神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8286字。

スターバス編終了です。


衝撃探知と戦線離脱

「はは...しょうがねぇなァもう!!」

 

俺はそう言いながら地面をダンッ!と踏みつけた。左腕が使えず手を叩くことができないため、衝撃の剣起動のための衝撃を足で生み出したのだ。そして即座に地面の中を切り付けて衝撃エネルギーを貯めていく。

 

「まずは...!」

 

そのまま地下から衝撃の剣を伸ばし、アルトを狙う。まだ貯まっているエネルギーは少ないけれど、少量でも心臓に突き刺すことができれば殺すことはできるからな。

 

「アルト!下だ避けろ!」

 

カムラがアルトに向かって叫ぶ。咄嗟に反応したアルトがその場を飛び退いてしまったため、地面から突き出した衝撃の剣を回避されてしまう。

 

「やっぱカムラ面倒だな...!」

 

「あのオレンジ色...!魔物の力じゃなかったのか...!」

 

「面白い!あの妙な力は魔王代理としての魔法だったわけか!人間にして魔法を使う...戦えて嬉しいよ!」

 

そう言いながらサザミがこちらに突っ込んできた。

 

「クソッ、この戦闘狂が...!」

 

足裏から衝撃波を放ち、その反作用で後方へと吹き飛びサザミから距離を取る。

 

「あの球体に入らなくていいのかい?」

 

「いらねぇよんなもん!」

 

そんなことをする衝撃エネルギーは無いが、そもそももう正体がバレてしまったから衝撃ドームで身を包む必要はない。少しのエネルギーも無駄にせず、有効活用しなければ...!

 

「俺とお前らとじゃ頭脳(ここ)が違う!片腕が使えなくたってテメェらなんざ余裕のよっちゃんよ!」

 

サザミが俺の着地の隙を狙うために近づこうとしてきたので、衝撃の剣を前に伸ばして壁を作り接近を妨害する。

 

俺の最大の武器は衝撃の剣ではなく、空を制御しながら状況判断も可能なこの頭脳だ。そこを履き違えるな。三つの世界を渡り歩いて得た知識と経験があれば、人の形をしていない魔物としか戦っていないこいつらに遅れをとるはずがないのだ。

 

まず、俺を攻撃しようとしているのは勇者とサザミだけ。アルトは自分が死印付きだと知っているから戦いには参加していない。そしてカムラは俺が武器を遥か彼方に吹き飛ばしたため攻撃には参加せず、攻撃を予知する力を使って二人をサポートすることに徹している。

 

よって、勇者とサザミの二人を倒してしまえば戦える奴は消える。カムラが二人を治そうとするだろうけど、それよりも先にアルトを殺す方が早いだろう。

 

カムラを先に潰すのは愚策だ。二人への攻撃はしやすくなるだろうけど、どちらかを対処している間にもう片方が治しに行ってしまうからな。カムラの力が働いている状態で一人倒し、カムラにも治療されないように気をつけながらもう一人も昏倒させる。これが、この場で全てを終わらせるならするべきことだ。

 

「さてさて眠っててもらうぜサザミ!」

 

俺は着地すると、触手のように衝撃の剣を伸ばしてサザミに攻撃を仕掛ける。不規則な動きで四方からサザミを衝撃の剣が襲う...が、おそらくテレパスのような魔術でカムラから指示をもらっているのだろう。サザミは的確に最小限の動きで衝撃の剣を避けていく。

 

「おねんねすんのはお前だっ!」

 

サザミが衝撃の剣を掻い潜りながらこちらに近づいてきた。わざわざこっちに向かってくるなんて...罠にかけろと言ってるようなもんだよな?

 

「はい詰み」

 

「ッ!」

 

地面から衝撃の剣で作った壁を生やし、サザミの行き場を塞ぐ。そして背後から迫り来る衝撃の剣がサザミの身体を投下切断して...

