サブタイ通り、終盤ですが特訓回です。
「……お、あの地震でほぼほぼ全滅してたんだな。そいつは好都合」
俺は魔王の間にて死印名簿を開いていた。スターバスの生き残りがどれだけいるのかなーと思って確認していたのだが、どうやら全員死んでいたようだ。最後に幻覚によってアルトに見えていた奴を殺したが、あいつが最後の生き残りだったようだな。それ以外は全員地震で死んだらしい。
「それなら、あとはアルトだけか...」
所在不明の死印付きはもういない。そして、残る死印付きは未だ魔王軍が支配している集落の中で生活している奴らなので、いつでも殺すことが可能。となると、最優先で対処すべきなのはアルトということになるわけだ。
「うーん...絶対勇者が護衛をしてるから、暗殺は無理だろうなぁ...ミセラはどう思う?」
「やっぱ無理じゃない?カリヤが正体バレてなかったいけたかもだけど...」
椅子に座っている俺の周りをうろちょろしていたミセラがそう答える。
「そうそれ。正体バレたのが辛すぎる...多分俺の手配書とかもう出回ってるだろうから、暗殺どころか集落への潜入捜査すら出来なくなっちゃったんだよな」
ほんと、マリスタの奴余計なことしてくれやがって...いやでも、どっちみちだったか?あのままだと多分、軍の奴らに引き渡して安全を確保する流れになっていただろう。それまでうまく誤魔化せていたとしても、俺の顔を覚えている奴と会ったらそれで終わりだ。そう考えると、人類軍が到着する前にひと暴れできたから良かったのか...?
「まぁどっちでもいいや過ぎたことだし。今は情報収集に徹しないと...」
今度は死印名簿の魔物の欄を確認する。
「……うん、相当数死んじまってるな。勇者早く来すぎだって...」
まだ全員殺し切る前だったのもあって、準備無しに勇者の襲撃を受けることになってしまったからほとんどの魔物が殺されてしまった。一瞬で大量の命が刈り取られていった...魔物目線だと完全に死神だよな。
「この数だと、魔王城前で襲撃させても体力を消耗させることすらできないだろうなぁ...」
死印付きの総数は十五分の一ほどにまで減ってしまった。あの短時間で魔物を殺せる勇者に、生き残った魔物たちをけしかけたところで何も成果を得られないだろう。
「はてさて、この先どうしたものか...」
死印名簿を消し、椅子から立ち上がる。
「どこか行くの?」
「んいや、気分転換に立ち上がっただけ。どうにかしてアルトを殺さなきゃならんのだけど、作戦が思いつかないんだよな...」
「カリヤなら真っ正面から戦っても大丈夫じゃない?見てた感じ、余裕そうな気がしたけど」
「そりゃまぁ?俺なら普通に戦っても出来るだろうよ。けどよ、あまり時間をかけたくないんだよな」
「どういうこと?」
「あー、たしかちょろっと最初に言ったけど詳しくは言ってなかったっけか...俺の中に、こことは違う別の世界の魔王が寄生してんだよ。ほら、魔王再臨の時に俺の中から魔の気配を感じなかったか?」
「あれ?私、諜報に出てたからあの時居なかったって言わなかったっけ?」
「そういやそうだったな。じゃあマジで初耳なわけだ...とまぁ、今言ったように俺の中には別世界の魔王が寄生している。こいつがなかなか厄介な奴で、俺の身体を乗っ取ろうとしてくるんだ。今は魔王が疲弊しているから問題ないけど、いつ復活するかはわからない。だから、早く決着つけたいんだよ」
「……その魔王?がどんな感じなのかはわからないけど、そんなに悪い奴なの?」
「あそっか。これ言っても伝わらないのか...」
いかに残虐非道な奴だったかを伝えようとしても、それは人間目線での話だ。魔物であるミセラからしたら、それは当然の話で賞賛に値するかもしれないな。
「うーむ、どう言ったものか...まぁとりあえず、俺が乗っ取られると多分何もかもめちゃくちゃにされるぞ。この世界の魔物を従えるとかしないだろうし、第三勢力として人類も魔物も支配しようとすんじゃないかな」
「怖ぁ...」
「そんなわけで、あんまりのんびりしてられないんだよな。出来れば今すぐに死印付きは全員殺して、勇者たちとの最終決戦の中でアルトを殺してそのまま俺も上手い感じに殺されて終わりにしたい」
「そっかぁ。じゃあ、カリヤとのお別れも近いんだ...」
「そうなるな。けどよミセラ。ミセラとは最後まで一緒だぜ」
「うん!カリヤと一緒に勇者と戦うんだー!」
「そうだな」
「それでねそれでね!私そのために頑張ってみたことが一つあってね、見てこれ!」
ミセラは俺から少し離れたところに立つと、そこでブルブルと体を震わせた。身体を構成しているパーツを動かしているようだが...
