
スライム...ミセラは人間には理解できない、魔物の言語で呟く。
「カリヤが魔物に操られていたと思わせられれば、怪我を治してもらえるし拘束もされない...だから!」
ミセラは仮谷幸希の額の上でぴょこぴょこと飛び跳ね、勇者に自分はここにいると主張する。
「私が姿を現せば!カリヤは助かる!」
「やはり魔物に取り憑かれていたか...!」
勇者は短剣を懐から取り出した。
「カリヤ、一緒にいれて楽しかった...」
勇者は短剣をミセラめがけて振り下ろす。万が一にも仮谷幸希に当たらないよう、ミセラは飛び跳ねて自ら振り下ろされる短剣に近づき...
「また、魔王城で会おうね」
ぷちゅんと、切断されて弾け飛び消滅した。
「……サザミ、拘束は無しだ。三人で協力して治すぞ!」
「はいりょーかい」
「俺は破片を取り除く。二人で傷を治してくれ」
こうして、勇者パーティー三人での仮谷幸希の治療が始まった...
「おい、大丈夫か...?」
情報を流し込まれて、頭を押さえていた俺のことを勇者が心配する。
「あ、ああ。少しくらっとしただけだ...」
ま、まさか...ミセラが俺を救うために、わざと姿を現しただなんて...信じたくはない事実だ。けれど、ミセラの覚悟を無駄にするわけにはいかない...こうやって生き残ったんだ。なんとかして魔王城まで帰り、まだ生き残っているミセラに会いに行かないとな...
「よっ...ダメだ起き上がれん。左腕が動かない...?」
起きあがろうとして、また失敗する。というか俺、今まで気づかなかったけど地べたに寝かせられてたんだな...しょうがないか、建物全て俺が地震で倒壊させてしまったんだし。
「すまない。出来る限りのことは尽くしたんだが、どうにも完全には治しきれなくてな...身体、起こすぞ」
「ああ、頼む」
勇者の力を借りて、上体を起こして地面に座り込む。
左腕が動かない障害が残った...か。少し面倒ではあるけれど、そこまで深刻な問題ではないな。衝撃の剣は手で持たなくても扱えるし。まぁ、せっかく作ってもらった短剣を両手持ち出来なくなったのは辛いけど...正直四肢欠損は何度も経験してきたせいで慣れてしまったんだよな。
「はぁ、どうしてこんなことに...」
この場は演技でなんとか凌ぐぞ。巻き込まれただけの不幸な一般人を装い、どさくさ紛れに逃げ出すのだ。
「そもそも君、どこまで覚えているんだい?乗っ取られてる間の記憶は?」
サザミが聞いてきた。返答は慎重にだ。俺はまだ状況を理解できていない...そういう設定でいくぞ。
「お、俺そもそも魔物に乗っ取られてたというのが本当なのかすら...最後に覚えてることなんて、飯食ってた時だぞ?」
「ほう、完全に記憶は無いと...私たちと戦っていた時の記憶もかな?」
「戦っていた...⁉︎俺が?貴方たちと...?」
「へぇ、本当に記憶が無いのか。それなら、少し前に私たちと出会ったことは覚えているかな」
「さぁ...これが初対面だと思いますが...」
「となると、あの時からもう乗っ取られていたというわけか」
「そもそも、貴方たちはどちら様で...?」
「おやおや、勇者くんのことすら知らないのか?こりゃまた珍しい...」
「俺たちのことを知らないのはそこまで不思議じゃないと思うぞ。存在は知っていても、顔まで伝わっているとは限らないわけだし」
「それもそうか。それなら、一応自己紹介でもしたほうがいいかな」
「はいこの人勇者くんね」
「あの...名前は?」
「私に名前はない。ただの勇者さ」
……戦闘中、一回も名前で呼ばれてないなとは思っていたけど、名前が無いのか...最初から勇者になるべくして育てられてきたとかそういう経歴持ちなのか?それとも、勇者になる時に名前を捨てないといけないとかなのかな...