 

「チッ、上も塞いでおくべきだったか」

 

サザミは跳躍すると、空気を蹴って衝撃の剣の壁を乗り越え、こちらに迫ってくる。

 

「なら...!」

 

「なんっ⁉︎」

 

突然地面が爆発したように土砂が撒き散らされ、そこにサザミが突っ込む。地面の中に衝撃の剣を潜り込ませて衝撃解放を行ったのだ。直接サザミを狙った攻撃ではないためカムラの伝達が遅れたようだな。

 

「ほい拘束完了」

 

サザミの動きが鈍ったので、巻き上げられた土砂ごと衝撃の剣で包み込む。サザミは衝撃の剣を貫通して攻撃することはできたけど、衝撃の剣を破壊することはできていない。こうやって包んでしまえば脱出は不可能だ。

 

「切断して...と」

 

衝撃の剣の中に閉じ込めたサザミが妙な動きをし始める前に透過切断をして意識を奪う。

 

「あれ?勇者は...っと、そこか」

 

いつのまにか勇者を見失っていた。勇者なんて最注意対象なんだから見失うわけがないので、おそらく認識阻害系の魔術を使っていたのだろう。しかし、地を歩いて移動しているならば俺は探知できる。地面の中に潜り込ませた衝撃の剣が地を踏み締めた際の衝撃を吸収するため、探知機の役割を成しているからだ。

 

それによると、どうやら勇者は俺を殺すよりも先にサザミの救出を優先しようとしたらしい。サザミを閉じ込めた球体のちょうど俺の位置から反対側に勇者は移動しており、衝撃の剣に向けて剣を突き刺そうとしているようだ。

 

「貫かれる前に...弾く!」

 

少し前の失敗から学んでいるので、勇者が剣を振り下ろして衝撃ドームに触れた瞬間に衝撃解放を行なって勇者の剣を弾き飛ばす。

 

「またさっきみたいなことが起こって、中のサザミに死なれちゃ困るんでな...!」

 

俺はそう呟きながら衝撃ドームの上に登り、勇者の上を取る。

 

「……お前を倒した方が早いというわけか」

 

「そういうこった。そんじゃ...こっちから行くぜ!」

 

衝撃ドームから飛び降りる。それに合わせて勇者は剣を構え、俺に斬りかかるが...

 

「無駄だ!」

 

懐から短剣を取り出し、勇者の剣に押し当てる。そうして斬撃を回避し、すぐさま衝撃の剣を手元から飛ばして勇者の剣に突き刺す。異能無効化の力が発動して衝撃の膜が破れるが、それによって衝撃波が勇者の剣に流れ込んで真上へと跳ね上げる。

 

「隙あり...!」

 

剣が跳ね上げられたことで勇者の腕も同様に上がり万歳状態だ。今のうちに肉薄し、衝撃の剣で斬りかかる。

 

「っ、消えた⁉︎」

 

横一文字に衝撃の剣を振り抜いたが、勇者の身体に当たる直前に姿が消えた。

 

そして、トンッと着地をする音が聞こえた。衝撃ドームの中からだ。

 

「なっ...転移魔術だと...!」

 

そんなんされちゃ閉じ込めても意味ないじゃんか...

 

「……ダメ元で今のうちに...!」

 

二人が中にいる間にアルトを攻撃しにいく。アルトはちゃっかり逃げ出していたが、広範囲に張り巡らせた衝撃の剣の探知からは逃げられない。既に場所は捕捉している...!

 

「最短距離で...!」

 

跳躍と同時に足裏に衝撃波を叩き込むことで高く飛び上がり、建物の瓦礫を飛び越える。

 

「そこにいんのはわかってるぜアルト!」

 

地面から衝撃の剣を出して着地の衝撃を吸収し、そのまま全力疾走して瓦礫の影に隠れていたアルトに近づく。この距離ならもう直接剣で攻撃した方が早い...!