「……どう?」
「……え?俺?」
そこには、どっからどう見ても俺の姿になっているミセラの姿があった。
「こ、これは...なに?」
「私ねー諜報の時、こうやって人の姿を真似て人間社会に紛れ込むの。いつもは適当な人に化けてるんだけど、カリヤの姿になれば勇者たちを混乱させられるかなって思って!」
「そ、そんなこと出来たんだ...ずっといたけど知らなかったわ」
「まぁカリヤには見せてなかったからね。けど、今までもやってたんだよ?髪の中に隠れてる時、バレないために髪の毛のパーツに見えるようにしてたんだー」
「そんなこともしてくれてたのか...凄いなミセラ!ちょっと触ってみてもいいか?」
「いいよー!」
ミセラに近づき、腕に触る。液体で構成されてるからブヨブヨ...なのかと思えば、意外に硬い。ちゃんと皮膚みたいな感触がある。スライム形状の時の、体を支えている膜を強化して皮膚にしてるのかな...
「あっ、でもちゃんと水っぽさあるんだな。摘んだり押したりしたらそんな感じするわ」
「まぁ中身は液体だからねー」
「けど、俺は知ってるから勘づけるだけで、知らない人からしたら触ってもわかんないだろうな」
俺はそう言いながらほっぺたを突く。
「あははくすぐったいよー」
「……なんか、すっごい変な気分だ」
声はミセラのままだけど、見た目は完全に俺...そして、そいつのほっぺたを突く俺...なんとも奇妙な光景だ。
「反撃っえい!」
「っ、今ちょっとブレた?」
ミセラに反撃としてほっぺを突かれたが、そこでミセラの腕がブレたことに気がついた。
「もしかして、勢いよく動かそうとすると乱れちゃうのか?」
「そうなの。固くしてる皮膚のところは動かないんだけど、中の液体部分が動いちゃうからそのせいで一瞬歪になっちゃうんだよね。普通に歩くくらいなら平気なんだけど、走ったりするのは厳しいかな」
「なるほど...あんまり激しく動けないとなると、影武者にしたり分身してるように見せかけたりってのは難しいか...?」
「そうかなぁ...一緒に戦うのは難しい?」
そっか、一緒に戦うって、この姿になって一緒に戦うことを言ってたのか...てっきり、今までやってたみたいに俺の髪の毛の中で見守ってくれる的な意味なのだとばかり思っていた。
「……本気で俺の隣に立って勇者と戦いたいか?」
「……本気だよ。怖いけど、どうせ私だって死印付きなんだ。最後までカリヤの役に立って死にたい」
「そっか。それじゃあ...特訓、しようか」
「特訓...?」
「だってミセラ、諜報部所属だから戦闘経験無いだろ?その身体での戦い方、俺がみっちり叩き込んでやるよ」
よし、とりあえずやることは決まったな。戦闘部の修練場を一部貸してもらってミセラの訓練といこう。そこまで行く傍ら、統治部に現在占領している集落の死印付きを全員殺して魔王城まで戻ってくるように伝えておくか。
「それじゃあ行こうぜミセラ。善は急げってんで、早速行くぞ」
「う、うん!」
二人で修練場へと向かうのだった。
「よし、ここでやるぞ」
俺が二人いる光景にすれ違った魔物たちが全員驚くといったトラブルがあったが、それ以外は何事もなく修練場までたどり着いた。
「ここに着くまでの間、ミセラの動きを観察していたんだけど...あれだな、まずは動き方から直していかないとダメだな」
「動き方?」
「俺の真似をしなきゃなんだから、歩き方とか身のこなしとか、そういうところも同じにしないとダメだろ?」
「そっかぁ...難しそうだなぁ」
「やりたいって言ったのはミセラだ。しっかり見て覚えろよ〜まぁ、その前に身体がブレるのをなんとかするのが先だけどな」
まずは激しく動けないという弱点を克服しなければ、スタート地点にも立てないだろう。
「といっても、こればっかりは慣れてもらうしかないか...ミセラ、これ持って」
懐から短剣を取り出して、ミセラに渡す。まさか、こんな形で二本作ってもらったのが役に立つとはな...
