神の使いの異世界修復   作:ダイヤモンドリリー

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8042字。

ついに最後の戦闘...今回は前半戦です。


最終決戦と攻撃予知

「……お、ようやく来たか」

 

魔王の間の扉が開け放たれる。そして、扉をくぐるは勇者、サザミ、カムラ、アルトの四人。

 

とうとうここに、この世界に残る死印付きが集結した。

 

「待ちくたびれたぜ。せっかく無人にしてやったんだから、もっとサクサク来てくれたら良かったのによぉ」

 

「……まさか本当に、魔王城の中には何もないとは思わなかった。魔王が人と交わした約束を守るだなんてね」

 

「俺は魔王代理だ。今代の魔王は存在しない...だから、俺さえ倒してしまえばお前らの勝ちってわけだ。まぁ、こっちが勝つ可能性はないんだがな」

 

勇者は怪訝そうな顔をしながらも、ひとまずは話を聞くモードに入っているようで、今にも飛び出しそうなサザミを手で抑えていた。

 

「というのも、俺も死印付きだからな。今回の戦争は魔王軍の負けで最初から決まってたんだ。ってなわけで、俺も出来れば面倒な戦闘は避けたい。もう一度聞くぜ?アルトの首を差し出すならば、代わりに自害してやっても構わない。どうだ?」

 

「こちらも、もう一度言う。断る。死んでも良いというなら、勝手に死んでくれ。でなければ、私が斬るまで...結末は変わらない」

 

「結末を変える気はないさ。俺が変えたいのは過程だけ。アルトも俺も死ぬという結果にさえ至れればなんでも良いのだから、楽な過程を欲するのは当然だろう?」

 

そう言いながら、俺は衝撃の剣を展開する。

 

「お前らがより困難な道を選ぶのならば、それで構わない。こちらは為すべきことを為すまでだ」

 

「……行け」

 

勇者が呟いた瞬間、サザミが猛スピードで接近してきて剣で斬りつけてこようとしてくる。

 

「まるで猛犬だな。そんなに俺のことを殺したいのか?」

 

その攻撃を衝撃の剣で受け止め、衝撃解放で空気を叩きサザミを吹き飛ばす。

 

「まだ開始のゴングも鳴ってないってのに、せっかちな奴だ」

 

衝撃の剣をドーム状に展開し、俺の身体を包む。

 

そして...そのドームを三つに分割し、それぞれ半径二メートルで展開する。

 

「三つ⁉︎」

 

「二つは中身の無い偽物...うまく撹乱しようというわけか」

 

その通りだ。衝撃の剣に対して有効打を持っているのは勇者とサザミだけ。衝撃ドームを三つ作ることで、一人一つと対応させても一つ余らせることができ、アルトやカムラへの攻撃に使うことができる。見た目だけでは俺がどのドームの中に入っているか分からないため、防御性能も上がっている。

 

難点として、三つ同時に制御するのは難しいってのはあるが、ミセラとの訓練で自分の防御用と地面に張り巡らせた探知用と勇者代わりの人形用の三つを同時制御することで経験は積んだ。今の俺ならできるはずだ。

 

「じゃあ、行かせてもらうぜ!」

 

三つの衝撃ドームを制御し、勇者パーティーに向かって走る。

 

「アルトにカムラは後ろに!二人で食い止めるぞ!...ってサザミ⁉︎」

 

仲間に指示を出していた勇者が動揺する。サザミが一人で前に飛び出したからだ。サザミは二つの剣を手に持つと、そのまま一番左から来る衝撃ドームに飛びかかり剣を突き立てようとする。

 

「ハッ、初っ端正解を引き当てるたァスゲェな!」

 

俺は衝撃ドームから衝撃の剣を触手状にして伸ばし、サザミの持つ剣を完全に包み込む。そして超振動を全て衝撃吸収しながら剣自体を投下切断する。その後衝撃吸収を止めると、自身の振動に剣が耐えきれず自壊する。

 

「だが、ワンパターン過ぎるぜ攻撃が!」

 

中央の衝撃ドームを操作してサザミを切り刻む。さらにその時得たエネルギーを即座に衝撃解放で放出し、サザミを壁まで吹き飛ばす。

 

「サザミ!っ、くっ!」

 

最後の一つの衝撃ドームは勇者のもとに向かわせており、サザミを助けに行こうとしたところを妨害する。

 

「さーて、どう調理してやろうか」

 