 

「ぐっ...!」

 

短剣がアルトの腕を引き裂く。

 

「さてもういっちょ...!」

 

短剣を逆手に持ち替え、アルトの喉元めがけて突き出す。

 

「させないよ」

 

キンッ!と金属同士がぶつかる音が聞こえたかと思えば、短剣が真上に弾かれていた。気がつけば勇者がアルトの近く立っており、手に持っている武器で短剣を下から弾き飛ばしたのだろうとわかった。

 

「なるほど...そういう転移か」

 

勇者の使っている転移魔術は、傷ついた仲間の近くに転移するというもの。だから衝撃ドームの中に入れたし、衝撃ドームを壊すことなくアルトの元まで移動できたのだろう。

 

「けど、仲間と一緒には飛べないようだな」

 

サザミはまだ衝撃ドームの中にいた。転移出来るのは自分だけなのだろう。よくよく考えてみると、その片鱗は前からあった。おそらく、スターバスの中にはこの転移魔術を使って入ったのだろう。ギリギリ生きている人のもとに転移することで仲間よりも先にスターバスに入った。六人全員同時に入らなかったのは、転移が一人だけでしか出来なかったことを意味している。

 

「……どうした?攻撃してこいよ。そいつを守ることがそんなに大事か?」

 

弾き飛ばされた短剣が落ちてきて、それをキャッチする...その間に攻撃してくることもできたはずだ。しかし、勇者は攻めて来なかった。アルトの傷を治すのを優先したからだ。

 

「治療が優先たぁ善人だねぇ...だが、そいつが死ぬことは天命で定まっている。死んでもらわなくちゃ困るんだ」

 

「死ななくちゃならない人なんて誰一人いない。たとえマリスタ様の望みだとしても、守れる人は守るのが私の信条だ」

 

「なら俺のことも殺そうとすんなよ。お前、矛盾してるぜ?」

 

一歩前へと踏み出し、短剣を勇者に向けて突き出す。それを勇者は剣で受け止めようとするが...地面から伸びてきた衝撃の剣によって全身を透過切断される。

 

「ここまで離れりゃカムラの予知は届かねぇようだな!」

 

前方に向かって衝撃波を放ち、勇者を吹き飛ばしながら叫ぶ。そしてまたもや逃げ出したアルトの位置を地面に張り巡らせた衝撃の剣で探知して追いかける。探知ついでにそのまま攻撃できりゃいいんだが、あまりにも広範囲に張り巡らせているせいで遠くからだと動かせないのだ。せいぜい膜を消滅させて衝撃解放をさせる程度のことしかできず、威力も弱いため殺すことはできない。だが、近づけば一瞬で殺せる...!

 

「瓦礫の中に隠れたって無駄だ!」

 

そこにいるのはわかっているので、もう身動きが取れないように衝撃の剣で瓦礫ごと透過切断をする。そして衝撃解放で瓦礫を吹き飛ばし、直接剣を刺しに...

 

「なっ...誰だお前...!」

 

そこにいたのは、アルトではなかった。しかし、死印付きではあった。透過切断によってぐったりしていてすぐにでも死ぬだろう。いや、そんなことはどうでもいい。コイツは誰なんだ...?

 

「……まさか...!」

 

死印名簿を開く。急いでページを捲り、スターバスの住民のページを見つけ、確認して行く。

 

「おいおい...嘘だろ...!」

 

まだ、生き残りがいた。

 

それもそうだ。俺が勇者を発見したのは、死印名簿で9割型の死亡を確認した時。まだ全員の死亡の確認が取れていないタイミングだった。まだ死んでない奴らは瓦礫の下に埋もれている奴らで、ほっといてもいずれ死ぬだろうと思っていたが、当然倒壊に巻き込まれずにまだ逃げていた奴らもいたことだろう。

 

そういう奴らが、勇者到着とそれに伴う魔物の虐殺によってまだ生き残ってしまっているのだ。

 

完全に想定外だ。ざっと確認したが、生き残っているのは六人ほど。勇者たちと戦いながら、アルトを含めた七人を殺し切ることは出来るか...?