「これ持って俺と同じ動きをしてくれ。遅れてもいいから、しっかり反応するんだぞ」
俺はそう言いながら自分用の短剣を取り出して手に持つと、下から真上に向けて勢いよく短剣で切り上げる。
それを見たミセラは、俺の真似をして短剣を下から上に振り上げ...
「あっ!」
短剣を持っていたミセラの手が飛んでいった。
「た、耐えきれなくて分離しちゃった...」
そう言いながらミセラは飛んで行った右手のもとまで行って取り込み、短剣を持ち直す。
「ぜ、前途多難だな...」
まさか、短剣の重さと遠心力に負けてしまうなんて...ここまで脆いとなると、本格的に戦いに参加するのは無理じゃないか?衝撃の剣で介護すれば出来るだろうけど、それじゃ足手まといみたいになってしまうし...
「……そうだ。いいこと思いついた」
「なになに?」
「ミセラ、俺の首から下全部にへばり付け。その状態で俺が自分の訓練をするから、その動きを覚えながら振り解かれないように耐える...これなら手っ取り早く訓練が出来るはずだ」
「えーっと...多分凄い動きにくくなっちゃうと思うけど大丈夫?」
「問題ない。やってくれ」
「わ、わかった」
ミセラが元の姿に戻り、細かく分離して俺の身体に張り付いて行く。
「ど、どう...?」
「たしかにちと動きにくいが、鎧を付けてた時よりかはマシだな。良い負荷にもなる」
さて、それじゃあ訓練開始と行こうか。
「まずは走り込みだ。この速度をミセラにも出してもらうから、そのつもりで耐えろよ」
ダッ!と地面を蹴って走り出す。その瞬間何体かミセラが零れ落ちていったが、大部分は残っているのでそのまま走る。
「ちょっ...なんか速くない⁉︎魔術も魔法も使ってないんだよね⁉︎」
「当然だ。ちなみに、衝撃の剣を使って無理矢理加速すると...!」
足裏から衝撃波を放ち、その反動で前への推進力を得て加速する。
「ああっ!」
ミセラがぼたぼたと落ちて行く。頑張れーミセラ耐えろよー
「そんで切り返し...!」
地面を足で踏み締めた瞬間に衝撃吸収を行い、俺の運動エネルギーを吸収することで急停止してすぐに横に向かって走り出す。速度操作能力を使っていた時のように、最高速状態から急停止して方向転換してみたわけだが...
「あわわっ!!」
「……全部吹っ飛んでいっちゃった」
吸収したのは俺の運動エネルギーだけ。慣性が働いたためにミセラは止まらず動き続けたので、俺から引き剥がされて壁に叩きつけられていた。
「おーい、大丈夫か...?」
「う、うーん...なんとか...」
モゾモゾとミセラが集まっていき、俺に再度張り付いてくる。やる気はしっかりあるようで何よりだ。
「こんな激しい動きしてたっけカリヤ...」
「これまでもしてたぞ。というか、一緒についてきてたじゃんか」
「そうだけど、あの時は小さかったし髪の毛の中だったから飛んでいくこともなかったし...まさかここまでとは思ってなかったよ」
「というか、これマックスじゃないからな」
「え...まだ上があるの?」
「いや、左腕が使えたならもっと動けたんだけどなって話。走ってる時にブラブラ揺れるのうざったいんだよな...」
これまで四肢欠損は何度か経験してきたが、あるのに動かせないというのはこれが初めてだ。自分で制御できないものが付いてるって、なかなか面倒だな...