勇者がこっちに来るのを防げればそれで良いので、適当に衝撃の剣を振り回させて牽制をしておく。こんな攻撃じゃカムラの攻撃予知があるから避けられてしまうだろうけど、避けることに集中させることができればそれだけで時間稼ぎになっているから問題ない。

 

今潰すべきはサザミだ。どうやってかは知らないが、なぜかサザミは俺が入っている衝撃ドームを初っ端から当ててきた。何かと攻撃するたびに俺の弱点を突いてくるし、正直勇者よりも脅威度が高い。異能の無効化とかいうわかりやすい力を持つ勇者よりも、何をしてくるかわからないサザミの方がよっぽど怖いため、衝撃ドーム二つかがりでまずはサザミを潰す。

 

「み、見た目上は二対一気取ってるようだけど...」

 

サザミは自らに回復魔術をかけながら立ち上がってくる。

 

「実際は一対一!私の敵じゃない!」

 

サザミは空中に開いた穴からトライデントを掴み取ると、それを寄りかかっていた壁に突き刺した。魔術が発動し、地面から槍が飛び出してくる...が、最初から足元にも衝撃ドームを張っているためノーダメージだ。

 

「まだまだ!!」

 

サザミはさらにトライデントを取り出しては壁に突き刺す。それを繰り返すたびに地面から槍が飛び出し、衝撃ドームに突き刺さる。

 

「何本も生やしたとて無駄だぜ?そんで...お前がやろうとしていることも、読めたぜ」

 

空中に開いた穴から次なる武器を取り出そうとサザミが動いた瞬間、俺は下に向かって衝撃解放を行った。放たれた衝撃エネルギーは突き刺さっている地面から出現した槍に流れ込み...

 

「あぐぅっ⁉︎」

 

壁に突き刺さったトライデントから爆音として解き放たれた。

 

「地面から生えた槍とトライデントは繋がってるんだろ?地面から槍を生やして突き刺すことで衝撃ドームの移動を封じ、トライデントに超振動の剣を押し当てて音波攻撃を叩き込もうとしたんだろうが、それを逆手に取らせてもらった」

 

「チッ...!」

 

爆音をこれ以上流されるのを嫌ったのか、サザミはトライデントを全て消し去る。その間に俺は衝撃ドームを動かし、ジリジリとサザミとの距離を詰めて行く。ここまで詰めれば、逃げ場はない。気絶するまで衝撃の剣で斬る...!

 

「っ...勇者くん!」

 

突如としてサザミが生み出した剣で自身の腕を切り裂くという奇行に走った...いや、断じて奇行などではない。これは...

 

「面白い...!」

 

自傷したことで、サザミは勇者が使う転移の発動対象になった。即座に勇者がサザミのもとに転移してきて、衝撃の剣を異能無効化の剣で弾き飛ばしてくる。

 

「左が本体!!」

 

サザミが叫ぶと、勇者は迷わず接近してきて衝撃ドームに剣を突き刺そうとしてくる。またスターバスで起きたことを繰り返そうというわけだ。だが、俺もあの時の二の舞になるにはいかない...!

 

「なっ、移動した...⁉︎」

 

ほんと、なぜかはわからないがサザミは気付いたようだ。勇者が剣を衝撃ドームに突き刺す直前に、あらかじめ近づけていた隣の衝撃ドームに俺が移動していたことに。

 

勇者は無人の衝撃ドームに剣を突き刺したことになる。異能無効化の力によって衝撃の剣の膜が破られ、勇者の剣はドームを貫通して深々と突き刺さる。そして勇者の剣はと衝撃エネルギーが流れ込み、内側から粉々になって爆散する。

 

「勇者くん!魔王があっちに移動してる!もうここにはいない!」

 

「なる、ほど...」

 

「っ⁉︎」

 

あの時は飛び散った剣の破片が俺に突き刺さってしまったがために反撃できなかった。しかし今勇者は、武器が壊れて異能無効化の力は使えないにも関わらず衝撃ドームに肉薄しているのだ。衝撃の剣で全身を貫き、生命力を奪い取るくらいのことは余裕で出来てしまう。

 

「今のうちに、アルトを殺すとしよう」

 

衝撃ドームを一つ動かしてアルトの元に向かわせる。

 

「っ...カム、ラ!」

 

「おう!」

 

カムラが自身の持つククリナイフで指を傷つける。そうして条件を満たした勇者は、転移によってカムラの側に移動すると同時に衝撃の剣から逃れた。もう少し切れてたら気絶させられてたかもだが...仕方ない。

 