 

「クソッ時間がない...!」

 

スターバス滅亡作戦を始めてからだいぶ時間が経ってしまっている。魔物の侵略によって一度この場の空模様は夕方を経て夜になり、勇者の到着と虐殺によってまた昼に戻っている。幻覚系の魔法を使える魔物に妨害はしてもらっているが、流石に次の町へと移動を始めた人類軍も異変に気づき、戻ってきている最中だろう。全員を殺して回る時間は無い。

 

「こうなったらアルトだけでも...!」

 

勇者に着いて回っているアルトは後で殺すことが難しい。けれどただのスターバスの住民だけならそこまで警備も強くないはず。暗殺に長けた魔物に行かせて、バレずに殺すことは容易いだろう。だからこの場ではアルトを優先して探し、殺す...!

 

「……くっ!流石に遠いか...!」

 

サザミを包んでいた衝撃ドームがそろそろ限界だ。距離が遠過ぎて制御を保っていられない。制御できず暴発して中にいるサザミが死ぬなんてことになるのが一番困るので、大人しく解放してやる。というか一旦俺のところに衝撃の剣を全て集めて...と。

 

「もう一度地震を...起こす!」

 

衝撃の剣を地面に突き刺し、衝撃エネルギーを流し込む。先ほどまで地面の中に衝撃の剣を張り巡らせていたため地面はさらに脆くなっており、地盤の更なる崩壊を引き起こす。奇跡的に耐えていた建造物も崩れ、瓦礫の山もさらに崩れて圧縮される。

 

建物に埋もれていた奴らはこれで死ぬだろう。そして、建物が完全に崩れたことで遮蔽物が消えた。見通しが良くなり、アルトを探しやすくなった。だが、その代わりに俺のことを勇者たちが見つけやすくもなってしまう。

 

「っ!」

 

自分で自分を治した勇者がとんでもない速度でこちらに迫ってきた。遮蔽物が消えたため、直線的に最高速度で来ることができるようになってしまっている。俺ですらギリギリ捉えられるかどうかという速度を出して勇者は接近し、その速度のまま剣を振ってきた。

 

俺はその剣を腕で受け止めた。正確には、服の繊維に編み込まれている衝撃の剣だがな。魔術発動中なため異能無効化が付与されていない剣が触れたことにより、勇者の速度や剣の威力などわ含めた全ての運動エネルギーが衝撃の剣に吸収される。

 

「フンッ!」

 

動きが止まった勇者の腹に蹴りを叩き込み、即座に武器に衝撃エネルギーを流し込んで破壊する。

 

「今!...クソッもう来やがったか!」

 

衝撃ドームの解放からさして時間はかかっていないはずなのに、サザミがもうここまで辿り着いていた。サザミは斧のような武器を構えながら蹴り飛ばされた勇者の近くに立ち、その場で大きく斧を振る。

 

「どうせ見えない斬撃...!」

 

前方に衝撃の剣を壁状に展開すると、その直後に壁に衝撃が叩き込まれる。見えない空気の斬撃が飛んできて、それが壁にぶつかったのだろう。

 

「ハハッ予想どお...り...」

 

壁を取っ払うと、サザミがこちらに手を向けていた。瞬きした次の瞬間、勇者とサザミの姿がアルトの姿に変わる。

 

「また幻覚かよ...芸がねぇな!」

 

二人の頭の上には死印が無い。本物のアルトとはそれで見分けがつく。アルトの姿を幻視させられても、何の支障も無い!

 

「そんで二人と戦ってる暇も無い!」

 

衝撃解放を使って後ろに跳躍し、二人から離れる。今はアルトを殺すのが最優先...タイムリミットが迫っているのに二人を相手してる時間なんてない!