「……もはや、左腕切り落として衝撃の剣で腕を作った方が動かしやすいのでは?」
「ちょ、何言ってるの⁉︎」
「そんな驚く?自分的にはだいぶ合理的な判断なんだけど...まぁ、安全に切断する手段無いし流石にやらないけどな」
「手段があったらやってたってことだよね...?私たまに、カリヤが本当に人間なのか疑いたくなるよ?」
「そんなこと言われてもねぇ...あっ、そうそう。左腕使えないのはミセラも注意な。つい動かしちゃって偽物だってバレることがないように気をつけろよ。常に力が入ってない感じでダランとしてて、動いたら遠心力に引っ張られて勝手に動く...再現するのは難しいかもだけど、頑張ってくれ」
「わかった...ついつい動かさないように注意するね」
「ミセラが本物に近づくほど、こっちの選択肢が広がる。例えば、俺が衝撃の剣を使って左腕を動かすことで、俺の方が偽物だって思わせるとかな。だから頼むぜ?」
「なるほど...私頑張る!次は何?何するの!」
「そうだなぁ...じゃあ、これでもやってみるか」
衝撃の剣を取り出し、人の形を編み上げる。
「それは...?」
「擬似訓練用の人型の的だ。ただ素振りするだけってのも味気ないし、攻撃した時に返ってくる反動も経験しないとだからな。一人二役にはなるが...やるぞ。振り解かれるなよ、ミセラ」
「うん!」
短剣を持ちながら走り、作り上げた的に斬りかかる。その瞬間に的を動かし、短剣を剣で受け止めさせる。
「おわっ...と!」
「よく耐えたな。インパクトのタイミングずらしたつもりだったのに」
「カリヤなら、なんとなくやってきそうって思ったからね...さっき一人二役って言ってたし、動くのはわかってたよ」
「良い勘してんねぇ...そんじゃ、ペース上げるぞ!」
的を動かし、俺を攻撃させる。右へ左へと細かく動いて剣を避け、すぐさま懐に滑り込んで脚を切り付ける。
「切れるけど...勇者ならすぐ治してくる!」
スライディングをして、まだ立ち上がっていないところを勇者は狙ってくる。魔術を使って高速移動をしてくることを想定して、音も無く背後に近づかせて剣を振り下ろさせる。
「この場合は衝撃の剣で受けていい。そして剣吹っ飛ばして斬りつける...!」
背中から衝撃の剣を生やして的が振り下ろした剣を受け止め、衝撃解放で剣を上に跳ね上げる。そしてしゃがんだまま短剣を後ろに振り抜いて脛の辺りを斬り裂く。
「もうこれイメージトレーニングと変わらないんじゃ...?」
「そんなこと言ってねぇで俺の動き覚えやがれ!」
「わっ、性格変わった⁉︎カリヤ意外とスパルタ...!」
勇者は速くても俺の反射神経で捉えられるほどの速さでしかない。そして、速い間は異能無効化が働いていないから衝撃の剣で受け止めることが可能だ。動きが遅くなった時だけ剣で受ければいい...
「こうやって...勇者の攻撃を受けろ。鋳造部の最高傑作だから壊れる心配はない。だが、身体が持たないだろうから真正面で受けるのではなく受け流すようにして逸らすんだ。いいな?」
「出来るかなぁ...」
「そのための特訓だ。短剣で受け止めるべき攻撃は他に比べりゃ遅いから、慣れれば案外簡単だと思うぞ。魔術込みの高速斬撃は俺が全部衝撃の剣で受け止めてやるから安心しな」
そう言いながら俺は的から離れる。
「仮想敵を変えるぞ。あの四人の中で戦えるのは勇者とこいつだけ。サザミだ」
衝撃の剣で編み上げた人形を一回ほぐし、再度編み上げてサザミの背格好を模す。
「いろんな形の武器を使って点で考えると、こっちの方が再現しやすいな...そんでミセラ。あの槍の時は何をしてくるか...覚えてるか?」
「うん、地面に突き刺して下から攻撃してくる!」
「その通り!」
的が地面にトライデントを突き刺した瞬間にその場を飛び退き、再現として下から出現させた攻撃を回避する。
「次!こいつは?」
的の武器を二刀流に切り替える。
「あれは...カリヤの守りを突破してきた音を出す剣!」
「正解!正確には振動する剣!」
的が振ってくる剣を回避しながら避けきれないものは衝撃の剣で受け止める。