「そ、そうか...それで貴方は?」
「私はユウヤミだ」
「ユウヤミさん...それじゃ貴方は...」
「おいサザミ。なぜ違う名前を教えたんだ?」
「本当に戦闘中の記憶が無いか確かめようと思ってね。私はサザミだ。訂正しよう」
ふぅ...こいつマジで怖いんだが?思わずサザミじゃないのかと聞き返すところだったわ。
「はぁ、全く...あ、俺はカムラだ」
カムラ...神様が送ってきた情報の中に出てきた名前だな。
「カムラさんね...ほんと、この度はご迷惑をおかけして誠に申し訳無く...」
「いいんだ。君だけでも助かったんだからね...あ、忘れないうちに頼んでおこう。カムラ、アルトを連れてきてくれ」
「わかった。探してくる」
そう言ってカムラはどこかに向かって走っていった。
「……ところで、君の名前はなんだい?」
あー...名前ぐらい教えても構わないか。
「カリヤです...あの、さっき名前が挙がったアルトって人も、勇者パーティーの一員なんですか?五人組だって聞いていたんですけど...」
地雷を踏んでも構わない。ここは演技を優先して、戦闘中の記憶がないことの信憑性を増しに行く。
「……アルトは勇者パーティーの一員ではない。成り行きで旅をしている仲間ではあるけどね」
「では、残り二人はどこに...?」
「ハスクとメルメは死んだよ。魔物に乗っ取られていた君が手を下したんだ」
「なっ...⁉︎」
おいおいコイツそれオブラートに包まずにストレートに言うとか正気か⁉︎こんな言い方じゃ言われた側は罪悪感たっぷりだろ。魔物に操られてたからその人自身には罪はないはずなのに、わざわざそんなふうに言うとかサザミは頭イカれてるのか...?
「俺が...二人を...?」
「おいサザミ。あまりそういうことは...」
「いいや、これは伝えておくべきだ。腹いせの意味もあるけれど、自分が何を背負ってしまったのか...それを知っておいた方が、これから生きて行く時の指標になるだろうから」
「サザミ...そう、かもな。この町で起こった戦争で、唯一生き残った君に伝えておく。魔物に操られていた君は、私たちの仲間を二人殺した。そして、おそらくだけどこの町の人間も大勢殺してしまったのだと思う」
「そ、そんな...」
「そのことを胸に刻んで、君は生きていってもらいたい。この惨劇を伝えられる者は少ない。生き残った当事者として、懸命に生きてほしい。そうすることが、死んでいった者たちへの手向けになるだろう」
……俺、これをどういう気持ちで聞けばいいの?そりゃここに住んでいた人たちにも人生があるってのはわかってるけども、こうすることが俺の仕事だ。手向けとか言われてもなぁ...そういう説教を説くなら、マリスタに対してやってくれない?死印付き云々の話を進めてるの、マリスタなんだからさぁ。
「……わかった。俺はなんとしてでも生き残る...とはいえ、償いをしたい。何か俺にできることはないか?」
「そんなのないよ。何かしたいっていうなら、私たちが魔王を討って魔物の支配から逃れて安全な世の中になってからにするべきだ」
「サザミの言う通りだ。その腕のこともある。しばらくはリハビリに徹しながら、何をすべきか考えるといい。アルトが戻ってきたら、安全な町まで護衛するぞ」
「へーい」
うわーこれ町に着くまで逃げれないじゃん...まぁ仕方ないか。カムラがアルトを連れて戻ってくるまで待つしかない...
「おや?戻ってきたようだねぇ」
「あんなに急いで走らなくていいのにな...」
……なんであんなに鬼気迫った表情でこっち走ってんだ?アルトが完全に殺気付いてる...まさか!
「勇者!そいつ切れ!」
「え?」
「魔物に与する人間...魔王軍に唯一混じっている人間!今代の魔王代理だ!」
ちょっ...あの集落でそんな情報まで手に入れてたの⁉︎どんだけ情報漏らしてんだよ魔物の奴ら...!
「……すまない、言っている意味がよくわからないのだが...」
よ、良し!勇者の理解が追いついてない!ってことはまだ乗り切れるチャンスはある...!
「あー、アルトだったか?急に魔王だなんだ言われてよくわからないんだが...というか、代理ってなに?」
「まだ共有できてなかったんだが、今代の魔王は生まれて来なかったんだ。その代わりとして、一人の人間が召喚されて魔王の代理を務めているらしい...それがお前だ!」
「どうしたんだアルトくん。この人は魔物に脳を乗っ取られて操られていただけ...それともなにかな?操られていたというのは演技で、あの力はこいつ自身が持っていた力だとでも?」
サザミも半信半疑か。これなら...!
「そいつの名前、カリヤって言うんだろ!カムラから聞いた時は驚いた...」
「それが何か?」
「魔王代理はカリヤと言うらしい!魔王軍全員にそう名乗っていたそうだ!」
おいおい嘘だろ名前教えたのが裏目に出るとかそんなのアリか⁉︎ってか、カリヤってみんなに呼ばせようとしてたのがここにきて俺に牙を剥いてくるとか...ふざけんな!