 

「あっ、お前カムラだなお前は寝とけ!」

 

少し走ったところで死印を持たないアルトと鉢合わせした。カムラ確定なので透過切断をして気絶させておく。

 

「さてさて本物は...いた!」

 

瓦礫の山の中からなんとか這い出ようとしているアルトを見つけた。勇者に妨害される前に衝撃の銃を作り出し、アルトに向けて発射する。

 

「ヒット&デストローイ...えっ、呆気なくね?」

 

アルトは内側から弾け飛んで死んだ。ちょっと違和感が...後ろから追いついてきた勇者とサザミを衝撃の剣で牽制しつつ身を守りながら、俺は死印名簿を開いて確認する。

 

「……アルトじゃない...?まさか、目に入った人全員アルトに見えるようにさせられてる...?」

 

死印名簿によると、アルトはまだ死んでいないらしい。となると、さっき殺したのはスターバスの住民だということになる。

 

そう、死印を持たないものは判別がつくが、同じ死印付きであるスターバスの住民とアルトは見分けがつかないのだ。このまま手当たり次第に目についたアルトを殺して回るのもいいが、それではやはり時間が...

 

……とその時、東の方から音が響いてきた。いつのまにか東の門の辺りまで移動していたようで、その方面から音がし出したということは...

 

「クソッ、もう到着したか...!」

 

人類軍が戻ってきてしまった。全員死印無しだから俺には攻撃できない。物量で押されれば俺でもどうなることやら...流石に時間切れだ。

 

「こうなりゃ...」

 

逃げる時間を稼ぐためにも、そして突然俺の正体をバラしやがったマリスタに報復の意味も込めて、アレをすることにしよう。

 

まずはサザミに向けて衝撃の剣を振る。それをサザミは後ろに飛んで回避するが、その瞬間に剣の先端から衝撃波を放ってサザミを後ろに吹き飛ばす。

 

そしてすぐさま勇者に向かって走り出す。衝撃の剣を振り回し、勇者に異能無効化を付与された剣で防御させながら近づき...

 

ズブリ...と、手に持っていた短剣が勇者の腹に突き刺さった。

 

「んなっ...勇者くん⁉︎」

 

サザミが慌てて駆け寄ってきたため、俺は短剣を引き抜いて下がる。

 

「じゃあな。せいぜい治すこった」

 

「よ、よくも勇者くんを...!耐えて!今治すから...!」

 

「わ、私は、だい、じょうぶ...自分で、治せ、る...から」

 

「でも...!」

 

「復讐したいならアルトを連れて魔王城まで来るんだな。そうしたら、魔王城の中の魔物やトラップは無しにしてやる」

 

「この...ここで死ね!」

 

サザミが飛び出してきて、槍で突いてこようとする。それを見ながら俺は...

 

「シャリヤ」

 

ただその名前を呼び、この世界から消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ...助かったぜ、シャリヤ」

 

妄想世界に引き摺り込まれた俺は、目の前で浮いていたシャリヤに感謝を伝える。

 

「よく俺が居るってわかったな?」

 

「……ミセラなら、俺を助けるためにシャリヤを呼んできてくれてると思ってたからな。多分それで来たんだろ?」

 

「その通りだ。ミセラのことよく分かってるな」

 

「ああ。よく分かってるし、相互に伝達がちゃんとされてるから俺に着いて来てくれていたミセラが消えたからといって何もかも無くなったわけじゃないのも分かってる。けど、ちょっと心にくる...」

 

「……魔王城でミセラが待ってる」

 

「精一杯の感謝を伝えなきゃな...そのためにも、魔王城まで移動を頼む」

 

「了解だ」

 

シャリヤはそう言うと、俺たちが乗っている地面を四角くくり抜いて魔王城まで飛ばした。

 