「これは短剣で受け止めたらヤバいはずだ。超振動のせいで短剣を弾き飛ばされたりだとか、腕を通して身体まで伝わってきて思わぬダメージを喰らったりするかもだからな」
「もちろん斬られたらヤバい...よね」
「生身の部分をいかれたら、超振動のせいでスパッと切断されるだろうな。だが、この振動はきちんと吸収すれば十分無力化できるから衝撃の剣で対策は出来る。そんなに怯える心配はないだろうよ」
剣の振動を全て衝撃エネルギーに変換できれば、こちらのリソース源として活用することができる。注意は必要だが、こちらにとっては良い攻撃だからどんどんやったな欲しいくらいだ。
「さて、次だ。これはなんだったかな?」
「杖...たしか、光を放ってきたような...?」
「そうだ。熱光線的なのを飛ばしてきて、目に入ったら焼けるように熱くなった。これをされたら、衝撃の剣で目の前に壁を張って光線を遮断することでしか身を守れないから、あんまりされたくないんだよな...」
「これって、熱いのは目だけ?」
「多分な。光自体は全身に浴びてたと思うけど熱かったのは目だけだ」
「なら、私は大丈夫かも。カリヤの姿をしてるけど、別に視覚を確保するのは目の位置じゃなくていいからね」
「なるほど...スライム特有の武器だなそりゃ。実際の目の位置をズラして攻撃を回避できるわけね」
となると、サザミの杖の攻撃はミセラには効かない...
「いや待てよ?ミセラにだけ効かないってのも考えようだな。俺に効くってのは、多分あの戦いの中で理解されてるはず。サザミって妙に勘がいいから、そこでバレる可能性は全然あるよなぁ。ミセラにも俺と同じように壁を作って目を守るフリをしないとダメそうだな」
よしよし、いい感じに自分の頭を整理できてるな。まだ知らなかったミセラのことも知れて、盤上に情報が集まってくる。それを組み合わせて、奴らの対策を考えろ...!
「……衝撃の剣の扱いは後で考えるとして、次はこいつだ。これはミセラがいない時に見た奴だから先に言っておくが、おそらく見えない斬撃を飛ばす力がある。どんくらい攻撃範囲があるのかはわからないが、衝撃の剣で受け止めるのが安定かな」
「ふむふむなるほど...斧の大きさはあれくらいなんだよね?結構大きいし、振り上げてる間に近づけるかも?そういえばなんだけど、攻撃ってどうすればいいの?短剣は死印付きにしか使っちゃいけないよね?」
「だな。基本短剣は防御用に使う感じで、アルトにだけ攻撃に使えばいい。それ以外の奴らは、俺が衝撃の剣で攻撃するわ」
「それしちゃったらバレちゃわない?」
「大丈夫だ。ミセラにも衝撃の剣を潜り込ませるつもりだから、上手い具合に遠隔操作でミセラが使ってるように見せかける」
「そんなこと出来るの?」
「遠隔操作は要練習だな。一人二役で同時に制御できるように俺も頑張るわ」
ミセラの特訓も必要だけど、左腕を使えない分のリハビリも含めて俺も特訓しなきゃいけないな。勇者がどれくらいでここまで来るのかわからないが、来るまでの間に出来る限り詰めておかないとな...
「……っと、サザミ対策はこれくらいかな?つっても、俺が知らないだけで他にもいろんな魔術使ってくるんだろうけどさ」
「ねぇ、今思ったんだけどさ...」
「ん?どうしたミセラ」
「スターバスで大量に仲間が殺されちゃったじゃん?それで、たしか軍の人に魔術の研究をしてるって人がいたよね?」
「いたなそんなやつ...ん?ってことは、殺された魔物たちの魔法を解析されて魔術が作られ、それを勇者たちが使ってくる可能性があるってことか...?」
「多分だけど...あると思うよ」
「うわぁ...気付きたくなかったけど今気付けてよかったぁ...スターバスで死んだ魔物がどんな魔法を使えたのかも調べる必用があるのか。作戦立案に訓練にこれも追加って...俺体力もつかな」
先行き不安...だが、やるしかない。軽く頭を抱えながら、ひとまず脳のリソースを喰っている衝撃の剣の的をほぐすのだった。
ミセラには悪いんですが、二年近くステラが相棒枠だったためついつい手癖でステラって書きそうになっちゃう...