「なら、サザミを潰すまでだ」

 

勇者がこの場を離れたことで、サザミを守れる者はいなくなった。衝撃ドーム二つによる二方向からの攻撃を捌くことは不可能だ。片方の攻撃を弾こうとすれば衝撃吸収によって身動きを封じられ、もう片方で貫くことが出来るからだ。

 

勇者はサザミかアルト、どちらか一方しか守れない。例えるなら王手飛車取り。サザミはなぜか俺の位置を特定できるため勇者側にとって大きな戦力だ。しかし、アルトは死ぬとそのまま敗北に繋がる王の駒。戦力である飛車を捨ててでも王は守らなければならない。サザミを切り捨てるしか手はないのだ。

 

「うぐっ...!」

 

衝撃ドーム二つがかりでサザミを押さえ込み、透過切断で生命力を奪い取る。極度の疲労感を与え、即座に気絶させる。

 

そして...

 

「拘束完了」

 

衝撃ドームを一つ使い、サザミの身体を包み込む。そして、以前の教訓を生かして衝撃ドームとサザミの体の間に隙間は作らない。ぴっちり密着させ、勇者の衝撃ドーム内への転移を許さず回復を封じる。

 

「っ、サザミ!」

 

勇者はアルトに接近する衝撃ドームを捌きながら叫んだ。アルトのもとに転移した際に回復はしたようだが、まだ本調子ではなさそうだな。衝撃ドームの攻撃を捌くために異能無効化を使わないといけないから、回復をする余裕があまりないのだろう。よしよし、ここまで良い流れでことを進められているな...

 

「解放できるとは思わない方がいいぜ。密着させているから、その剣で斬ろうとすればサザミごとスパンッ!だ」

 

「くっ...だが、私なら...!」

 

「その前にこの攻撃を凌いでみるんだな!」

 

衝撃ドームを操り執拗にアルトを狙う。勇者はなんとか剣で弾き飛ばしていくが、剣が衝撃の剣に触れるたびに衝撃エネルギーが勇者の剣に流れ込み、毎回大きく弾き飛ばされる。それで剣を手放すといったことは流石に起こらないものの、毎度毎度堪えなければならないため勇者の体力も削れていく。

 

「これで...!」

 

これまでのアルト狙いから一変させ、四方から勇者に向かって衝撃の剣を伸ばす。二本の剣に持ち替えようが、この攻撃は凌げまい...!

 

トンッ...!

 

その時、背後から足音がした。慌てて振り向くと、そこには二本の剣を構えたカムラの姿があり...

 

「ア゛...ク、ソが...!」

 

超振動の剣が衝撃ドームに突き刺さり、爆音が中で響き渡る。急いで衝撃吸収をしたものの、爆音は俺の脳を揺らして眩暈を引き起こす。

 

「今...!」

 

衝撃ドームの操作が止まっている間に勇者は高速移動でアルトのもとを離れると、俺ともう一つの衝撃ドームのちょうど間に立ち、そこで剣を振り下ろして地面を切り裂いた。

 

「チッ、バレてやがる...!」

 

三つの衝撃ドームはそれぞれ独立してはいない。細い線で繋がっており、三つのように見えて一つの衝撃の剣を動かしていたのだ。

 

一度に分割できる衝撃の剣は、大きさや距離にもよるが三つが限度。そして分割した衝撃の剣は、せいぜい透過切断をするかどうかや衝撃解放をするかどうかくらいの操作しかできず、遠隔で動かすといったことはできない。だから見えないくらい小さな線で繋いでいたのだが...なぜバレた?

 

「ナイスだカムラ!離脱しろ!」

 

勇者がそう指示を出すと、カムラは勇者よりも少し遅い程度の速度で走り、アルトの近くに戻っていく...っ、今の動き...!

 

そうか、カムラの仕業か!カムラはアルトの近くに戻る途中、少し大股になって何かを避けたような仕草をしていた。そこにあったのは、俺とサザミを拘束している衝撃の剣を繋ぐ線だ。もちろんそれに触れれば透過切断が起こるが、それが攻撃とみなされ、攻撃の予知によってそこに線が存在していることを悟られてしまったのだ。

 

というか、マズイな...ここで勇者もカムラも仕留められなかったのは辛い。勇者目線では、この衝撃ドームに俺が入っていることは明白だ。剣を壊す勢いで衝撃ドームに突き刺されたら、またあの時のような敗北をしてしまう。

 

ここは、勇者を牽制しながら回避に徹して攻撃の機会を窺う...!