「……相変わらずすごい方法だな...もっと簡単にひょひょいと転移出来たりしないのか?」

 

「無理だな。転移をするとなると、一瞬消えるだろ?妄想を失敗すればそのまま戻れなくなっちまうからな。実際、それで消えていった俺もいたらしいし...」

 

「あはは...そいつは恐ろしい」

 

「って、そんなことよりもよ、勇者刺して大丈夫なのか?死印付きじゃないだろ?」

 

「ん?そんなん別にいいでしょ。一応加減はしたし、どうせ自分で治せるだろうからな」

 

「けど、万が一死なれでもしたらこっちが困るだろ?カリヤの使命も果たせなくなる」

 

「本気でヤバかったらマリスタが治しに来るだろ。ちょっとした仕返しだ」

 

「仕返し?あいつが何かしたのか?」

 

「なんとか言いくるめて逃げ切れそうだったのに、あいつ急に出てきて俺のことを魔王代理だってバラしてきたんだぜ?勇者が刺されて死にかけるとか、それくらいのハプニングが起こって慌ててくれなきゃ割に合わん」

 

「ははっ、そうだな。だが、これでマリスタはいよいよ怒っただろうね。これからの協力は期待できなさそうだ」

 

「まぁ今までちゃんとサポートしてもらったことないし、別に構わんだろ」

 

「それは言えてるな...っと、そろそろ着地だ。衝撃に備え...って、必要なかったな」

 

ドンッ!!と地面に激突するが、衝撃の剣で吸収するのでいつものようにノーダメージだ。

 

「よし、元の世界に戻すぜ。俺はこのままこっちにいるからそういうことで」

 

「ああ、ありがとうなシャリヤ。優秀な仲間がいてくれて嬉しいぜ」

 

シャリヤに笑いかけたところで視界が歪む。

 

空間が置換され、元の法術世界へ戻ってくる。

 

次の瞬間だった。

 

「わぷっ⁉︎」

 

前から何かが飛びかかってきて突き飛ばされた。

 

「おぼぼぼ...」

 

水のようなものに包み込まれる。水って、まさか...

 

「カリヤぁ〜おかえり〜〜!!」

 

やっぱミセラか!

 

「良かった生きてて...!もう無理かと思ってたよぉ〜!」

 

うん、テンプレみたいになってるけど今死にそうだからね⁉︎

 

「……ってゴメン!」

 

バッ!とミセラが俺から離れる。

 

「反応ないなぁと思ってたらめり込んじゃってた...大丈夫?」

 

「い...一応な...」

 

ミセラに飛びつかれたせいでびしょ濡れになってしまった服や髪がみるみるうちに乾燥していく。この液体は全てミセラだから、染み込んでいった個体が自力で抜け出して戻っていっているのだろう。

 

「……その腕、どうしたの?」

 

「これか?まぁちょっとした後遺症だ。これだけで済んだんだから、ミセラには感謝してるよ。本当にありがとう」

 

ミセラの頭に手をやり、ぽんぽんと軽く叩きながら感謝を伝える。重い雰囲気にされても困るからな。ここは生きて再会出来たことを喜ぼうじゃないか。

 

「……うん。カリヤも、帰ってきてくれてありがとうね」

 

「おうともよ。俺の終わりはここじゃないからな。最後のその時まで、俺は走り続ける。ミセラも一緒に着いてきてくれると...嬉しいんだけど、どうかな?」

 

「うん!またカリヤのサポートがんばるね!」

 

こうして、短いようで長かったスターバス滅亡作戦が終わりを迎えた。




いやー、まさかスターバス編が6話もかかるとは思ってませんでしたわ...
気づけば第二章も22話です。
第一章が26話でしたが、この感じだと同じくらいか少し短くなるかもですね。
まだもう少し衝撃の剣の章は続くので、このままお楽しみください。

……ミセラがいつのまにか正ヒロインレベルに昇格していて自分でもびっくり。
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