「へぇ...そいつは、どういうことかな?」
やばい、サザミが俺のことを疑い始めてる...どうする?どうすればこの場を切り抜けられる...?
……そうだ。こうやって俺が危険な存在だと誰かが言ってくる展開、前にも経験があるじゃないか。その時もあの時も、その疑いは真実であった。が、その時と違うのは俺自身に自覚があるかどうか...そして、あの時の俺はこうやって対応した...!
「お、おい...散々訳のわからないこと言ってくれてるが、それはどこ情報なんだ?偉く魔王軍について詳しいみたいだが...」
「魔物から得た情報だ。詳細は省くが、魔物と利害の一致で共同生活をしていたことがあってな。その時に聞いた」
「……なんで魔物から聞いた情報をすんなり信じてるんだ?俺からしたらそこから不思議なんだが...」
「なんだと?」
「その情報、嘘なんじゃねぇの?魔王が生まれてないだとか、人間が魔王の代わりをしてるとか、そんなこと言われて信じたのか?わけわかんねぇじゃん」
俺が取るべき行動は一つ。アルトの話から信憑性を悉く削ぎ落とす!嘘を信じ込まされただとか、魔物に洗脳されてるとかなんとか言ってアルトの話を嘘八百のデタラメだと周りに信じ込ませる!
聖杖世界でアライブが俺のことを殺そうとした時、アライブは魔族に洗脳されていると俺は思った。本当は洗脳なんて解けていて自分の意思で魔王を討ち倒そうとしていたのだけれど、魔王が宿っている自覚が無い俺は洗脳を受けていると断ずるしかなかった。状況はこの時とほぼ同じ。だから、同じようにアルトの話を遮ってしまえばいい!
「たしかに、到底信じられる話ではないね」
勇者はこっち側か。そりゃ俺の言うことの方がまだ現実味があるからな。このままの流れで話を制する...!
「嘘じゃない!この話は真実だ!」
「あーもしかしたら、アルトも俺と同じように魔物に取り憑かれてるんじゃないのか?それとも洗脳されてるとか...」
「……こうして人の中に潜り込む魔物がいることがわかったんだ。可能性がないわけじゃないな」
「おい待てよ...なぜ俺が疑われる流れになってんだ...?」
そりゃそうだぜ。突然トンデモ理論を繰り出して人のことを疑ってきたんだから、たとえそれが真実だったとしても粗を指摘されて逆に疑われるなんて当然起こり得ることだ。事前に魔王代理の話をしておくとかして話の土台を作っていなければ、到底信じられるものではない。
「……カムラはどうなんだ?そいつの言うことを信じるのか?」
内心ほくそ笑みながらカムラへと話を振る。今のところ勇者は俺寄りで、サザミはややアルト寄りだ。ここでカムラを味方につけることができれば...
「うーん...俺には、アルトが嘘を言ってるようにも思えないんだよなぁ...」
「嘘だとそいつが思ってなければ、周りも嘘だと気付くことはできない。嘘に聞こえないなら、アルトがそれが真実であると思い込まされてるってだけの話だろ」
「……流石に、喋り過ぎかな」
っ、サザミ...!
「色々喋ってるけど、私には嘘がバレないように誤魔化そうとしているようにしか見えないねぇ」
「……あらぬ疑いをかけられているんだ。そして、自分目線じゃあっちの言ってることが嘘だとわかってるんだから、こう主張するのも当然だろ?」
「なんか、妙に信憑性のある話をしてくるのが逆に怪しいんだよね。普通の人にそんなことできるかな?あらかじめ用意していたセリフだったりして...」
そんなわけあるか。似たような経験はしてたけど全部即興だよそんなこと疑ってくんな!
「……わけわかんねぇ...んで?もし俺が魔王代理?とかだったらどうすんのよ。殺すのか?巻き込まれただけの一般人を?」
『ハロハロ〜』
「な...なっ⁉︎」
マリスタ...⁉︎なんで今...!
『いやー面白いねあんた。死印付きなのがもったいない』
「ま、マリスタ様...⁉︎」
『あーそいつ魔王代理だよ。殺せるもんなら殺してみなねー』
「こ...こんにゃろ...!」
上位存在が現れて話進めるとかやめてくれよチクショウ!
「はは...しょうがねぇなァもう!!」
各々武器を構えてこちらを睨みつけている勇者パーティーの姿を見て、俺は叫ぶしかなかった。
多分マリスタが出て来なかったら、カリヤくんは言いくるめに成功してことなきを得てたと思うんですよ。
前にマリスタの好感度を下げてしまったのが敗因ですね...