 

「ほらよ喰らえ!」

 

衝撃ドームの一部を切り離し、衝撃解放で勢いを与えて勇者に向けて射出する。

 

勇者は咄嗟に避けようとして...それをやめて無理矢理剣で受け止めた。異能無効化によって衝撃の弾丸が破壊され、衝撃波が撒き散らされて勇者は後方に吹き飛ばされる。

 

「判断早いなオイ...!」

 

避けていれば、遠くはあるが後ろにいたアルトに当たる軌道だった。咄嗟に自分で受け止める判断の早さには驚かされる...が、これで時間は稼げた...

 

「ならば!」

 

「っ、まずい⁉︎」

 

勇者は吹き飛ばされた勢いを殺すことなく後ろに走ると、俺から切り離された衝撃ドームに近づいていた。

 

切り離された衝撃ドームは操作することができない。切られた線の切断面を塞ぐこともできず、衝撃エネルギーが溢れ出して線は水が噴き出るホースのように暴れていた。そんな状態で、ドーム本体を切り裂かれたら...!

 

「クソッ!早く繋げねぇと...!」

 

勇者は衝撃ドームを切断した。開かれた穴から大量の衝撃エネルギーが漏れ出て、今度は風船から空気が抜けていくかのように吹き飛んでいく。

 

あれだけの量の衝撃エネルギーを失うわけにはいかない。衝撃の剣を伸ばして吹き飛んでいく衝撃ドームと繋げて制御を取り戻さなくては...!

 

「あっちは分離して、こっちに伸ばす...!」

 

サザミを捕らえている衝撃ドームと繋いでいる線をドームの根元で自ら切断する。勇者に線を切られて、衝撃エネルギーが抜けていったところを救出されては困るから、事前に対策しておいたのだ。さらに、分離したことでこっちの衝撃の剣一つを操作すれば良くなり制御が一本化したため操作性も向上、早々に複数本線を伸ばして飛んでいく衝撃ドームへの接続に成功する。

 

「だいぶ消耗してやがるな...しかもその隙に回復されてるし...!」

 

勇者が自己回復をして動きが機敏に戻っていた。けど、こっちには来ない...?それなら今のうちに衝撃ドームをもう一個作って二択の状況を作り直すか。今ならサザミもいないからどっちに入っているかはバレないはずだ。

 

「……お?無謀な賭けに出たか。それならこっちはアルトを狙うまで...!」

 

勇者はサザミの方に走っていった。俺がモタモタしている間にサザミを救出しようと思ったんだろうが、サザミを切らずに衝撃の剣だけ切るなんて困難どころのレベルではないはず...まさか、サザミごと切って後で治そうとかいうことして無理矢理突破しようとしてるのか?

 

「……ここか!」

 

勇者が剣を振る。衝撃の剣が切られ、俺の制御から外れているため穴は塞がることなく衝撃エネルギーを漏らしていく。

 

「お、おいおい嘘だろ...?」

 

アルトのもとまで走る最中横目で勇者の動きを観察していたのだが、あれサザミを傷つけずに救助することに成功してやいないか?どうやって...?

 

……もしかして、またカムラか?攻撃の予知を上手く使えば、こう切るとサザミを傷つけてしまうということが事前に分かるかもしれない。カムラの予知が発動しなかったら、確実にサザミを傷つけずに衝撃の剣だけを切ることが可能ということの証明になる...やっぱりカムラが一番厄介!!

 

「今しかチャンスはねぇ...!」

 

勇者がサザミを回復させて戻ってくる前に、勝負を決め切らなければジリ貧だ。最高速でカムラに近づき、衝撃の剣を伸ばす。

 

「俺狙いか!喰らうかよ!」

 

攻撃の余地を駆使してカムラは迫り来る衝撃の剣を紙一重で避けていく。

 

「避けられるなら...!」

 

俺が入っている衝撃ドームを一度開き、カムラごと包み込む。

 

「避けられない環境を作るまで!」

 

衝撃ドームでカムラの周囲を覆うことは、攻撃の準備ではあるが攻撃それ自体というわけではない。だからカムラの反応も遅れ、閉じ込めることに成功したわけだ。魔術は絶対じゃない。魔術にする過程で、複製元となった魔法から必ず何かが欠落している。その弱点を突けば、勝機はある!

 

「っ、勇者!サザミ!切ってくれ!」

 

「無駄だ。声は届かない」

 

二人にああ言ったってことは、カムラも勇者と同じ転移を使えるってことか?だが残念、もう勇者はサザミを回復させきってしまったから、条件は満たせない。声は衝撃吸収で外に漏れ出ないし、助けを呼ぶ手段はない。

 

「なら...!」

 

カムラはククリナイフで自分を斬ろうとする。

 

「遅い。ドームに閉じ込められた瞬間にやっておくべきだったな」

 

衝撃ドームの至る所から衝撃の剣が飛び出してきて、カムラの全身を貫く。生命力を奪うと、すぐさま絶大なる疲労感がカムラに押し寄せてきて意識を飛ばす。

 

「さて...と」

 

中にカムラを残して衝撃ドームの外に出る。すると、カムラがいたために攻撃を控えていた勇者が迫ってきて俺に切り掛かってくる。

 

「あらよっ...と」

 

足裏から衝撃解放をして真横に跳躍し、勇者の攻撃を回避する。着地点に向けて回復したサザミが走り込んでくるものの、衝撃の銃を撃って空中で破裂させることで衝撃波を撒き散らし、サザミの妨害と俺の跳躍の軌道変更を同時にこなして二人から距離を取る。

 

「そいつは人質だ」

 

俺はそう言いながらカムラが入っている衝撃ドームを縮小させ、サザミの時と同じように密着させて包み込む。そして線を斬られないよう、根本で切断して分離しておく。

 

「空気は出入りできるから窒息はしない。だが、カムラの予知が無い今、無闇に解放しようとすればどうなるか...わかるな?」

 

先程サザミを解放できたのは、おそらくではあるがカムラの攻撃予知があってのこと。必要パーツであるカムラがいないのだから救出は今度こそ困難だ。

 

「……カムラは死印付き、とやらではないんだろ。ならば、人質にはならないな。命の保証がされてる人質があるか?」

 

「そーだな。けど、こっちとしてはカムラを封じられればそれで良いんだ。別に大人しくアルトを差し出してこなくたってね」

 

後退りして二人から距離を取り、魔王の座の側による。そして、もう一つの衝撃ドームを引き寄せて俺の体を魔王の座ごと包み込む。

 

「ふぅ...待たせたな。ようやく準備完了だ」

 

「もー遅い!それにカリヤだけで終わらせようとしてなかった?私怒ってるんだけど!」

 

「ごめんって。けど、こっから本番だ。任せるぜ?ミセラ」

 

「……うん、行こう!」

 

ミセラは俺と一緒にはいなかった。魔王の座の後ろに隠れ、ひたすら気配を消し続けていたのだ。カムラが戦闘不能になり、攻撃の余地が使えなくなるこの時までな。

 

ミセラが集まり、置いてあった服を巻き込みながら俺の身体を模していく。見た目は完璧。唯一の懸念点はサザミが見破ってくるかもしれないことだが、ここまで来たらやり切るしかない。

 

「剣渡しておくぞ」

 

「うん」

 

「奴らには魔物を探知する術はない。元となる魔法がないから魔術がないのは当然だが、気配で察知することもできない」

 

もし魔物の気配を探知できるならば、俺がスターバスで一度倒れていた時、すぐにミセラの存在に気がついていたはずだ。そして、今この戦闘中にミセラの存在に気が付かなかったのを考えても、魔物を探知する術はないと言って良いだろう。サザミの勘くらいでしか、本物を見破ることはできないはずだ。

 

「俺もミセラも、この場では魔王代理の仮谷幸希だ。全てはアルトを殺すため...行くぜ、相棒!」

 

「おうともよ!」

 

拳を突き合わせ、二手に分かれる。一つだった衝撃ドームを、俺らの動きに合わせて二つに分割して...開く。

 

「なっ...」

 

「魔王が...二人⁉︎」

 

開かれた衝撃ドームは細い糸状になって俺とミセラの着ている服の中に編み込まれていく。カムラがいないから線を切られる心配はあまりしなくて良いだろうが、一応俺とミセラを繋ぐ衝撃の剣の糸は床を透過させて下の階で繋げておき切断対策をする。

 

これにて準備完了。二人同時に口を開き、互いの声は衝撃の剣を通じてどちら側からも聴こえるようにして...

 

「「さぁ、蹂躙を始めようか!!」」




カムラくん、勇者やサザミの使っていた魔術を使えるようになったりと努力はしていたんですが、最初の標的に選ばれてしまったがために脱落...

ちなみに、サザミの勘は実はれっきとした魔術なんですよね。
多分、次回の第二章最終回の後書きに解説をすると思います。
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